Withコロナ時代でも「売れる商品」に共通する3つのニューノーマルとは
プレジデントオンライン / 2020年7月27日 17時15分
※本稿は、竹内謙礼『巣ごもり消費マーケティング「家から出ない人」に買ってもらう100の販促ワザ』(技術評論社)の一部を再編集したものです。
■「集客減」「景気低迷」「キャッシュ消滅」の3重苦
この3重苦にどのような準備をすればいいのか。それを理解するためには、もう少し状況を整理して、掘り下げて考える必要がある。
まず、やってはいけないことは、政府の掲げた「3密」に関わる売り方である。
密接:お店で人と人が近くで話してはいけない
密閉:風通しの悪いお店に行ってはいけない
ライブハウスで感染が発生したのは、この3つの条件が重なったからである。人がたくさん集まり、大きな声を出して飛沫を拡散し、風通しが悪いためにウイルスを蔓延させてしまったことが、多くの感染者を出す原因になってしまった。
「店に行くな」「人と話すな」「店内にたくさんの人を入れるな」となると、当然、家の中で過ごすしか方法はなくなる。オフィスも3密の環境になるので会社側はテレワークを推進することになり、なおさら人は表に出歩かなくなってしまった。
つまり、3密を守る売り方というのは、すべての経済行動が止まることを意味している。店舗や会社の環境そのものが感染リスクの高い場所となり、さらに人が表に出て行動しなくなるという2つの規制が生まれるため、ビジネスがまったく機能しなくなることが、新型コロナウイルスが経済を低迷させている最大の要因なのである。
■コロナ禍の巣ごもり消費 最大の難問は
これに加えて、「お金がない」「無駄遣いしたくない」というネガティブな消費マインドが、問題を深刻化させている。日本経済の先行きがわからなくなると、当然、消費者は無駄なお金を使わなくなる。給料が減額されたり、職を失ったりする人が増えれば、さらに消費は冷え込み、モノやサービスは売れなくなってしまう。
そして、ダメ押しとなるのが、企業や店舗に「お金がない」という問題である。売上を伸ばしたいが、営業時間の短縮や顧客離れで、投資するお金が手元にない。家賃や従業員の給料を支払うのがやっとで、売上を拡大していくための販促費がないのだ。非対面の接客を強化するためにネットビジネスを立ち上げたくても、ホームページをリニューアルする費用を捻出できないし、広告費を新たに投資するお金もない。投資金額ゼロで、この史上最大の経済危機を乗り越えなくてはいけないというのが、新型コロナウイルスの巣ごもり消費の最も大きな難問なのである。
■消費を急速に冷え込ませた3つの“足かせ”
新型コロナウイルスの巣ごもり消費は、3つの問題を抱えている。
2.景気の低迷による消費意欲の減退
3.売り手側に投資するお金がない
この3つの“足かせ”を理解しなければ、まちがった戦略に舵を切ってしまう。
たとえば、「3密」を回避するために非対面のネット通販を強化しても、贅沢品や高級品は消費マインドが低下しているため、やはり売りづらい。また、価格が比較されやすい型番商品などは、ネット通販を立ち上げても、すぐに価格競争に巻き込まれてしまい、実店舗で商売をすること以上に厳しい状況に追い込まれてしまう。
飲食店のテイクアウトでも同じことがいえる。ランチの時間帯にお客様が来なくなったからといって、店頭で1000円の弁当を販売しても、今の消費者心理を考えれば、容易に売れないことは明らかである。コンビニの300円の弁当よりも付加価値のあるものを提供しなくてはいけないし、SNSやブログなどを通じて1000円の弁当のよさが伝わる情報発信をしていかなければ、お客様に高いお金を払って買ってもらうことはできない。
この3つの足かせは、消費行動において致命的な問題といえる。お客様は店に来ないし、行ってはいけない。商品を売っても買ってくれないし、買ってもらうための投資もできない。打つ手がないも同然。武器を取り上げられて、丸裸で戦場に放り出されてしまったような状況である。
■一網打尽にされた“コト消費”
今まで経験してきたリーマンショックや東日本大震災の巣ごもり消費は、この3つの足かせのうち、「景気低迷」と「会社にキャッシュがない」の2つの影響しか受けなかった。この2つの足かせならば、お客様との接触機会を増やして商品の価値を理解してもらい、強引に財布の紐をこじあけることができた。事実、新型コロナウイルスの感染が広がる前、景気が低迷している中で売上を伸ばしてきたのは、お客様との接点を増やした“コト消費”という売り方だった。体験と空間を付加価値としてお客様に理解してもらい、ファン客を作って販売したコト消費は、日本の消費のけん引役として注目を集めていた。
しかし、今回の巣ごもり消費には、お客様と「会ってはいけない」という厳しい条件がつきまとう。コミュニケーションというお金のかからない武器が使えないことは、中小企業にとって致命的といえる。
今回の巣ごもり消費ではお客様と「会う」「話す」という強い武器が喪失し、接近戦ができなくなってしまった。今までお客様に体験でモノを売ってきたコト消費の売り方を一網打尽にされたことが、消費低迷に拍車をかけてしまったといえる。
■3つの足かせを逆説で考えると打開策が見えてくる
絶望的ともいえる状況だが、先述した3つの足かせを真逆に考えると、新たな販促手法が浮かび上がってくる。
→「3密」をクリアした売り方を実践する
2.景気の低迷による消費意欲の減退
→低価格の商品を売る、もしくは高いお金を払ってでも悩みごとを解決する商品を売る
3.会社に投資するお金がない
→お金をかけない販促を仕掛ける
現在の厳しい巣ごもり消費の中で売れているものは、じつは、この3つの条件をクリアしたものばかりである。
■Withコロナ時代に有効なビジネスモデルを考えよう
たとえば、ネットショップでは、感染リスクのない非対面でマスクを売り、「マスクがない」という悩みを解決してくれる商品だからこそ、マスク不足の時は売上を伸ばしていた。お客様も自らマスクを探してくれるので、販促費をかけなくても売れてくれた。
スーパーの売上が好調なのも、「家で食事をしなくてはいけない」という悩みごとを解決しなくてはいけないからである。レジでお金を払う程度の距離感なので、3密はクリアした売り場でもある。お客様が勝手に買い物に来てくれるので、新聞折り込みチラシを入れなくても売上は伸び続けてくれる。
もちろん、マスクやスーパーは、巣ごもり消費において最も需要が高いものであり、売れてあたりまえというところもある。しかし、現状のビジネスモデルを、3密をクリアした売り方に切り替えて、悩みごと解決型の商品やサービスとして販売すれば、売上が回復する可能性は十分ある。それに加えて、お金をかけずに売れる仕組みを作り出すことができれば、少ない投資で来店客や見込み客を増やすことも可能といえる。
販促としては厳しい状況であることは変わりないが、この3つの足かせをひっくり返して考えていくことが、新型コロナウイルスの巣ごもり消費に有効な販促術の根幹になっていくのである。
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有限会社いろは代表取締役
大企業、中小企業問わず、販促戦略立案、新規事業、起業アドバイスを行う経営コンサルタント。大学卒業後、雑誌編集者を経て観光牧場の企画広報に携わる。現在は雑誌や新聞に連載を持つ傍ら、全国の商工会議所や企業等でセミナー活動を行い、「タケウチ商売繁盛研究会」の主宰として、多くの経営者や起業家に対して低料金の会員制コンサルティング事業を積極的に行っている。著書に『売り上げがドカンとあがるキャッチコピーの作り方』(日本経済新聞社)、『御社のホームページがダメな理由』(中経出版)ほか多数。
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(有限会社いろは代表取締役 竹内 謙礼 写真=iStock.com)
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