韓国人留学生「日本人は日本が好きな外人を見つけて喜んでる」「学びが少ない」

プレジデントオンライン / 2020年7月23日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mustafahacalaki

■夢のために我慢して嫌いな日本に来る

「私も本音のところ、日本は好きではありません。でも国と私は別問題、仕事と夢のために我慢です」

かつての韓国人留学生、ユンさん。韓国の準難関大学を卒業後、母国の専門学校を経て日本の大学へ。数年前から都内のIT系ベンチャーに勤めている。ユンさんには夢がある。そのために日本で我慢している。夢とは何だろう。

「アメリカの大学院に進むことです。世界的な企業はもちろんですが、韓国の財閥大手に入れれば最高ですね」

なるほど、ここでもアメリカだ。私が以前コロナ禍の新宿を取材中に知り合った韓国人留学生も成績が良ければアメリカに行くと言っていた。それかフランスやイギリスなどのヨーロッパ先進国、日本組は残念賞と。

「それに、韓国の財閥に入社すれば親も喜びます。一族の誇りです」

ユンさんによれば、親を喜ばすことは最高の孝行であり、それは何にも勝るという。ユンさんの親との信頼関係と育ちの良さがうかがえるが、韓国ではそれが普通だという。大手財閥企業に入りでもしたら一族郎党でお祝い、末代まで語り継がれるとは大げさなようで事実。憧れの韓国大財閥の求人はごくわずか、それもSKY(ソウル大、高麗大、延世大)をしのぐコネ組にも勝たなければならない。そのための留学、これもまた韓国のリアルだ。

■本当の「負け犬」は留学すらできない

「韓国にもそんな価値観はやめるべきだなんて人たちがいますけど、あきらめた人たちですね。あなたの記事には『負け犬』とありましたが、本当の負け犬は留学すらできずに安い給料のままです。とくに田舎は悲惨ですね」

韓国語で負け犬は「チジリ」だと教えられた。スラングらしいが、なんだか底辺大学や専門学校に留学する韓国人も高卒や就職浪人で国内にくすぶっている韓国人もみんなチジリ、若者は負け犬だらけに聞こえる。地域格差も日本のそれとは比べ物にならない。

「たぶんそのコンビニの彼は地方の高卒じゃないですか? だから一緒にしてほしくないですね。私はもっと上です。もっと上を目指します」

韓国人エリートやそれを自負する人たちのプライドの高さと上昇志向は日本人に受け入れ難いほどに強烈だ。2000年代、私が仕事で付き合った韓国の商社の若者は、反日デモについて「反日で暴れているのは学歴の低い人たちです」「一緒にしないでください」と同じようなことを流暢な日本語でまくし立てた。「あいつら(デモの団体)はヤクザ」とも言っていたがその真意はわからない。その人だけかと思ったが、意外と韓国人は口にする。それほどまでの学歴社会、エリート絶対主義だ。

■留学生に優しいのは韓国人が要求したわけじゃない

しかし不思議なのは、あまりよく思われていない日本に留学して大丈夫なのかということだ。経歴に傷はつかないのか。素朴な疑問を問いかけると、それは大丈夫なのだという。日本人にはよくわからない考え方だ。

「そうですか? 気持ちと現実を分けるのが韓国人です。日本人は一緒にするから子どもっぽいです」

また新宿で出会った留学生の彼と同じようなことを言う。彼は「幼稚」と言っていた。たった2人とはいえ、この韓国人留学生と元留学生の日本人に対する印象としての一致性は興味深い。結局のところ、エリートも非エリートも変わらないような気がする。

「留学生に優しいのは日本の方針ですし、私たちが要求したわけではないですから。」

文部科学省がコロナ真っただ中に発表した「外国人留学生在籍状況調査」によれば、2019年5月1日時点で韓国人留学生は1万8338人と、中国の12万4436人、ベトナムの7万3389人に比べれば決して多くはないが増えている。日本への就職に関してはそれ以上だ。

文科省は政府目標の「留学生受入れ30万人計画」を達成したと意気込むが、肝心の中身はどうなのか。

■オタク文化はそんなに受け入れられてない

韓国人にとってはもはや「踏み台」「残念賞」扱いの日本、選ばなければ大学に入れてしまう日本、よく考えれば誰でも大学に入れて学位を取得、卒業できてしまう国というのもすごい。そんな日本に、それまでの留学生とは違う、ある意味で「普通」のやんちゃな若者までが学歴と仕事、そしてキャリアを求めて日本にやってくる。他国の留学生は日本に興味があったり好きだったりだが、韓国人留学生の場合そうとは限らない現実。仕方なく来るという韓国人留学生とどう共生して行けばいいのか。私は最後に韓国人にも日本のアニメが好きなオタクがいるから、そういう人は親日で日本に来ているのではと尋ねた。

「大きな勘違いです。韓国でオタクは最底辺ですし、そもそも少ない。ジブリとかポケモンは韓国でも有名です。eスポーツが強いのも国家戦略です。そういうのは韓国ではオタクじゃない。日本独特の萌えアニメとか、そういうのが好きなのは特殊でパオフと呼ばれます。韓国では居場所のない連中です。それに連中も日本が好きと日本のアニメキャラが好きなのは別ですから。日本人はそういう人を見つけて喜ぶことが好きですね、テレビもそんなのばかり」

パオフとはスラングで日本なら「キモオタ」だろうか。確かに、日本の文化が好きで日本に来る外国人を扱った番組が人気だったりする。そこではたまに日本の深夜アニメや萌えキャラが好きな外国人が登場するが、それは韓国に限らず特殊も特殊な人である。別にそういう外国人を大切にすることは悪いことではないが、まるで日本のオタク文化が受け入れられていると考えるのは短絡に過ぎるし、日本でも大多数に受け入れられているかと言えば否だろう。私としては、昔に比べれば市民権を得たほうだとは思っているが。

「学ぶところは少ないけど、仕事はあるのが日本です。政治的な話は別にして私も日本で働いています。大人ですから。アメリカ留学の資金を貯めるまでの辛抱です」

■日本はもはや「踏み台」「残念賞」にすぎない

ユンさんとはその後、互いに仕事上の愚痴とコロナの話題をひとしきりして別れた。ユンさんもまたごく普通の青年、真面目で努力家、趣味より勉強と自己啓発といった少し前の韓国人留学生のイメージそのままであった。「こちらも遠慮なく聞くし書くけどいいですか?」と断りを入れたが「そのほうがスッキリします」とのことだった。コロナ禍で鬱積したものもあるのだろう。

ユンさんは、日本は街中にハングルが溢れていて便利であること、日本人は親切で余計な波風は立てないこと、他国に比べれば韓国人にとって暮らしやすいことは認めていた。ユンさんに反日という印象はない、ただ日本を侮る意味での「侮日」ではあった。日本は踏み台にすぎなかった。

もう韓国人留学生を他の途上国の留学生と同じ扱いにすることは失礼なのかもしれない。とするなら、これからは当たり前の毅然(きぜん)とした対応と、言うべきことは言う姿勢が日本人に求められるのではないか。言い方は悪いが韓国の「下位層」までが就職難を背景に留学して来る現状で、「めざせ留学生30万人」という数値目標だけで満足している段階は終えている。対等な関係とは迎える側がへりくだることではない。日本に住む外国人というだけで弱者扱いする一部リベラルの姿勢こそむしろ差別的だ。外国人には優しく氷河期世代は自己責任、前者の若さのみが優先されている実態も、要らぬヘイトを生む要因となっている。

■「おもてなし」こそがアメリカのような分断を生む

また、定員割れの常態化した大学や短大、専門学校の存在も問題だ。日本人がほとんど入学しないために外国人で無理やり穴埋め、その結果ほぼ外国人留学生しかいない大学も存在する。試験すらない専門学校に至っては日本語のあやしい留学生ばかり。

「嫌いな国に来る留学生」という、韓国特有の留学事情と真っ向から対峙するには、この国はあまりにピュアで、その裏返しは彼らの言うとおりの「幼稚」なのかもしれない。ある意味、したたかで強い人たちだ。しかしこのコロナ禍、緊急事態の再宣言も取り沙汰される日本にそのような余裕はないし、お人好しも限界だ。

過度の特別扱いは「おもてなし」とは違う。分断とヘイトはこうした安易な受け入れ政策から生まれる。自民党の外国人労働者等特別委員会による外国人コンビニ店員の特定技能化と新たな在留資格の提言(2020年6月17日)もそうだが、留学生に対する若年労働力欲しさのあやまった「おもてなし」を続けるならば、政府の推し進める「留学生の移民化」は新たなレイシズムを生み、アメリカと同様の分断と悲劇の轍を踏むことになるだろう。

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日野 百草(ひの・ひゃくそう)
ノンフィクション作家/ルポライター
本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。ゲーム誌やアニメ誌のライター、編集人を経てフリーランス。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。2019年『ドキュメント しくじり世代』(第三書館)でノンフィクション作家としてデビュー。近刊『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)。

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(ノンフィクション作家/ルポライター 日野 百草)

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