Go Toトラベルの予約は秋以降がいい「コロナ以外」の理由
プレジデントオンライン / 2020年7月15日 15時15分
■すでに予約済の旅行も対象
7月10日、赤羽一嘉国土交通大臣は会見で、「Go Toトラベル」キャンペーンを7月22日から開始すると電撃発表した。
※編集部註:7月16日夜、西村康稔経済再生担当大臣が、
「Go To トラベル」事業は、国内旅行代金の2分の1相当額が1人1泊あたり2万円、日帰り旅行は1万円を上限に支援され、そのうち7割(旅行代金の35%)は旅行代金から割引となり、3割(同15%)は地域共通クーポンとして支給される。1人の利用回数に制限はなく、何回でも何泊の旅行でも対象になる。
しかし発表では、地域共通クーポンについて「実施日は9月1日以降に別途お知らせする日」からとされ、少なくも8月末までの旅行に対する支援額は旅行代金の35%、宿泊旅行の場合1泊4万円以上の旅行購入に対しては1万4000円が支援額上限になる。申込みは大手旅行会社だけでなく、地域の中小旅行会社や宿泊施設に対する直接予約も可能で、修学旅行や職場旅行といった団体旅行も対象になる。
今回の発表では、すでに予約済の旅行も対象になることが明言された。7月1日に日本経済新聞が「制度の詳細発表の前に予約された旅行は補助の対象外とする方向であることが分かった」と報じ、ネット上のニュースに対するコメントでも、「もう予約したけど割引になるのか」という疑問が多かった。すでに予約済の旅行が対象から外れると、キャンペーン開始と同時にキャンセルと再予約が大量に発生することも予想されたため、このような対応になったと思われる。
「7月22日旅行開始分から」「当面は旅行代金の35%を支援」「すでに予約済の旅行も対象」という形で、とにかくキャンペーンが始まることが決まった。
■最大限にトクする活用法
「Go To トラベル」キャンペーンで最大限、お得になる活用法を考えてみる。まずは支援額の上限まで利用することだ。地域共通クーポンが始まるまでは1泊につき35%が割引されるので、1泊あたり4万円以上の旅行を申し込んだ場合1万4000円(日帰り旅行なら2万円以上の旅行代金に対して7000円)を上限として支援される。旅行代金が1泊4万円、日帰り2万円を超えても支援額はそれ以上増えない。
9月以降、地域共通クーポンが始まれば、それに加えて旅行代金の15%相当が現地で使えるクーポンとして返ってくる。1泊4万円以上の宿泊旅行に対しては、1万4000円の旅行代金割引に加えて6000円分の現地で使えるクーポンが支給されることになる。1泊4万円というと高級旅館でも泊まれなければ使えない、と思われそうだが、旅行代金に電車、飛行機、バスなど往復の交通費が含まれる場合はそれも対象になる。車での旅行でなければ、1泊4万円のパッケージツアーを申し込むのもよい。
宿泊施設に直接予約の場合、割引対象は「宿泊のみ」と観光庁の資料にはあるが、朝夕食や宿が宿泊プランとして一括して提供するサービスは対象になるかと想像される。宿泊予約と別途、個人で手配する電車やバス、レンタカー代や高速道路代などは、同じ旅行に関わる費用であっても、支援の対象にはならない。
1枚1000円単位で使える地域共通クーポンについては、これから土産物店、飲食店、観光施設、交通機関などの地域事業者から参加を募る。キャンペーンで申し込んだ旅行先でも、参加店舗以外では使えない。対象施設は店頭でのステッカー表示やウェブサイトでの一覧公開を予定している。地域のバス会社や遊覧船の運行会社などが参加した場合は、乗車料金に地域共通クーポンを使える。旅行前に行き先、具体的には対象となる目的地および隣接都道府県の利用可能事業者を予習していくといい。
■密を避けた上手な旅行先選び
「Go To トラベル」に先んじて、緊急時代宣言解除以降、域内旅行を対象とした旅行補助が各地方自治体により実施されてきた。北海道居住者を対象とした「どうみん割」は23億円を原資に第3弾まで募集され、各県や市が実施する旅行クーポンの多くが、初日の午前中に予算上限に達して終了するなど、人気コンサートのチケットのような人気ぶりだ。
「Go To トラベル」の事業予算は1兆3500億円、運営費を除いた原資も1兆1500億円以上とケタ違いのため、より多くの国民が制度を活用して旅行に出るだろう。日程や目的地によっては、とんでもない「密」に遭遇する可能性がある。キャンペーン詳細が発表された7月10日には、東京都内で過去最多の243人の新型コロナウイルス感染者が発表された。人々が望むのは、最小限の感染リスクで、最大限お得な旅をすることだろう。
そのためには、誰もが考えそうな旅行計画をしないことだ。土日祝日の3連休に2泊3日で8万円の北海道や沖縄ツアーに行く、有名観光地で1泊4万円の高級旅館に泊まる。このような旅行はそもそも競争率が高いが、運よく予約できて宿泊施設の中は衛生対策が万全でも、観光地や交通機関では通常のピーク期以上の混雑を覚悟しなくてはならない。人気の観光地に行くならオフピーク、平日に休みを取って行きたい。
■路線バスでしか行けないような温泉地が穴場
往々にして、東京や大阪から近場の観光地は、日帰りやマイカー族も気軽に来るので、混雑しやすい。首都圏からなら上越新幹線や北陸新幹線、山形新幹線や秋田新幹線などで日本海側の県に抜ける、あるいは在来線にバスを乗り継いで行くような遠方などが、混雑を避けるにはいいだろう。海を眺める露天風呂もいいが、内陸部の路線バスでしか行けないような温泉に泉質の優れた秘湯が多いとツウの間では知られている。
往復の電車で密を避けたければ、平日休んで金曜に出発し日曜午前には現地を出る、または土曜午後にゆっくり出掛けて月曜に戻るといい。2連泊にしても往復の交通費は1泊と同じだから、1泊追加分の宿泊費には多くの予算を使える。
■夏はあきらめるという選択も
本来、夏は国内旅行のピークシーズンだが、今年は秋まで旅行を控えるのも一つの選択だ。前述したようには「Go To トラベル」は、少なくとも8月いっぱいは旅行代金の35%が支援枠だ。すでに予約済の旅行も補助対象となるが、事務局に申請書、領収書、宿泊証明書、個人情報同意書を提出して、還付を申請しなくてはならない。7月10日発表された「Go To トラベル事業の概要」資料でも、上記の申請手続きについては「詳細は調整中であり、事務局の立上げ後に改めてお知らせする予定」などと、まだ詳細が決まっていない事項は多い。
7月27日以降は準備が整った事業者から順次、割引価格での旅行商品が販売されると書かれており、これに申し込めば煩雑な還付手続きは必要ない。キャンペーンが想定より早く始まったことで、各旅行会社は対応に追われている。JTBは7月10日、メールマガジンで「実施発表を受けて、ツアー案内の準備を進めております」、ウェブサイトでは「弊社独自のGo To Travel キャンペーンの開始時期などの詳細は、決まり次第掲載いたします」と暫定的な告知をした。
今後、各社のキャンペーンページも立ち上がるだろうが、次々出てくるキャンペーン対応商品の情報を入手するには、個人で運営しているような旅行お得情報のまとめサイトを見るといい。各旅行会社独自のクーポンや昨年のふっこう割などの情報を網羅してきた実績があるので、検索すればすぐ見つかるはずだ。県や市町村など自治体が独自に実施しているキャンペーンも一緒にチェックできる。
■9月以降は地域共通クーポンの参加事業者もそろう
学校が夏休み期間の家族旅行も、今年は春先の休校により夏休みが短いので、限られた期間に人が集中する。夏以降も、見頃が限られる紅葉の名所などでは、ロープウェイも今年は定員を削減して運行するとなると、早く行っても事前予約が必要だったり、整理券配布が終了していたりして諦めて帰ることになるかもしれない。
9月以降は地域共通クーポンの参加事業者もそろい、各旅行会社からお得感のあるキャンペーン商品も出てくるだろう。宿泊施設からも支援枠をフル活用しようと、練って考えられた充実の商品が増えるはずだ。
新型コロナウイルスによりインバウンド旅行者はほぼゼロとなり、観光事業者は数カ月間にわたり消失した売り上げをキャンペーンで取り戻したいと考えているだろう。「Go To トラベル」は旅行需要回復に時間がかかる想定の中、より高単価高付加価値の新商品を特別割引で新たな客層に提案できる絶好のマーケティング機会と考えるべきで、単に既存商品の期間限定お得セールに終わらせず、これを機に近隣住民から普段は海外旅行に行く日本人や日本在住外国人、さらにはその先の訪日外国人まで、幅広い層を惹きつける地域色の強い新サービス・新商品を意欲的に投入することが期待される。
■キャンペーンは来年春まで続く見通し
観光庁の「Go To トラベル事業の概要」では、「旅行需要の平準化に向けた取組」として秋冬春までキャンペーンを継続する旨を図示しており、企画競争の議事にも「特定の地域や時期などに旅行者が集中しないよう、満遍なく地域の観光消費の拡大につなげるための割引原資の執行の工夫が提案されている」とコメントされている。おそらく、キャンペーン開始後に申し込みが殺到して短期間に終了とならないよう、第2期、第3期などと分けて募集をするのではと思われる。
「Go To トラベル」に限ったことではないが、宿泊に往復交通が含まれる国内ツアーの場合、出発日の20日前からキャンセル料が発生する。宿泊のみの場合は各施設により異なるが、だいたい1週間以内だ。出発が近づいたら、取消料がかかる前に目的地や自身の周りなどの状況から、旅行に予定通り行けそうか確認したい。
出発当日に自身や同行者に発熱が見られる場合、旅行を中止せざるを得ないリスクもある。無理を押して出掛けても、空港ではサーモグラフィーで搭乗者の体温をチェックし、宿・ホテルや観光施設でも入場時に検温の上、発熱が認められれば宿泊や入場を断るという対応を多くの事業者が取るようになる。旅行開始前であれば当日でもキャンセルに対して旅行代金の一部は戻ってくる。旅行に行くべきか、今は行くべきではないか、個人の正しい最終判断が求められる。
■オーバーツーリズムに加わらない
昨年までは、有名観光地に外国人旅行者が押し寄せる「オーバーツーリズム」が社会問題になっていた。住民のみならず、当の外国人旅行者までが「せっかく日本に来たのに周りは外国人だらけ」と不満を漏らした。ニセコや野沢、白馬などのスキーリゾートが引き続きオーストラリア人に人気の一方、近年は東北の温泉地などそのほかのスキー場でも彼らの姿を見かけるようになった。日本旅行のリピーターになると、次は周りにオーストラリア人のいないスキー場に行きたいと、穴場を開拓する旅行者が増えている。
東洋文化研究者で『観光亡国論』(中公新書ラクレ)著者のアレックス・カー氏は、「全国体験観光オンラインシンポジウム」(地域ブランディング研究所主催)で、「新しい旅の哲学」という持論を語った。「自分も迷惑なオーバーツーリズムの一部になるような人気観光地は諦めて、自分が来ることが求められる、行くことが役に立つ目的地を選んで旅をする」という考え方だ。
レジ袋やストローを使わないといった環境への配慮と同じように、旅に関しても受け入れる観光地に混雑マネジメントを委ねるだけでなく、旅行者自身の選択でwithコロナ時代に安心な旅行を考えることが求められるだろう。
ここは、半額補助だからと張り切って人気観光地、人気ホテルの予約合戦に殺到するのではなく、他の日本人があまり気づいていない穴場を研究して、最終的に満室や満席にならないような、知る人ぞ知る旅行を見つけ出すほうが正解かもしれない。せっかくなら、これを機会に新しい旅のスタイルに挑戦してみる。初めての土地に足を伸ばして、どんな風景や体験が待っているか想像してみる。そのほうが、感染予防に配慮し密を避けるという時代のテーマに沿った旅行を、一人ひとりが安心して楽しめるのではないだろうか。
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インバウンド・メディア・プロデューサー
リクルート「ISIZEじゃらん(現じゃらんnet)」初代編集長、「じゃらんガイドブック」編集長、ぴあ「@ぴあ」編集長、ヤフー「Yahoo!ニュース」プロデューサーなどを経て、数百人の日本在住多国籍メンバーが日本旅行のアドバイスを投稿するサイト「DeepJapan」エグゼクティブ・ディレクター。日本在住外国人ライターを起用した公共および民間企業の多言語サイトの制作、訪日観光客の観光ガイド実務、インバウンド関連団体での活動などを通じて、外国人目線での訪日客マーケティングおよびプロモーションを支援している。
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(インバウンド・メディア・プロデューサー 萩本 良秀)
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