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橋下徹「なぜ与野党はコロナ国会を開くために一致団結できないのか」

プレジデントオンライン / 2020年8月5日 11時15分

※写真はイメージです。 - 写真=iStock.com/maroke

新型コロナ感染症の感染者数が増加傾向をたどっているが、国による対策の根拠である新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)は全国一律の対応を求めるなど実態に沿った内容とはいえない。特措法改正のために今すぐ臨時国会を開くべきだと橋下徹氏は論じる。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(8月4日配信)から抜粋記事をお届けします。

■アクセルとブレーキは「虫の眼」の地方に渡すべきだ

新型コロナ感染症の感染者数の増加傾向が止まらない。各地方の首長たちは危機感をあらわにしている。自治体の中には、ピンポイントの地域に絞って休業要請をかけたり、特定の業種について営業時間短縮の要請をかけたり、地域限定の独自の緊急事態宣言(法に基づくものではない)を検討したりするところが出てきた。

(略)

今、日本という国家において政府と自治体の認識とそれぞれがやっていることがバラバラで、国民にとっては訳が分からない状況だ。特に、国家としてのメッセージにまったく軸が見えない。

そして日に日に感染者数が増加していく報道だけが溢れかえる。

このような状況になる原因と、そして政府はどのようにして国を動かして対処していくべきかについては、本メルマガVol.208(【菅義偉官房長官を直撃】「Go To トラベル」大混乱! 国は財源を用意し、地方に権限と責任を譲るべきだ)で詳細に論じた。

やはり、そのメルマガで論じたように、《国は「鳥の眼=マクロの視点」で国全体の方針を示し通貨発行権に基づいて金の用意をする。感染症対応のための社会経済活動を抑制したり再開したりするアクセル・ブレーキのコントロールは「虫の眼=ミクロの視点」を持っている地方に任せる》というやり方しかない。

そして日本は法治国家である以上、法に基づいて国家を動かさなければならないのであるから、ただちにこのやり方を実行するための新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)改正を行うべきである。特措法改正のためには、当然国会を開かなければならない。

■首相・閣僚・官僚を国会にしばりつける野党戦術の大問題

ところが政府与党は国会を開くことには消極的だ。

それは、国会を開けば野党からの追及が連日報道されることになる。加えて、国会には首相や閣僚がしばりつけられて身動きが取れなくなる。もちろん官僚たちも国会対応にとんでもないエネルギーを注がなければならなくなり、肝心の行政の仕事ができなくなってしまうからだ。

(略)

野党国会議員なら政府の追及をすることも仕事のうちだし、政権入りした与党国会議員なら行政組織を回すことも仕事である。しかし与野党を超えて国会議員のもっとも重要な仕事は「法律を作ること」だ。

ところが、これまで法律を作ることは事実上官僚に任せっきりだった。官僚たちが作る法律を「閣法」(内閣提出の法律案)というが、日本の法律のほとんどは閣法だ。ちなみに国会議員で作る法律を「議員立法」という。大統領制の国であるアメリカにおいては、議員立法が原則だ。

(略)

そして日本の閣法である法律案にコメントを付けられるのは、基本的には与党国会議員のみ。ゆえに野党国会議員は必然、国会では政権のスキャンダル追及に走ることになる。

この国会の仕組みが根本的におかしい。

確かに法制度の詳細は官僚たちに作ってもらうしかないが、大きな方向性などの議論は本来は政治家がやるものだ。さらに官僚では決めることができない決定は政治家がやるしかない。その決定までを官僚たちに委ねて法律を作ってしまうと、本当に国民のためになる法律にならない場合が出てくる。それが今話題の特措法なんだ。

休業させた場合には補償を付ける。

この根幹部分について政治家が決定を避けて、官僚にそれを委ねてきたので、お金はそこまで用意できないという官僚判断になってしまった。それで特措法は補償抜きのクソ法律となってしまった。それが今コロナ対応で日本の国家が迷走している根本原因だ。

補償が付いていないので、行政は、感染の恐れがある地域や事業主に対して休業を「命じる」ことができずに、「お願いする」しかない。感染の震源地はわかっているのに、対策を「お願いする」しかない。そしてあっという間にボヤの火がどんどん広まってしまった。

6月の中旬頃に、感染の震源地と言われていた東京の歌舞伎町の接待を伴う飲食店などをピンポイントに営業停止にしていたならば、今の全国的な感染拡大は防ぐことができたのではないか。もちろん補償付きで。非常に悔やまれるところである。

(略)

今回の特措法改正をきっかけに、「法律の大きな方向性は与野党の国会議員が議論で決め」、「その方向性の中で官僚たちが緻密に法制度を作っていく」という、理想の国会を追求してもらいたい。

(略)

野党は政府の追及のみ。反対のみ。首相や閣僚を国会にはりつけにする。閣僚においては自分が担当の質問や答弁が一つもないのに、ただただ国会の席に座り続ける日々も多いらしい。野党が質問をしたとしても、「そんな質問と回答はウェブ上にQ&Aで貼り付けておいてくれたら十分だ」というしょうもないものも多い。ところが政府与党は、このような野党の国会活動を彼ら彼女らのメンツを立てるために容認する。

そして極めつけが、国会の場と異なるところで、日本維新の会以外の野党がタッグを組んで官僚たちを呼びつけて吊し上げにする「野党合同ヒアリング」。

官僚たちも、国会議員に対する説明だけが仕事じゃないんだ。他にも膨大な仕事がある。にもかかわらず、国会において野党が法律を作ることに関与することができないゆえに、こういう官僚いじめに力を注いでしまう。こんな野党が政権交代を果たしたときに、政府与党として官僚たちを動かせるのだろうか。

(略)

■国民はそろそろ怒りを爆発させてもいい

政府与党は、まずは特措法改正のために国会を開くべきだ。野党も国会が開かれた機会をとらえて政府を徹底的に追及したいだろうが、そこは国民のために我慢すべきだ。野党は少数者なのだから、自分たちの主張が100%通るものだと思ってはならない。

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)
橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

野党は、政府与党のGo To キャンペーンのやり方や感染症対応について追及したいネタは山ほどあるだろう。しかしそれらの徹底追及は、ちょっと後に思う存分やればいいではないか。

「今は、国家を適切に動かすための特措法改正のみに集中する。その他の政府の追及はやらない」。このように野党が主張すれば、政府与党は国会を開かない理由が立たない。

(略)

今回、これでも国会を開かないというのであれば、そろそろ国民は怒りを爆発させてもいいと思う。

韓国の政治状況をみて、国民の怒りによって、情によって動く政治はよくない!! とコメントする日本のインテリも多い。しかし、怒りや情をまったく見せない国民というのも政治を悪くする。

正解はその中間にあるのだろう。

今回ばかりは、国民は怒るべきだ。政府与党が国会を開かないのであれば、生活がかかっている事業主は、休業要請を無視していいと思う。

(略)

(ここまでリード文を除き約2700字、メールマガジン全文は約1万1800字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.210(8月4日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【新型コロナ・緊急提言】今回ばかりは国民よ怒れ! 感染拡大の今、ただちに特措法改正の臨時国会を開くべきだ》特集です。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)

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