「家庭学習で子供を賢くする方法」NY州弁護士&脳科学者の出した結論

プレジデントオンライン / 2020年7月15日 9時15分

信州大学特任准教授の山口真由さん(右)と、脳科学者の中野信子さん(左) - 撮影=榎本壯三

家庭学習で子供の能力を伸ばすにはどうすればいいのか。共に東京大学出身の中野信子さんと山口真由さんは「親自身が規則正しい生活を実践しながら、子供に『あなたはできる子よ』と刷り込んでいくのがいい」とアドバイスする——。

※本稿は、『プレジデントFamily2020年夏号』の記事を再編集したものです。

■まずは親が「規則正しい生活」を実践

——自宅で過ごす時間が長くなりましたが、子供たちが家庭でやるべきことは何でしょう?

【山口】いちばん大事なのは自律することだと思います。勉強、遊び、睡眠など自分で決めたスケジュールを淡々とこなしていく力を、長いおうち時間で身につけてほしいですね。

【中野】わたしも同感です。学校や塾では時間割が決められていますが、家では時間をどのように使うかは自分次第。だらだらとした時間ばかりにならないよう、生活リズムを整えましょう。

【山口】そのためには、まず親が規則正しい生活を送ることが大事ですね。テレワークが推奨されているので、自宅でお仕事をしている方も多いでしょう。親は机に向かって仕事をしている姿を子供に見せてほしい。周りの人がきちんと過ごしていると、子供も「自分もちゃんとやらなきゃ」と感じるものです。「勉強しなさい」としかるよりずっといい。

【中野】子供自身でスケジュールをつくるのが難しくて、親が導いてやる場合もあるでしょうね。注意してほしいのは、親の満足のために子供の予定を決めないこと。何時間も勉強している姿を見て安心することが目的になっていませんか(笑)。

【山口】そうそう。例えば勉強は午前中に済ませなさいと言われても、集中できる時間は人によって違います。みんなが朝型ではないんです。わたしは夜型で、母には「早く寝なさい」と言われていたけれど、布団をかぶってこっそり勉強していました(笑)。

【中野】実は8割の人は、朝型と夜型のどちらにも修正できるんです。ただし、朝型遺伝子を持った1割と夜型遺伝子を持った1割の子供は、ずっとそのまま。プロ野球でデイゲームとナイトゲームの成績を比較してみたとき、明らかな差のつく選手がいるのはそのせいなんですね。だから、朝型に修正できない子供はしょうがない。本人にとって勉強に集中できる時間が夜なのであれば、信頼してやりましょう。

【山口】スマートフォンやゲームで遊んでいるんじゃないかと、心配してしまう親の気持ちはわかるけどね。

【中野】うんうん、大人だって仕事をさぼるし(笑)。

【山口】本当にそう。ついつい、ネットでいらないことを検索しちゃう。休憩時間もユーチューブで動画を見たり……。ずっとデジタル機器に触れ続けることで、ものすごく疲れてしまうんです。だからわたしは、長い文章はプリントアウトしたものを読む、ネットに接続しない時間をつくる、仕事に集中したいときはスマホを遠ざけるなどの工夫をしています。デジタルネイティブ世代といわれるいまの子供たちにも、そんなプチ・デジタルデトックスをやってみてほしいです。

■ネットよりも読書時間を増やす

——長いおうち時間だからこそ、おすすめの過ごし方は何でしょう?

【山口】やはり読書です。わたし自身、本がとても好きな子供でした。

【中野】わたしも友達と遊ぶより、一人で本を読んでいるほうが好きでした。よく「子供が本を読もうとしない」という悩みを聞きますが、本好きになるかどうかは、親に本を読む習慣があるかどうかがとても大きいですね。子供に本を読んでほしければ、まずは親が本を読んでいる姿を見せることです。

【山口】わたしが本好きになったのは、幼い頃、母に絵本の読み聞かせをしてもらったおかげ。両親とも本好きで、休みの日は家族みんなが無言でそれぞれ好きな本を読む時間もあったくらい。

【中野】実は、そうした家庭って決して多くはないんですよね。そもそも、本を読む人って少ないんですよ。本は、どんなに売れても100万部の世界。ときどき数百万部が売れるベストセラーが生まれるけれど、それは普段本を読まない人が買っているからそうなるわけで。つねに本を読む人の数が100万人だとしたら、日本の人口の1%にも満たないんです。つまり、本を読む習慣のある人は、知識を身につけるうえでとても大きなアドバンテージを持てることになるんですよね。

【山口】本は読まないけれど、ネットに触れる時間が長いっていう人は結構いますよね。ネットは手軽だけど、枝葉ばかりでなかなか幹の部分を得られない。自分の好きな情報だけしか見ようとしないから。本を読む習慣が身についていない人は、読書を面倒だと感じるかもしれないけれど、読めば読むほど楽に、そして速く読めるようになるから、ぜひ読書習慣を身につけてほしいですね。

——子供が読む本の選び方について親に助言できることはありますか?

山口真由さん
山口真由さん(撮影=榎本壯三)

【山口】わたしは“放流”方式がおすすめ。図書館や書店に連れていって、自分で好きに選ばせればいいと思います。親が介入しないほうがいい。

【中野】そうですね。そして親は、自分が選ばないような本を、決して否定しないこと、子供から取り上げないこと。もちろん、多くの親が読ませたがる古今東西の名作は大事ですよ。名作といわれるだけの内容がそこにはありますから。けれど、ほかにもよい本がたくさんあるんです。読んだことのない親に、その良しあしは判断できません。

【山口】たとえば暴力表現のある本を読んだからといって、その子が暴力的になるわけではない。それは、自分自身を振り返ってみてもそう思います。むしろ、大人の読んでいる本を通じて、世の中の真実の一端を垣間見られました。わたしは、親の本棚の本を勝手に読んでいたんですが、父の好きなスパイ小説に夢中になりました。

【中野】善悪を理解できる年齢になったら、いろいろな表現に触れてみたほうがいい。きれいごとや建前にしばられない、自由な世界を本で知ってほしいですね。

【山口】だいたい、親や先生が薦める本ってなかなか読みたがらないでしょう。無理に親の読ませたい本を薦めるのは逆効果かもしれませんね。

■親の言葉が自己肯定感を育む

——ここまでのお話に共通するのは、生活習慣にしろ、読書にしろ、親は子供を管理しすぎないことが大切だということですね。

中野信子さん
中野信子さん(撮影=榎本壯三)

【中野】親は、自分自身の経験に照らし合わせて子供をコントロールしがちですが、親世代が子供だった30年前といまの時代はまったく違う。これからの30年は、さらに大きな変化があるでしょう。それなのに、親の価値観でレールを敷いてしまうと、子供の人生はめちゃくちゃになってしまうんじゃないかな。

【山口】子供があこがれる職業の上位にユーチューバーが入ってくる時代ですが、それを鼻で笑う親は間違っていますよ。だって時代が違うんですから。親が考えないといけないのは、自分の思い込みだけで判断せず、いつの時代にも不変なことを見極め、子供に伝えることではないでしょうか。

【中野】子供の夢や目標を、親が鼻で笑ったり否定したりするのは、絶対にだめですよね。

【山口】そうそう。それから、やっていないことを指摘するより、やったことを認めてやってほしい。たとえうまくやれていなくても「基本的に君はできる子だ」と刷り込み続けてほしい。

【中野】ああ、それはすごく大事! そうした親の言葉が、子供の自己肯定感を育みますからね。

——父親が自宅で過ごす時間も増えていますが、子供との関わり方で何かアドバイスはありますか?

【中野】父親は仕事を通じて、いろいろな人や社会の仕組みを知っていますよね。そうした中から、子供によい影響を与えそうな話をたくさん伝えてやってほしい。わたしが東大を目指すようになったのは、父に東大へ行くことを否定されなかったことが大きいんです。最高の環境でコスパよく勉強できるっていいな、と単純に思ったことをよく覚えています。大人しか教えてやれない経験や知識を子供に伝えてください。

【山口】子供の勉強を見てやるときは、結果だけではなく、プロセスを見守ってやってほしいですね。自分で決められたか、決めたことを守れたかを評価する。もしできていなかったとしても、その結果をすぐにしかるのではなく、まずは、どうしてできなかったのかを考えて。会社で業務を推進する力を家庭でも発揮してください。

■コロナ禍における子どもとの接し方はどうあるべきか

中野信子、山口真由『「超」勉強力』(プレジデント)
中野信子、山口真由『「超」勉強力』(プレジデント) お二人はいかにして、学ぶよろこびを知ったのか。どのように東京大学へと歩みを進めていったのか。そしていまなお、勉強し続ける理由とは?

——あらためて、子供と過ごす時間の増えた親へのメッセージは?

【山口】いつもと違う生活には、私自身、戸惑っています。親御さんはなおさらではないでしょうか。そういう自分を時には認めて、お子さんに素直に伝えてしまってもよいのでは? 「気分転換ができなくて、ちょっとイライラしちゃってたかも。言いすぎてたらごめんね」とか。いつも完全無欠な親ではいられないと、きちんと伝えておくことは、お子さんに対してとてもフェアで誠実な態度です。

【中野】親の人生と、子供の人生は別物です。最終的には、子供の人生は子供自身が責任を持つもので、親の責任ではありません。子供が助けを求めてきたときに受けとめる準備はしておいてほしいけれど、普段からあれこれ口を出さずに、どうかやさしく見守ってやってください。

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中野 信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者
1975年、東京都生まれ。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科修了、脳神経医学博士号取得。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。東日本国際大学教授、京都芸術大学客員教授。著書に『空気を読む脳』(講談社)など。

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山口 真由(やまぐち・まゆ)
信州大学特任准教授/法学博士・ニューヨーク州弁護士
1983年、北海道生まれ。東京大学法学部卒業後、財務省に入省。弁護士を経て、ハーバード・ロースクールに留学、2016年修了。帰国後、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に進み、2020年修了。著書に『思い通りに伝わるアウトプット術』(PHP研究所)など。

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(脳科学者、医学博士、認知科学者 中野 信子、信州大学特任准教授/法学博士・ニューヨーク州弁護士 山口 真由 構成=尾関友詩)

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