発売前からバカ売れ「ホンダの新型カブ」にバイク好きが飛びついたワケ
プレジデントオンライン / 2020年6月24日 15時15分
■事前受注だけで年間販売計画台数を達成
6月26日、ホンダから新型バイク「CT125・ハンターカブ」が発売される。
現行のスーパーカブの中で最大排気量の「C125」をベースに、林道などの不整地もこなせるオフロード走破性能をプラスしたアウトドアレジャーモデルだ。1980年代のアメリカやオーストラリアにおいて釣り、狩猟、農作業、郵便配達といった用途で使われて好評を博した「CT110」を現代の視点と技術でリバイバルさせたのである。
このCT125、なんと発売前からすでに“売れに売れている”のだ。
昨年10月の東京モーターショーでコンセプトモデルが公開され、今年3月20日に正式発売が発表されると、4月の段階で販売店からの受注数が8000台を超えた。つまり、ホンダが計画していたCT125の『年間』販売台数をもう達成しているというのだから驚くではないか。
販売店からそこまで熱い期待を寄せられているCT125とは、具体的にどんな特徴を持ったバイクなのか?
「ベースがスーパーカブですから街中での普段使いができるのはもちろん、フレームや足回りが強化されているので、“道なき道”のレベルは難しいものの、未舗装路ぐらいならけっこうな山奥にまで入って行けます。またマフラーが高い位置についていますから、浅い川なら渡ることも可能。さらに荷台が大きいので、道具一式を積んでキャンプに行ったりもできます」(バイク専門誌『ヤングマシン』編集長の市本行平氏)
■昔の夢が叶う“オジサンホイホイ”なバイク
とすると購買層は、どのあたりだと予想されるのか。
「メインターゲットは、オジサン年代のライダーでしょう。80年代に日本でも売っていたCT110に憧れていた人が、歳を重ねて懐に多少余裕もでき、昔の夢を叶えるべくCT125を買う、というパターンですね。近年のバイクのトレンドとなっている、ネオクラシック志向にも合致しますから、まさに“オジサンホイホイ”的な商品になりそうです」(市本氏)
しかもCT125は回顧派のオジサンたちだけでなく、年代を超え、さらにエントリー層をも巻き込む社会現象的ヒットにまで広がる可能性を秘めているようなのだ。
そう考えられる理由はいくつかある。
第一には、昨今のアウトドアブームの後押しだ。
「軽SUVのジムニーがヒットした理由もそうなのですが、タフな雰囲気を演出できるだけでなく、その気になれば本格的な酷使にも耐えるというギアが非常にウケています。そこへこのところのキャンプブームも重なるわけですから、かなりの追い風が吹いている状態。僕の同業者の中でも、すでにCT125を注文した人が4、5名います。彼らはみんなキャンプを趣味にしていて、若いのから中年まで年齢層はバラバラ。玄人筋までがこれだけ買う気になるバイクは、最近ではちょっと珍しいですね」(バイクジャーナリストの谷田貝洋暁氏)
「先日、グッズ紹介系の雑誌から依頼があり、『ヤングマシン』のカメラマンがアウトドアっぽい風景をバックに撮ったCT125の写真を提供したんです。その手の雑誌でバイクを取り上げることはよくあるんですが、写真まで貸してほしいという申し出は初めてのこと。バイク専門誌以外のメディアでは、CT125のことを魅力的なアウトドアグッズと受け止めているようです」(前出・市本氏)
■3密とは無縁で、奥さんの理解を得やすい
第二に、コロナ禍以降の「3密」回避の風潮も見逃せない。
「朝晩の満員電車で新型コロナウイルスに感染するリスクを避けるため、バイク通勤に切り替える人が増えているんです。これはデータでもはっきり出ていて、日本自動車工業会によると、今年2月、3月の国内2輪出荷台数は、連続で前年同月より増加しています。特に3月の実績が前年同月比を上回った(107.3%)のは、実に3年ぶりのこと。その原動力になっているのが、51cc~250ccの排気量クラスの伸長で、CT125はまさにそこに当てはまります」(市本氏)
CT125も含まれる125ccクラスは、最近注目を浴びているカテゴリーだ。最高速度が60km/h(原付は30km/h)で原付のような2段階右折の義務がなく、二人乗りもできる。それでいて車両価格がさほど高くない上、保険料は割安と、コスパにも優れている。
「社会人の場合、バイクに乗りたいんだけど危ないからと家族に反対され、二の足を踏んでいる人が少なくありません。でも今なら、電車での3密回避を理由に大手を振ってバイクに乗れます。しかもCT125は、ベースがスーパーカブ。バイクを知らない人でも、カブなら危険な運転とは無縁だとなんとなくわかりますから、奥さんの理解を得やすい(笑)。そして休みの日のレジャーとしても、住んでいる都道府県内の林野へツーリングに出かければ、3密とは無縁で楽しむことができます」(谷田貝氏)
■「このバイクに乗るために免許を取ります」
そして第三に、30代、40代のペーパーライダーや、これまでバイクとは無縁だった若年層まで掘り起こせそうなCT125の訴求力が挙げられる。
「若い頃、キムタク主演のドラマ『ビューティフルライフ』や、ビッグスクーターのブームを経験した世代、つまり今の30~40代の男性って、TWとかマジェスティに乗るために二輪免許を取った人がかなり多いんです。統計によれば、30代の中型二輪免許保持者が220万人、40代が340万人ぐらいいるんですが、そのほとんどが現在バイクから離れています。でも逆に言えば潜在的ユーザーでもあるわけで、いいタイミングにいいデザインで登場したCT125は、彼らを取り込めるかもしれません。『ヤングマシン』のウェブ版は動画でも各モデルの紹介をしているんですが、CT125は他のモデルに比べてダントツに多い40万回という再生回数を記録しています。それだけ、あのバイクの情報に飢えている人が多いわけです」(市本氏)
「CT125について記事を書くと、明らかに読者の食いつき方が違います。他の車種だと、そのバイクを知っている人たちだけが反応するんですが、CT125の場合はコメント欄に『このバイクに乗るために免許を取ります』といった声がかなり寄せられます。奇をてらいすぎてはいないが普通とは違う、という機能やデザインが絶妙で、楽しみ方を明確にイメージできる。ちょっとした遊び心を持った大人なら、事前知識がなくても気になってしまう存在なんでしょうね。見ていると誰もが夢が広がるバイクが、久々に出てきたなと感じます」(谷田貝氏)
と、大ブレイクの要素はそろっているだけに、そこに至るまでの導線が何より大切になってくる。
「CT125の存在をどれだけ多くの消費者に認知してもらえるかが、カギになるでしょうね。バイクは自動車に比べて広告宣伝予算がないので、SNSを活用するなどなんとか頭を使って幅広い層に訴求したいところです」(谷田貝氏)
ホンダはこの意欲作を、どんな手法を使って世間にアピールするのか。今後のプロモーション展開はなかなかの見ものになりそうだ。
(プレジデントオンライン編集部)
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