知らないと怖い親の「葬儀&お墓」、後悔しないために家族で話し合っておくべき4つのポイント

プレジデントオンライン / 2020年6月28日 11時15分

イラスト=こいずみめい、以下すべて同じ

いざというときになって慌てて準備をして希望に沿わない葬儀になることは避けたいもの。わが家に万が一のことが起きたらと仮定して家族で考えをまとめておきましょう。葬儀の心構えは「備えあれば憂いなし」の一言に尽きるのです!

■小規模な葬儀が今後増える理由

葬儀社に要望を正しく伝え、希望通りの葬儀を実現するには、4つの要素について、「わが家の方針」を定めておくことをおすすめする。

まずは葬儀の規模。近親者以外の外部参列者を招く中規模から大規模な葬儀は「一般葬」と呼ばれている。一方、小規模葬は「家族葬」「密葬」で、近年主流になってきている。新型コロナウイルスの影響で、葬儀場に集合しづらい世情も相まって、家族葬の割合はさらに高くなるだろう。通夜を省いて告別式のみを執り行う「一日葬」も、近親者のみで営まれることが多い。火葬のみで済ませる「直葬」という選択肢もある。

「どのくらいの範囲の人に参列してもらうか」を考えておきたい。

2つ目は、どの宗教形式を用いるか。仏教の「仏式」、神道の「神式」のほか「キリスト教式」「無宗教式」の4種類が主な形式だ。日本では、葬儀の9割近くが仏式だといわれている。仏式の場合、必ず確認しておきたいのが「菩提(ぼだい)寺の有無」と「宗派」だ。菩提寺とは、その家の先祖代々からの供養をしている寺院のことで、基本的に葬儀の読経や戒名の依頼先となる。菩提寺がない場合は、葬儀社から紹介してもらったり、僧侶派遣のサービスを利用したりして手配する。「宗派」とは、浄土真宗や曹洞宗といった仏教の流派のことで、葬儀の依頼や僧侶手配の際に必要な情報となる。

続いて「安置の場所」。日本の法律では、死後24時間は火葬ができないことになっているため、感染症などで亡くなった人は例外として、遺体はどこかで1泊以上を過ごさなければならない。病院では病床数や霊安室の都合から、死亡後は数時間以内に退院を促されるのが通常で、「故人をどこに搬送するか」が、残された遺族の最初の意思決定となる。まず、自宅で安置が可能な場合は自宅へ搬送してもらうのがスムーズだ。ほかに火葬場に併設の保冷施設や、葬儀社の安置室、地域によっては民間の安置専用施設などがある。

4つ目の要素が、祭壇の飾り方や、食事、思い出の品の展示など、その人ならではの個性を、葬儀でどのように表現するか。これまでに、祭壇に一升瓶をずらっと並べたり、参列者の奏でる祭りばやしで見送ったり、さまざまな「その人らしさ」を目にしてきた。こだわりがある葬儀には、必然的に遺族が能動的に関わることになる。そのような葬儀に共通するのは、遺族の満足度が高いということだ。

■上限を決めてから総額の見積もりを取ろう

費用のわかりづらさこそが葬儀のわかりづらさであり、認識の違いからトラブルにつながることもある。「依頼時の金額と請求金額が大きく違う」とならないためにも、葬儀費用の仕組みを知っておこう。

イラスト=こいずみめい

広告などでよく見かける「葬儀一式の費用」と聞いて、どんなイメージを持つだろうか。葬儀で必要なすべてが含まれると考える方が多いのではないかと思う。しかし、葬儀における葬儀一式という言葉は、葬儀の一部しかカバーしていない、いわば業界用語だと思ってほしい。葬儀社に支払う葬儀費用は、葬儀一式と実費に分かれている。

葬儀一式として提示される金額は、祭壇飾り、棺(ひつぎ)、人件費の3つが大部分を占める。これ以外に実費として、通夜料理などの飲食接待費、香典返しや返礼品の費用、式場や霊柩(れいきゅう)車などの利用料、火葬料などがあり、これらは別途必要分を計算され、請求時に葬儀一式と合算される。さらに、お布施などの宗教者への謝礼を加えて、葬儀で必要な費用の総額となる。

葬儀の費用はその規模によって変わり、お布施を除いた目安としては、最も簡素な直葬(火葬のみ)で、20万~40万円、一日葬で50万~80万円、家族葬で70万~100万円、中規模(100人以下)の一般葬で120万~150万円、大規模の一般葬で150万円以上が大まかな価格帯だ。ただし、地域差や葬儀社ごとの価格設定の違いのほか、希望する内容によってはさらに幅が出ることもあるため、具体的な費用は葬儀社から見積もりを取るのが一番。必ず「実費を含めた総額」を出してもらおう。

ただし、葬儀では参列者からの香典があり、1人あたりおおよそ5000~7000円、100人ならば50万~70万円の収入ということになる。香典を受け取らないという場合を除いて、葬儀の規模を決める際には、収入も加味して考えるとよい。

費用の中でそれなりの割合を占めるお布施だが、お布施とは読経や戒名に対しての対価ではなく、あくまでも感謝の気持ちとされているため決まった金額はない。とはいえ、感謝の気持ちを表すのに失礼にならないためにも目安を紹介しておこう。お布施の額は、その寺院の格式、地域、宗派、付き合いの深さなど、さまざまな要素で変動するが、中でも最大の要素は戒名の位(ランク)だ。

戒名の下から2文字が「位号」といって位を表し、男性は「信士」、女性は「信女」が一般的な位とされている。2日間の読経と「信士・信女」の戒名を授かる場合で30万~40万円、位が上の「居士」(男性)、「大姉」(女性)では、50万~80万円を包む家が多い。さらに戒名の上に「○○院」と「院号」がつくと100万円以上のお布施を包む家も。

葬儀費用で予算オーバーにならないためには、葬儀一式+実費+お布施の総額の上限を定めておくとよい。

家計から出ていく「葬儀費用」の全貌

■両親が健在でも葬儀社を訪ねてみる

良心的な葬儀社に依頼できるかどうかで葬儀の成否が決まるといってもいいほど、葬儀社選びは重要なこと。葬儀社にも得意・不得意があり、担当者との相性も無視できないポイントとなる。

イラスト=こいずみめい

葬儀社は行きあたりばったりで決めるのではなく、前もって複数社を比較検討しながら、事前に選んでおくのが葬儀社選びの基本であり、失敗しないコツでもある。

「わが家の方針」として、自分たちの伝えたい要望がまとまったら、ぜひ葬儀社を訪ねてみてほしい。日常生活の中で、葬儀社を訪ねることはハードルが高いかもしれないが、訪問してみることで、ホームページではわからないことが見えてくるはずだ。また、地域の式場や安置施設の情報などを最もよく知っているのはその地域の葬儀社なので、葬儀社選びとセットで情報収集もできる。

もしも不愉快な対応をされたら、そこに依頼しなければいいだけのことだ。良心的な葬儀社には共通する5つの特徴があるので、チェックポイントとして覚えておきたい。

まず大事な特徴が「相談者の話を優先して聞く姿勢」を持っていることだ。こちらの話をよく聞き、その思いに沿った内容を提案する葬儀社は信頼できる。反対に、話をろくに聞かず一方的に自社のプランの説明ばかり「売り込む」ような葬儀社はやめたほうがいい。

次に、「葬儀一式の費用」ではなく実費を含んだ総額の見積書を出すのは最低限として、その説明がわかりやすいかどうかは大切なポイントだ。わかりやすさは、その葬儀社がどれだけ消費者の視点を持っているかのバロメーターなのだ。複数の会社を訪ねれば、わかりやすく説明する会社に必ず出合えるはず。専門用語を多用するなど説明がわかりづらい場合は、あなたの理解力がないのではなく、葬儀社の対応に疑問を持つべきだ。

■入会の特典はあくまでオマケ

3つ目の特徴は「契約や入会をせかさない」こと。入会するとさまざまな特典が受けられる「友の会システム」を持っている葬儀社は多いが、その特典はあくまでもオマケであって、葬儀の内容とは無関係と割り切ろう。良心的な葬儀社は入会をせかさない。短時間の説明で入会を求められたら要注意。

前述した「その人らしいこだわり」を葬儀で表現したい人に特に重要なのが「施行事例が豊富」かどうか。標準的な仏式の葬儀であれば、どの葬儀社でも対応できるが、標準を超えたこだわりがあれば、それが実現可能かを見定める必要がある。例えば、趣味の写真を展示したいとか、希望の祭壇のイメージを伝えたとき、経験豊富な葬儀社であれば、それまでの実績から、イメージに合うような実例写真を見せながら話を聞いてくれるだろう。

最後に、これは主観に委ねることになるが、担当者との相性は決して無視できない重要なポイントだ。好感の持てる相手にはささいなことも質問しやすく、ちょっとしたことも頼みやすいが、合わない相手はすべてがストレスとなる。

複数社の比較検討で迷ったときには、金額よりも担当者の対応が良い葬儀社を優先して選ぶことをおすすめする。筆者のところに来た相談者のことを振り返ると、葬儀前までは費用を一番気にしていた人でも、葬儀後の満足度には費用の話は出てこないことがほとんど。多くの人が、葬儀費用の高い安いよりも、葬儀社のスタッフの対応の良しあしで満足度を語る。そのくらい、担当者の質は大切な目安なのだ。

■代々受け継いでいくか、一代限りの供養か

お墓にまつわる状況は人それぞれ違ううえ、時代とともに変化し続けている。お墓の埋葬スタイルは、代々受け継がれる「累代墓」と、一代限りの「永代供養墓」の2つに大別できる。多くの人が「お墓」と聞いてイメージする、墓石が立っていて、ご先祖さまが眠っているお墓が累代墓だ。墓地を継承する次の代がいない場合は、納骨堂や合祀(ごうし)タイプの慰霊塔に埋葬されるのが主流。近年関心が高まっている樹木葬や海洋散骨といった自然葬も、一代限りという意味では、広義で永代供養に分類できる(※)

※供養とは本来は仏教用語だが、無宗教の場合でも「永代供養墓」と呼ばれることがあるためそう表記している。

墓地や永代供養墓は運営する母体により「寺院」「公営」「民営」の3種類がある。寺院墓地のメリットは、管理が行き届いていることや、本堂を利用して法要などが行えることに加え、手厚く供養してもらえているという安心感を得られるという人も。デメリットは、檀家になっている場合は、寄付やお布施など相応の負担が求められることや、墓石のデザインに制約があったりすること。また、利用できるのが檀家や同じ宗派に限られていることも。

公営霊園は宗教や宗派を問わずに利用でき、永代使用料や管理費が手頃で、自治体が運営しているため廃業の心配がない。しかし、公募制で、都市部は特に競争率が高いことや、利用上の諸条件があることが多い。

イラスト=こいずみめい

民営霊園のメリットは、宗教や宗派を問わずに利用でき、墓石のデザインや大きさの選択肢があり、施設が整っていること。数が比較的多く随時募集していることが多い。公営に比べ費用が高いことや運営会社により管理やサービスの質に差があることがデメリットだ。

累代墓を新たに建立する費用は、墓石本体のほか、建立の工事費用、永代使用料、仏式の場合はお布施などで、墓地の永代使用料や墓石の大きさで開きがあるものの、おおよそ200万~300万円。納骨堂の場合は、コインロッカータイプで30万~50万円、機械式のタワータイプで80万~100万円。なお、公営は10万円程度から利用できる場合もある。合祀タイプの慰霊塔は10万~30万円。ただし、遺骨の個が保たれないことを理解したうえで利用したい。

自然葬では、樹木葬が30万~50万円、海洋散骨は船をチャーターすると30万円程度、散骨業者に任せる場合は5万円程度から依頼できる。

今、継承者がいないお墓が6割を超えていると聞く。継承者がいない、もしくは、継承者がいても、お墓が遠方で維持しづらい場合には手放すことになる。これが最近耳にすることが増えた「墓じまい」だ。先祖代々の遺骨を弔い上げするなどして、現在立っている墓石を撤去し、更地にして運営者に返す。費用は40万~70万円ほどかかる。

お墓を考える際は、代々続いていくのか、それとも一代限りで供養するのか、今の状況だけではなく、将来を見据えて検討することが大切だ。

自分たちに合った墓地はどれ!?

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市川 愛(いちかわ・あい)
市川愛事務所代表
1973年生まれ。服飾メーカー、葬儀社紹介企業を経て、2004年に日本初の葬儀相談員として起業。市川愛事務所代表。終活普及協会理事。正しい葬儀情報と終活を広めるための活動に従事。著書に『後悔しないお葬式』(角川SSC新書)など。

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(市川愛事務所代表 市川 愛 イラスト=こいずみめい)

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