税金で黒歴史を隠蔽…世界で笑いモノにされたのは「日本」ではなく「進次郎大臣」あなたです
プレジデントオンライン / 2020年8月4日 15時15分
■大増税を準備するとある「お役所」
海の向こうではジョー・バイデン元副大統領が、気候変動と経済的不平等に対処するべく「トランプ減税」見直しによる大増税と太陽光パネルなどに約200兆円ばら撒くという「グリーン・ニューディール」政策を打ち出している。そして、炭素税調整など新たな大型増税の導入が検討されている状態だ。
左傾化を強める米国民主党ではサンライズ運動などの環境活動家の影響力が高まり、環境政策で雇用を失うことを懸念する国内産業・労働組合の意見が蔑ろにされつつある。仮にグリーン産業への雇用の移行がスムーズに進まなかった場合、気候変動に関する教条的な人間活動悪玉論が米国民の経済自体に息の根を止め、新型コロナウイルスによる経済苦に悩まされる米国経済にとってさらなる打撃となる可能性すらある状態だ。
一方、日本においても粛々と大増税を打ち出そうとしている「お役所」が存在している。しかも、米国とは違って景気刺激策のセットが並行準備されるわけでもなく、ただ省益のために国民を増税によって苦境に貶める計画が進んでいる。
■小泉進次郎大臣が率いる環境省
その計画を準備している役所は「小泉進次郎大臣が率いる環境省」である。2020年7月に行われた環境省の新事務次官人事は非常に示唆深いものだった。
環境省は非常に地味な役所であり、現在の1府12省庁の中では相対的に弱小省庁だと言える。省昇格したての頃の環境省は大蔵省や厚生省などからの次官を受け入れざるを得なかったが、昨今ではプロパー出身の事務次官が増加していた。ところが、今回の新事務次官人事では財務省出身の中井徳太郎環境事務次官が久しぶりに誕生することになったのだ。
その中井新環境事務次官が就任時記者会見に気候変動対策として有効性を強調した「新税」が「炭素税」である。
簡単に言うと、炭素税(≒カーボンプライシング)は化石燃料などを使用することに伴う二酸化炭素の排出量に応じて課税する政策のことだ。日本では既に一部が地球温暖化対策税として既存の税に上乗せする形で類似の負担が行われているが、この措置を大幅に拡大しようというのが炭素税導入の趣旨である。
■進次郎の増税の実態
4月10日の記者会見で、小泉環境大臣は、
「目の前の今、炭素税ということの前に、今後の社会の在り方をどういうふうに社会的な国民的な合意をつくっていけるかというのは、今、目の前はまず生活です。でも、その後には間違いなくこういったことを、政治だけではなくて、国民の皆さんの声も聞きながら一緒になって考えていかなければいけないと。炭素税に対する結論は、私はそういった先に来るのではないかなというふうに思います」
と述べており、2021年税制改革要望に盛り込むことを形式上はいったん見送っている。新型コロナウイルス下において当然の判断であるが、それと同時に、
「炭素税イコール税という名前が付いていますから、こんなときに増税かと。こういうことでカーボンプライシング、炭素税と言われるものが目指している脱炭素型に社会全体を変えていく歯車でもある、そういうことが、理解が届かなくなってしまっては元も子もありません」
とも述べており、国民の理解を促したうえで、炭素税を導入すること自体には前向きな姿勢を目指している。記者会見3カ月後の中井事務次官の発言は、政治家ではない役人が新税の創設の必要性について言及する越権的な行為であるが、実際には小泉大臣の本音を代弁したものだと言えよう。
実際、安倍政権は2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定し、カーボンプライシングに関して「国際的な動向や我が国の事情、産業の国際競争力への影響等を踏まえた専門的・技術的な議論が必要である」と明記しており、環境省の2020年税制改正要望にも同様の内容を盛り込んでいた。今年は時期尚早ということで炭素税導入を急がなかったにすぎないと見るべきだろう。
■セクシー記者会見での恥を税金でごまかす
2019年9月、国連での大臣としての初外遊中の「セクシー記者会見」で、外国人記者に「日本の石炭火力について半年から1年以内にどうするか」を問われて「減らします」以外に何も答えられなかった小泉大臣の姿は国民の記憶にバッチリと残ってしまった。
そして、あのセクシー記者会見で小泉大臣の隣の席に座って親しく話していた人物は、気候変動に関する環境マフィアとして知られるクリスティーナ・フィゲレス前国連気候変動枠組条約事務局長であった。
世界から「何も知らない」と笑われたのは日本ではなく小泉大臣だったのだが、この一件でメンツが潰れたことを余程気にしたのか、日本に戻った後の小泉大臣は炭素税にCO2削減と石炭火力潰しの活路を見いだしたようだ。
2019年11月29日、経団連の中西宏明会長らと懇談した際、二酸化炭素を排出する事業者に炭素税などで費用負担させる「カーボンプライシング」導入や石炭火力発電への依存脱却への協力を呼びかけるとともに、2020年2月4日衆議院予算委員会で「炭素税、排出量取引を含めてさらなる議論と理解が深まることを期待している」と岡田克也氏に答弁している。
■炭素税には財務省も関与している?
さらには、環境省は「令和2年度カーボンプライシング検討調査委託業務」(入札提出期限 令和2年4月8日)、「令和2年度カーボンプライシングが地域経済に及ぼす効果・影響に係る情報収集等委託業務」(入札提出期限 令和2年3月19日)の2つの入札案件を行い、「炭素税大増税」の理屈づくりための事前準備を着々と進めてきていた。
これは新型コロナウイルス問題が表面化し、国民が塗炭の苦しみを味わう中で進められていた増税準備という暴挙であった。
したがって、小泉大臣が上記の調査発注直後の記者会見で「2021年度の税制改正要望での炭素税見送りに言及」しても、来年度以降には再び増税要望を入れ込むチャンスを伺うだろうことは、冒頭の事務次官人事ひとつを見ても明らかである。
石原宏高副大臣のTwitter上での炭素税に関する有権者とのやり取りも注目に値する。
「『景気良くなってから炭素税』とのことですが、景気良くなったからと増税して、日本が本当に景気良くなったり、経済成長するとお考えでしょうか。私は、かなり違和感があります」
という一般有権者からの質問に対し、石原副大臣は、
「このままで、税と給付のバランスが正しいとお感じですか? 日銀の長期国債保有割合は3月末47%まで拡大しており違和感を感じています。」
と述べている。つまり、自民党税調のメンバーでもある石原副大臣は炭素税が日銀の国債保有割合にインパクトを与える規模になり得ることを示唆しており、炭素税が環境省だけでなく財務省の肝いり政策であることをうかがい知れる一幕があった。
■なんでも欧米に追随するのをやめなさい
また、小泉大臣は日本の高性能な火力発電所の輸出にも「待った」をかけている。ベトナムで設置予定であった火力発電所建設計画の再検討を訴えて潰そうとし、環境省内に同輸出の支援条件を厳格化するための検討会を立ち上げている。途上国は必ずしもグリーン発電のような高コスト体質の発電方法を望んでいるわけではなく、日本の高性能な火力発電所建設のビジネス機会は十分にある。それにもかかわらず、日本企業のビジネス機会を日本の大臣自ら積極的に潰そうというのだから堪らない。
たしかに、欧州は石炭火力発電所を全廃しようとしており、そのような動きが国際社会の一部で高まりつつあることは事実であろう。しかし、日本には日本のエネルギー事情があり、そして日本には日本のビジネスがある。何でもかんでも欧州に合わせるというのなら、日本独自の環境行政などやめてしまって、欧州委員会に政策を丸投げして決めてもらった良い。
仮にバイデン大統領が大統領選挙の結果として生まれた場合、日本の立場はますます厳しいものになるだろう。そのような厳しい情勢の中で世界と日本の意識が違うというなら、世界に対して日本の言い分を納得させるために権謀術数を張り巡らせて、日本のビジネスを守るために戦うのが日本の政治家だ。
外国が決めたことを子どもの使いのように日本で主張・推進する政治はいい加減にしてほしい。まして、それが国際会議で外国人から赤っ恥をかかされたことへの反動だとしたら最低である。われわれ日本国民は日本国の利益を代弁する政治家を欲している。
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早稲田大学招聘研究員
国内外のヘッジファンド・金融機関に対するトランプ政権分析のアドバイザー。
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(早稲田大学招聘研究員 渡瀬 裕哉)
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