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なぜ今、「外貨建て保険」のリスクが著しく目立ってしまうのか

プレジデントオンライン / 2020年7月11日 11時15分

■「外貨建て保険」を正しく理解しよう

2020年5月28日、国内生命保険大手4社の3月期決算が出揃い、売上高に当たる保険料等収入は4社とも前期比で減少。本業の収益を示す基礎利益も3社が減益と落ち込みました。その要因は、主力商品の「外貨建て保険」が低迷したことにあります。

外貨建て保険とは、米ドルや豪ドル、ユーロなどの外貨で保険料を払い込み、外貨で保険金や解約返戻金などを受け取る保険です。個人年金保険、終身保険、養老保険などの種類があります。

2016年に日銀がマイナス金利政策を導入して以来、貯蓄性の円建て保険の代替商品として、生保各社が販売を強化してきました。

しかし、19年は米中貿易摩擦の激化など、世界経済の先行き不透明感が強まり、安全資産である国債が世界的に買われて価格は上昇。金利は低下したため、外貨建て保険の高利回りの魅力が薄れて販売が減少傾向にありました。

さらに20年に入ると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、米国の長期金利は急低下。米国債などで運用する外貨建て保険は、十分な運用実績を維持できないとして、20年3月中旬から、販売を一部休止する会社も出ています。

■デメリットも目立つ

外貨建て保険は円建ての保険に比べると利回りも高く、外貨を保有することでリスク分散のメリットがあります。ただ、メディアなどの特集記事を見ると、デメリットも目立つようです。

「保険」というものの、死亡保険金について、災害死亡以外は払い込んだ保険料あるいは解約返戻金相当額しか返ってこず、保障機能はあまり期待できません。

また、外貨建て保険は投資信託や外債などの投資性金融商品と比較すると利率が低く、保険会社の経費も運用益から引かれるため、実際の利回りは、積立利率を下回ります。

さらに、購入時と換金時の両方で為替手数料がかかり、販売手数料も6~8%程度と、円建て保険や、近年コストダウン競争が激化している投資信託よりコストは割高です。

保険料を平準払いで毎月支払っていく場合は、ドルコスト平均法によりリスクが低減されますが、一時払いの場合、購入時の為替レートに大きく資産価値が左右されることも気を付けるべきです。外貨建て保険の苦情やトラブルもシニア契約者の一時払いのケースがほとんどです。

さらに、10年以内に解約すると解約控除費用が発生するため、受け取る金額はさらに目減りする計算となります。

要するに、外貨建て保険は、保険と金融商品としてのコストがダブルでかかるということ。単純に資産運用という面で見るのであれば、金融商品を選択したほうが割安です。

ですが、保険料に対する「生命保険料控除」や契約者が亡くなった際に、生命保険の非課税制度(限度額は「500万円×法定相続人の数」)が利用できるなど、税制上の恩恵が受けられます。

また、配偶者や親などの2親等以内の中から受取人を選ぶのが一般的ですが、保険会社によって、独り身で身寄りがないなどの特別な事情があれば、それ以外の中から受取人を選択するなど、自分で受取人を決められるのも利点です。

基本的に私は、「金融商品に罪はない」と考えています。重要なのは、それを販売する側が「適合性の原則」に則って、ニーズやリスクに応じた顧客に販売し、それを顧客が正しく理解できるかです。

制度を正しく理解すると、「外貨建て保険はナシ」とは必ずしも言えないのです。

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黒田 尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー
プレジデント誌でもおなじみのFP。お金の管理に関するプランニングや講演、メディア出演を行うと同時に、自身のがん経験を生かし、病気時の資金繰りサポート活動にも力を入れている。近著に『三大疾病 ライフプランニングハンドブック』(金融財政事情研究会)。

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(ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子)

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