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「行列のできる算数教室」名物"還暦先生"初めての子育て実況ルポ

プレジデントオンライン / 2020年7月6日 9時15分

撮影=遠藤素子

「宮本算数教室」(東京都千代田区)は、無試験・先着順だが、8割以上が開成や麻布、桜蔭といった超難関校に合格する名門塾だ。代表の宮本哲也さんは4年前、56歳で結婚し、昨年、長女が誕生した。これまで多くの「天才児」を育ててきた宮本さんは、自身の子育てにどう取り組んでいるのか。その日常にプレジデントFamily編集部が密着した——。

※本稿は、『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2020』の一部を再編集したものです。

■教え子は開成や麻布、桜蔭…合格「還暦父さん」は子育てを満喫

東京都内に住むママ歴1年の宮本若葉さんは、娘・さくらちゃんを前に不安な日々を送っている。

「少し前、卵を食べさせたら吐いちゃったんです。アレルギーがあったんですね。それ以来、食べ物を与えるだけでも不安です。最近つかまり立ちを始めましたが、ぶつかってケガをしないだろうかと、これも心配でたまりません」

妊娠がわかってから辛い毎日が続いてきたという。つわりも重かったし、無痛分娩の予定が急きょ、緊急帝王切開となり、出産後も睡眠不足と倦怠(けんたい)感に苦しんできた。

ところが、同じくパパ歴1年の夫・哲也さんは、毎日の子育てが楽しくてたまらないという。哲也さんは「なんちゃってイクメン」などではない。体調の悪い若葉さんをケアしつつ、おむつ替えも離乳食もお風呂も、さくらちゃんの日常に関する多くを担当している。

取材に伺った日も、廊下の隅に蹲(うずくま)りながら、さくらちゃんがハイハイする姿を延々と、ただただ楽しそうに見守っていた。

宮本哲也さん。そう、あの宮本算数教室(東京都千代田区)の宮本哲也先生だ。

■「賢い子は早寝早起き」と、毎朝5時に家族全員で起床

宮本算数教室といえば、入塾時は無試験先着順ながら、8割以上の生徒を開成や麻布、桜蔭といった超難関校に合格させてきた塾。教室では一切教えず、生徒が自ら解いていくスタイルを実践。2004年に考案した「賢くなるパズル」シリーズは、06年に出版され、国内だけで累計250万部の大ベストセラーとなり、英名『KENKEN』として10言語、20カ国で楽しまれている。同年にはTBS系列の人気テレビ番組「情熱大陸」でも取り上げられた。

さらに、04年に出版した『強育論』は、中学受験家庭のみならず、幅広い子育て世代のバイブルともなっている。

ずっと独身だった宮本先生が56歳で若葉さんと結婚、59歳にしてさくらちゃんのパパになったのだ。パパ歴1年とはいえ、塾の講師歴40年、数多くの「賢い子」とその親を見てきた宮本先生の子育てには、一切の迷いがない。

「賢い子は間違いなく、早寝早起きの朝型です。眠っている間に子どもは体も頭も成長する。学習したことを定着させるには、十分な睡眠時間が必要なんですね。また小さい頃から、テレビやスマホに触れていないのも賢い子たちの特徴です。テレビで育った子は国語力に問題がありますね。テレビもスマホも、小さな子どもにとっては単なる電気信号ですから」

■賢い親は? 「子どもに手をかけすぎず、口出しせずに見守れる人」

賢い子の親にも共通点がある。

「謙虚で奥ゆかしいです。自分が子育てしているのでなく、自分も子育てを通じて成長させてもらっているという姿勢なんです。だから子どもに手をかけすぎないし、口出しせずに見守っていられる」

『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2020』
『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2020』(プレジデント)

それにならって、宮本家でも朝型の生活を実践。宮本先生は毎朝5時に起床。離乳食も本人が食べる気になるまで気長に待つ。ハイハイも飽きるまで付き合う。

「『すべての生き物には学習するという本能がある』と自著でも書きましたが、本当にその通り。娘が生後3カ月のとき、寝ているときに首をしきりに後ろに反るから、これは寝返りの練習をしているんだとわかった。でも下半身がついていけないから、全然うつぶせになれない。それでもめげないんです。やれと言われているわけでもないのに、何度もトライしている。それで体をねじったときにちょっと手伝ってやったら、くるっとひっくり返った。娘はびっくりしていましたね。まさに天地がひっくり返ったわけですから。自力で初めて寝返りできたときは、それは誇らしい顔をしていました」

■育てたいように育てるのでなく、子が育ちたいように育つのを見守る

教室で、生徒たちが難しいパズルを自力で解けたときと同じ表情だったそうだ。

Tシャツにもさくらちゃん
Tシャツにもさくらちゃん(撮影=遠藤素子)

とにかく今は子育てが楽しいという宮本先生。夜眠るときは、明日は何をしようと考えわくわくするという。さくらちゃんに絵本を読み聞かせるときも主人公になりきって、演者さながら。

「娘が楽しんでいるから自分も楽しい。授業と同じですね」

そんな宮本先生を見て、若葉さんは「悔しくなるほど羨(うらや)ましいです」と一言。睡眠不足が続く横で、わくわくしながら眠るパパを見れば、悔しくなる気持ちもよくわかる。

今はそんな状態の若葉さんだが、宮本先生と結婚する前に、先生の『強育論』を読んで、「この人についていく!」と心を決めたほど感銘を受けたという。

「子育て本ではありましたが、私自身の生き方にも刺さる言葉がたくさんあって。『自らの弱い心に打ち勝っていきながら成長するのです』とか、『謙虚であるということは自分の弱点や欠点を素直に認め、受け入れること』とか。教育に関しては、『学力とは、いい学校に入るために必要なのではなく、よりよく生きていくために必要なのだ』とか。さくらに対する子育てを見ていて、まだ赤ちゃんではありますが、有言実行、その通り実践していてすごいなあと思います。一緒に子育てを不安がる旦那さんでなくて、本当に良かったと思っています」(若葉さん)

「この子を見ていると本能の赴くままに、毎日ものすごく学習していることがわかります。この知的欲求を十分に満たしてやれば、子どもの能力は伸びるんです。だから親は育てたいように育てるのでなく、子どもが育ちたいように育つのをハラハラしながら見守るしかない。私がいつも自分に言い聞かせているのは『ずっとそのままで一生懸命、生きてください。父ちゃんは邪魔しませんから』ということだけです」(宮本先生)

ストレスが少ないからか、さくらちゃんはご機嫌なことが多い。

「歯磨きとおむつ交換のときは嫌がることもありますけれどね。これだけは無理やりでもやらないといけない(笑)。それでも、ちゃんと表情を読み取って、少しでも心地よい状態をつくるようにしています」と宮本先生が笑うと、傍らで若葉さんが「夜泣きもなくなるようにしてほしいのですけどね」と本音をもらした。

■娘は寝返りもつかまり立ちも標準より遅いけど、この子のペースでいい

どんな子に育ってほしい? という質問には「自分らしく成長してくれたら、それがいちばん」と即答。

「幸せとは、自分らしく生きること。人は幸せになるために学ぶわけですから、学びもまた自分らしくなければいけません。娘は寝返りもつかまり立ちも、標準より遅いですが、この子のペースでいいんです」

“日々、自己ベスト更新!”を合言葉に、自ら成長し続けてきた宮本先生。これからは若葉さん、さくらちゃんとともに、夫歴、パパ歴の自己ベストを更新していきたいと張り切っている。

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宮本 哲也(みやもと・てつや)
宮本算数教室 代表
1960年大阪・高槻生まれ。高校中退後、大学入学資格検定(現・高等学校卒業程度認定試験)に合格し、早稲田大学第一文学部に進学。新聞配達、ファストフード店、自動車工場などのバイトを経て、大学3年生のときに塾講師となる。卒業後、いくつかの大手進学教室を経て、93年、神奈川・横浜で宮本算数教室を設立。人気塾となるも「現状には満足しない。もっと自分を成長させたい」との思いから、2009年には東京・日本橋に、15年には米ニューヨークのマンハッタンに教室を移転。若葉さんと運命の出会いを経て、17年からは東京・中野で開校。18年、千代田区に移転。入塾希望者が定員を上回る人気塾であることは今も変わりがない。

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(宮本算数教室 代表 宮本 哲也 文=池田純子)

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