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「知らなきゃ丸損」新型コロナで申請しないともらえない教育のお金

プレジデントオンライン / 2020年8月5日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

コロナ禍で収入が急減した人のために、国は給付制度の要件緩和や対象拡大を実施している。つまり「申請すればもらえるお金」が増えているのだ。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんが、教育費に困ったときに知らないと損する4つの制度を紹介する――。

■収入減で給付型の奨学金がもらえる可能性が出てきた

新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、親世代では世帯収入の激減、子世代(学生)にもアルバイト収入の激減など、教育費についての影響も生じています。そうした中で学びの機会を確保するため、経済的に困窮した学生などに対して、奨学金について、緊急の制度が設けられています。

奨学金には、大きく分けて「給付型」と「貸与型」があります。前者は返済の必要がないもの(もらえるお金)、後者は返済の必要があるもの(借りるお金)です。貸与型には、利子が付くもの、付かないものに分けられます。

最優先で考えたいのは、給付型の奨学金です。

高等教育の修学を支援するため、2020年から「高等教育の修学支援新制度」が創設されました。低所得世帯の学生に入学金・授業料を減免し、奨学金を給付するものです。減免額や奨学金の額は学校(大学、短期大学、専門学校など)や世帯収入などによって異なります。

給付などを受けるには収入制限があり、会社員の夫、収入のない妻、本人(大学生)、高校生の4人世帯の場合、年収461万円が上限です。

年収の条件がやや厳しく「要件から外れて利用できなかった」という人もいるかもしれませんが、コロナ禍で収入が減少(収入基準を満たす水準まで減少)した場合、利用できる可能性があります。

この制度は通常、春および秋に奨学生の募集が行われますが、家計急変の場合は通年で申し込みができることになっています。新型コロナウイルス感染症に関わる影響により家計が急変した場合もこれにあたり、申し込みが可能なのです。

■借りている場合でも給付を受け取れるケースも

また、すでに日本学生支援機構の奨学金を借りている場合でも、要件を満たせば、奨学金の給付を受けることができます。

収入基準は家族構成などによって規定されており、日本学生支援機構のホームページに掲載されている「進学資金シミュレーター」で、自身が該当するか、おおよその目安が確認できます。

金額は世帯の所得や学校などによって異なり、大学・短期大学・専修大学の場合は以下のようになっています。

●大学・短期大学・専修大学
【国公立】
・自宅通学/9800円~2万9200円
・自宅外通学/2万2300円~6万6700円
【私立】
・自宅通学/1万2800円~3万8300円
・自宅外通学/2万5300円~7万5800円

※生活保護を受けている生計維持者と同居している場合などは上乗せがある

金額には開きがありますが、これは世帯の所得によって3つの区分を設け、区分ごとに給付額が決められているためです。

たとえば前出の4人世帯で、学校が私立大学の場合は以下のようになります。

年収295万円以下/自宅通学3万8300円、自宅外通学7万5800円
年収295万円超395万円以下/自宅通学2万5600円、自宅外通学5万600円
年収395万円超461万円以下/自宅通学1万2800円、自宅外通学2万5300円

■授業料は収入に応じて最大70万円の免除

給付型奨学金を受けた場合には、授業料等減免・免除も受けられます(給付奨学金と同一の要件です)。

給付型奨学金と同様、通常は毎年春と秋に在学校で募集されますが、家計急変の場合は通年で申請できます。

減免額は学校や世帯の所得などによって異なります。

大学の授業料の減免額(年額)は以下のとおりで、この額を月額にして減免されます。

なお、入学金についても減免があります。

●大学の授業料減免額(年額)
国公立/17万8600円~53万5800円
私立/23万3400円~70万円

奨学金、授業料の減免とも、条件や給付額、申請時期などの詳細は日本学生支援機構のホームページで確認できます。なお、申し込みの際には、在学校に事前相談が必要です。

■コロナ禍ではじまった新たな奨学金の条件

貸与型の奨学金にも、緊急の措置が講じられています。

日本学生支援機構が行う、「緊急特別無利子貸与型奨学金」です。

同機構の奨学金には、利子が付かない第1種と、利子が付く第2種があり、第1種は成績の水準も高め、かつ、生計維持者(父母など)が住民税非課税であることなど、厳しい条件があります。対して2種では成績、経済についての条件も緩やかで利用しやすいと言えます。

「緊急特別無利子貸与型奨学金」は、コロナによって経済的に困窮した場合について、第2種と同様の条件で、無利子の貸付が受けられる、というものです。

対象は、国内の大学・短期大学・高等専門学校(4・5年生)・専修学校(専門課程)・大学院の学生・生徒になります。

利用できるのは、おもに次のような要件を満たす人です。

①日本学生支援機構に従来からある、第2種奨学金の推薦基準(人物、学力、家計)を満たしていること
②推薦時において第2種奨学金の貸与を受けていないこと
③多額の仕送り(年間150万円以上)を受けていないこと
④生活費や学費に占めるアルバイト収入の占める割合が高いこと
⑤学生等本人のアルバイト収入が新型コロナウイルス感染症拡大の影響で大幅に減少(前月比50%以上減少)したこと

■奨学金はお金について考える大切な機会

成績については、出身学校または在籍する学校における成績が平均水準以上など、複数の要件からいずれかを満たすこと。家計基準は在学している学校(国立大学か私立かなど)や世帯人数などによって異なります。

借りられる額も学校によって異なり、以下のようになっています。

●大学・短期大学/月額2万円~12万円(1万円刻み)
●大学院/月額5万円、8万円、10万円、13万円、15万円
(法科大学院の法学履修の場合、15万円に4万円または7万円の増額が可能)
●高等専門学校/本科4、5年生・専攻科 月額2万円~12万円(1万円刻み)
●専修学校(専門課程)/月額2万円~12万円(1万円刻み)

貸与の開始は2020年4~9月から選択でき、2021年3月まで貸与が受けられます。申込先は在学している学校の奨学金窓口で、学校からの推薦後、最短で翌月には口座に振り込まれます。

利子の負担が生じないことは大きなメリットと言えます。とはいえ、元本は卒業後に返済しなければならず、負担になることは否めません。奨学金を借りるのは学生本人、返すのも本人です。卒業後、無理なく返していけるか、返済計画を立ててしっかり検討したうえで利用しましょう。

収入がダウンしても奨学金を借りることで学びを継続できるのはいいことです。とはいえ、借金は、将来得られる収入を前借して先に使う、という意味合いのもの。

将来の権利を先取りするのですから、そのことを念頭に置き、しっかり学びたいものです。親御さんは、お子さんに対して、そうしたアドバイスもされるといいでしょう。お金について考える大切な機会になると思います。

なお、日本学生支援機構のホームページに「奨学金貸与・返還シミュレーション」がありますので、どの程度の返済が必要になるか、確認してみてください。

そのほか、大学によっては独自の給付金制度がありますので、詳細を確認し、有利なものを利用しましょう。

■返済期限を猶予する措置も

過去に貸与型の奨学金を利用し、現在、返済中という人もいるでしょう。

井戸美枝『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)
井戸美枝『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)

日本学生支援機構の奨学金については、「奨学金返還期限猶予に係る臨時対応」として、新型コロナウイルス感染症の影響によって、収入が減少するなどで奨学金の返還が困難となった場合について、2020年5~7月の返済分について、返還期限を猶予する措置をとりました。

会社員の場合、年収300万円以下、給与所得以外の所得を含む場合は年間所得金額(必要経費等控除後)200万円以下で、その水準になることが見込まれる場合も対象となります。

また毎月の返済額を減額する制度などもありますので、問い合わせてみるといいでしょう。

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井戸 美枝(いど・みえ)
ファイナンシャルプランナー
経済エッセイスト。関西大学卒業。厚生労働省社会保障審議会企業年金、個人年金部会委員。『大図解 届け出だけでもらえるお金』など著書多数。

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(ファイナンシャルプランナー 井戸 美枝 構成=高橋晴美)

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