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「なにか質問は?」でスベってしまう人に欠けている視点

プレジデントオンライン / 2020年7月9日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SDI Productions

周りの人をうならせる「いい質問」をするにはどうすればいいか。IT批評家の尾原和啓氏は「コツは、相手にはなくて自分が持っている視点を見つけることだ。質問者が10代の学生なら“学生ならではの視点”を主軸に据えて質問するといい」という——。

※本稿は、尾原和啓『あえて、数字からおりる働き方』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■質問は「一番得をする」情報収集ツール

講座やセミナーなどにおける質問タイムは、情報収集術の中でも一番得をする行為だと僕は思っています。収集できる絶好のタイミングに手を挙げるのはひとつの才能です。なぜなら、質問は情報収集ツールでありながら、自分を印象づける行為でもあるからです。

僕は講座やセミナーに参加するとき、自分だけのための議事録を書きます。講師が何を言ったか、他の生徒の反応はどうだったか、などもメモします。なかでも大事にしているのが、最後の質問タイムでどんなことを質問するかについてのメモをとることです。

たとえば外資系の会議で、詳細な英語を聞き取れなくても、テーマさえわかれば、“こういう発言をすれば自分を覚えてもらえるかな”とか、空気をあえて読まずとも“こんな質問をしたらみんながハッとするかも”と、自分のことを覚えてもらうためにとる行動をメモします。

そうすると、後で誰かが「あの発言、よかったよ」と声をかけてくれたりする。いい質問をする人は必ず目立ちますし、強い印象を残します。取引先に出向いて、お客さんと接しているときに自分のことを覚えてもらうのにも、質問は有効です。

■いい質問にはさまざまなメリットがある

質問は、それそのものが情報をギブする行為です。質問をする側は、「僕は今こんな状況だから、こんなことを考えているので、これについて聞きたい」と質問することで“自分はコレに興味がある人間です”というアピールにもなります。

質問された側にとっては、“こういう観点で聞いてくれたのか”というフィードバックにもなります。質問は、相手と仲良くなる手段でもあるわけです。

毎日情報をギブし続けていると、いい質問ができるようになります。だからぜひ、講座や会議で、グーグルドックスなどで議事録やメモをとりつつ、一方でいい質問をするためのアイデアメモをとる習慣をつけてみてはいかがでしょうか。

これらを繰り返すことで、だんだん、人の興味を掴むコツがわかってきます。するとどんなシーンでもコミュニケーションができるようになり、人生がぐっと楽になります。

■いい質問をするための視点

いい質問をするコツは、相手にはなくて自分が持っている視点を見つけることです。たとえば登壇者がAI事業に携わっている40代男性なら、講演中に話した自社サービスを、10代や60代の他世代がどう感じるのか、はたまた異性である女性ならどう試したいと思ってくれるのかが気になるでしょう。

そこで、質問者が10代の学生さんなら「今の学生は、スマホをこんな風に使うのですが、御社のAIサービスではどのように置き換えることができるでしょうか」というように、“学生ならではの視点”を主軸に据えて、質問するといいでしょう。

たとえば地方にお住まいなら、地域の住人としてのサービスの見え方、プレゼンの見え方のフィードバックを添えて質問すれば、相手にとって非常に有り難いギブになります。

実際、僕も地方で講演させていただく機会があるのですが、国内においては東京を中心に活動させていただいている身としては、東京以外にお住まいの方が講演を聞いてどう感じているのか、どんな違和感を持つのかなど、とても気になります。

以前、講演前に近くにあった書店に立ち寄ってみたら、その店の売上げランキングの上位ほとんどが仏教をベースにした自己啓発本だったことがあります。つまりこの地域で本を読む人の多くは高齢者らしいとわかります。

■自分視点の質問は、相手にも有り難いギブになる

都内の書店では、目立つ本棚にビジネス本が平積みされていることも多いです。そのため、いざ地方へ赴いたときにまったく異なる現実を目の当たりにすると、ビジネス本を出させていただいている身としては、地方で暮らす方々にも本を届けるにはどのような工夫をすべきか、どのような言葉で届けるべきか、非常に考えさせられるわけです。

というのも、都内で活動する多くの人は、東京=日本のスタンダードではないことを理解しています。たとえば山手線の乗客の8割くらいはiPhoneを使っていますが、地方でローカル線に乗ると半分くらいで、あとはAndroidやHuaweiユーザーが多いことがわかります。

これをビジネスとして見たとき、たとえばアプリを作るときに、都内にいると「iPhone向けに特化して作ればいい」と思い込んでしまう。しかし国内レベルで見れば、他社のスマホユーザーのほうが多いくらいかもしれない。つまり、東京を日本のスタンダードに据えてしまうと、偏ったサービスが生まれてしまうのです。

このように、それぞれの地域によってまったく異なる文化や習慣があるわけですから、特に地方公演の機会があるときは、できるだけ現地にお住まいの方の視座を知りたいのです。

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Point 質問には自分ならではの視点をのせる

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■そもそも、手を挙げる自信がない人へ

しかし、実際の講演の場では、なかなか自信がなくて手を挙げられないという方の声も耳にします。よく聞いてみると、「自分は一流のビジネスマンではないから、自分の意見や視座、質問には価値がないと思ってしまう」というのです。

せっかく講演にいらした学生さんや主婦の方も、自分の視野は狭いから手を挙げられない、と思い込んでしまうようなのです。

たとえば地方にお住まいの方から見ると、“東京にいる人が最も広い視野を持っている。自分の視野や意見なんて価値がない”と思い込んでいる方も珍しくないようです。

しかしこれらは、これまでの時代の中でできあがった“地名ブランド”や“肩書”“数”の刷り込みが生んだ自己卑下にすぎません。

むしろ、“ここにいる自分だからこそ、異性や異なる年代、地域の人にはわからない視点や視座がある”と、唯一無二の価値を持っていることにしっかり自信を持って、堂々と意見やアイデアを打ち出してみて欲しいのです。

■自分の持っている視点は「唯一無二の価値」がある

ただし、そのためにはまず“自分の視座の価値”を知る必要があります。たとえばどこに住む人であっても、地元の価値を知るには、一度外の世界に出てみて、地元と外の世界の違いを知らなければ、地元の良さはわからないのです。

たとえば旅行は、自分の地域とよその地域とを相対化する上で絶好の機会になりますが、ただ観光客として楽しんでいるだけでは、なかなか違いに気づけないこともあります。なぜなら、観光客とは、“観光客向けのサービス”を向けられる存在だからです。

僕の友人のライターさんは、旅をするならなるべく安い民宿やエアビーアンドビーの宿に泊まり、近所のスーパーで食材を買って料理をすることで、少しでも現地の生活習慣に触れるようにしていると言います。

なぜなら、スーパーは毎日でも訪れる場所なので、地元とよその地域との違いがわかりやすく、品揃えや価格から、現地の生活や習慣がよく見えるのだそうです。つまり、地域同士を相対化するためには、なるべく現地の生活習慣がわかる場所に赴くといいのです。

すると、“地元の愛知のスーパーは仏花の品揃えが多いから、これが当たり前だと思っていたけれど、他の地域では極端に少ない。ということは、地元は仏壇への思い入れが、他の地域に比べて厚いのかもしれないな”ということがわかります。

■自分以外の人の意見や視野を知る

それで調べてみると、実は愛知は京都よりもお寺の数が多いことがわかり、自分には、他の地域に比べて“お寺や仏壇への思い入れが厚い地域”の住人としての視点があることがわかり、それが“自分の視野の価値”になるのです。

尾原和啓『あえて、数字からおりる働き方』(SBクリエイティブ)
尾原和啓『あえて、数字からおりる働き方』(SBクリエイティブ)

つまり、観光客ではなく、旅先の住民の視点を得たほうが、よその地域にとっての“ありがとう”に気づきやすくなるのです。

「そもそもそんな旅に行くお金も時間もない!」という人は、インターネットを使ってみましょう。大切なのは、自分以外の人の意見や視野を知ることです。

たとえば本を1冊読んだり、DVDを見たりして、一旦自分なりの感想がまとまったら、アマゾンのカスタマーレビューをチェックしてみましょう。自分と同じではなく、なるべく反対の評価をしている人のレビューにも目を通すと、“自分と反対派の意見の人が見ている視野や視座”を知ることができます。

■自分のできるギブ、相手が欲しいギブを見極める

他にも、自分の街の旅行ガイドや、トリップアドバイザーをチェックするのもいいです。インスタグラムで、自分の街や県名をハッシュタグ検索してみるのもいいでしょう。すると、「自分にとっては当たり前だったけど、よその人にはこれが“ありがとう”なんだ」ということに気づけます。

自分にとっての当たり前が、人にとってのありがとうだということに気づくことも、自分にできるギブや、相手が欲しいギブを知る上で非常に大切なことです。これを押さえれば、おのずといい質問ができるようになっていくでしょう。

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Point 自分にとっての当り前こそ、人にとっての「ありがとう」につながる

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尾原 和啓(おはら・かずひろ)
IT批評家
1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任。著書に『モチベーション革命』『アフターデジタル』(共著)、『ザ・プラットフォーム』『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ"これから"の仕事と転職のルール 』『ITビジネスの原理』などがある。

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(IT批評家 尾原 和啓)

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