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スワップ終了で地獄に落とされた韓国…財閥は文在寅の無策に絶望、再開を熱望

プレジデントオンライン / 2020年7月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PashaIgnatov

■韓国、コロナで外貨準備高94億ドルの減少

韓国では外貨不足が続いています。最大輸出相手国である中国が景気鈍化している懸念から、外国人の投資が流出しウォンが大幅下落、外貨準備高が2~3月で約94億ドル減少しました。この衝撃はリーマン・ショックが起こった2008年11月の117億5000万ドル以来最大となり、韓国銀行はこの救済措置のために、米国FRB(連邦準備理事会)と約6兆4100億円(600億ドル)規模の通貨スワップ協定を締結しています。これは韓国で通貨危機が起きた際、自国通貨の預け入れと引き換えに、米国の通貨を融通してもらえる協定のことです。さらに、これだけでは足りず、この先、日本との通貨スワップを結びたい意向が垣間見えます。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、基軸通貨ドルの需要が世界各地で一気に高まり、その影響は韓国にも及びました。中国への貿易依存度が高い韓国は、中国の景気後退懸念から外貨の流出が多かった国です。

韓国銀行が発表した外貨準備高の増減の推移を見てみると2月4091億7000万ドル(前月比4億8000万ドル減)、3月4002億1000万ドル(同89億6000万ドル減)、4月4039億8000万ドル(同37億7000万ドル増)、5月4073億1000万ドル(同33億3000万ドル増)、6月4107億5000万ドル(同34億4000万ドル増)と、2~3月に約94億ドル減少しており、直近の3カ月で取り戻したかたちになっています。しかし、戻したといっても、外貨資産のドル換算価額が上がったためであり、実際にドルの現金が増加したわけではない点は注意です。

今回、注目するべき点は、グローバルでの危機に直面したときに、どこから資金が流出し、どこに資金が集まっているのかを見ておく必要があります。IMF(国際通貨基金)によると、2月から3月にかけて外貨準備高の減少が大きかった国・地域は、ブラジル(193億ドル)、トルコ(156億ドル)、インドネシア(95億ドル)、韓国(90億ドル)、香港(78億ドル)などとなっています。一方で、この期間に外貨準備高が増加した国もあります。

■韓国の外貨準備高の内訳は…

日本のように、そもそもコロナの影響下のなかで外貨準備高が増加している国も存在していることをここで留意しておきます。日本の外貨準備高は2月の1兆3590億ドルから6月の1兆3831億ドルまで一度も減少することなく増加を続けています。日本を含め、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなどは増加していました。一方で、世界全体を見ても、2~3月のコロナショックに、総じて脆弱(ぜいじゃく)な新興国は、外貨準備高が大幅に減少しています。

韓国の外貨準備高はここ数カ月、増加傾向にありますが、ソウル聯合ニュースにより5月時点での外貨準備高の内訳が報道されていますので見ておきましょう。有価証券が約90%、預金は約7%となっており、預金での保有率は低いです。さらに、有価証券の内訳も政府債、政府機関債、社債などの流動性が低い資産の比率が高く、株式などの流動化資産の比率は低い傾向にあります。ウォンが急速に下落するような危機の際には、ドル売りウォン買いの介入が必要であり、その際には「ドルの現金」が必要となります。上記のように、流動性の低い資産で保有していることから、「ドルの現金」の保有額は少なく、危機の際に現金化するためにはタイムラグを要する状態にあるのです。

■韓国のドル不足から財閥に泣きつく

3月のウォンの大幅下落に対しても、米国FRBとのスワップ協定にはこぎ着けており、いったんは日韓通貨スワップの議論は終息の模様を見せていましたが、これまで述べてきたように、根本的には韓国でのドル不足状態は変わりないのです。実際、3月のドル不足のときに、韓国は国策銀行である韓国輸出入銀行が私募社債を、財閥のサムスン電子などのグローバル企業に対して引き受けてもらう形で、サムスン電子からドルを調達していたことが報道で伝わっています。

世界市場が不安に陥ってたときに、安全資産であるドル集め競争が激しくなり、韓国のグローバル企業が国策銀行のある意味“消防士”の役割を果たしたのです。文政権といえば、財閥改革も掲げていたわけですが、コロナショックの中では、財閥に救いを求めざるをえず、緊急時に国を支援してくれたのが財閥だったという皮肉なことになっています。

また、大量の外貨をドルで供給してくれそうな国である日本に対しては、今後も通貨スワップ協定の締結を持ち掛ける姿勢に変わりはなさそうです。最近、韓国政府は日本に通貨スワップを暗に求めてきましたが、締結には至っていません。そもそも日韓スワップは、形式上は対等ですが、事実上は日本が韓国を助ける協定なのです。徴用工問題や対韓輸出管理の厳格化をめぐって韓国の反日感情が高まり、日韓関係が冷え込んでいるいま、日韓の通貨スワップ協定など可能なのでしょうか。

■再開されることのない日韓通貨スワップ

2001年7月に始まった日韓通貨スワップは13年半続き15年2月に終了しています。その後、両国は再開に向けて議論をするとしていましたが、16年12月に元慰安婦や遺族らが損害賠償を日本政府に請求し、日本側は従軍慰安婦をめぐる日韓合意違反として「協議の中断」を通告している背景があります。また、元徴用工判決をめぐっては、韓国は日本企業の資産を差し押さえており、8月4日以降に韓国の裁判所の命令によって、現金化の可能性もありますので、悪化した日韓関係に改善の兆しは見られないでしょう。

昨年7月1日に、経済産業省が「ホワイト国」から韓国を除外する方針を示すとともに、特定品目である、「フッ化ポリイミド」「フォトレジスト」「フッ化水素」を包括輸出許可から個別許可に切り替えると発表しました。これを受けて、韓国の文在寅大統領が日本への依存度が高い素材・部品部門の国産化を進め「脱日本」を強調し、輸入品の日本依存からの脱却を図り、「国産化」の模索を進めてきました。

■脱日本、日本製品不買運動の皮肉

日本への敵対心から、韓国で「NO JAPAN」「日本製品の不買運動」が始まって約1年になります。ユニクロ、日産、アサヒビールなどが韓国の不買運動の矢面に立ち、韓国事業から撤退する企業も出てきています。ただ、韓国中にあふれた「ボイコットジャパン」や「NO JAPAN」と印刷された横断幕、ステッカーなどの印刷をできる印刷機は実は、日本製しかなかったという事実もあり、不買運動ですら皮肉にも、日本企業の力を借りていたことになります。

また、国産化を模索していた素材に関しては、「フッ化水素」は輸入の日本依存からの脱却と国産化が徐々に進んでいるものの、「フォト・レジスト」や「フッ化ポリイミド」については輸入の日本依存からの脱却、国産化はどちらも難しい状況となっています。さらに、日本への依存度を下げたい韓国政府も、日系企業の国内誘致を受け入れており、「日本企業による国内生産」は容認せざるをえないのが現実なのです。

■韓国金融界や経済界は日韓通貨スワップの再開に期待

新型コロナの影響による経済危機の長期化が懸念される中で、ドルを供給してくれる「日韓通貨スワップ協定締結の必要性」を韓国側では感じています。既に述べた通り、3月の外貨準備高の減少の際に、この先起きるかもしれない危機に備えて、サムスン電子などの財閥はドルを供給することを求められました。まるで、財閥が銀行のような役割を迫られるといった構造になっており、財閥からすれば、自分たちへの負荷が大き過ぎるため、日韓通貨スワップ協定に期待を寄せるのでしょう。そのような背景もあり、韓国金融界や経済界は日韓通貨スワップの再開に期待しています。

しかし、最近の日韓関係の冷え込みから、文政権からの協議再開を求める表立った動きはないままですが、今後、この動きが表面化する可能性が十分にあり得るのです。

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。

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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)

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