免疫学の第一人者が教える「コロナ対策の黄金習慣ベスト5」

プレジデントオンライン / 2020年7月11日 11時15分

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もしウイルスが体内に侵入しても免疫力が高ければ健康でいられるだろう。その免疫力を高めるにはどのような生活を送ればよいのか? 免疫学の権威がわかりやすく解説する!

■新型コロナウイルスとの闘いはまだまだ続く

新型コロナウイルスが蔓延し、世界中が混乱しています。それも仕方のないことです。免疫、疫学、ウイルスの専門家が集まって専門家会議が行われていますが、コロナウイルス感染に関する専門家はまだいません。だから、今まで手に入れた知識を演繹しながら、対策を練るしか方法がないのです。

このような状況で頼りになるのが、免疫です。免疫とは体内に入ってきた外敵を駆除して、健康を保つシステムで、大きく分けて2段階あります。生まれながらに備わっている自然免疫と、特定の病原菌に感染したことで得られ、その外敵を記憶して対抗する獲得免疫です。免疫があるかぎり、人間は簡単に滅びないと言ってもいいでしょう。

私が期待しているのが、「集団免疫」です。ワクチン接種や感染することで多くの人に免疫ができれば、ウイルスは新たな宿主を見つけられなくなり、やがて流行が収束に向かっていきます。

新型コロナウイルスとの闘いは、まだまだ続きます。2021年のオリンピックも、感染者をゼロにしてから開催するのは不可能です。20年5月25日、緊急事態宣言が解除されましたが、普通の生活に戻っても医療崩壊はほとんど起きないと思われます。そうであれば、若干乱暴な言い方になるかもしれませんが、今後は重症化による死者を少なくする努力をしつつ、自粛は全部解除して普通の生活に戻したほうがいいのではないでしょうか。もし感染者が出たら、学級閉鎖をするように、その都度感染が広がらないように対処していく。そうやって集団免疫を獲得していって、新型コロナウイルスに打ち勝つしかありません。

■自然免疫は体内の「警察官」

社会全体で見ると、最大の対抗策は集団免疫になりますが、個々人としては免疫力を上げることも重要です。

一日のうち、人間の体内に1兆個の細胞ができるなかで、遺伝的に出来そこないのがん細胞が5000個も含まれていると言われています。それを見つけ出して除去したり、外から入ってきた異物を真っ先に叩くのがNK(ナチュラルキラー)細胞です。NK細胞は小さな異物の処理を担当するリンパ球の一種で、もっとも代表的な自然免疫。働いている時間が一番長く、全身をくまなくパトロールしている、いわば体の最前線を守る警察官です。不良少年を巨悪にならないうちに排除するので、体の治安がよくなります。

獲得免疫は自然免疫では勝てないときに働きます。代表的なのは、T細胞やB細胞。NK細胞が警察官なら、こちらは軍隊。B細胞がつくり出す「抗体」はミサイルのようなものです。ワクチンは、有事に備えてミサイルを打たせる軍事訓練と考えてください。

軍隊は強固にできているため、放射線を浴びたり、抗がん剤を使ったりしないかぎり、弱まることはほとんどありません。年を重ねてもシステムは健在なので、ワクチンを子どもに打っても100歳のお年寄りに打っても、同じように効果があります。

しかし、自然免疫は獲得免疫のように強固ではありません。コンディションによって、弱くなったり強くなったりすることがあります。NK細胞の活性はピークが20歳で、その後落ちていくという報告もあります(図)。いわゆる「免疫力が落ちる」というのは、このように自然免疫の活性が弱まった状態を指します。体内で不良少年が増加し、巨悪に成長してしまうと、治安が悪くなります。長生きしたければ、常日頃から警察官を強くしておく必要があるのです。

加齢でNK細胞の活性は低下する!

手洗いをしたり、マスクをしたりすることで、感染を防ぐという行為も大切です。しかし、マスクの穴を1メートル四方だとすると、インフルエンザウイルスは野球のボール、コロナウイルスはピンポン球ぐらいの大きさです。そうなるとどんな生活をしていても、どこかで風邪と同じように感染して発症することもあるでしょう。ならば、自分の免疫力を高めておくことが得策です。

「新型コロナウイルスはいつ収束するのか?」とよく聞かれます。人類にとって初めて体験するウイルスなので、予測は困難です。ワクチンがいつできるのか、それよりも早く人間が集団免疫を獲得するのか、まだ誰にもわかりません。

そこで私から伝えたいのは、「あまり悲観的にならないほうがいい」ということです。この後説明しますが、暗い気持ちでストレスを抱えると、免疫力は落ちていきます。あまりナーバスにならずに日常生活を送ることは、ウイルスに対処していくうえで非常に重要です。

(1)食生活

■唾液の分泌で「防波堤」を強化

口の中は、細菌やウイルスなどの外敵が入ってきやすい「入り口」と言えます。そこで第一の防波堤になるのが、唾液です。

唾液の中には抗菌・殺菌作用のある酵素が含まれています。ペルオキシターゼという酵素は、物質を酸化させる力が強く、細胞内の遺伝子を傷つけ、がん化する原因をつくる活性酸素を中和する働きを持っています。

唾液を分泌するのに大事なのは、よく噛んで食べることです。また唾液は、加齢に伴う唾液腺の老化、抗アレルギー薬の服用、ストレスなどによって分泌量が減ることもあります。病気を治すときに薬はもちろん必要ですが、日常生活で何かあったらすぐ薬を飲む、という習慣はなるべく避けたほうがいいでしょう。

では、どんな食材を食べればいいのでしょうか。積極的に摂取したいのは、きのこ類です。きのこ類に含まれる多糖体のβ-グルカンはNK細胞を活性化し、ウイルスに対して抵抗性があると言われています。中でも、しいたけ由来のβ-グルカンは、臨床現場で抗がん剤として使用されることもあります。またきのこ類は不溶性の食物繊維が多いため、便通が改善されやすくなり、腸をキレイにする効果もあって、免疫力アップにつながります。

注目したい成分が、野菜や果物などに含まれる色素、香り、苦みなどの成分である植物性化学物質「ファイトケミカル」です。免疫細胞のマクロファージを活性化し、さらに抗酸化作用もあります。特に抗酸化力が強いと言われているのが、ブロッコリーの中に含まれるファイトケミカルの「スルフォラファン」です。ブロッコリーの細胞が壊れるときに生成されるので、よく噛むかスムージーなどにして摂取するとよいでしょう。

そしてビタミンCにも、マクロファージやNK細胞を活性化する効果があります。ブロッコリーの茎に豊富に含まれているので、薄く切ったり、茹でたりして調理するのがおすすめです。同様にビタミンCを含んでいるキャベツの外側の葉と芯の部分は、細かく刻んだり、ザワークラフトにしたりするといいかもしれません。

ただし、免疫力が高まるからといって、特定のものばかりを食べてはいけません。食事のうえで大切なのは、一定の食材に偏らず、栄養バランスよく食べることです。そして免疫力向上のために、嫌いなものを我慢して食べるのも禁物です。その気持ちがストレスになって、免疫力が下がりますし、何より食べすぎは体によくありません。腹八分程度のほどほどの食事量を心がけながら、家族や友人と一緒に、気楽においしく食べるのが消化もよくなって一番です。

これが免疫力を高める食材だ
(2)腸内環境

■腸内には体内の免疫細胞が集中する

腸は臓器の中でもっとも長く、約9mもあります。そして小腸と大腸を合わせた腸管に、なんと体内の免疫細胞の60~70%が集まっているのです。

ヨーグルトの研究は古く、約100年前、ノーベル賞学者イリヤ・メチニコフが「ヨーグルトは長寿に有効」と提唱していた。
ヨーグルトの研究は古く、約100年前、ノーベル賞学者イリヤ・メチニコフが「ヨーグルトは長寿に有効」と提唱していた。(Getty Images=写真)

というのも小腸は食べ物から栄養を吸収すると同時に、病原菌の侵入を防がないといけない臓器であるからです。小腸の粘膜に分布しているパイエル板という器官に、大量のリンパ球が密集しています。この腸管の免疫システムを整えておくことが、免疫力を落とさないうえで何より大事です。

そのカギを握るのが、腸内細菌です。腸内細菌には、消化吸収の補助や免疫刺激などの健康維持を導く善玉菌、有害物質をつくり出す悪玉菌、どちらでもない日和見菌の3種類があります。善玉菌が悪玉菌より少なくなると、その影響を受けて悪玉菌に加勢する日和見菌も出てくるので、善玉菌>悪玉菌の状態をキープしなければいけません。腸の免疫細胞が活性化するのは、善玉菌:日和見菌:悪玉菌「2:7:1」の状態です。長寿国のグルジアでは、年配の方の腸内に善玉菌が非常に多い、という報告もあります。

どうやって善玉菌を増やせばいいのかというと、効果的なのは、プロバイオティクス食品を摂ることです。プロバイオティクスとは、生きたまま腸に届いて、腸内環境を整えてくれる微生物。もっとも代表的なのは乳酸菌です。

乳酸菌を手軽に摂取できる食品といえば、ヨーグルトです。乳酸菌は小腸の粘膜をほどよく刺激して、免疫力を活性化させます。死んで腸に届いても食物繊維と似た働きで、腸をキレイにしてくれる効果もある。ビフィズス菌は乳酸と酢酸をつくり出し、酸に弱い悪玉菌の増殖をおもに大腸で抑制してくれます。

ただし、残念なことに乳酸菌はビフィズス菌のように腸に定着しないので、毎日摂取する必要があります。胃酸に弱いことも弱点です。なので、胃酸の影響を受けにくい食後30分以内に、1日200gを目安に摂取するのがベストです。ある試験調査によれば、乳酸菌を含むヨーグルトを毎日食べてもらった高齢者と、そうでない高齢者を比較したところ、前者のほうが風邪を引くリスクが下がり、NK細胞の活性が増強されました(表)。

ヨーグルトを食べると風邪を引きにくくなる

キムチや漬け物など、発酵食品も乳酸菌が豊富です。キムチは浅漬けだと乳酸菌の効果が低いので、塩分の摂りすぎに注意しつつ、しっかり発酵させたタイプを選ぶといいでしょう。

納豆も効果が期待できる一品です。納豆菌が生み出す菌体物質は、ビフィズス菌などのエサになるので、腸内の善玉菌を増やします。豊富に含まれているビタミンB2は、細胞の再生を促進し、免疫に大事な粘膜を強化します。

腸の活動を充実させるうえで注意したいのが、便秘です。ビフィズス菌などの善玉菌は、大腸の入り口で増殖するので、大腸の奥にいくほど働きが弱まります。便がとどまる時間が長いほど悪玉菌が増殖。結果、有害物質が増えて、免疫機能に悪影響を与えます。

便秘を防ぐには、ある程度の量を食べて、大腸を刺激する必要があります。朝食を食べるのも効果的です。夕食から時間が経って、朝の胃はからっぽの状態。そこに食べ物が入ると、腸の蠕動運動(便を押し出す動き)が活発化して、排便が促されやすくなります。

(3)ストレス対策

■NK細胞はストレスに弱い!

免疫にとって、警戒しなければいけない敵は、細菌やウイルスだけではありません。ストレスも手ごわい敵です。

人間の体内では交感神経と副交感神経の働きがバランスを保つことで、自律神経として全身の環境を整えています。免疫細胞である顆粒球とリンパ球は、この自律神経の影響を強く受けているのです。日中などの活動時、交感神経が優位になると顆粒球が増え、休息時に副交感神経が優位になるとリンパ球が増えます。顆粒球とリンパ球のバランスは約6:4です。しかし強いストレスを受けると、不安や緊張でずっと交感神経が働き続ける状態になり、顆粒球が増加。過剰な顆粒球はリンパ球の働きを抑止するので、免疫力が低下してしまいます。

またストレスで交感神経が優位になると、それを鎮めようと副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されます。するとNK細胞はコルチゾールをくっつけてしまう受容体を持っているため、NK細胞の動きが阻害されてしまうのです。

T細胞やB細胞は簡単に影響を受けませんが、NK細胞はちょっとしたストレスで弱くなります。先日、新型コロナウイルス感染者がクルーズ船内での生活を強いられました。狭いところへ閉じ込められて、さらに不安なまま生活を送る。あれこそまさに免疫力が下がる環境です。

そして不安のような負の感情は伝染します。母親のラットから子どものラットを離す実験を行ったところ、母親のNK活性は大幅に低下しました。さらに母親ラットの隣に元気のいいラットを置くと、そのラットのNK活性まで下がったといいます。

ストレスとNK細胞の関係/ストレスをためやすい10のタイプ

■ストレスを克服する最良の手段とは

どうやってストレスを克服すればいいのでしょうか。まず一番簡単な方法は、笑うことです。漫才や落語を生で見てもらい、その前と後でNK活性の変化を調べたところ、18人中14人の活性が上昇したという報告があります。

あまり笑えないという人は、作り笑いでもOK。顔の筋肉が緩むことで、脳が「笑っている」と判断する。
あまり笑えないという人は、作り笑いでもOK。顔の筋肉が緩むことで、脳が「笑っている」と判断する。(PIXTA=写真)

笑っているとき、人間は悩みを忘れて、難しいことを考えません。いわば頭が真っ白の状態になり、精神がリセットされます。なぜ笑うと免疫力が上がるのかはまだ解明されていませんが、リラックスした結果、副交感神経が優位になることで、リンパ球が活性化されているのかもしれません。また、鎮静効果や気分の高揚が得られるβエンドルフィン、精神を安定させるセロトニンなどの脳内ホルモンが笑うことで分泌され、ストレスによって生じるホルモンを抑制するという理由も考えられます。

「楽しいことを考える」という手段も有効です。イギリスの医学雑誌ではこのような調査報告があります。乳がんの患者を告知後の心理状態で以下の4グループに分け、病気の経過を追跡しました。「病気には負けない」と積極的に立ち向かったAのグループ、病気であることを忘れようとするBのグループ、病気のことばかり深刻に考えているCのグループ、ダメだとあきらめて絶望的になったDのグループ。10年後、もっとも生存率が高かったのはAの70%でした。対してDの生存率は20%。前向きな精神が免疫力を強化した、とも考えられます。

「気にしすぎない」ことも重要です。新型コロナウイルスの影響もあって、清潔に対する意識が高くなりました。これ自体は非常によいことですが、神経質になりすぎると逆効果になる場合もあります。

過剰に清潔すぎる環境で暮らしていると、細菌やウイルスが入ってこなくなります。すると「警察官」であるNK細胞が働かなくなり、活性が低下。結果、それに応じた免疫力しかつかなくなります。手洗いやうがいは習慣化しつつ、忘れたとしてもパニックにならず、「免疫を鍛えるトレーニング」程度に受け止めるといいでしょう。

極端な話、風邪を引いたぐらいで、病院に行かなくてもいいのです。病院には元気のない人が集まっています。前出のラット実験ではありませんが、暗い人の近くにいると暗い気分が伝染してしまいます。

健康診断の結果も、気にしすぎるのはよくありません。基準値の多くは20~30代の数値を基準にしたものであって、中高年になったら基準値からはずれるのは自然なこと。19年から数値が上がった下がった、と一喜一憂していては消耗するだけです。

健康診断の数値の中で、多くの人がとらわれているのが、コレステロール値です。かつては総コレステロール値が220mg/dl未満が正常、超えると異常というガイドラインがあり、食習慣・運動習慣の改善が求められました。しかし、さまざまな調査研究により、かつての常識は見直されています。

そもそもコレステロールは、細胞膜をつくる主成分で、ホルモンを体内で合成する働きがあります。低下することで血管が破れたり、免疫力が落ちるリスクが高くなることもある。心臓さえ悪くなければ、300mg/dlまでは心配しなくてもよいでしょう。血圧も個人差があります。「年齢+90」ぐらいを基準にして、体調に問題がなければ無理に降圧剤を飲むこともありません。

■趣味は三日坊主で終わってもよい

そしてストレス対策として、かなり効果的なのが「ある程度、いい加減に生きる」ということです。

かつてフィンランドではこんな調査が行われました。循環器系の弱い40代前半の男性を集めて、マジメに健康管理をするグループと、健康管理しないグループに分割。最初の5年間、前者には健康面でのアドバイスを丁寧に行い、薬も処方しました。対して後者は何の制約も設けず、好きなように暮らしてもらったのです。はたして10年後、多くの面で健康状態がよかったのは、後者のグループでした。

マジメすぎるのは年中神経がたかぶっている、つまり交感神経が優位になっている状態です。それが免疫力を下げる原因になっているかもしれません。同様の理由で、働きすぎもよろしくない。「ゆるっと生きる」のが一番です。「~すべきだ」「~しなければいけない」という考え方をやめて、完璧主義を捨てましょう。

楽しく生きるために、趣味を持つのもいいことです。しかし、これも「極めよう」「最後までやり遂げよう」と自分を追い込んでは逆効果になります。三日坊主で終わってもいいから、楽しむことを優先したいものです。

生きていくうえで、ストレスをゼロにすることはできません。場合によっては「ストレスをなくそう」という考えがストレスになることもあります。ストレスは生きている証拠と気楽に受け止め、うまくつきあってください。

(4)体温を上げる

■筋肉をつけて体温をキープする

体温が低いと、全身の代謝が悪くなります。肩こり、頭痛が起きやすくなるだけでなく、免疫細胞が働きにくくなり、がん細胞が元気になるというデメリットまであります。免疫細胞は、弱まるのは体内温度が35度台。活発化するのは37度以上、わきの下の検温でいうと36.5度以上です。

体温を上げる方法のひとつが筋肉を鍛えることです。筋肉は基礎代謝の70%を占め、体が生み出す熱の30~40%をつくっています。といっても、激しい筋トレをする必要はありません。普段から体を動かし、さらに筋肉のもとになるたんぱく質を含んだ肉・魚を摂取することで、筋肉量を落とさないように心がければよいのです。

これから夏場に注意したいのが、冷房とのつきあい方です。冷房に当たりすぎると体内の深部を冷やし、体温調整している自律神経のバランスまで乱してしまいます。そうなると免疫力が下がり、だるさ、疲労感などの症状が現れます。外気と室内の温度差を5度以内に抑えながら、冷房に長時間当たることは避けたいものです。

自分の裁量では冷房調整できない、もしくは冬に寒い職場では、自ら体を温める必要があります。ポイントとなるのは、足元の対策です。冷たい空気は下に流れ込んでいき、足元が冷えると全身の血流も悪くなります。靴下は足首が隠れる長めのものを着用し、腰から膝下は膝掛けでカバー。足首同様、太い血管が通っている首や手首も、冷やさないほうがよい部位なので、露出を少なめにしましょう。また長時間同じ姿勢でいるのも、血行が悪くなる原因のひとつ。座りながらでいいので、つま先とかかとを交互に上げ下げする運動をすると、血行が促進されます。

そして体を温めるには、シャワーで済まさず、入浴するようにしましょう。副交感神経が優位になって、NK細胞が活発になるからです。理想的なのは、40度のぬるめの湯に15分程度つかること。半身浴だと心臓への負担も軽減されるので、年配の方にはよりよいです。また深夜2~3時ごろの睡眠中は、一日のうちでもっとも体温が低くなる時間帯。そこで寝る前に入浴して体内温度を上げておき、睡眠中の免疫力を高めるという方法もあります。

なお入浴の際、石鹸を使って体をゴシゴシ洗いすぎないように気をつけましょう。皮膚表面の皮脂は、病原体が皮膚から侵入するのを防ぐ役割があるのに、洗いすぎはそれを取り除いてしまいます。中高年であれば、石鹸を使うのは2~3日に1度程度で十分です。

最後に体を温める食材を紹介します。代表的なのは、漢方の薬効成分として古くから重宝されているショウガです。辛み成分のジンゲロンが手足の先の血管を広げて体温を上げる効果が、香りのもとであるショウガオールは胃腸を刺激して、体の深部体温を上げる効果があります。

体を冷やさないポイント
(5)運動

■一日5000歩早めに歩くのが理想

健康を保つのに運動は欠かせない──。誰もが信じて疑わない常識です。しかし、免疫力を高めるという点では、激しい運動は決してプラスになるとはかぎりません。

確かに激しい運動をした後、NK細胞の活性は上がります。しかし運動を終えると、急激に落ちてしまうのです(図)。「激しい運動をした人は、まったく運動しなかった人よりも上気道感染症(風邪)にかかりやすい」という調査結果も報告されています。

強い運動をするとNK細胞は増えるが……

「肉体を酷使したスポーツ選手は寿命が短い」という説もあります。毎日のハードトレーニングを積むことで、大量の活性酸素が発生し、細胞が酸化。さらにプロスポーツ選手は強いストレスにさらされるため、免疫力が落ちやすくなる、とも考えられます。

コロナ禍で体を鍛える場所を失い、街中でランナーをよく見かけるようになりましたが、中高年がジョギングに励むのはあまりおすすめしません。特に朝は体内の機能やホルモンが寝ぼけている状態なので、急激な変化についていけず、倒れてしまうこともあります。寒さで血管が縮小し、血圧が上がりやすい冬の朝は、特に危険と言っていいでしょう。

だからといって、運動を全くしなくてよいというわけではありません。前出の運動と上気道感染症の調査結果では、感染リスクが一番低かったのは、ほどほどの運動をした人でした。私がおすすめしたいのは、早めに歩くことです。鼻歌を歌いながらリズミカルに歩いていると、抗ストレス作用を持つ脳内ホルモンのセロトニンが分泌。爽快な気分になって、NK細胞の活性化にもつながります。

景色を見る程度の余裕を持ちながら、一日5000歩程度を目安に歩くぐらいが理想です。ムリをする必要はありません。エレベーター、エスカレーターを使わずに階段を利用するなど、「体に強い負荷をかけない」「頑張りすぎない」姿勢で取り組むことが大事です。

また、体がむくんだり、疲労を感じたりするのは、免疫力が落ちているサインです。そんなときは、リンパマッサージを試してみましょう。

全身に張り巡らされたリンパ管の中を流れるリンパ液は、体内にたまった老廃物を回収し、排出する働きがあります。この流れがよくなると、免疫細胞が体内をスムーズに流れて力を発揮するので、不調の改善につながります。

リンパ管の要所には、リンパ液が合流するリンパ節があります。リンパ液の流れ同様、リンパ節に向かって、一定方向にマッサージしてみてください(図)。グイグイと力を入れずに、手でさするようにして優しくもむのがコツです。

リンパ節に向かってマッサージをしよう

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奥村 康(おくむら・こう)
順天堂大学医学部特任教授(免疫学講座)・アトピー疾患研究センター長
1942年生まれ。米国スタンフォード大学リサーチフェロー、東京大学医学部講師を経て、84年より順天堂大学医学部免疫学講座教授。医学博士。2000年順天堂大学医学部長。サプレッサーT細胞の発見者。受賞歴に、ベルツ賞、高松宮賞、安田医学奨励賞など多数。

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(順天堂大学医学部特任教授(免疫学講座)・アトピー疾患研究センター長 奥村 康 構成=プレジデント編集部)

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