「リモートワークは難しい」という人が見落としている2つのこと
プレジデントオンライン / 2020年7月7日 11時15分
※本稿は、ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン『リモートワークの達人』(早川書房)の一部を再編集したものです。
■20年にわたりリモートワークを続けてきた
僕らの会社「ベースキャンプ(元・37シグナルズ)」では、20年にわたりリモートワークを活用している。当初のメンバーは、コペンハーゲンとシカゴに1人ずつ。そこから順調にリモートで成果を上げてきた。現在では世界各地の36人のメンバーが僕らの会社で働いている。僕らが提供しているプロジェクト管理ツールのユーザー数は数百万人、世界中のあらゆる国が僕らのフィールドだ。
そうした経験をもとに、リモートワークがいかに豊かで自由な世界かということを紹介したい。
■オフィスにいると「印象」で評価が決まってしまう
リモートワークのメリットのひとつは、仕事そのものが評価の基準になることだ。
1日中そばにいて見張っている環境では、ささいな勤務態度が成績評価に影響してくることも多い。
「9時ぴったりに席についていたか?」
「休憩が多すぎないか?」
「通りかかるたびにフェイスブックを開いている気がするぞ」
マネジャーはいつも、そんな些細な問題に気をとられてしまう。仕事ではなく、印象でその人の評価が決まってしまうのだ。
でもリモートワークなら、そんなことは気にならない。
大事なのは「今日何をやりとげたか?」ということだけだ。何時に出社して何時に帰ったかは問題じゃない。どんな仕事をしたかが問題なのだ。
あなたがマネジャーなら、部下に「今日やった仕事を見せてくれ」というだけでいい。給料に見合うだけの仕事をしているかどうか、その目でたしかめるのだ。それ以外のささいなことは、会社にとってはどうでもいい。
とてもシンプルで、明快だ。
こういう物の見方をしていれば、誰が会社に貢献していて、誰が足を引っ張っているのか、本当のところが見えてくる。
■ミーティングとマネジメントのせいで仕事が進まない
リモートワークがうまくいかないと思い込んでいる人は、たいてい2つのことを指摘する。
(2)そばで見張っていないと、部下が仕事をしているかどうかわからない
だから、みんな毎日オフィスに行く必要があると彼らはいう。
でも僕らにいわせれば、それはまったく逆だ。
ミーティングとマネジメントのせいで、オフィスでは仕事が進まないのだ。
ミーティングがなく、うるさい上司もいないほうが、確実に仕事がはかどる。だからこそ僕らは、こんなに熱心にリモートワークをすすめているわけだ。
ミーティングとマネジメントの何がいけないのかって?
それ自体が悪いわけじゃない。ミーティングやマネジメントは、仕事に必要なものだ。ただし、あまりに多すぎると、害になる。
「もっとたくさんミーティングをやりたい」と思う人はいるだろうか?
まずいないと思う。できれば減らしたいと思っているはずだ。それはなぜだろう?
ミーティングは本来、役に立つものだ。みんなでテーブルを囲み、直接言葉をかわして話しあう。濃いコミュニケーションが実現できるし、問題解決の大きな力になる。
ただし、不用意に使いまくればいいわけじゃない。
■「7人で1時間のミーティング」=「7時間の損失」
何でもかんでもミーティングで解決しようとして、毎日何度もミーティングばかりしていると、みんなうんざりしてしまう。目的意識が薄れて、適当に参加していればいいやという気持ちになる。
ミーティングは料理に入れる塩のように、注意深く扱うべきだ。適量を加えれば味が引き立つけれど、多すぎると台無しになる。一口ごとに塩をふりかけて食べたいと思う人はいないだろう。
多すぎるミーティングは、人のやる気をぶち壊してしまうのだ。
それだけでなく、ミーティングは集中力の邪魔になる。どんなに大事な作業の途中でも、みんな一斉に集まらなくてはいけないからだ。7人の参加者で1時間のミーティングをすると、7時間分の作業が失われる。
はたしてそのミーティングには、7時間分の作業に見合う価値があるのだろうか?
覚えておこう。1時間だけのミーティングなんて、存在しない。5人で1時間を費やしたら、それは5時間のミーティングなのだ。
■週40時間もマネジメントに使う必要はない
では次に、マネジメントについて考えてみよう。なぜ、マネジメントが仕事の邪魔になるのだろうか?
マネジメントは本来、仕事に欠かせないものだ。ただしミーティングと同じく、多すぎると害になる。進捗状況を10分かけて説明したら、その10分は作業ができないからだ。せっかくの集中が、声をかけられるたびにぶち壊しになる。
それにミーティングはたいていマネジャーが開くものだから、マネジャーがいるだけで仕事の邪魔がいっそう増えることになる。
そもそも、1日中マネジメントをやろうとすることに無理があるのだ。マネジャーは部下の管理が仕事だから、必要なくてもそれらしい仕事を見つけだしてくる。形だけの定例ミーティングや、無駄に多すぎる進捗確認、必要もないのにおこなわれる企画会議。マネジャーの1週間は、そうやってすぎていく。
もちろん、部下の進捗を管理するのは重要な仕事だ。ただし、週に40時間もかかる仕事だとは思えない。せいぜい10時間がいいところだ。それなのに、ほとんどのマネジャーは、やることがないという事実を認めようとしない。だから、わざわざ無駄な仕事をつくりだすのだ。
■リモートなら「マネジャーの邪魔」が入らない
リモートで仕事をすれば、マネジャーは無駄に仕事を増やせなくなる。
従来の職場では、メンバーたちを会議室に連れ込んだり、席に立ち寄って進捗を聞いたりしても、とくに記録は残らない。邪魔をしているという事実が見えにくいのだ。おかげで、メンバーたちは四六時中マネジャーの暇つぶしにつきあわされることになる。
でもメールやチャットを使ってリモートでマネジメントをする場合は、もっと目的意識が明確になる。だから、おかしな暇つぶしに邪魔されることなく、仕事が進められるのだ。
リモートワークの世界にも、ミーティングとマネジメントは必要だ。
ただし、すべてがオンラインの記録に残るので、どれくらい頻繁におこなっているかを嫌でも意識することになる。
ミーティングとマネジメントが減ってくれれば、みんなもっとハッピーになるはずだ。
■週1回の「進捗共有」がモチベーションを上げる
みんなと一緒にオフィスで働いていれば、社内のできごとはだいたい耳に入ってくる。
![ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン『リモートワークの達人』(早川書房)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/c/200/img_fc619177f30df4ddfa54c837e91abd64241556.jpg)
朝のコーヒーを淹れながらうわさ話をしたり、ランチに行って最新情報を仕入れたり。黙っていても情報はどんどん入ってくる。
少なくとも、そんなふうに感じられる。だからみんな安心できる。
でもリモートで働いていると、まわりの様子が見えないことがある。プロジェクトマネジャーからのメールには関係者の進捗が書かれているけれど、それはあくまでもプロジェクトマネジャーとしての見方だ。チームの一体感を強めるためには、みんながおたがいの様子を知っておいたほうがいい。
僕らの会社では、週に一度「最近やっていること」というテーマで話しあいの場を設けている。全員が、この1週間でやったことと翌週にやることを手短に書き込んでいくのだ。進捗を正確に述べる必要はないし、その場で作業の調整をしなくてもいい。
単純に、みんなで一緒に進んでいるという感覚を持ってくれればいい。大海原にひとりきりではなく、みんなで大きな船に乗っていると感じられるようにするのだ。
こういう進捗共有の場は、「仕事を進めなければ」というおだやかなプレッシャーにもなる。「今週はピザを食べながらドラマを一気見していました」なんていう報告をするのは気まずいからだ。
誰だって、チームの人間を失望させたくはない。上司の目はごまかせても、同僚の目はなかなかごまかせないものだ。技術に疎いプロジェクトマネジャーに対してなら、30分で片づく作業を1週間かかる大仕事に見せかけることも可能だろう。でもプログラマ仲間に見られたら、嘘をついていることはバレバレだ。
進捗をみんなと共有することは、仕事をしようというモチベーションを生む。
話のわかる仲間に進み具合を披露するのは、けっこう気分のいいものじゃないか?
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世界的に著名なソフトウェア開発会社「ベースキャンプ」(2014年に「37シグナルズ」から社名変更)の創業者・CEO。同社は1999年の創業以来20年にわたりリモートワークで業績を上げ続け、プロジェクト管理ツール「ベースキャンプ」は数百万の企業で採用されている。ハンソンとの共著に本書のほか、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーとなり日本でもITエンジニア大賞(ビジネス書部門)を受賞した『小さなチーム、大きな仕事』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)、『NO HARD WORK!』(早川書房)、Getting Realがある。
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オープンソースのウェブ開発フレームワーク「Ruby on Rails」の開発者。Ruby on RailsはTwitter、クックパッド、Hulu、Airbnbなど100万を超えるウェブ・アプリケーションに使用されている。
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(ベースキャンプ創業者・CEO ジェイソン・フリード、ベースキャンプ共同経営者 デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン)
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