橋下徹「公明党と密約してまでこだわりたかったこと」
プレジデントオンライン / 2020年7月15日 11時15分
■2011年11月、公明党はいったん「都構想」賛成へ態度を変えてくれたが……
公明党の大阪府本部が、7月11日、今年11月に予定されている大阪都構想の住民投票(2回目)に「圧倒的勝利を勝ち取れるように全力で取り組む」と発表した。
忘れもしない、2015年5月17日の住民投票(1回目)では、賛成69万4000票、反対70万5000票の僅差で都構想は否決された。11日の日本経済新聞(電子版)によると、公明党大阪府本部の土岐恭生幹事長は「『(今回は)僅差であってはいけない』と述べるとともに、『公明党が賛成の立場で議論に入ったことで、(制度案を)よりよいものにつくり変えた。自信を持って発信していく必要がある』と強調した」という。
いやー、ほんと感慨深いね。
公明党は自民党や共産党と組んで、僕が大阪都構想をぶち上げた2010年より、徹底してそれに反対してきた。
2011年11月の大阪府知事選挙・大阪市長選挙のW選挙。僕は、大阪都構想をメイン中のメインの公約に掲げて、大阪府知事を辞職して大阪市長候補に鞍替え出馬。僕のあとの府知事候補には、松井一郎現大阪市長が出馬。激しい選挙戦だったけど、大阪府知事選も大阪市長選も僕ら大阪維新の会が制した。
そこで公明党は大阪都構想に協力する姿勢に態度を変えてくれた。
公明党は選挙結果を尊重してくれる政党だ。まあ、ここは当時、翌2012年か2013年かに行われるだろう衆議院議員総選挙を見越しての政治取引があったんだけどね。
僕ら大阪維新の会は、公明党の国会議員が存在する関西6選挙区には候補者を立てない。その代わり公明党には大阪都構想に協力してもらう。バリバリの密約。
メディアや学者やコメンテーターのインテリたちが、これは裏取引だ! 府民・市民不在の密約だ! 大阪都構想の中身についてはどうでもいいのか! などとどんなに批判しようとも、これが政治の現実。
相手がどうしてもウンと言ってくれないことをウンと言わせるには、民主国家においては、最後は選挙の力を使うしかない。
(略)
維新と公明の蜜月によって、このまま大阪都構想の話がとんとん拍子に進むかと思いきや、そうは問屋が卸さない!!
2013年は、僕の政治手法に、世間からものすごい猛批判が起きたし、日本維新の会も内部のごたごたでうまくいかない。まあ政治なんて、世間からの支持と批判の繰り返しで、この波はほんと激しいよね。
大阪都構想についてもメディアは批判一色。
現在の大阪府・大阪市の体制と、新しい大阪都構想の体制を比べてみて、どちらがベターなのか、という比較優位の議論をせず、大阪都構想の問題点ばかりをあげつらう。他方、現在の大阪府・大阪市の体制の山ほどある問題点には完全に目をつぶったまま。
そりゃ、社会制度なんて100%完璧なものはないよ。問題点を指摘すれば、いくらでも出てくるもの。
ただそんな中、現状の制度と新しい制度とどちらがましなのか、を比べるのが政治の選択というものだ。その際、ましな方を選んだなら、それに引っ付いてくる問題点には目をつぶらなければならない。これが本来の政治選択なのに、メディアは新しい制度の大阪都構想の問題点だけをあげつらう。
(略)
そうなると有権者は、大阪都構想を問題だらけのマズイもののように感じてしまうよね。
(略)
こんな感じで、僕に対する支持率も下降するし、大阪都構想に対する市民の反対論も強くなってきた。
こういうときの公明党は凄い。世間の状況を的確に捉え、機を見るに敏、徐々にスーッと僕らから離れていくんだよね(笑)
(略)
■法定協議会で「勝つ」ための出直し市長選挙
そこで僕は2014年3月に、大阪市長を辞職して出直し市長選挙に打って出た。
このときの公約は「大阪都構想の案を協議している法定協議会に、建設的な協議をまったくせずに最初から最後まで反対しか言わない委員が多数存在するが、今後は建設的な協議ができる委員に入れ替える」というもの。
要するに、大阪都構想に反対する委員を、賛成する委員に入れ替えるというものだった。
(略)
まあ「ルールの盲点」を突くやり方だったんだけどね。
この委員の入れ替えは、僕が出直し市長選挙なんかやらなくても、議会のルール上、維新主導でやろうと思ったらできる。でも、それをそのままやったら、それこそ非民主的な独裁政治になってしまう。
だって少数の賛成派が、多数の反対派の委員を追い出して、賛成派に入れ替えるなんてことは、やっぱり民主主義に反するからね。非民主的な国でこんなことをやろうとすれば、必ず殺し合いをやって決することになるだろう。僕がやろうとしていることは、それに等しいことだ。
だからこそ、僕は大阪市長選挙で決することにした。まさに殺し合いに代わる選挙で。市長任期1年を残しての市長辞職、そして出直し選挙。
(略)
選挙結果は、僕が当選。
(略)
大阪維新の会は本会議においては過半数を制していないにもかかわらず、議会のルールと議会の慣例を駆使して、法定協議会の委員を賛成派多数の委員構成にすることに成功し、大阪都構想の案を完成させることができた。
ついに2014年7月、法定協議会は大阪都構想案を賛成多数で可決した。
■ついに住民投票実現へ! これが焼き鳥屋で交わした「戦いの誓い」
(略)
ここでいよいよ、橋下・大阪維新の会・大阪都構想は万事休すと言われた。そのときのメディアのコメンテーターたちの腹立つほど嬉しそうな顔!!!
(略)
そこに突如、衆議院の解散風が吹いてきた。2014年の年の瀬も押し詰まってきたころである。僕は松井さんと北浜にある焼き鳥屋で作戦会議を開いた。
(略)
「こうなったら、公明党ととことんケンカしましょう。このまま公明党にやられっぱなしのままなら死んでも死に切れません。とにかく公明党の国会議員を1人でも多く落としましょう。大阪都構想はここで終わりかもしれませんが、一生かけて公明党の国会議員を落としていきましょう」
僕は市長を辞め、松井さんは知事を辞め、公明党の国会議員の選挙区に立候補する決意を固めた。
僕と松井さんは、鳥皮をたらふく食べて、お酒も飲んで、かなり酔っ払った。松井さんは普段は焼酎を飲むが、この時にはワインを2人でかなり飲んで、2人フラフラの状態になった。
「戦いの誓い」とはこんなもんだ。
(略)
僕が、僕と松井さんが先頭に立って公明党の国会議員を落選させるというこのプランを街頭演説でぶちまけたら、大阪のメディアは大騒ぎになった。
さあ、公明党との大戦争だ!!
アドレナリン大全開となったときに、菅官房長官から松井さんに、電話が入った。
「公明党が協議したいと言っているんだけど」
(略)
(ここまでリード文を除き約2700字、メールマガジン全文は約1万100字です)
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.207(7月14日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【安倍政権「最後」の総選挙(2)】大構想実現へ――僕と松井さんが「戦いの誓い」を交わした夜》特集です。
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元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。
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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)
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