ユダヤ人が優秀なのは「今日は何を勉強した?」と聞かないからだ

プレジデントオンライン / 2020年7月20日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

子どもの個性を育てるには、どうすればいいか。ハワイと上海で塾を経営し、世界中の子供たちと触れ合ってきた船津徹氏は、「親の仕事は、子どもの知的好奇心を刺激し、自主的なやる気を引き出すこと。ユダヤ人の家庭では、子どもの『心の声』を重視することで自己肯定感を育てている」と説く――。

※本稿は、船津徹著『失敗に負けない「強い心」が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■ユダヤ人が優秀なリーダーを輩出できる理由

・ノーベル賞受賞者170人(全受賞者の20%)
・アイビーリーグ生の21%
・ケネディ・センター名誉賞受賞者の26%
・アカデミー賞受賞者の37%
・ピューリッツァー賞(ノンフィクション)受賞者の51%

これらは世界人口のわずか0.2%(1400万~1700万人ほど)と言われるユダヤ人の功績の一部です。学術研究、文学、政治、芸術、エンターテインメント、あらゆる分野でユダヤ人は優れた人材を多数輩出しています。さらに、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、グーグルのラリー・ペイジ、スターバックスのハワード・シュルツに代表される世界の大富豪の約35%がユダヤ人だそうです。

ユダヤ人がさまざまな分野で優秀なリーダーを輩出し続けている理由は、ユダヤ教の教えに基づく家庭教育にあります。繰り返される迫害の中を「流浪の民」として生き抜いてきたユダヤ人が大切にしてきたのは、人に盗まれることのない「知識/頭脳」、そして世代をつなぐ「子ども」です。

■ユダヤ人が大切にするほとんどは「自己肯定感」につながる

ユダヤ人は家庭教育において、次の5つを子どもに伝えると言います。

1)個性を大切にすること
2)自分の得意分野で優越するように努めること
3)全人格を向上させること
4)想像力を養うこと
5)生涯を通じて学ぶこと

これらは「自己肯定感を育てる」プロセスそのものです。子どもの個性を尊重し、「得意分野」を持たせることができれば、将来どんな道を目指そうとも、成功する確率が格段に高まるのです。

ユダヤ人は「世の中をよくするために勉強するんだ」と、子どもに学ぶことの目的を教え、高い志を持たせるそうです。そして、「学ぶのは楽しい」と実感させるために、家族全員で読書の時間を設けたり、家の外で社会体験をしたり、子どもの知的好奇心を刺激する子育てを実践しています。子どもの得意分野を見つけ、親がサポートしてあげると、子どもは自主的なやる気で物事に挑むようになるのです。

親から「勉強しなさい!」とうるさく言われて勉強するのと、自主的なやる気で勉強するのでは、成果がまるっきり違ってきます。親の仕事は、子どもに命令したり、子どもを叱りつけてコントロールすることではなく、子どもの知的好奇心を刺激し、自主的なやる気を引き出すことなのです。

■「与える」ではなく「引き出す」育て方

ユダヤ人の親は概して子どもの行動に寛容です。周りから見ると「しつけがなってない!」と思う場面があるかもしれません。しかし、子どもが自らの意思で行動しているのであれば、親はそれを止めることはしません(もちろん生命の安全や周囲への迷惑を確認してですが)。子どもは自主的な行動を通して、時には成功し、時には失敗し、試行錯誤を積み重ね、自分の情熱を見つけていくのです。

船津徹『失敗に負けない「強い心」が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方 』(KADOKAWA)
船津徹『失敗に負けない「強い心」が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方』(KADOKAWA)

ハリウッドの巨匠、スティーヴン・スピルバーグ監督は、子どもの頃、識字障害を抱えていたそうです(当時は認識されていませんでした)。勉強が苦手で、8ミリカメラに熱中していたスティーヴン少年を母親が叱ることはなかったと言います。母親は「あなたの悪いところは独創的すぎることね」と、その情熱を認め、温かく見守り続けてくれたそうです。

天才を生み出すユダヤ人は、「強制する」「与える」のではなく、子どもの好奇心や情熱を「引き出す」ことに注力しているのです。親が好奇心を刺激するような環境をつくり、子どもの情熱を見つけようと努力しているのです。そして、子どもの好奇心の芽が見つかったら、水を与え、栄養を与え、高いレベルに引き上げて「得意」にしてあげる。

これが実現できれば、子どもはその道で一流に育っていくことをユダヤ人は(長い歴史の経験から)知っているのです。

■「今日は何を勉強したの?」はダメな質問

ユダヤ人の子どもたちは、ユダヤ教の教典学習を通して、常識にとらわれず、物事を検証する思考方法を学びます。子どもがヘブライ聖書を読んでいると、教師は「何かおかしいところはないか?」と質問するそうです。普通、聖書は神聖なもので、疑ってかかるような対象ではないと思われがちですが、ユダヤ人は聖書さえも検証の対象になるのです。

学校から帰ってきた子どもに多くの親は「今日は何を勉強したの?」と聞きますが、ユダヤ人の親は「今日は何を質問したの?」と尋ねると言います。これは学校で先生の話をただ受け身的に聞いていればいいのでなく、子ども自身が自ら疑問を抱き、探求していく能動的な学習態度を育てるためです。わからないことがあったら質問することを習慣づけることで、学習の消化不良をなくすことができます。

■子どもでも「自分の考えを主張する」ことは大切

また、ユダヤ人家庭では子どもが学校で学んできたことを両親の前で講義する習慣があるそうです。確かに、人に教えることで、自分の考えがまとまり、学習内容をより深く理解することができますね。人に説明するためには知識と理解を深めなければなりません。だから学校の授業を受けるときは真剣そのもの。わからないことがあれば迷わず質問するという「よい習慣」が身につくわけです。

グーグル創業者のラリー・ペイジに代表されるように、ユニークな発想の逸材を輩出してきた背景には、以上のような「常識を疑う家庭教育」があったのです。

ユダヤ人は家族でよく討論をします。もちろん親の価値観を押しつけるためではなく、一つの物事について、人それぞれ、さまざまな考えがあることを教えるためです。子どもの頃から議論慣れさせることで、自分の考えを主張すること、自分の意見を曲げないことの大切さを身につけることができます。討論は理屈で相手を打ち負かすことが目的ではなく、物事をよりよくするための知的なゲームであり、楽しむものだということをユダヤ人は家庭で教えるのです。

■しつけの目的は「自分の心の声」を聞くこと

ユダヤ人はしつけをしないのかと言えば、そんなことはありません。ユダヤ人のしつけで特徴的なのは、子どもに「物事の善悪を考えさせる」ことです。子どもが「自分の心の声」に耳を傾けるように導くのです。親に怒られるから行動を抑制するのではなく、自分の心が「それはよくないことだ」と言っていないか、子ども自身の倫理観や道徳心に問いかけさせるのです。

ユダヤ教では、人間の心には「いい衝動」と「悪い衝動」の二つがあると考えています。だから子どもが悪い行動をするのは当たり前であり、悪い行動を経験させることによって自分を律したり、自分の衝動をコントロールすることを教えるのです。例えば、多くの子どもにとって、走ってはいけない場所で走り回るのは楽しいことです。でも人にぶつかってケガをさせたり、ものを壊したり、転んで痛い目に遭えば、「次は走るのをやめよう」と自制することを学びます。

■自分で決めた行動の結果から学ばせる

自分で決めて行った行動には結果がつきまとうことを、一つひとつの経験を通して教えていくのがユダヤ式のしつけです。「親から叱られるから」「先生から叱られるから」という理由で行動を抑制するのではなく、自分の心の声が「それはよくないことだ」と言っているから自制する。子どもに行動させて、自らの体験から「いい・悪い」を学ぶことを教えるのです。

ユダヤ人の子育ての根底にあるのは「子どもへの敬意」です。一方的に命令したり、威圧したり、親の価値観を押しつけたり、親の思い通りに子どもをコントロールしたりすることは一切ありません。子どもを一人前の独立した人格として尊重して扱う、人生の先輩である親が子どもを尊敬することで、子どもも親を信頼し、尊敬し、親の言葉に耳を傾けるようになるのです。

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船津 徹(ふなつ・とおる)
TLC for Kids 代表
明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て、幼児教育の権威である七田眞氏に師事し英語教材の制作などを行う。その後独立し、米ハワイ州に移住。2001 年、ホノルルにTLC for Kids を設立。英語力、コミュニケーション力、論理的思考力など、世界で活躍できる人材を育てるための独自の教育プログラムを開発する。著書に、『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)、『世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方』(大和書房)ほか。

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(TLC for Kids 代表 船津 徹)

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