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なぜ航空業界と金融機関は"蜜月"なのか。コロナ"焼け野原"決算でも救いの手

プレジデントオンライン / 2020年8月23日 15時15分

■財務はそれなりに健全、JALとANA

2020年3月期、日本航空の経常利益は1025億円で前年比38%減、ANAHDは同593億円、同62%減となりました。両社とも減収減益です。

日本航空では、世界経済の減速により日本発のビジネス需要が鈍化したことや、20年1月以降は新型コロナウイルスの影響で、国際旅客収入が前年比約10%減となったことなどを説明しています。国内旅客収入は順調でしたが、20年2月以降は外出自粛要請などに伴い、前年比約3%の減少です。全体的な傾向はANAHDもほぼ同様です。

注目したい指標に、「ロードファクター(座席利用率)」があります。便数も重要ですが、航空会社は効率的な運航で収益化を図っており、座席利用率がより重要な指標といえます。日本航空では国内線が20年1~3月期で約58%(前年比約13ポイント減)、ANAHDは約55%(同約12ポイント減)となっており、7割程度を維持していた過去の傾向を大きく下回っています。便数は激減し、座席利用率も利益が得られる水準に達していないとみられます。

日本航空の年間売上高は約1兆5000億円、ANAHDは約2兆円ですが、国際航空運送協会(IATA)では、今期、その半分が消失するという見通しを発表しています。実際、20年4~5月の座席利用率は両社とも約2割まで落ち込み、かなりの低水準です。

航空業界は特にコロナの影響が大きいと思いますが、大手2社は財務の健全性がそれなりにある状態です。キャッシュを潤沢に保有していますし、金融機関との関係性が非常に良好で資金繰りの懸念は生じていません。

ANAHDの決算報告では、「総額9500億円の資金調達の準備はできている」とあります。前述の売上高半減(1兆円減)という予測に符合する金額でもあり、売り上げが減る分は借り入れで賄える、というメッセージとも捉えられます。非常にスピーディな対応であり、金融機関との良好な関係性には驚かされました。

今後の業績は需要の回復ペース次第で、国際線は当面難しいとしても、収益の半分を占める国内線が回復すれば、ダメージはかなり緩和できます。20年4~5月が需要の底で、21年3月にかけて徐々に回復、というシナリオが想定され、21年3月時点で国内線需要が回復していれば、今期決算は売り上げ半減といった想定に収まると思います。

■五輪は開催されても多少の追い風になる程度

なお、五輪は開催されても多少の追い風になる程度で、劇的に数字が変化するほどのインパクトはないとみられます。とはいえ、旅客需要が喚起されるという点では、21年開催の注目度はそれなりにあるでしょう。

むしろ中長期的なファクターとして注視したいのが、リモートワークの普及で出張が減るといった、ニュー・ノーマルの影響です。コロナ禍が収束しても旅客の需要が減る、ということは、リスクシナリオとして想定しておく必要がありそうです。

しかしながら、前述のように資金調達の目処も立ち、破綻といった事態からは距離があります。コロナによる20年4~5月の大雨は収まり、20年6月以降は小雨。もし再び大雨に見舞われても、金融機関との関係からある程度の安心感はある。ただし、いつ晴れるかはわからず、新しい生活・ビジネス様式という雨雲にも注意、です。

(SMBC日興証券 金融経済調査部 クレジットアナリスト 吉川 毅 構成=高橋晴美)

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