女性のキャリアアップを阻む「アンコンシャス・バイアス」対処法3つ
プレジデントオンライン / 2020年9月5日 6時15分
■時代が変わっても人の心に根強く残るバイアス
アンコンシャス・バイアスとは、誰もが持つ“無意識の偏見”のこと。広い意味では、私たちが常識だと思っていること、世の中の価値観として通じていること、つまり“社会常識”や“社会通念”も含みます。すなわち社会という“枠”の中で、うまく調整して折り合いをつけていきましょうという、この枠自体がバイアスなんですね。
戦後の高度成長期において枠は、ある意味、秩序でした。しかし20世紀の終わりになって、みんな同じではないという世界が初めて生まれました。細分化された価値観が重要であるという大きな転換期が来て、枠は守ってくれるものでもあるけれど、締めつけでもあることにみんな気づき始めたのです。
■子どもを産む使命があるがためのバイアス
その締めつけをいちばん強く感じていたのが女性でした。なぜなら女性は子どもを産むという性を持っているから。子どもを産み育てるために、ある一定の年月は子どもから離れられない。女性の生物的使命が大きな枠になっていたのです。
その枠のために女性は社会活動が制限されていたわけですが、現代はネットワークの発達によって移動せずに情報交換ができるようになったので、子どもを産むとか育てるといった枠自体が、それほど重要ではなくなってきました。
ところが人間の深い無意識の中に、それらはまだ根強く横たわっています。女性自身がそんな枠は要らないと思いつつ、DNAとして入っているものや生物学的に持っているもの、これが自覚なく自分を締めつけているわけです。今、人間はこれまで自分たちを守るために持っていた枠を打破しなければいけない時期に来ているのです。
■自分の可能性を狭めているのは、自分のバイアス!?
多くの人が血液型による性格診断や星占いを信じているのはなぜでしょうか。それは、みんな自分の見方やあり方に自信がなくて不安だから。不安なことに枠があると、その中に入っていれば大丈夫と感じるのは、人間の弱さのあらわれなんですね。
これと同じようにバイアスは自分を守るためのものである一方、守りすぎることで自分の可能性や能力にふたをしてしまう恐れもあります。「私は女性だから」「子どもがいるから」……これが言い訳になるのです。女性の社会進出が進まない原因は、さまざまにありますが、実は女性自身のバイアスだという可能性もあるのです。
■自分自身のバイアスに気づけば、ステージが上がる
「上司が認めてくれない」「この会社が悪い」「女性の先輩がいない」と外部環境に対して、いろいろな思いがわいたときこそ、自分自身を振り返ってみてください。もしかすると、知らず知らずのうちに自分をどこかの枠に入れているかもしれません。外部環境から自分を守ろうとしているのかもしれません。そういった枠から抜け出したときに初めて、自分自身の意識が変わり、新たなステージに上がることができるのです。
■バイアスの強い職場環境は、社員の士気をくじく
とはいえ、やはり周囲のバイアスが女性が昇進したり、リーダーになったりするのを阻むこともあります。たとえば「そんなに女性が頑張らなくてもいいよ」「女性が上を目指すって大変でしょ」という考え方。これがバイアスなのです。
職場においてバイアスが強ければハラスメントになり、ハラスメントが強ければ、モチベーションがダウンします。このつながりを職場の人たちもよく理解しておいてほしいですね。
「この人、偏見を持っているな」と感じる人と仕事をするのは、なるべく避けたい。しかし、その人のバイアスを取り除いたり、考え方を変えようとするのは、すぐには難しいものです。立ち向かっても、衝突するだけで、お互いにわかり合うのに時間がかかる。それよりも、「この人のバイアスはこの人のバイアス、でもこのバイアスを私の中に埋め込む必要はない」と考えます。
■バイアスの強い人の質問には、質問で返そう
バイアスの強い人とコミュニケーションするときには、ちょっとしたコツがあります。私が経験の中で編み出した技ですが、「バイアスがかかっている質問には、質問で返す」こと。たとえば、私が昔よく言われたのは「先生は忙しいですよね。ごはんは誰が作るんですか?」。そうしたら私は「お宅は誰が作るんですか?」と質問で返します。「お子さんが寂しがりませんか?」と言われたら「お宅のお子さんはどういうときに寂しがるんですか?」と質問で返す。これはぜひ覚えておくといいですよ。
でも、その人のバイアスのせいで精神的負担を感じるときは、言葉で「あなたのバイアスは私にとってプレッシャーだし、嫌な気持ちがするんです」と伝えないといけません。
■パートナーとは、互いのバイアスを把握しておく
周囲の人を変えることはできませんが、身近な人、たとえば配偶者やパートナー、恋人などは別です。お互いに影響を与え合う存在ですから、自分や社会に対して、どんなバイアスを持っているか、ちゃんと知っておいたほうがいいですね。
たとえば相手の母親像が、「子どもが帰る時間には、家にいて『おかえり』というもの」であるなら、あなたが「子どもを預けて働きたい」と言うと「子どもがかわいそう」という言葉がポンッと悪気なく出てきます。
バイアスの裏に隠れているのは期待値なんですよ。女性に対する期待値がある意味、変形してバイアスになっている。そういう期待値を1つずつつぶすには、やはり話し合いしかない。人間の頭は言葉でできているので、話し合わなければ、わかり合えません。私たち夫婦の場合は、嫌なことが起きてから話すと嫌なことばかり話すから、できるだけ前もって話し合いました。とことん話し合ったことで、お互いのバイアスがわかり合えましたね。
①自分自身のバイアスを自覚し、取り除く努力をしよう
②人のバイアスはできる限り気にしない。嫌なら言葉で伝える
③パートナーとは、お互いのバイアスをとことん話し合う
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東洋大学理工学部生体医工学科准教授
キャリアカウンセラー。1958年生まれ。埼玉県職業訓練指導員、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任准教授、東洋大学経営学部経営学科准教授を経て現職。近著に『わたしの人生は、わたしのモノ』(朝日新聞出版)。
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(東洋大学理工学部生体医工学科准教授 小島 貴子 構成=池田純子)
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