「義実家へのオンライン帰省」を気軽にやってしまった妻の後悔
プレジデントオンライン / 2020年7月28日 9時15分
■「コロナ離婚」は回避できた夫婦でも…
いまだ新型コロナウイルス感染症の収束の見通しは立たないまま、世間は夏休みを迎えようとしている。例年の夏休みとは異なり、今年はコロナの影響で帰省をするか、先送りにするかを迷う夫婦も少なくない。
それぞれの家庭で新たな生活様式が定着しつつある今、「コロナ離婚」の第一波は回避できたものの、夏休みの帰省という課題が迫ってきたことにより、夫婦関係に再び波風が生じているケースも増えている。
コロナ禍での帰省をめぐり、夫婦関係に悩める妻たちからはこんな相談が寄せられている。
※登場人物のイニシャルと年齢は変えてあります
■「年一回の帰省」が夫婦の落とし所だった
【CASE1】帰省したい夫としたくない妻に新たな問題が紛糾
「夫の実家に帰省せずに済んでラッキーだと喜んだのもつかの間、新たな問題が出てきて、この先どうしようか本気で悩んでいます」と暗い表情で話すのは東京都在住のN香さん(39歳)。5歳年下の夫と結婚したのは12年前。当初から、ひとり暮らしをしている義母とN香さんはギクシャクした関係だったという。
「ひとり息子の夫には、『大学を卒業したら地元で就職させるつもりだった』と聞かされたのは私との結婚が決まってから。そもそも、“5歳も年上の嫁”という私の存在にも不満だったようです」
子どもができてからも、義母とN香さんのギクシャクした関係は続いたまま。N香さんの育った東京と比べ、親戚づきあいやしきたりの違いなどをめぐり、何度もぶつかってはそのたびに夫が仲裁に入ることの繰り返しだった。
それでも、夫は自分の母親に会える機会を楽しみにしている様子だったので、ここ数年は年に一度は家族全員で帰省することにしていたN香さん。年に一度の帰省のタイミングは年末年始だったという。「子どもが小学生になってからは、『塾や習い事がありますので』と夏休みの帰省はすべてパス。子どもたちにお年玉がもらえるお正月だけ、短い滞在日程で帰省していました」。
■帰省NGで急浮上した「同居話」
義母からN香さんのもとに電話があったのは先週のこと。「今年のお正月は来なくていいから。もちろん、夏休みもね」と。義母の住む小さな町は、住人のちょっとした変化でもうわさになりやすい地域。今のところコロナ感染者数も抑制できているため、万が一、N香さん一家が東京からウイルスを持ち込むようなことがあっては、「この町に住んでいられなくなる」とのこと。
事情を理解したN香さんは、帰省しないことを快諾。ところがその晩、帰宅した夫にその旨を報告したところ、「なんで、オレに黙ってそんな大事なことを決めるんだよ」と烈火のごとく怒りはじめたという。聞けば、夫はN香さんの想像以上に帰省することへの願望が強く、「この先何年も実家に帰れないなら、お母さんに東京に出てきてもらうから」と東京での同居話まで持ち出してきたのだった。N香さんいわく、「お義母さんとの同居は、どう考えてもうまくいくはずがありません。だったら、子どもたちをつれて私は実家に戻ろうかとさえ考えています」。
■夫婦の会話は決裂、もう話し合いすらできない
【CASE2】帰省より家族旅行を優先させたい妻
「夏休みの予定については夫婦の間でもめ続け、結局まだ結論は出ていないまま。でももう話し合うことすら気まずい状態です」と苦笑するA菜さん(43歳)夫婦には、中学生の子どもがひとりいる。毎年夏休みは決まって夫が運転する車で夫の実家に3人で帰省し、2~3日滞在していた。
「今年はコロナの影響で、子どもの夏休みが2週間しかありません。その間にいろいろ済ませておきたい用事もそれぞれあり、家族3人の時間が持てるのはせいぜい3~4日間くらい。そんな貴重な家族の夏休みだからこそ、今年は夫の帰省ではなく家族旅行に行きたいと思ったんです」と話すA菜さん。
ところが、夫の主張は「貴重な夏休みだからこそ、帰省すべき」というものだった。「『秋冬に第2波、第3波がやってくるなら、今会っておかないと、いつ会えるかわかならいじゃないか』としつこく言い募る夫に対し、私もキレて『じゃあ、ひとりで帰ったらいいじゃない。私は子どもと旅行に行くわ』と言い返してしまった」。
結局、夏休みの過ごし方についての夫婦の会話はそこで決裂したまま今にいたるとのこと。当の子どもはというと、「夏休みくらい、ゆっくり家でゲームしたい」と話しているといいます。
■鳴りやまない、義父からの「ビデオ電話」
【CASE3】「オンライン帰省」により夫婦関係が悪化
夫婦や親子の間で合意のもと「夏休みの帰省はしない」と決めたにもかかわらず、その後になってトラブルに発展するケースもある。
「テレビで見て知ったらしく、『帰ってくるのが難しいなら、オンライン帰省という方法ならどうだい?』と義父から電話がかかってきたのがはじまりでした」と話すY美さん(42歳)。その時は軽い調子で「それなら無料だし、夏休みじゃなくても、いつでもおしゃべりしたい時に気軽に話せていいんじゃないですか?」と返事をしたという。義父は、「無料」「いつでも話せる」というワードに喜び、興奮気味に電話を切ったとのこと。
その後、何日もたたないうちにY美さんは義父からLINEに招待された。拒む理由も見つからないまま、何度かメッセージをやりとりしたところ、今度はビデオ電話がかかってくるようになったという。Y美さんいわく、「義父は80代。去年、ガラケーからスマホに買い替えたことは聞いていましたが、まさかそこまで使いこなせるとは思っていなかったんです」。義父は、地元で開催しているスマホの使い方教室に出席し、LINEの活用法をマスターしていたのだった。
「無料だから使わないのはもったいない」「朝起きてすぐにおしゃべりができて楽しい」と言って、2日とあけずに早朝や昼休み、夕食の支度の時など構わずにビデオ電話をかけてくるようになった義父。はじめのうちは、Y美さんも我慢して長電話に付き合っていたものの、さすがにストレスになりはじめた。
そこで夫に「悪いとは思うけれど、いい加減、お義父さんにビデオ電話をかけてくるのを控えてもらえると助かる」とやんわり伝えたところ、夫からは「帰省もせず、電話にも出たくないほどオレの父親のことが煩わしいのかよ。冷たい女だな」と非難されたY美さん。「こんなことなら、たった数日我慢して帰省したほうがマシだったかもしれません」と嘆く。
■コロナ禍での「帰省トラブル」を避ける2つのポイント
妻にとって夫の実家への帰省は、相当なストレスがかかるイベントのひとつ。今年はコロナの影響で帰省しない夫婦や家族が増えることで、一見、妻にかかるストレスの原因も解消できたように思えるもの。ところが、「帰省をしない=夫の実家への気遣いをしなくていい」とは、妻側はとらえていないことが多い。たとえ帰省をしなくても、夫の実家に対して気兼ねする気持ちや帰省しないことへの罪悪感を抱いている妻も大勢いる。
コロナ禍での夏休みは誰にとっても初めての経験となる。正解がわからないなかでの選択は難しく感じられるかもしれないが、迷った時は「思いやりの気持ちを持って接すること」と「普段よりマメにコミュニケーションをとること」が大事なポイントになる。どちらも基本的なことではあるものの、相手の心の動きに敏感になることで不要なトラブルを招くことを避けられるなら、それに越したことはないからだ。
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夫婦問題研究家
NPO日本家族問題相談連盟理事長。株式会社カラットクラブ代表取締役立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。これまでに25年間、3万件以上の相談を受ける。『最新 離婚の準備・手続きと進め方のすべて』(日本文芸社)『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)『離婚カウンセラーになる方法』(ごきげんビジネス出版)など著書多数。
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(夫婦問題研究家 岡野 あつこ)
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