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これで中国・習近平も青ざめる…連日の尖閣侵入に日本の「鬼の怒り」を見せる方法

プレジデントオンライン / 2020年8月3日 9時15分

尖閣諸島・魚釣島 - 出典:内閣官房ホームページ

尖閣諸島における中国の振る舞いに、これまでとは違う傲岸さが。日本もそろそろ我慢の限界にある。

■連続100日超。中国の行為がヒートアップ

コロナ禍の前後から、中国の傲岸な振る舞いが世界各地で摩擦を引き起こしている。香港、台湾、インド、南シナ海など主に国境付近で危険な挑発行為を連発。沖縄・尖閣諸島もその場の一つで、日本にとって不愉快な事例が日に日に増加している。

中国は4月14日、尖閣周辺に武装公船を派遣して以来、毎日同様の行為を繰り返し、7月22日に連続100日を突破した。これは2013年9月の尖閣諸島の国有化以降、最長の連続日数である。6月には尖閣沖に中国海警局の船が侵入、日本の漁船に接近、追尾するなどした揚げ句に「日本側に中国の主権を侵す行為を直ちに停止するよう求める」「この問題で新たな争いごとを作り出さないようにし、実際の行動で東シナ海情勢の安定を守るよう求める」と、逆に日本を批判した。

盗人猛々しいとはまさにこのことだが、中国の振る舞いはひところより明らかにヒートアップしている。少し整理しておくと、尖閣諸島は歴史的にも国際法上からも明確に日本固有の領土であり、かつ実効支配しているために領土問題は存在せず、解決すべき領有権の問題はそもそも存在しないという立場である。その日本側の「実効支配」を無効にしようというのが、中国側の船舶派遣の主たる目的である。

■米リポート「中国海軍は海上自衛隊より完全に優位」

もし、その途上で最悪の事態——軍事衝突が起こった場合、日中どちらが優勢なのか。ひところ、軍事のプロであれば装備その他の点で圧倒的に日本側に強みがあると皆口をそろえていた。

しかし、米国のシンクタンクからそれを覆す内容のリポートが出た。ワシントンの安全保障研究機関「戦略予算評価センター(Center for Strategic and Budgetary Assessments)」の105ページにわたるリポート「DRAGON AGAINST THE SUN(「太陽に挑む竜」6月18日付)」は、中国海軍の力がここ5年で海上自衛隊のそれを凌駕し、完全に優位に立った……と分析。衝突から4日以内に中国軍が尖閣諸島を占領するシナリオの1例を挙げている(同リポート72ページ)。

同リポートは、「中国が日本をGDPで逆転したという2010年頃から海軍を増強し、日本を容易に屈服させることができるまでになった」、最近では「米軍の介入なしに尖閣を領有する」算段まで行っており、尖閣諸島の領有権や日米同盟を揺るがすところまできているという。

同リポートは日本に対し、このままでは5年、10年先は逆に海軍力の差が開く可能性があり、早急に軍事バランスを均衡に戻すよう提言している。前述のような中国や中国軍の言葉と行状は、このリポートの内容を裏付けているようにも見える。

にもかかわらず、実効支配していると口ではいいながら、今も灯台やヘリポートのような施設も造らず、政府職員も出入りしていない。国家の施政権・管轄権を一切行使しようとしていないのだ。素人目にも強面・中国への忖度にしか見えず、業を煮やした民間人がこれまでに何度も上陸を試みているが、他ならぬ日本政府がそれを押しとどめるというひどいありさまである。

■「私たちが中国を変えなければ、彼らが私たちを変える」

領土・国民を守るのが国家の最低限の義務であり、だからこそ国民は税金を払っているのである。このままでは本当に尖閣諸島を失いかねない。しかしここにきて、グダグダの日本を尻目に、トランプの堪忍袋の緒が切れた。

「私たちが共産主義の中国を変えなければ、彼らが私たちを変える」「習近平氏は全体主義イデオロギーの信奉者」「もはや米中両国の根本的な政治的、イデオロギー上の違いを無視できない」——7月23日のマイク・ポンペオ米国務長官の演説は、米国と中国の対立が、まったく新たな局面に入ったと感じさせた。

「もはや(中国を)普通の国として扱うことはできない」とまで言い切ったポンペオ氏の演説、11月の大統領選対策であるとか、沈静化しないコロナ禍から国民の目をそらすためといった常とう句でその目的を矮小化すべきものではなく、後世で何かの節目として記憶されるものとなるのかもしれない。

■中国というフランケンシュタイン

演説の場には、ニクソン大統領図書館・博物館(Richard Nixon Presidential Library and Museum)を選び、1989年の天安門事件当時の民主運動家を招待客として迎えた。故ニクソン大統領は1972年の電撃的な米中接近の立役者であり、それ以降、旧ソビエト連邦と対峙する米国は対中協調路線を継続。米ソ冷戦が終わり、天安門事件という大きな悲劇を経ても、米国は「共産主義国家はそのうち民主主義国家に生まれ変わる」という楽観論をベースにしばしばバックアップしながら中国と付き合ってきた。

だが、数十年を経て、中国は急激な経済成長とともに経済・軍事のパワーを着実に拡大させ、覇権国・米国にとって代わる野心を隠さなくなった。晩年のニクソン氏が抱いた「我々は中国というフランケンシュタインを造ってしまったのかもしれない」という危惧が現実のものとなってしまった。

遅まきながら米国は、中国には前述のような“民主化の法則”がてんで通用しないと悟ったようだ。中国が「コロナウイルスの発生元が米国発である可能性」を示唆すると、トランプ大統領の態度は豹変、さらに今回のポンペオ氏の演説によって、50年来の方針を大転換するという明確なシグナルを北京と世界中に送ったのだ。

■「中国に同情や支持を示す国はひとつもない」

こうした米国の「本気度」は、直近の矢継ぎ早の施策からもうかがえる。中国の通信大手ファーウェイに対する強硬措置、南シナ海での日米豪の共同訓練、さらに突然、テキサス州ヒューストンの中国領事館に閉鎖命令を出し、数人を拘束するなど中国のスパイ網の摘発を始めたもようだ。中国も猛反発して、四川省成都の米国総領事館の閉鎖を命じたが、今のところ米国の攻勢のほうが際立っている。

中国にとって、米国の豹変は想定外だったかもしれない。タカ派の中国軍人として知られる中国国防大学戦略研究所の戴旭教授は、「中国に対する米国の怨恨の予想外の大きさ」に驚きを示しつつ、米国が国内で一糸乱れぬ統一戦線を構築したことと、その手段の情け容赦のなさを指摘し、それに対して「中国に同情や支持を示す国が一つもない」ことを嘆いている(中央日報7月21日)。

この大規模なチキンゲームは当面続きそうだが、米国は他の民主主義国家群とともに、「中国包囲網」を着々と敷きつつある。日本がこの包囲網の一角を占めるのは、誰がどう考えても必然だ。それが、この先日本が習近平を顔色なからしめるための最低限の条件である。その算段の参考となるのは、オーストラリアだ。

■中国のオーストラリアへの浸透工作は2004年から

オーストラリアと懇ろに付き合ってきた中国は、2004年8月から同国への工作を本格化。米豪同盟を破壊し、米国にノーといえる国にするのが中国の対豪工作の主眼だったという。中国系企業や移民が与野党に多額の政治献金を行ってきたほか、財界・学会・教育界・メディア業界など工作対象は多岐にわたり、中国が同国の各分野をいかに操作してきたか、その実態が明らかになった〔クライブ・ハミルトン『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』(飛鳥新社)〕。

危機を覚えた同国は、ここ数年で工作の対象となった要人の永住権を剝奪したり法改正を行うなどして、対外工作から身を守るための防壁を築いている。

スパイ防止法がきちんと整備されていたオーストラリアでもそんなありさまだ。外国勢力の工作を防ぐ法律もないうえに、中国との歴史的な関わりがオーストラリアより格段に深い日本であれば、同様かそれ以上の事態が進行していることは想像に難くない。かつて尖閣諸島に強引に上陸し、逮捕された元国会議員は、「最大の障害は日本政府だった」と振り返っているが、霞が関・永田町や大企業・マスメディアに深く浸透している「親中派」の存在と、尖閣における政府の不可解な不作為とを結びつけるのは難しくない。

中国、というより中国共産党という組織の傲岸さが世界中に周知され、それが引き起こした米中対立が新たな局面に突入した今、日本人の体に染みついた中国への忖度がまったく不要であることを、この際はっきり認識すべきだ。嫌なことをされたら「ノー」と言う、怒りを見せるときは見せる。そこに躊躇している時代ではもはやない。

米中いずれにつくのか、その選択を迫られる日が来る可能性は高い。その日のためにも、日本にはオーストラリアと同じかそれ以上の、大がかりな荒療治をやっておくことが必要なのではないか。

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西川 修一(にしかわ・しゅういち)
プレジデント編集部
1966年、神奈川県生まれ。中央大学法学部卒業。生命保険会社勤務、週刊誌・業界紙記者を経てプレジデント編集部に。

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(プレジデント編集部 西川 修一)

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