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「ジーンズ強化が完全に裏目」トレンドを読み間違えたライトオンの絶不調

プレジデントオンライン / 2020年7月30日 11時15分

2019年8月13日にライトオンがプライベートブランド「BACK NUMBER」で発売した“和紙デニム” - 写真=ライトオンプレスリリースより

アパレルチェーン「ライトオン」が苦境にある。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、アパレル業界は全体的に苦戦しているが、実はライトオンの業績不振は今に始まったことではない。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は「2019年頭に打ち出した、アメカジ路線の強化が完全に裏目に出て失敗した」と分析する——。

■コロナ以前から既存店売上高は3期連続前年割れ

アパレルチェーン「ライトオン」が厳しい状況にある。既存店売上高は6月こそ前年を上回ったものの、3〜5月は大幅減で、3月が39.1%減、4月が79.6%減、5月が53.1%減と大きく落ち込んでいる。新型コロナウイルス感染拡大に伴う店舗の臨時休業や時短営業、外出自粛が影響したわけだが、それにしても競合と比べて落ち込み幅が大きい。例えばユニクロも3〜5月は落ち込んだが、ライトオンほどではない。

ライトオンはコロナ以前から厳しい状況が続いていた。既存店売上高は19年8月期まで3期連続で前年割れ。続く19年9月〜20年2月期は前年同期比16.5%減と大きく落ち込んだ。期間は違うが、同期は19年8月期(前期比2.4%減)と比べても落ち込み幅は大きく、すでに傷口が広がっていたことがわかる。

■価格競争から抜け出すためのアメカジ路線強化が失敗

業績は大きく悪化しており、岐路に立たされている。2019年9月〜20年5月期連結決算は、売上高が前年同期比31.5%減の391億円、最終損益は33億円の赤字(前年同期は23億円の赤字)だった。売上高は販売不振が響いた。最終損益は、販売不振のほか、店舗閉鎖に伴う損失や収益性が厳しい店舗の減損損失、休業店舗の賃料などの損失を特別損失として計上したことが響いた。この背景には、商品戦略の失敗がある。

2019年4月の決算説明会で、ライトオンは原点回帰となるアメリカンカジュアル(アメカジ)商品を強化する方針を打ち出した。川﨑純平社長は、「『ライトオンらしさとは?』を自問自答してきた。お客さまは当社にアメカジを期待している。ジーンズを中心に品ぞろえを強化し、応えたい。『ジーンズを買うならライトオン』を定着させたい」と述べていた。さらに人気女性誌と「#アメカジレディになろう!!」というキャンペーンを展開し、インスタグラムなどでジーンズを使ったコーディネートを提案していた。

ライトオンはショッピングセンター(SC)への出店が多いことから、それまではSCに来る不特定多数の人に向けた商品を打ち出していた。だがコンセプトが曖昧になったことで競合との違いを打ち出せず、価格競争に巻き込まれてしまった。アメカジの強化は、この状況から抜け出すための施策だった。

しかし、このアメカジ強化は裏目に出た。品ぞろえが極端に偏ってしまい、20〜30代を中心に客離れを招いてしまった。また、全面的な品質向上を進めた結果、商品単価が急激に上昇してしまい、10月の消費税増税も相まって、顧客に受け入れられなかった。結果、19年9月〜20年2月期の既存店客単価は14.9%増と大きく伸びたものの、客数が27.3%減と大きく落ち込んでしまった。前述の通り、売上高も16.5%減の大幅減となっている。

■アメカジチェーン各社がうまくいかなかった

アメカジ偏重では厳しいだろう。それは、アメカジを主軸にした衣料品チェーンの撤退が相次いだことからもわかる。

紳士服大手の青山商事が12年から日本で展開を始めた「アメリカン・イーグル・アウトフィッターズ」は、不振から19年に全店舗の閉鎖に追い込まれた。米ギャップの「オールド・ネイビー」も12年に日本に上陸したが、17年1月の会計年度末までに撤退を余儀なくされた。

これらアメカジチェーンが不振に陥った理由はいくつか挙げられるが、アメカジ自体が今はやらないことが大きい。アメカジは1980年代後半から90年代前半にかけてブームになったが、徐々に下火になっていった。今でもコアなファンがいるが、それだけで全国規模のチェーン店を支えるのは難しい。

■ファストファッション偏重は今後ますます進む

もっとも、ファッションにおけるブーム終焉による苦境はアメカジだけではない。例えばギャルファッションも同様に苦境に喘いでいる。90年代に起きたギャルブームの中で一世を風靡したギャルファッションの代表的ブランド「セシルマクビー」の全店閉店が先日発表されたばかりだ。アメカジと同様、ギャルファッションのブームが去って下火になり、それに伴いセシルマクビーは売り上げが低迷していった。

アメカジやギャルファッションを苦境に追いやったのはユニクロやZARA、H&Mといったファストファッションだ。人々の趣味や関心がファッション以外へ広がっていく中で「着るものは安く済ませたい」と考える人が増えていった。

こうした流れは新型コロナによってさらに加速していくだろう。巣ごもり傾向や節約志向の強まりで、着飾るための服や値が張る服を着る人が減っていくことが予想される。一方でユニクロのようなベーシックなファストファッションの需要はより強まると考えられる。事実、ユニクロでは新型コロナを受けてベーシックアイテムの需要が伸びたという。

■反発して退店したゾゾにも再出店

いずれにせよ、ライトオンはアメカジに寄せすぎて客離れを招いてしまった。そのため、商品展開を見直し立て直しを図る。今後はアメカジを中心としながらも、トレンドを加味した幅広い客層を取り込めるプライベートブランド(PB)商品を開発したり、主力立地であるSCの客層に合った低価格の商品を投入したりして、離れていった顧客を呼び戻したい考えだ。

ネット通販も強化する。自社の通販サイトに関しては利便性を高めるなどして集客を図っていく。外部の通販サイトへの出店も拡大する。今春には、「ゾゾタウン」へ再出店した。昨年2月、ゾゾタウンが導入したサブスクリプション型の会員向け割引サービスに反発し退店したが、方針を転換した格好だ。年間800万超の人が購入するゾゾタウンを利用し、売り上げを回復させたい考えだ。

こうした施策で挽回なるか。アパレル苦境の時代に、手腕が問われている。

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佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。

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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)

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