最新アンケートで判明「運がいい人は、なぜ運がいいのか」

プレジデントオンライン / 2020年8月1日 11時15分

「自分は運がない」と嘆いている人が少なからずいる。実は、運のなさには意外な原因があるのだ。2003人を対象にした大調査から明らかになった、運が悪くなる原因やメカニズムを見ていく。

■7割弱を占める運がいい人

このほど「運がいい人」「運が悪い人」の生活・意識について、アンケート調査を実施。全国2003人が対象で、1244人から回答を得た。回答者の過半数が20~30代で、性別では女性が52.65%となった。年収については、平均値よりも実態に近い全世帯の所得の分布を見た場合の中央値423万円を含む、250万円以上~500万円未満の層が最も多かった。

特に注目されるのが自分の運勢について。年収とはあまり関係がなく全体的に「とても運がいい」「どちらかというと運がいい」と答えた人が多く、67.7%に達した。一方、宗教や信仰心について聞くと、無宗教と答えた人が7割弱いて、信仰心が「とても弱い」と答えた人は4割強だった。

「若い人は世界的に信仰心が弱いのですが、日本の場合、『特定の宗教を信じていない、教団に属していない=無宗教』と答えた可能性もあります」と、宗教学者の島田裕巳さんは指摘する。その一方で、6割超の人が「困ったときの神頼み」をしている。

では、次項から調査結果の詳細な分析を進めていくことにしよう。

■運が悪い人は信仰心が弱い

アンケート結果に基づいて、「運がいい」と思っている人と、「運が悪い」と思っている人を、おのおの「とても」と「どちらかというと」を合算して2派に分け、比較・分析してみたい。

まず、全体的な傾向としていえるのは、「運がいい派」のほうが、信心深い人が多いということ。信仰心の強さについて、「とても強い」「どちらかというと強い」と答えた割合は、「運が悪い派」の11.73%に対して、運がいい派が21.35%と、2倍近くになった。また、困ったときのお参りの頻度について、「まったく行かない」と答えた人が、運が悪い派には39.40%いたのに対して、運がいい派では26.93%にとどまる。

お参りに行く人の割合が高い
2割近くはお布施・寄進ゼロ円

お参りに「困りごとに関係なく定期的に行く」と答えた人も、運が悪い派には4.24%しかいなかったが、運がいい派には倍以上の9.13%。信仰している宗教については、運がいい派でも、運が悪い派でも仏教が約2割で最も多く、大きな違いはなかったが、「無宗教」と答えた人は、運が悪い派が73.57%を占めたのに対して、運がいい派は65.95%と少なめだった。

年間のお布施や寄進の金額についても尋ねたところ、お賽銭くらいしか出さないと見られる「1円~1000円未満」と答えた人が、運がいい派、運が悪い派とも約7割を占め、圧倒的多数だった。とはいえ、運がいい派のほうがお布施や寄進は多い傾向で、「10万円以上」と答えた人が、運がいい派では0.47%いたのに対して、運が悪い派では皆無という結果だった。反対に、年間のお布施や寄進は「0円」と答えた人は、運が悪い派では18.20%もいたのに対して、運がいい派では8.90%にとどまった。

会社での役職については、運がいい派も、運が悪い派も、約8割が「一般社員」だったが、運がいい派のほうが「社長」の割合はやや高い。また、年収については、運がいい派も、運が悪い派も、500万円未満が8割超を占めるが、500万円以上のクラスになると、運がいい派は15.78%と、運が悪い派の12.72%を少々上回る。1000万円以上も運がいい派は1.54%いた(運が悪い派は0.25%)。そうした結果から、運がいい派のほうが、社会的に成功しやすいようだ。

■成功し感謝するからお参りに足が向く

もっとも、「ニワトリが先か、卵が先か」と同じ論法で、社会的成功を収めているからこそ、「自分は運がいい」と思っているとも考えられる。しかし、精神科医でもある作家の樺沢紫苑さんは、「自分は運がいいと思うことが先です。信じる者が救われるものなのです。それが成功する人の共通点ともいえるでしょう」といい切る。

樺沢さんが注目するのは、運がいい派のポジティブ思考。「運がいいと思っている人は、何ごとにも積極的に、前向きに行動するようになり、チャンスも摑みやすいのです。それが結局、自らの運命を切り開くことになるわけです」と樺沢さんはいう。それに対して運が悪い派は、「どうせうまくいかないだろう」という諦めが行動を邪魔して、チャンスを逃しやすいというのだ。

たとえば、英国の心理学者であるリチャード・ワイズマン博士の研究によれば、運がいいと思っている人ほど、懸賞に当選しやすいという相関関係があることがわかった。しかし、懸賞に当選しやすいから、運がいいのではなく、実は、運がいいと思っているとより多くの懸賞に応募するため、当選する確率もアップするのだという。

ところで、運がいい派が成功しやすいとすれば、運がいい派は信仰心も強いわけだから、「信心深い人=成功しやすい人」という構図も成り立つのではないか? 樺沢さんは「信仰心の強さは、社会的成功の確率と比例すると考えていいでしょう」と断定する。

「信心深い人とは、周囲への感謝の念が強い人だといえます。信心深い人が寺社仏閣に足しげく参詣するのは、苦しいから神頼みをしているのではなく、日頃の神仏の恵みに感謝するのが目的なのです。そういう人は、自分の力を過信したりせず、周りの力もあって、自分は生かされているのだと考えます。したがって、周りのステークホルダーからサポートを受けやすくなり、成功する可能性が高まるというわけです」(樺沢さん)

島田さんは、「一流の経営者にも、信仰心の強い人が少なくありません」と強調する。その代表格が、パナソニックグループの創業者である松下幸之助氏。東京・浅草寺に雷門の大提灯を寄進したほか、全国各地にある工場には「龍王」を祭っていることがよく知られている。

「人間の力には限りがあり、どんなに優秀な経営者も、万能ではありません。一流の経営者は、それを知り尽くしているからこそ、人知を超えた存在に拠りどころを求め、精神的な安らぎを得る。とりわけ、逆境に立ったとき、信仰心の強い経営者には、ブレない強さがあります。それゆえ、成功しやすいのでしょう」と島田さんはいう。

■運が悪い人の元には運が悪い人が集まる

運がいいという人と運が悪いという人には、日頃の「心がけ」にどんな違いがあるのだろうか? 

困ったときにお参りをするかどうかでは、運がいいという人ほど、頻度が高くなる傾向にある。「必ず行く」と答えた人は、「とても運がいい」という人では6.48%だったものの、「とても運が悪い」という人では皆無だった。一方で、お参りに「困りごとに関係なく定期的に行く」と答えた人も、前者では14.81%いたのだが、後者では1.79%しかいなかった。

年間のお布施や寄進も、運がいいという人ほど金額が上がる。1000円以上のクラスではそれが顕著で、前者では21.30%いたのだが、後者では10.72%とほぼ半減。つまり、運がいい人ほど、信心深いというわけだ。

樺沢さんは、「運がいいと思っている人は、他者貢献の心理が働きやすく、それが、お布施や寄進の金額にも、反映されるのでしょう」と説明する。運がいいということを、「神仏やご先祖、周りの人たちのおかげ」と考え、自分の幸福を、社会にも還元しようとするというのだ。そして、島田さんも次のような見方を示す。

「お布施や寄進をするのは、成功者が自分への嫉妬を逸らしたり、名誉欲を満たしたりする狙いもありますが、仏教で『喜捨』というように、世俗の富を手放すことが幸福につながるという思想も、根底にはあるのです」

運気を高める心がけでは、運がいいという人も悪いという人も、「職場での人間関係」を重視している。ところが、「家族との人間関係」については、「とても運がいい」という人と「とても運が悪い」という人で、差が開いた。

「夫婦」または「子供や両親」との関係をよくしていくと答えた人は、「とても運がいい」人には合計74人いたが、「とても運が悪い」人では8人。運がいい人は身近な人を含めて満遍なく気遣いをしているともいえる。それから、「見るからに運の悪そうな人とは付き合わない」と答えた人が、前者では18人いたのに対して、後者では1人しかいなかったことに樺沢さんは関心を示す。

人間関係を大切にする運がいい人

「心理学で『同属性の法則』と呼びますが、類は友を呼ぶということなんですね。心がけのいい人にはいい人が、悪い人には悪い人が、周りに集まってきます。たとえば、社員を低賃金でこき使うような悪徳経営者は、悪い部下に会社のお金を持ち逃げされたりしやすいわけです」と樺沢さんは説明する。

■悩まず切り換え早い運がいい人

信仰する宗教や信仰心の強さによって、人生観や世界観は変わるのか? 信仰心の強い人と弱い人の自分の運命に関する考え方を分析してみた。

まず信じている宗教によって、信仰心の強さが違うのかどうかを調べた(新宗教については絶対数が極端に少なく対象外とする)。その結果、キリスト教の信者は、ほかの宗教の信者や信仰する宗教がない人に比べて、信仰心が篤いことがわかる。信仰心が「とても強い」と答えた人は、キリスト教では25.00%いたが、ほかの宗教や無宗教では6%に満たなかった。

お参りに「困りごとに関係なく定期的に行く」と答えた人も、キリスト教では13.89%であったが、ほかの宗教や無宗教では12%未満にとどまった。年間のお布施や寄進の金額も、キリスト教は多めで、「10万円以上」寄付した人が5.56%いた。

一方で、信仰心の強さによる生活や意識の違いも調べた。「とても強い」という人は、困ったときのお参りの頻度で、ほかの人とは際立った違いが見られ、26.67%が「必ず行く」、23.33%が「困りごとに関係なく定期的に行く」と答えている。新型コロナウイルスの感染拡大といった「パンデミックや戦争の原因」については、信仰心が強い人ほど「科学で説明できる理由だけである」と回答する割合が減った。また、病気などの不幸の原因については、信仰心が強い人ほど、「避けられない運命」と考えている割合が増えた。

運が悪い人は原因究明にやきもき

前述のように、信仰心の強さと人生での成功のしやすさには相関関係があるわけだが、信仰心の強い人が運命を従容として受け入れやすいことは、成功と関係するのだろうか? 島田さんは次のように分析する。

「国学者の本居宣長は、幸せも、不幸せも善神と悪神の仕業だと考えました。不幸は、悪神の仕業なのでしかたがない。それを受け入れるしかない。つまり、不幸は、誰のせいでもない不可抗力だから、悩んでも仕方がないというわけです。信仰心の強い人は、禊やお祓いをきっかけに気持ちを切り換えられるので、立ち直りも早いのでしょう」

キリスト教の「懺悔」、仏教の「悔過」のように、前非を反省し、穢れを浄化する行為も、精神をリフレッシュし、プラス思考に転換する効果があるのかもしれない。反対に「無神論者」は呪わしい運命を神様のせいにできず、合理的な原因や解決策を求めて延々と悩み続け、挙げ句の果てに自ら不運を招いてしまうと考えると合点がいく。

■成功者の本でいい運にあやかる

アンケートでは、愛読書についても調査した。とりわけ、運がいい派の人が好む本で目立ったのが上にあるもので、自己啓発本や名著、ベストセラーが並んだ。樺沢さんは、「運がいいという人は、ポジティブで、成長したいという意識が高いのでしょう。勉強熱心で、社会の動きに敏感なこともうかがえますね」と分析する。

ベストセラー好きで勉強熱心な運のいい人

ここに挙げられた本のなかで、『人を動かす』や『道は開ける』『完訳 7つの習慣』は、自己啓発本のロングセラーとして世界的にも有名で、「座右の書」としているビジネスパーソンも少なくない。『夢をかなえるゾウ』や『改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん』も自己啓発本でベストセラーになった。

アドラー心理学を解説した『嫌われる勇気』、養老孟司・東大名誉教授の『バカの壁』もベストセラーで、教養書ともいえるが、自己啓発本としての側面もある。『決定版 菜根譚』は、処世訓の古典として名高い中国・明代の随筆集の解説書で、これも自己啓発本の一種といえるだろう。

小説では、とりわけ、ビジネスパーソンに人気が高く、ベストセラーにもなった『下町ロケット』が、運がいい派の人たちに好んで読まれている。

そうしたなかで気になるのが『聖書』だ。運がいい派は信仰心が強い人が多いからかもしれないが、島田さんは「日本では明治以来、西洋文化を学んだ上流・知識階級に、キリスト教が広まったのです。たとえば現在でも、医師や看護師には信者が多い。聖書は成功者の“人生のバイブル”もしれません」と説明する。

パナソニックグループの創業者である松下幸之助氏の随筆集『道をひらく』も愛読書にする人が多かった。同書もビジネスパーソンの愛読書として、必ずといっていいほど名が挙がる。上昇志向が強い人は、同じ立場の人同士が集まるという、前述の「同属性の法則」によって、「自分が目指す成功者の思想に触れたい」と考えるのかもしれない。「実は、そうした運がいい人にあやかるということが、重要なポイントなんです」と樺沢さんはいう。

「ある心理学の研究で、運が悪いという人に、運がいい人の行動パターンを真似てもらったところ、80%の人が運がよくなったと答えました。つまり、運がいい人は、たまたま幸運に恵まれたのではなく、本などを通して勝ちパターンを学び、それを実践して成功を引き寄せるから、結果的に運がいいと思うようになるのです」(樺沢さん)

■自己暗示で自分を奮い立たせる

正念場でどんな言葉を思い浮かべたり、唱えたりするのかも、アンケートで聞いてみた。その結果、宗教に関係する言葉と、気持ちがポジティブになる言葉が多いことがわかった。

無意識のうちに出てくる「神頼み」

宗教に関係する言葉では、「神様お助けください」「神様お願いします」といった、ストレートに神にすがる言葉のほか、日蓮宗などの「南無妙法蓮華経」、浄土真宗などの「南無阿弥陀仏」、曹洞宗などの「南無釈迦牟尼佛」といった、仏教の経文からきた言葉も目立つ。

また、「神様、仏様、ご先祖様」のような、日本ならではの神仏習合的な言葉もあった。なかには「御心のままに」「信じる者は救われる」のような、キリスト教由来と見られる言葉もある。「結果は神のみぞ知る」「人事を尽くして天命を待つ」なども、広い意味で宗教に関係した言葉といっていいだろう。

正念場で神仏にすがるということは、「自分でやれることはやった。あとは運を天に任せよう」という一種の割り切りで、前述の「運命は運命として受け入れる」という態度にも通じる。精神的な安定も、得やすいといえよう。島田さんは、「正念場で出てくる言葉というのは、無意識のうちに出てくる言葉です。宗教に関する言葉が多いのは、私たち日本人の生活に、神道や仏教といった宗教が、深く根づいている証左なのでしょう」と話す。

一方で、気持ちがポジティブになる言葉としては、「人間万事塞翁が馬」「笑う門には福来る」「明けない夜はない」のような、東西の故事やことわざがよく見られた。「自分を信じろ」「絶対できる」など、自分を奮い立たせるような言葉を挙げる人も多かった。

樺沢さんは、「言葉で自己暗示をかけるのは、精神を安定させ、マインドをリセットする、有効な方法の1つなんです」と説明する。さらに、「心理学では『アファメーション』といいますが、自己暗示で物事をうまく運びたいなら、肯定的な意味の言葉を選ばなければなりません」とも力説する。

「自分が発した言葉は、情動をつかさどる脳の奥の扁桃体という部位に影響を与えます。ポジティブな言葉なら、扁桃体もポジティブに反応して、感情が前向きになりますが、ネガティブな言葉なら、反対に感情が落ち込みます。ある心理学の研究では、『緊張する』と話した人は、『ワクワクする』と話した人よりも、テストの成績が10%も悪かったそうです」(樺沢さん)

心理学でも証明された「おまじないの言葉」の威力をぜひお試しあれ。

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島田裕巳

島田裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者

文筆家。1953年、東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。日本女子大学教授などを経て、現在は東京女子大学非常勤講師。『創価学会』『日本の10大新宗教』『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』など著書多数。

 

樺沢紫苑

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医

作家。1965年、東京都生まれ。91年札幌医科大学卒業。大学病院、総合病院などの勤務を経て、2004年から米国イリノイ大学に3年間留学。帰国後に樺沢心理学研究所を設立。『「苦しい」が「楽しい」に変わる本』など著書多数。

 

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(ジャーナリスト 野澤 正毅 写真=横溝浩孝 図版作成=大橋昭一)

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