トランプが見抜いた韓国・文在寅の「勘違いしたプライド」と在韓米軍撤退の野望

プレジデントオンライン / 2020年8月4日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bet_Noire

■韓国G7招待は中国包囲網を強めるか

米国の対中国戦略の駒として、ドナルド・トランプ大統領は8月下旬に予定されているG7に、ロシア、オーストラリア、インド、韓国の4カ国を招く意向を示した。このような動きはトランプ大統領独自の動きというよりは、対中国に超党派で動きつつある米国全体の方向性として認識すべきだろう。

しかし、これらの国々をG7という既存の枠組みに招くということは、それらの国々と緊張関係にある既存のG7参加国や当該4カ国とライバル関係にある国との軋轢(あつれき)が生じることは明らかであり、対中戦略上の一手として必ずしも賢い行為と言えるかどうかはわからない。

たとえば、G7参加国であると、イギリス・ドイツはロシアの参加を快く思わないだろうし、日本も韓国の参加についてもろ手を挙げて賛成とはいかないだろう。地域大国に育つ見込みのインドネシアはオーストラリアの参加を好ましく考えないであろうし、パキスタンもインドの参加を望ましいと捉えないはずだ。つまり、一見して対中包囲網を形成するようで、実は対中包囲網に穴を開けかねない行為だと言えるだろう。

■文在寅は勘違いしている

もちろん、韓国の文在寅政権のような国家の格にこだわるだけの国は、自らがG7拡大版に仲間入りできるかのように錯覚して大はしゃぎである。しかし、日本としては対中の文脈での敵か味方かすらもわからない敵愾心(てきがいしん)をむき出しにする隣国がG7に招かれるだけでも迷惑だ。実際、日本政府が今回の件について素っ気ない態度を示した結果、韓国は通常の国家同士では用いないレベルの罵倒を日本政府に対して浴びせかけている始末である。

G7は、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7カ国であり、高い民主主義の水準を保つ国がその構成国となっている。この枠組みは地球上の民主主義国の範となる国が加盟するべきであり、現職大統領の前任者が毎回のように逮捕・投獄されるような国が名を連ねるべきものではない。いまやG7は国家の格や対中安保のためのものではなく、世界の秩序の在り方のカタチを決めるためのものだからだ。実際、トランプ政権が一度に4カ国を呼んだところで、次回も同じ形式で開催されるか否かも疑わしい。

■在韓米軍の撤退・縮小論取り消しの行く末

ところで、米国が韓国に秋波を送っているように見える件はG7への招待だけではない。7月23日、米国上院は2021年度国防権限法を賛成86、反対14で可決させた。既に同法案は下院でも可決しているために、あとは大統領の署名を待つばかりだ。

同法案内容には在韓駐留軍を現水準以下に削減しないことが明記されており、採決直前に報道ベースで流れていた在韓米軍の撤退・縮小論を打ち消す内容となっている。東アジアにおける韓国や台湾は陸軍や海軍の予算の取り合いの場となっており、予算法案前に在韓米軍予算の分捕り合いに際して情報がメディアにリークされることで、連邦議員に撤退・縮小への反対意見を表明させることも狙いであっただろう。そのもくろみ通り、一部のタカ派議員が在韓米軍の必要性について触れることで、今回も在韓米軍規模は維持される運びとなった。

ただし、同法案には例外条項として、国防長官が韓国と日本などの同盟国と協議をして適切だと認めた場合は在韓米軍を撤収できる旨も明記されている。つまり、連邦議会としては在韓米軍を建前として維持することを支持しつつも、トランプ大統領は手続きを踏めば韓国からの米軍撤収を開始させることができるという内容を含んだものとなっている。

一見するとトランプ政権の在韓米軍駐留経費や米韓貿易に関する激しいやり取りは両国の間に隙間風を吹かせているようだが、最近では、米国は前述の通り韓国をG7に招待し、在韓米軍を維持することから、韓国に融和的な態度を示しているようにも見える。どちらが米国の本音なのだろうか。

■韓国に対するトランプの本音

筆者は上記のような米国の対韓アプローチは、米国が韓国への対応に限界を感じていることに起因していると考えている。つまり、米国の本音は韓国に対する融和的な態度とは真逆のものではないかと推測する。

米国は対中国の観点から中長期的に大幅な軍事シフトを行うことを余儀なくされている。特に在外米軍の維持費を削って、効率的で有効性の高い軍事力を形成することが求められている。さらに、中国との戦略正面は朝鮮半島ではなく、南シナ海を含めた海洋方面に移っており、むしろ日本、台湾、グアム、東南アジア諸国、インドなどとの連携を深める重要性が増している。

そのうえ、トランプ大統領が北朝鮮の金正恩と会談したことで、朝鮮半島情勢は小康状態を保っており、第2次朝鮮戦争Xデーのような妄想は論外としても、一時期のような偶発的な軍事衝突が喧伝されるような状態ではなくなっている。仮に11月大統領選挙の結果として、ジョー・バイデン大統領および民主党連邦議会の政権が誕生した場合、彼らは軍事費を抑制する方向に舵を切ることは明白であり、米軍が東アジアに戦略正面をシフトする方向は変わらないだろうが、それが在韓米軍維持という結論になるかは疑問だ。

もちろん米国は韓国との関係をわざわざ壊す必要もないし、できれば海洋方面での外交・安全保障関係を強化したいと願っていることは間違いない。ただし、それは韓国との強力な同盟関係を維持し、在韓米軍の規模を将来にわたって維持することと同義ではない。

■安く済むからG7に韓国を呼んだ

トランプ大統領が在韓米軍撤退に度々言及していると報道されているが、それはトランプ大統領の意向というだけでなく米国の本音の部分が漏れていると捉えるべきだろう。

つまり、最近の米国の韓国に対する秋波は、在韓米軍を将来的に同規模で維持することが困難であることを見越し、在韓米軍の規模を徐々に縮小したとしても、米国は韓国を見捨てるわけではないという外交的なメッセージを送っているにすぎないものと思う。

冒頭のG7招待の文脈で見ても、ロシア、インド、オーストラリアと韓国では戦略的な重要性は全く異なるものと思ってよい。核武装国の北朝鮮が米中露のバランスを取りながら実質的な緩衝地として存在している以上、韓国が上記の3カ国と同等の対中戦略上の重要な地位を占めているわけではない。

米国は露印豪については「戦略上必要だから招いている」が、韓国については「安く済ませるために招いている」のだ。日本は積極的に賛成しないだろうが、露骨に反対もしないだろうから米国が支払う外交コストも安いと見ているのだろう。

■日本は韓国の出方を慎重に見るべき

トランプ政権は約4年間の任期中に、韓国の文在寅大統領がいかに勘違いした事大主義的なプライドを有しているかを理解したはずだ。そして、それはトランプ政権だけでなく、民主党政権側も一定の了解をしているものと想定される。

文在寅政権は過激な対日批判と中途半端な米中コウモリ外交によって、韓国が得意なはずの対米ロビーの影響力を激減させている状態だ。人権問題に煩いバイデン政権・民主党政権誕生を見越して、最近でも対日人権問題を盛んに喧伝しているが、それが通用するのは東アジアのことをよく知らない米国の左派系議員だけだろう。

したがって、今後、北朝鮮の動向次第によっては米国における韓国の重要性は低下していくことになり、韓国は対日強硬姿勢を強化することで地域に不安定要素を創り出して存在感を示そうとする可能性もある。日本としては米国の動向を見据えつつ、韓国の出方については常に警戒心をもって対応していくことが望まれる。

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渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)
早稲田大学招聘研究員
国内外のヘッジファンド・金融機関に対するトランプ政権分析のアドバイザー。

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(早稲田大学招聘研究員 渡瀬 裕哉)

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