世界経済を左右するワクチン供給、副作用の可能性に気をつけろ

プレジデントオンライン / 2020年8月9日 11時15分

■2020年4月の「底」から抜け出せるのか

2020年6月、世界銀行が最新の世界経済成長率予測を公表しました。それによれば、2020年の世界成長率はマイナス5.2%。そして21年はプラス4.2%成長へ回復する見込みです。これは中立的なシナリオと言っていいでしょう。

振り返ると、世界経済の底は20年4月でした。アメリカで14.7%を記録した4月の失業率は、5月には13.3%と少し改善しました。中国の経済指標である製造業購買担当者景気指数(PMI)を見ても、20年4月が底で20年5月には回復しています。

今後のシナリオを左右するのは、ワクチンです。イギリスの製薬大手企業は、最も早い場合、20年9月に供給できると発表しています。もし新型コロナウイルスがワクチンで防げるようになれば、経済活動は活性化します。また供給の情報は事前に知らされるので、20年7~9月期には相当なレベルで回復するのではないでしょうか。世界銀行のマイナス予測が1~2%縮小し、場合によってはV字回復もあるかもしれません。

■世界経済の不安定感が高まっていく

一方、悪いシナリオは、ワクチンの供給が遅れる、もしくは副作用が見つかるようなケースです。そこに新型コロナウイルスの感染の第2波、第3波が来れば、経済活動は阻害されます。さらに「米中貿易摩擦の激化」「中国の成長の限界」などのマイナス要因がいくつも重なると、世界経済の不安定感が高まっていくでしょう。そうなると期待先行で上がっている株が売られて、株式保有比率の高いアメリカ、欧州の経済はまた大きな打撃を受けます。新興国にも飛び火すれば、生産活動も消費もできなくなり、世界の貿易取引も減少していきます。

もうひとつ大きな問題があります。金融システム不安が起こることです。

コロナショックで世界全体の原油需要が落ち込み、原油価格が下落しました。それによって経営破綻に追い込まれるアメリカのシェールオイル企業が増加すると思われます。それらの多くはジャンク債(信用力の低い社債)を発行して資金調達を行っているため、ジャンク債を使った派生商品であるローン担保証券(CLО)の価値が急落し、それを保有してきた金融機関の経営不安が高まる可能性があるのです。

今は米連邦準備制度理事会(FRB)や各国の中央銀行がお金をたくさん出して、金融システム不安にならないように防いでいます。しかし、デフォルトが起きてしまえば、金融市場が大崩れして、実体経済と金融経済がスパイラル的にどんどん悪くなっていくでしょう。そうなると最悪の場合、2桁マイナスになる可能性すらあります。リーマンショックの後、経済が元に戻るのに約3年かかりました。そのような事態にならないとは誰も言い切れません。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

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(法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)

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