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就活も生涯賃金も「英語で得する・損する」これが境界線

プレジデントオンライン / 2020年7月9日 9時15分

英語力は年収を左右する重要な要素になりつつある。ある転職支援会社の調査では、年収1000万円の人のうち、約60%が英語上級者で、初級者は12%だった。プレジデントFamily編集部が、「英語ができないと損する」という実態を、人事と受験のプロに聞いた——。

※本稿は、『プレジデントFamily2020年夏号』の記事を再編集したものです。

■同じ職務スキルでも英語ができるだけで年収が3割上がるケースも

「年収は英語力の有無で大きく変わります。それだけ、英語を話せる人材への需要が高いということです」

そう語るのは、グローバル人材の転職・採用支援を行っているエンワールド・ジャパンの狐崎壮史氏だ。

「労働市場において、英語ができる人はできない人に比べてはるかに有利です。英語ができないと応募できない職種もありますし、同じ職務スキルでも英語ができるだけで年収が3割近く上がるケースもあります」

実際に英語と年収を裏付けるデータもあるそうだ。

「今年、当社サービス登録者1928人を対象に、英語と年収に関する調査を行いました。登録者の英語レベルを上級(流暢)、ビジネス、中級(日常会話レベル)、初級(挨拶レベル)に分け、年収を調査したところ、上級レベルの約60%が年収1000万円以上であるのに対し、初級レベルで年収1000万円以上の人は12%でした」

英語力によって、年収にここまで大きな差が出ている背景には、企業のグローバル化の進展がある。

「ここ20年ほどで企業の海外進出は、大きく進みました。以前は国際的な事業に携わるマネジメント層だけが英語ができればよいという状況だったのが、今や現場レベルの社員も海外の支社や工場とのやりとりなどで英語を使わざるを得ない状況になっています。企業が採用時にTOEICの点数を求めることも増えてきていますし、その点数次第では海外事業部に配属されないなど、働ける可能性のある部署が限定されてしまうというような例もあります」

こうした状況下で求められる英語力は、文章を読んだりメールを打ったりする力ではなく、ビジネスの交渉ができるハイレベルなコミュニケーション能力だと狐崎氏は言う。

「実際に前出の調査で“英語をどのようなシーンで使うか”を聞いたところ、上級・ビジネスレベルの層の6割以上が電話応対や社内会議で英語を使っていました。英語の上級・ビジネスレベルの層は、企業にとって直接海外との交渉や海外進出を任せることができる、貴重な人材です。そのため、高い給料を払っても獲得したいのです」

■くら寿司はTOEIC800点以上を条件に新卒で年収1000万円

日本企業がグローバル人材に高い給料を提示する動きは、新卒採用にも出てきている。

たとえば、2019年、回転寿司チェーン大手のくら寿司がグローバル展開のための人材として、TOEIC800点以上を条件に新卒で年収1000万円という金額を提示した。

また、ユニクロを展開するファーストリテイリングは、海外転勤ありのグローバルリーダー社員の初任給を21万円から25万5000円に引き上げ、幹部候補生については、入社3〜5年で年収1000万円以上に引き上げる意向を示している。

企業の国際展開に伴い、日本企業が優秀な外国人を採用することも、当たり前の光景となりつつある。たとえば、メルカリでは新卒エンジニアの9割が外国人で、本社には25カ国の人が働いている。また、10年から社内公用語を英語にした楽天は、社員の23%が外国人だ。

「外国人採用に積極的な企業では、社内でのコミュニケーションでも英語が必要になってきているため、英語の重要性は高まる一方です」

就職活動でも、英語がこんなに重要に

■「英語×技術」で年収3000万円以上も

「もう一つ、英語力によって年収が大きく左右されるようになった背景には、国際的な人材の獲得競争があります。近年顕著なのはIT技術者です。アメリカや中国の大手IT企業などが英語力と技術力を兼ね備えた優秀な人材を奪い合っています」

18年には中国のIT大手ファーウェイが、日本で初任給40万円を提示して採用を行ったことを皮切りに、NECやトヨタ自動車、NTTデータといった日本企業もIT技術者の採用を狙って、新卒社員の年収上限を1000万円まで引き上げるといった制度変更を行った。

「人工知能開発やビッグデータ分析などの専門技能がある人は、英語力があると、年収3000万円以上になることもあります」

今の小学生が社会に出るころには、こうした傾向は一層強まるようだ。

「今回のコロナショックで一時的な景気後退はあるかもしれませんが、ビジネスの国際化の流れは、止めることはできません。英語ができれば、活躍の場が広がり、収入も上がりますが、できなければ、高い収入を得るチャンスを逃してしまいます。ただ、英語ができればいいといっても、TOEICのスコアだけでは不十分。実際に外国人と英語で話す場数を踏み、仕事上でコミュニケーションを円滑に取れる語学力を育てる必要があります」

■意外と知られていない「英語1教科」で入れる難関大学リスト

「英語は大学受験でもっとも重要な科目です。文系理系ともに配点が高い傾向にあり、最近は入試制度の多様化で、英語1教科または英語を含む2教科で受験できる大学が増えています」

そう語るのは、英語教育に強い大学予備校、トフルゼミナールの加藤芳明氏だ。

「1教科入試は、英語以外にほとんどありません。英語力が高ければ、多様な選択肢があるといえます」

たとえば青山学院大学の文学部英米文学科、国際教養大学は英語1教科のみで受験可能。国際基督教大学は英語と総合教養科目で、慶應義塾大学総合政策学部・環境情報学部なら英語と小論文のみで受験できる。

「3教科型の私立大入試でも、英語ができる人に有利な制度が増えています。明治大学の経営学部はGTECやTOEFLなど英語の外部試験のスコアによって加点を受けられます。また、学習院大学国際社会科学部では、外部試験のスコアを個別試験の英語の得点に換算して合否を判定する制度があります。難関私立大の入試は、合否ラインの1点に多くの受験生が並ぶため、加点措置は非常に大きいですし、外部試験を得点換算する制度は、他教科の学習に時間を割けるので大きなアドバンテージです」

英語ができると、受験はこんなにお得

■時間をかけて英語の学習に取り組む必要がある

こうした背景には、大学が教育・研究力や国際性を高めるために、高い英語力を持った学生を求めていることがあるようだ。

「英語ができる人材は、研究の世界でも、就職面でも即戦力として活躍できます。そうした学生を獲得すべく、慶應義塾大学総合政策学部・環境情報学部や早稲田大学政治経済学部などには、4年間の授業を英語で行うコースがあります。海外の有名教授を招いて講義を行うなど、手厚いサポートが受けられます」

今後は大学入学共通テストでも英語の4技能試験(読む、聞く、話す、書く)が導入される予定で、入試での英語の重要性が増していくとみられる。

「今までの読解中心の試験なら短期間の暗記で乗り切れたかもしれませんが、4技能の習得には時間がかかるため、以前のような付け焼き刃の学習方法は通用しません。大学受験を見据えて、時間をかけて英語の学習に取り組む必要があります」

■準備次第で誰でもトップレベルに

大学受験で有利な英語力を身に付けるために、小学生時代と中高時代とで重視したいことは次の通りだ。

「小学生のうちは、音楽を聴いたり、学校で習った短いフレーズをまねしたりして、聞く力、話す力の下地をつくっておきましょう」

中学入学後は、4技能をまんべんなく育てていくのがよいそうだ。

「中学以降は文法と読解力が重要になってきます。特に難関大学を狙うのであれば、入試で出題される英文の内容も難しいため、まずは日本語の読書量を増やして、知識や教養を深めていく必要があります。英語学習は早期スタートが重要です。高2の終わりまでに4技能資格試験で入試に必要なスコアを取得するつもりで学習をしておけば、高3は4技能資格試験対策や他教科の学習に時間を割けます」

今や進学も就職も英語力が人生の勝敗を分ける。わが子の英語力を伸ばすために、家庭でできる身近な努力から始めてほしい。

(土居 雅美 イラストレーション=越井 隆)

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