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近藤誠「コロナに過度な心配は不必要。免疫力アップに、医者・薬・サプリは要らぬ」

プレジデントオンライン / 2020年7月25日 11時15分

医師 近藤誠氏

新型コロナウイルスは感染する人としない人、症状が出る人と出ない人、がいることがわかっている。免疫システムを働かせ、対抗するにはどうすればいいのか。医師の近藤誠氏に対策法を語ってもらった。

■感染しても解熱剤は飲んではいけません

緊急事態宣言が解除されましたが、連日テレビなどのメディアではまだ新型コロナウイルス感染者数が報じられています。あんなものばかり見せられていたら、いつかは自分がかかるのではと不安になるのも無理はありません。

たしかに新型コロナウイルスは新しい感染症なので、多くの人は免疫がない。ですからどんなに注意していても、かかるときはかかります。いまは大丈夫でも、2020年の冬や21年にかかる可能性を否定しきれないのはたしかです。

とはいえ、それほど心配することはありません。今回流行している新型コロナウイルスは高齢者や基礎疾患がある場合は別ですが、ほとんどの人は感染しても症状が出ないか、出ても風邪程度で済むことがすでにデータで実証されているからです。毎年流行するインフルエンザと一緒で、感染した場合でも、たいていは数日でよくなる。大切なのは感染したときの正しい対処法を知ることと、いま自分自身が持っている免疫を下げないための準備をいかにするかです。

対処法で最も注意しなければいけないのは、熱が上がったときに解熱剤を飲んで無理やり熱を下げることです。熱が出ているということは免疫システムが活性化して、白血球がウイルスと必死に戦っている証拠。それなのに薬で熱を下げてしまったら、白血球の働きが弱まってウイルスが増殖し、その分回復が遅れることになります。

さらに怖いのが、サイトカインストーム(免疫暴走)です。ウイルスに感染すると免疫細胞がサイトカインというタンパク質を放出してウイルスを攻撃し、炎症を抑えようとします。ところが、戦いの最中に解熱剤で熱を下げてしまうと攻撃の手が緩むため、ウイルスが再び増え始める。そうすると免疫細胞はそれを感知して、さらに大量のサイトカインを出す。これがサイトカインストームです。サイトカインストームが起こると全身に炎症が生じ、コロナ肺炎では、肺の細胞が死滅しやすくなって重篤化します。だから、安易に薬で熱を下げてはいけないのです。

1918年から19年にかけて世界中で猛威を振るったスペイン風邪では、推計でおよそ5000万人が死亡しました。しかし、その死因の多くはウイルス感染そのものではなく、治療に使われた解熱剤のアスピリンの大量投与だったということが、アメリカの疫学調査で判明しています。現在でも日本ではインフルエンザ脳症で毎年多くの人が亡くなりますが、その本当の原因は薬害だと私は思っています。

ちなみに、欧米では風邪やインフルエンザで病院に行っても、薬を処方されることはありません。寝ていれば自然に治るとわかっているからです。高熱でつらいときは、扇風機や冷たいおしぼりなど物理的な手段で熱を下げてください。

■健康のためのダイエット それ、間違っています

新型コロナウイルスにかからないようにと厚生労働省が推奨する対策に、マスク、手洗い、うがいなどがあります。それらは実際、感染予防にどの程度有効なのでしょうか。正直に申し上げて、残念ながらどれもあまり効果は期待できません。新型コロナウイルスの直径は0.1マイクロメートル。これでは5マイクロメートル以上の粒子しか捕捉できないサージカルマスクはほぼ無力です。

手洗いでウイルスを落としても、何かに触った瞬間に新たなウイルスが付くので焼け石に水。うがいもほとんど無意味です。だから、ウイルスを遠ざけることに神経を使うより、感染しても軽く済み免疫システムがきちんと働くように日々の生活で「免疫を下げない」ことに意識を持っていったほうが賢明といえます。

そういう意味では、いちばんやめたほうがいいのがいわゆるダイエット。日本人の多くは、太っているよりもやせているほうが健康だと思い込んでいる節がありますが、それは大間違いです。ダイエットをはじめる理由として多いのは、肥満やメタボになりたくないというものです。しかし、本当に肥満はいけないことなのでしょうか。

■長生きしているのは、やせている人より小太り

厚生労働省が推奨する特定健康診査いわゆる「メタボ健診」では、肥満度を表す指数であるBMI値が25以上だと肥満と判定され、保健指導の対象となります。しかし、国立がん研究センターの調べによると、日本におけるBMIと総死亡率の関係では男性の総死亡率がいちばん低いのは25~27なのです。逆に、21未満だと総死亡率が極端に高くなっています。つまり、長生きしているのは、やせている人より小太りの人のほうなのです。

肥満指数・BMIと死亡リスクの関係(全死亡)

これはよく考えれば当たり前のことで、栄養状態がいいほうが細胞膜も血管も骨も丈夫に決まっています。反対にファッションモデルのようなやせ型の体形だと、脳の血管が切れやすくなるなど、結果的に短命にならざるをえない。だから、やせている人はいますぐ糖質制限などのダイエットと手を切り、きちんと食事をとって体重を増やすこと。このほうがマスクや手洗いよりも、よっぽど効果的な新型コロナウイルス対策だといえます。

なお、BMI値25以上が肥満というのは、日本肥満学会が定めた基準ですが、世界保健機関(WHO)の判定基準は、BMI30以上です。もちろん日本人でもBMI30以上のビヤ樽型の人は正真正銘の肥満ですから、長生きしたければBMIが30未満になるようダイエットに励んでください。

ダイエットの一環として取り組まれている運動も注意が必要です。運動不足は体調不良を招きますが、かといってやりすぎると逆効果。筋肉質で引き締まったスポーツマン体形はいかにも健康的で、ウイルスなどものともしないように見えますが、実は体脂肪が少なすぎると細胞膜やホルモンの原料が不足しがちなうえに、栄養の貯蔵もできないので、感染症やがんにかかりやすい。体育学部出身者はそれ以外の学部を出た人よりも6歳短命という、大妻女子大学の調査結果もあります。

トレーニングをする動物なんて人間だけです。つまり鍛えるというのは異常なことであって、なるべくやらないほうがいい。健康のためには1日30分、週に数度、速足をまじえながら散歩する程度で十分なのです。

近年ダイエットで取り組む人が多い、糖質制限も免疫システムを弱めます。米国シモンズ大学のチームが、13万人の食生活と健康状態を20年にわたって調査したところ、総カロリーの60%を糖質から摂っている人に比べ35%の人は、総死亡率が1.3倍以上高いということが証明されています。

この結果は理屈から考えても納得がいきます。食事から糖質が満足に摂取できないと、脳の活動に必要なブドウ糖が足りなくなるため、からだは脂肪やタンパク質を分解して糖をつくろうとする。そうするとその過程で有害なアンモニアが発生したり、血管壁に傷ができたときの修復が遅れたりといった、からだに不都合なことが起こるのです。太古の昔から人間の主要な栄養源は糖質だったということを忘れてはいけません。

近年流行している小麦使用製品の摂取を制限する「グルテンフリー」もおすすめしません。テニスのノバク・ジョコビッチ選手がこれで健康になったというので一気に火がついたようですが、彼はもともとグルテンを分解・消化する酵素が不足しているグルテン不耐症だったから効いたという話です。一般の人がグルテンフリー食にすると栄養が偏って心臓と血管の病気のリスクが高まるという警告が英国医師会誌『BMJ』にも掲載されています。

■サプリや健康食品で免疫機能は上がらない

新型コロナウイルスが感染拡大する以前からこの国では「これを食べれば免疫力が上がる」という特定の食品や、栄養素を含んだサプリメントがテレビや雑誌で紹介されると、ついその気になってスーパーやドラッグストアに走り出す人が多く見られました。私ならそういう人たちにこう声をかけます。「そんなことをして感染リスクを増やすのは愚の骨頂です。やめたほうがいいですよ」。

健康食品を利用する頻度

なぜなら、メディアがどう煽ろうが、免疫力を上げる食品やサプリなどないからです。からだにウイルスや細菌が入ってきて、はじめて免疫システムは機能します。普段の状態では働いていませんから、何かを食べて免疫が上がったかどうかなんてわかりようがない。データがないものを、さも効果があるように宣伝しているだけなのです。

ただし、免疫を落とすほうははっきりしています。サプリメントなどで特定の成分を過剰摂取することです。代表的なのがビタミンAの前駆物質であるβカロテン。いまより中国が貧しかった時代に、βカロテンを与える場合と与えない場合との比較実験を行ったら、与えたほうのがんが減った。それでβカロテンは免疫力を高めてがん治療にも効果があると話題になりました。ところが、その後フィンランドで3万人の喫煙男性を対象に同様の実験を行ったところ、βカロテンを与えたグループは肺がん発生率が18%増加し、総死亡率も8%増えたのです。人びとが豊かになった国では「過ぎたるは及ばざるがごとし」なのです。

これは必須アミノ酸やビタミンにも当てはまります。「健康食品やサプリメントをたくさんとれば健康になる」というのは幻想でしかなく、健康を害する可能性もあるのです。

健康意識の高い人のあいだで人気のある菜食生活も、逆効果です。食事が野菜中心だとタンパク質や脂質がどうしても不足する。そうすると筋肉量が減って体力が落ち、免疫力も弱くなって感染症にかかりやすくなる。現在のような新型コロナウイルスが流行しているときに、栄養不良でいるのは最も危険だと思ってください。

■私のおすすめする食材

そこで、最後に私のおすすめする食材を紹介しておきましょう。それは、卵と牛乳です。卵はそこからひよこが生まれるだけあって、栄養の宝庫。しかも、日本では衛生管理が行き届いているので生卵も安心して食べられます。しかも安い。牛乳も非常にバランスのいい完全栄養食です。70歳で毎日牛乳を飲む人はあまり飲まない人より10年後の生存率が高いという、東京都老人総合研究所の研究結果もあります。

卵に牛乳、それから肉や魚などのタンパク資源に野菜があれば、一日に必要な栄養素はすべてとれるので、それこそサプリなど必要ありません。

薬に頼ることなく、十分な栄養と睡眠、それから適度な運動、結局これがいま考えられる最も有効な感染症対策だということです。

牛乳の主要栄養素/卵の主要栄養素

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近藤 誠(こんどう・まこと)
1948年、東京都生まれ。73年慶應義塾大学医学部卒業。83年より同大学医学部放射線科講師。2014年に退職。著書『医者に殺されない47の心得』(アスコム)など。12年、第60回「菊池寛賞」受賞。

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(近藤 誠 構成=山口雅之 撮影=大沢尚芳)

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