これから来る! 出社とテレワークを柔軟に組み合わせた"ハイブリッド・ワーク"の上手な進め方
プレジデントオンライン / 2020年6月24日 11時15分
■9割の企業は出社ベースに戻る
コロナショックで、一気にテレワークが浸透しつつあります。ただ、これは一時的なもので必ず揺り戻しがきます。世の中の多くの企業は、従来通り、社員に出社を求めるスタイルに戻っていくでしょう。この数カ月でテレワークの有用性を感じた人が多い一方で、「なぜテレワークのほうが成果を出せるか」を言語化できる人は少ないはずです。数カ月の実践では、働き方の指標を作るほどの蓄積とはならないからです。ある調査では、テレワークによる生産性は、平均すると通常勤務時の約8割にとどまると報告されています(※)。
参考:新型コロナウイルスの感染拡大がテレワークを活用した働き方、生活・意識などに及ぼす影響に関するアンケート調査結果)
このように考えれば、業績の立て直しを求められる企業としては、安定した成果を出せる過去のやり方に戻ろうとするのは当然。私は9割の企業は、出社方向に戻っていくだろうと推測します。
■1割が変わるだけでも大変化
ただし、「やっぱりうちの会社は変わらない」「日本の企業体質は変化しない」と嘆くのはまだ早い。少し長い目で見たときには、大きな流れとして、出社とテレワークを柔軟に組み合わせるハイブリッド・ワークが今後の主流となっていくはずです。
まずこのコロナショックを経て、それでも1割の企業には確実に働き方の変革が起こるでしょう。とくにデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されている企業では、出社とテレワークの比を半々にするところまでは速攻で達成できます。テック系ベンチャーのなかには、100%フルリモートを実現する企業もあるでしょう。
まず1割に大いなる変化が起こる。そしてこの経済の混乱を乗り越えたときに、ハイブリッド・ワークへと徐々にシフトする動きが広まっていく。振り返ってみれば、これまではテック系ベンチャーでさえ、出社型の働き方がベースだったわけです。1割が変わるだけでも大きな変化である、という捉え方がまず必要であろうと思います。
■成果を出すためのプロセスを自分で設計できるか
出社型に戻りやすいという前提のなかで、テレワークを今後も続けたいと希望するならば、やるべきことはひとつ。テレワークやハイブリッド・ワークで「自身の生産性や成果がどう上がるか」を論理的に説明することです。
そのためには、プランニングができる仕事をしているかどうかが重要になります。仕事の進め方まで上から提示され、管理されている場合、自分で「この日はテレワーク、この日は出社」と設定することは難しい。しかし、自分自身でもっとも効率的に成果を出せる進め方が提示できるならば、その人にとっては交渉のチャンスです。
たとえばあなたが営業職だったとします。1つの案件をクロージングするまで、これまでなら5回の訪問を重ねていました。その都度、往復の交通費が発生し、お客様と会うまでの移動時間も労働コストに含まれていた。それがオンラインミーティングを活用すれば、最適なタイミングで1回直接訪問するだけでクロージングまでたどりつける。お客様もオンラインの活用を了承してくれている。こうなれば、上司が反対する理由はないでしょう。
成果を出すためのプロセスを自分で設計でき、そのために出社するのか、人と会うのか、あるいはテレワークをするのか、働き方を自分でデザインできる。職能にプラスして、プランニングのスキルが求められます。
■マネジメントスタイルを上司部下間で握る
また、テレワークをうまく進めるための2つ目のキモは、上司と部下がマネジメントについて相互に同意をとることです。ドラッガーは「メンバーの強みを見いだし、それを生かすのがマネジメントである」と言いました。管理したほうが成果につながるのか、管理しないほうがアウトプットを出せるのか。この認識にギャップがあると、どんな仕事もうまくいきません。上司は「マネジメント体制をしっかりつくって、こまかく進捗をチェックしていこう」と考えている。メンバーは「なぜ頻繁にミーティングをして監視しようとするのか」と反発する。悲しいけれど、よくある話です。
テレワークと相性がいいのは、プロジェクト型のマネジメントです。プロジェクトメンバー一人ひとりに強みがあり、全員がプロジェクト完遂のために動く。マネジャーだけが話すミーティングは存在せず、全員が事前準備をし、フェアな関係性でプロジェクトを進めていきます。ミーティングは必ず論点を明確にし、何を決めるかまで決めてからスタートする。マネジャーには、自身がファシリテーター、モデレーターとなって結論を導ける、あるいは「決め方を決めること」が求められます。
部長、課長、一般社員と上から下へ降りてきたラインマネジメントから、プロジェクトマネジメントに昇華していく。テレワークをうまく成り立たせるには、上司も部下も共通してプロジェクトマネジメントへのマインドセットを持つことが重要になるのです。
■リストラから自分を守るためにも変化の1割へ
コロナショックで、ビジネスの世界もカオスと言っていいほどに混乱しています。経営が苦しいから、とにかく出社型勤務で一刻も早く体力を回復したいという企業もあるでしょう。でも、それは決して、これから先もずっと出社型が続く、という宣言ではないはずです。
テレワークも出社も、どちらにもそれぞれにメリットがある。いま会社も個人も、その認識を固めていく時期なんだろうと思います。
現在のカオスは、変化のチャンスでもあります。10年に1度の大チャンス。生産性と成果、ミッションの観点から、自分がどういうワークスタイルを持つのがベストなのかを提案していきましょう。自分の旗さえ掲げられれば、たとえ今すぐに認められなくても、挑戦を続けていくことができます。
ここまでずっとポジティブな話をしてきましたが、不況によるリストラなどの話も当然出てくるでしょう。不況が予測されるなかでは、自分を守ることも重要です。過去の型にはまることが守ることではありません。変わること、変化を楽しむこと、挑戦することのほうがディフェンス力を高める。社内で変革を起こすのもいいし、社外に出てもいい。大いなる変化を遂げる1割に入ること。それが、結果的に自分を守ることにつながるのです。
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サーキュレーション代表取締役
1982年生まれ、静岡県出身。新しい働き方を追い求め、学生起業、家業の清算、会社員としての管理職、パラレルワーク、社内起業を経験する。学生時代に複数の事業を立案し学生起業家となり、パラレルワークを実現。21歳のときに、地元の進学塾を経営していた父親が意識不明となり、10年間に渡って、父親の介護を余儀なくされる。父親が経営していた企業は継続不可能となり、自身の手で会社の清算をすることとなる。その経験から企業経営には「金」以上に「人の経験・知見」が必要であるという考えにたどり着いた。2014年株式会社サーキュレーションを設立。プロフェッショナル人材の経験とスキルを複数社で活かすプラットフォーム(プロシェアリング)を運営している。2020年現在、経営プロフェッショナルのネットワークは1万3000人、導入企業は1500社を超える。
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(サーキュレーション代表取締役 久保田 雅俊 構成=浦上藍子)
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