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「ドルの価値は50年で50分の1」に…なぜコロナ禍で専業主婦は金投資で儲けたか

プレジデントオンライン / 2020年8月2日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JONGHO SHIN

■金の価格はじわじわと上昇している

「倍返ししてやりましたよ!」

そう得意げに叫ぶ専業主婦のA子さんは、2020年3月、ニューヨーク証券取引所でサーキットブレーカーが発動したのを受け、一般企業の株式で資産を持つことに不安を感じた。そこで友人のすすめで一部の資産を金の投資信託に移すことにし、当時1株5000円ほどだった純金ETF(上場投資信託)を20株(10万円)購入した。

その後20年4月に入り、株価が上昇しているのを見て55株ほど買い増しした。20年7月上旬現在も保有し続けているが、今の儲けは5万円以上。今後、さらなる買い増しを検討している。

「20年4月の段階では儲けがおよそ5000円程度だったのが、20年7月時点では5万円以上に。10倍返しですよ!」(A子さん)

実は、4年ほど前から金の価格はじわじわと上昇している。2016年に1グラム=4000円台だった金が、20年6月26日には1グラム=6715円にまで上がり、40年ぶりに歴代最高値を更新した。

今にわかに注目が集まっている金だが、そもそも金投資にはどのような特徴があるのか。

FXや株と比べて金はあまりメジャーな投資ではない。というのも、金はあくまで「守りの資産」であり、儲けを出す目的で購入するものではないからだ。

預貯金の利子や株式の配当のようなインカムゲインがなく、さらに元本保証もないため金価格が下がれば元本割れする可能性もある。金で収益を上げようと思ったら、相場が安いときに買い高いときに売却するという地道な方法しかないのだ。

金の延べ棒など現物で購入する場合は保管場所を用意しなくてはならなかったり、購入や売却の際に手数料がかかったりと、何かとコストがかかることも、初心者が気軽に手を出しづらい一因となっている。

■預貯金を持つくらいだったら金に替えておく

そんな金投資にももちろんメリットはある。紙幣と違い金そのものに価値があるため、世界情勢が混乱したときには価格が上昇する傾向がある。いわゆる「有事の金」である。このコロナ禍でそれが証明されたといってもいい。また、インフレが起こった際に価値が上昇するため、金を購入することで資産の目減りを防げるという利点もある。

『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)の著者で、資産運用や投資に詳しいエモリキャピタルマネジメント代表の江守哲氏は、「FXや株の経験がなくても、金投資は誰でも始めやすいと思います。極端な話、現金の代わりだと思って、『預貯金を持つくらいだったら金に替えておく』くらいの気持ちでいいかもしれないですよ」と言う。

「日本でも海外でも、投資といったらまず株から入ることが多いですよね。でも、私の感覚からすると株は値動きが大きくてリスクがあるので手を出すには勇気がいります。

江守哲氏は「20~30年前からすると株より金のほうが明確にパフォーマンスが高い」と話す。
江守哲氏は「20~30年前からすると株より金のほうが明確にパフォーマンスが高い」と話す。

私は、何か投資をするときは必ず金を買います。実は20年の6月までの騰落率でいうと、金(17%)のほうがナスダック(12%)より高いのです。20~30年前からすると、明確に金のほうがパフォーマンスが高いですが、あまり認知されていないのが実情です。

リーマンショックのときもコロナショックのときも、実は金のほうが株よりも先に上がっています。このことはデータとしてかなりはっきり出ていますが、それでも株で儲けたい人が多く、金は相対的には認知度がまだ低い“穴場”の投資先といっていいでしょう。

富裕層向けにアドバイスを行うスイスのプライベートバンクは今まで資産の5%ぐらいを金に振り分けさせていましたが、最近は10%ぐらいに引き上げようとする傾向が出てきているようです」(江守氏)

江守氏曰く、冒頭のA子さんのような例は特殊で、最近の金の高騰を見て金投資を始めた人は少なく、今うまみを感じているのは前から金投資をしている人が多いという。

■ドルの価値は50年で50分の1に

さて金相場がめざましい上昇を見せているが、なぜ最近になってここまで金の価値が上がっているのか。

「理由は大きく分けて2つあります。1つはゼロ金利政策です。20年3月、アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)は、新型コロナウイルスによる景気悪化に対応するためにゼロ金利政策を導入しました。金保有の最大のデメリットは金利がつかないことですが、金利が低くなることでそのデメリットが薄れたわけです。実際、金の価格もゼロ金利政策導入後の20年3~4月頃から目に見えて上がってきています。

金市場の中心であるアメリカで盛り上がりが起こったことで、ヨーロッパや日本でも金を買う動きが広がってきました。金の過去最高値は、ヨーロッパの財政危機があった11年9月の1オンス約1920ドルです。アメリカはひとまず22年までゼロ金利政策を続けると発表しましたが、この政策が長引けば長引くほどこれを抜く可能性が高まります。

もう1つの理由としては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う業績の悪化に備え、手元資金を確保するために企業が次々と社債を発行したことが挙げられます。今まで例を見ないような規模の金額で市場に資金が供給され、たくさんのお金が市場に出てきました。

このお金は、まずは株や債券のほうに投資されているのですが、それでも余るため『金利も低いし、だったら金も買おうか』という考えをする人がたくさん現れてきました」(同)

江守氏によると、金に対するドルの価値は、この50年で50分の1になっている。市場にドルが過剰に出回っている、つまりドルの価値が下がっている今、ドルを持っていると損をするだけなので早く金に替えたほうが賢い。

「ドルの根源的な価値は、おそらくこれからも低下する」(江守氏)。
「ドルの根源的な価値は、おそらくこれからも低下する」(江守氏)。(PIXTA=写真)

「コロナ危機のときに株が下がりドルを借りていた新興国が、返済のために市場からドルを買うことで、ドルが上がることはあります。しかし、それはいわゆる目先のフローで上がっているだけなので、根幹のドルの価値とは別の話なのです。ドルの根源的な価値は、おそらくこれからも低下すると予想しています」(同)

今すぐ金を買うべきだということはわかったが、どのようにして買えばよいのか。江守氏によると、金投資の主な方法には4つあり、それぞれにメリットとデメリットがあるという。

1つ目は、金地金の購入。金の延べ棒など金の塊を購入する方法だ。購入金額は数十万~数百万円と高く、金の輝きを観賞して楽しめるという点で富裕層に人気がある。盗難や火災を防止するために安全な保管場所を確保する必要があり、そのコストがかかることに注意だ。地金商、鉱山会社、商社、銀行、百貨店などで買うことができる。

■資金がない人におすすめの方法

2つ目は、投資用金貨の購入。金地金を購入するほどの資金がない人におすすめの方法で、オーストリア、カナダ、オーストラリア政府の金貨がメジャーである。一番サイズの大きい1オンス金貨でも購入金額は十数万円程度で済むので、手ごろな価格で現物を手にしたい人に向いている。デメリットとしては、鋳造コストを上乗せした価格で取引されるので割高であることと、持ち運びの際などに傷がつくと売却価格が下がってしまうことが挙げられる。地金商、貴金属商、コインショップなどで購入可能だ。

3つ目は、純金積立だ。毎月一定額で金を積み立てて購入する方式で、月1000~4000円という少額から始められるのが大きなメリットだ。ただし、金の預け方によっては業者が倒産すると金が戻らない可能性があることに注意が必要だろう。貴金属商、商社、証券会社、銀行などで行う。

4つ目は、金ETFや金鉱関連株などの金関連ファンドに投資する方法だ。運用をファンドマネジャーに任せることができるので、初心者でも手を出しやすいというメリットがある。ただし、金の現物を引き出せない「バーチャル投資」のため、金の輝きを楽しめない。証券会社、銀行などで行う。

この4つの中で、江守氏のおすすめは断然最後の「金関連ファンドへの投資」だそうだ。

「株と同じ口座でできるので簡単ですし、すぐにキャッシュにしやすい流動性の高さも魅力です。逆に、一番やってはいけないのが金の現物を買うこと。手数料がかなり高く、例えば6000円の金の延べ棒を買うために手数料で100円とられます。この手数料は大きな痛手です」

コロナショックを受けて高騰した金。投資としてなじみが薄い存在だったからこそ、正しい情報を仕入れて賢く購入したい。

(ライター 万亀 すぱえ 写真=PIXTA)

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