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"ひらめき"を放置する人が知らない事実

プレジデントオンライン / 2020年8月9日 11時15分

新型コロナ感染予防のため、無観客で開幕を迎えたプロ野球。福岡PayPayドームでは人型ロボットが応援を行った。 - 時事通信フォト=写真

■“ひらめき”を放置する人が知らない事実

2020年は、アメリカが生んだ偉大な作家、アイザック・アシモフの生誕100年に当たる。

アシモフと言えば、まずは「SF」で有名である。代表作の『ファウンデーション』シリーズは、日本では『銀河帝国興亡史』の名前でも知られ、広大な銀河系を舞台に帝国の隆盛と衰退、そして再生の壮大な人間ドラマを描いた。最近、アップル社のティム・クック最高経営責任者によって、『ファウンデーション』シリーズが実写化され、同社のストリーミングサービスで2021年に配信されることが発表された。

アシモフは新しい概念を生み出すことにも長けており、今では一般的に用いられるようになったロボット工学やロボットに関する学問を意味する「ロボティックス」という言葉は、オックスフォード英語辞典によれば、アシモフによって「発明」されたものである。彼は「ロボティックス」という単語がすでに英語の中にあるものと思い込んで使ったのだという。

アシモフは、ロボットはどのように行動すべきかを記述した「ロボット工学三原則」を考案した。「ロボットは人間に危害を加えてはならない」などの条項を含むこれらの原則は、ロボットの開発において今でも参照されるべき命題だとみなされている。一方で、これらの三原則をたとえ守っていたとしても、一つひとつの状況下で具体的な判断や行動を決定するのは難しいという事実を小説の中で示した。

アシモフはSFだけでなく、あらゆるジャンルで膨大な作品を残した。『黒後家蜘蛛の会』シリーズをはじめとする推理小説や、自然科学全般や歴史などを扱ったノンフィクションの解説書や啓蒙書、聖書の入門書、さらには何度かにわたり自伝も執筆している。

結果として生涯に残した本の数は500冊以上になるとされる。まさに、万能の天才、ルネサンスの教養人のような存在だった。

■大きなインスピレーションを与えてくれる先人

アシモフは、現代における私たちの生き方を考えるうえでも、大きなインスピレーションを与えてくれる先人なのではないか。

私は、中学生の頃から、アメリカの雑誌「リーダーズ・ダイジェスト」を最初は日本語版、後に英語版で読んでいたが、ある号にアイザック・アシモフの記事があった。さまざまなことが書いてあったが、1つ強烈に覚えているのが「私は自分の思いついた重要なアイデアのすべてを本にしてきた」という趣旨のアシモフの言葉である。

確かに、彼が書いた本の多彩さを思えば、その言葉を信じることができる。同時に、そのような姿勢で生きることは、現代の私たちにとっての1つの理想になるのではないだろうか。

今日の生活は複雑化している。「食」や「情報」、「地域」のコミュニティーから「地球」規模の問題に至るまで、一日の中でさまざまなことに出合い、小さな「ひらめき」を持つことがある。

そのほとんどを、私たちは突き詰めることなく通り過ぎてしまう。もし、そのうちのいくつかだけでも形になるまで粘り強く追いかけたら、どれだけ仕事や生活が豊かになることだろう。

アシモフはもちろん特別な存在だが、その生き方から小さなヒントを得ることもできる。

「思いついた重要なアイデア」の「すべて」とまでは言わなくても、「一部分」でも実現する人生に、少しでも近づきたいものである。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。『幸せとは、気づくことである』(プレジデント社)など著書多数。

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(脳科学者 茂木 健一郎)

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