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「安倍1強は終わらせない」自民党が今秋の解散・総選挙を急ぐワケ

プレジデントオンライン / 2020年7月7日 18時15分

閣議に臨む(左から)茂木敏充外相、安倍晋三首相、麻生太郎副総理兼財務相=2020年6月19日、首相官邸 - 写真=時事通信フォト

もはや永田町では「安倍1強」という声は聞こえない。長い間安定的に推移してきた内閣支持率は30%台で低値安定。与党内にも安倍晋三首相を公然と批判する声がある。それにもかかわらず、永田町では「今秋に衆院解散・総選挙が行われる」との見方が日々高まっている。この「自殺行為」ともいえるアイデアの根拠とは——。

■衆院解散をためらって惨敗した麻生氏が火付け役に

7月2日、都内の料理屋では自民党の二階俊博幹事長、岸田文雄政調会長が宴席を持った。新型コロナウイルスの党内の感染者は再び上昇カーブを描いているのだが、自民党幹部たちは、そんなことお構いなしとばかり、夜な夜な会合を重ねている。この日も、2人の自民党幹部が顔を合わせれば当然衆院選の話題になる。

漏れてきているのは、岸田氏が解散の可能性について水を向けた際、二階氏が「いつになるか分からない」と答えたという話のみだ。しかし、永田町内では「もっと深い話をしたの違いない」という、ざわつきが広がる。

火付け役は麻生太郎副総理兼財務相だ。麻生氏は2008年、首相に就任した際、ただちに衆院解散に打って出るのをためらい、衆院選が翌夏になってしまったことで惨敗。自民党が下野して民主党政権の誕生を許してしまった苦い体験を持つ。それだけに、政治の局面の度に早期解散を安倍氏に進言している。

その麻生氏は6月29日、公明党の斉藤鉄夫幹事長と会談した際、「今秋の衆院選が望ましい」と伝えている。麻生氏はこの10日前、19日の夜に安倍晋三首相、菅義偉官房長官、甘利明党税調会談と夕食をともにしながら2時間半にわたって意見交換している。

この会合は、安倍氏がコロナ問題が浮上してから自粛していた夜会合を解禁した「記念すべき」会合として注目され、「秋の衆院選説が浮上した」との観測が出ていた。それだけに麻生氏の発言で、一気に燃え上がったという形だ。

■ここで解散すれば「野党を利するだけ」にも思えるが…

しかし、秋に衆院選を行うことで、自民党にとって何のメリットがあるのだろう。読売新聞社が3日から5日にかけて行った世論調査で安倍内閣の支持率は39%。不支持率が52%。報道各社の世論調査では、ここ数カ月、不支持が支持を上回る傾向が続いているが、その差はさらに広がっている。ここで解散すれば野党を利するだけではないか。

大義もない。言うまでもなく安倍内閣はコロナ対応が急務になっている。特に東京の感染拡大で「第2波」に現実味がでている。その中で、衆院解散で政治空白をつくれば批判を受けることは間違いない。秋に衆院を解散しようとすれば、秋に臨時国会を召集して、冒頭で解散することになる。6月17日に国会を延長せずに閉じ、秋も実質的な審議を行わないことになれば、国会軽視との批判も免れないだろう。

「理屈で言えば、常識的には秋の衆院選は、ない。しかし、消去法でいけば『秋』となるのだ」

自民党幹部の1人が耳打ちする。彼の理屈を聞いてみよう。

■公明党は来年7月の「東京都議選」を非常に重視している

衆院の任期満了は来年10月。それまでに、必ず衆院選が行われる。そのタイミングは、①今秋(秋の臨時国会冒頭解散)、②年末から年明け(通常国会冒頭解散)、③来春から初夏の解散(2021年度予算成立後の解散)、④任期満了の解散――の4択となる。

「今秋」以外の選択肢をみてみよう。「年末から年明け」。冬の総選挙。政府・与党はこの選択肢を完全に消している。冬は新型コロナの第2波が押し寄せることが予想され、インフルエンザの流行もあいまって、医療崩壊の危機となる可能性がある。この時期に衆院解散を行うべきではないというのは衆目の一致するところなのだ。

次に「来春から初夏」。これには公明党が強く反対している。公明党は、7月に行われる東京都議選を非常に重視している。公明党は創価学会という巨大組織に支えられている。それを動かすには時間がかかる。だから都議選と衆院選の間には最低3カ月は期間を空けたい。だから「来春から初夏」には反対だ。連立のパートナーの意見を、自民党も無視はできないだろう。

そして「任期満了」。これはリスクが大きすぎる。過去の歴史をみても、任期満了もしくはそれに近い選挙は、政権与党が負けるパターンが多いのだ。そして何よりも重要なのは、任期満了前に安倍首相の自民党総裁任期が来る。安倍氏は、現段階では4選を目指す考えはないと強調している。と、いうことは任期満了の選挙は、新総裁(新首相)のもとで行われることになるが、もし敗北したら、新総裁は就任後、数十日で辞任するようなことになりかねない。そうすれば、政局は流動化してしまう。

■「冬」も「来春」も「任期満了」もない

もちろん安倍氏が4選を果たして任期満了の解散となることも否定できないが、今の安倍氏が党則を変更して4選を果たすという荒業を行うだけの求心力があるとは思いにくい。

そして、来年夏は1年延期された東京オリンピック・パラリンピックが開かれることになっている。予定通り開かれるか、それとも中止となるか、全く見通せない。そういう状況での解散は危険すぎる。

「冬」も「来春」も「任期満了」もない。そう考えると、先の自民党幹部の発言通り「消去法」で今秋の衆院選が浮上してくるのだ。

それでは、秋の選挙で自民党は勝つ見込みがあるのか。先に触れたように、内閣支持率は安倍氏は2012年末、首相に返り咲いて以来、最低レベルで推移している。その状態で自民党、公明党の獲得議席は減るのは避けられない。

しかし5日の東京都知事選は、自民党にとって衆院解散の誘惑にかられるデータがあった。都知事選は小池百合子氏が366万票以上を獲得して圧勝した。野党勢力は、2位の宇都宮健児氏を推した立憲民主、共産、社民、山本太郎氏が出馬したれいわ新選組、小野泰輔氏を推した日本維新の会に3分裂。野党勢力の1部は小池氏を支援していたから野党は4分裂していたという方が正確かもしれない。野党共闘が進まず、さらに都知事選で野党内の亀裂を深めてしまった。これは自民党にとっては好材料だ。

■都議補選では全選挙区で自民党が野党を抑えて勝利

さらに具体的なデータがある。5日には都知事選と同日で4つの選挙区で都議補選が行われたが、すべての選挙区で自民党の候補が野党候補を抑えて勝利した。都議補選は衆院の小選挙区と同じ定数1。そこで全勝したことは自民党にとっては自信につながる。都議補選4連勝が、衆院解散論のアクセル役となるかもしれない。安倍首相は7日の自民党役員会で、都知事選と都議補選の結果に触れ「勝利は大きな励みとなる」と語っている。「励み」とは、何を意味するののか。

つまり、安倍政権および自民党の現状だけをみると、秋の衆院選は自殺行為に見えるが、今後の政治日程や野党の現状を「消去法」で「相対的」に見ると、くっきりと現実味を帯びてくるのだ。

永田町では早くも「9月末に解散、10月25日に投票」という具体的な日程が語られ始めている。年内に安倍氏の手で衆院解散する場合は安倍氏の総裁4選論も浮上するため、並行して自民党内で権力闘争が始まる可能性もある。そして、新型コロナウイルスの感染者数の推移も解散戦略の行方を見えにくくしている。

それでも、3カ月前には誰も取り合わなかった「今秋衆院選」は十分可能性が出てきた。そのことは疑う者は永田町にはいなくなった。

(永田町コンフィデンシャル)

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