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尖閣諸島巡り立場が悪い中国・習近平…それでも国賓扱いする日本のバカさ

プレジデントオンライン / 2020年7月24日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/IgorSPb

■コロナ禍に乗じ対外戦略を進める習近平

中国・武漢で新型コロナウイルスの感染確認が相次ぎ、世界中を恐怖のどん底に陥れたのは今年初めだった。あれから半年が経ち、全世界の累計感染者数は約1400万人、死者数は約60万人にも達している。米国やインドなどの新規感染者数は過去最多を更新し、いまだ猛威は収まる気配を見せてはいない。その一方で、感染が収束傾向にある「震源地」の中国は、その反省も責任も感じていないばかりか、むしろコロナ禍を契機として自国に有利な対外戦略を進めているというから腹立たしい。南シナ海や沖縄県・尖閣諸島周辺で挑発を繰り返す姿はドラえもんの「ジャイアン」そのものだ。本性をあらわした中国になめられる前に日本がとるべき行動とは——。

「各国が新型コロナ対応に注力する中、周辺国から反発を招いている」

7月14日に閣議に報告された2020年版防衛白書は、コロナ禍を契機とした中国の動向について「自らに有利な国際秩序・地域秩序の形成や影響力の拡大を目指した国家間の競争を顕在化させ得る」と警戒感をあらわにした。「社会不安や混乱を契機とした偽情報の流布を含む宣伝工作なども行っていると指摘される」とも記載し、米人気ドラマ「24」もびっくりのメチャクチャぶりを発揮している中国への強い反発がうかがえる。

■接続水域を90日超連続航行、今年の領海侵入14回

それもそのはずで、中国公船は日本の領海のすぐ外側にある接続水域を90日超連続で航行。7月14日にも中国海警局の船が沖縄県石垣市の尖閣諸島・魚釣島沖の領海に侵入しており、領海侵入は今年だけで14回を数える。防衛白書で「一方的で現状変更の試みを執拗に継続している」と表現を強めたことに関連し、河野太郎防衛相は「防衛省、自衛隊として中国が何を意図しているのかをしっかりと見ていかなければならない」と強い懸念を示した。

世界中に恐怖を与えておきながら、それさえも契機に「俺のモノは俺のモノ、お前のモノも俺のモノ」という強引な戦略を進めるのだからタチが悪すぎる。中国外務省の報道官は今回の防衛白書について「偏見と虚偽情報に満ちて中国の脅威を煽り立てている」と反発したが、マニュアル化されているかのような訳の分からないギャグはあまりにも寒すぎる。パワーハラスメントもセクシャルハラスメントも加害者側はどのように相手側に映るか分からないまま行っているケースが見られるが、中国の言動を指摘するならば、残念ながらそれらが世界中から嫌われているのは間違いない。

■拡大する「対中包囲網」

歴史的にも国際法上も日本固有の領土であることが明らかな尖閣諸島のみならず、少数民族ウイグル族への弾圧やフィリピンやベトナムなどと海洋権益を争う「ジャイアン」には世界の厳しい視線が注がれている。

中国との関係悪化が続く米国のマイク・ポンぺオ国務長官は7月15日の記者会見で「米国は合法的な領有権や海洋権益の主張を中国から侵害されている世界中の全ての国々を支援する」と強く牽制。中国が香港の反政府的な動きを取り締まる国家安全維持法を施行したことに伴い、ドナルド・トランプ大統領は対中制裁を可能にする「香港自治法」に署名した。英国や豪州、カナダやニュージーランドも香港市民のピザの有効期間延長や輸出管理見直しなど対中包囲網に乗り出している。

米国が「人権を侵害する体制を支援している」と指摘する中国通信機器大手「ファーウェイ」などハイテク企業に対する一部社員の入国制限や英国のファーウェイ製品排除も、国際的包囲網の一環だ。「国交樹立以来、米中関係は最も深刻な危機に直面している」。中国の王毅外相は今さら気づいたフリをしているが、ちょっとで良いから足元を見た方が良いだろう。

■トランプ再選でも対中強硬は続かない

では、日本は今後どうすべきなのか。1つのポイントになるのは11月の米大統領選の結果だろう。米国のジョン・ボルトン前大統領補佐官は7月14日、日本経済新聞の電話インタビューに応じ、重要なことをさらりと言っている。仮にトランプ氏が再選を勝ち取った場合でも「対中強硬姿勢が続くか分からない」というのだ。

トランプ政権は経済や貿易を通じて対中関係を見ており、安全保障に関わる「経済以外の課題を考慮するのが困難だった。議論することすらできなかった」と語っている。つまりは、対中包囲網がどこまでのレベルで継続されるか分からないということではないか。

もう1人の米大統領候補、ジョセフ・バイデン元副大統領はどうか。バラク・オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏は、外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の2020年3月号の論文の中で「私は大統領として、アメリカの民主主義と同盟関係を刷新し、その経済的未来を守り、もう一度、アメリカが主導する世界を再現していく」と勇ましい。

トランプ大統領就任後、米国の世界におけるクレディビリティ(信頼性)と影響力が低下しているとしたうえで「中国その他の国との未来を賭けた闘いに勝利するために、技術革新を進め、問題のある経済プラクティスに対抗し、格差をなくしていくために、世界の民主国家の能力を統合しなければならない」「北京の指導者との交渉を重ねてきた私は、われわれが中国の何に対して反対しているかをわきまえている」とつづっている。

ただ、課題対処に最も効果的な方法として同盟国やパートナーとの共同戦線をまとめることを挙げているが、オバマ政権は南シナ海で中国が岩礁などを軍事拠点化したことを見逃しただけに、バイデン氏の発言は一歩引いて見た方が良い。

■事なかれ主義で脆弱な日本

言うまでもなく、尖閣諸島をめぐる米国務省の見解は「日本の施政下にあり、日米安全保障条約が適用される」というもので、米国の防衛義務を定めた同条約第5条が適用される立場は変わりない。アジアにおける米国の関与は誰が次期大統領になろうが、レベルの差やスピードが異なるにしてもあり続けるだろう。だが、安保条約発効から60年を迎えた今日、国益や国民を守る「一人前の国家」として、日本の役割を見直さなくても良いのだろうか。

中国から数千発のミサイルが日本に向けられ、北朝鮮が核・ミサイル開発を進めても「遺憾砲」を繰り返すだけの事なかれ主義は、さすがにもう飽きた。注目された地上配備型迎撃ミサイル「イージスアショア」の導入撤回は理由があるにせよ、人権問題を抱える中国の習近平国家主席をコロナ禍の今もなお国賓として来日させようとしているなんて、あまりにもバカげている。超大国となった中国と向き合う世界のリーダーたちの姿を見ていると、米軍という「盾」に守られてさえいれば良いという日本の脆弱性と「自分の足で立つ」ことの重要性を感じてしまう。

■「敵基地攻撃能力」確保を避けて通るべきではない

日本が「一人前の国家」として、多様化する脅威に対応していくつもりならば、中国という「ジャイアン」を恐れることなく、自前の抑止力を向上させることは欠かせないことだろう。そのためには近く政府内で議論を始める安全保障政策の見直し作業において、相手のミサイル基地などを攻撃する「敵基地攻撃能力」確保を避けて通るべきではない。

中国や日本国内の一部野党は反発するが、敵基地攻撃能力の保有は1956年2月29日の衆議院内閣委員会で、鳩山一郎総理(代読)が「他に手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきもの」として、合憲との認識を示してきたものだ。

自らの国の抑止力を向上させつつ、尖閣周辺での日米合同演習を重ねて共同対処能力を高め、「本気で怒る時は日米でやりますよ」という姿勢をとれないようでは他国からなめられて当然だろう。すぐにでもできる海上保安庁の増強や中国公船による領海侵入事案の映像発信はどんどん進めていけば良い。

■「領土・領海・領空を守り抜く」姿勢

史上最長政権になった安倍晋三総理のレガシー(遺産)は、もはや憲法改正とはなりえない。それならば、せめて「一人前の国家」の根本となる新しい国のカタチをしっかりと築き上げていくべきだ。どこに、誰に遠慮する必要はない。政権奪還を果たした時に見せたように「領土・領海・領空を守り抜く」姿勢を再び持ってもらいたい。後世の国民が評価する宰相となるためには、決して中国にビビることなく、その核心的利益を「ぶっこわーす!」という気概を持つ必要がある。

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麹町 文子(こうじまち・あやこ)
政経ジャーナリスト
1987年岩手県生まれ。早稲田大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーランスとして独立。プレジデントオンライン(プレジデント社)、現代ビジネス(講談社)などに寄稿。婚活中。

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(政経ジャーナリスト 麹町 文子)

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