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韓国「安倍土下座像」を平然と設置する悪趣味さ…一体日本は何度謝るべきなのか

プレジデントオンライン / 2020年8月7日 9時15分

写真=EPA/時事通信フォト

■植物園園長は前言撤回「男性を象徴するもの」

「ここまでやるのか……」

韓国の植物園で、「慰安婦像に“土下座”する安倍総理の像」が作られたとの報道を受けて、そう思った人は少なくないだろう。

7月25日、韓国江原道平昌にある民間の植物園で「永遠の贖罪」と題された像について、「土下座」している像が安倍総理を模したもので8月に除幕式が行われる、と韓国メディア「京郷新聞」が報じると、日本メディアもこれを報じた。像自体は以前からあったもののようで、これを理由に「今騒ぐのは、コロナの失政を隠したい安倍政権(や安倍支持者)の策略だ」などとする指摘もネット上にあるが、植物園は2012年の火災で休園しており、今年6月に再オープン、8月に除幕式を予定していたため、この時期に韓国メディアが報じたのがきっかけだ。

国境を越えてニュースが拡散され大騒動になったためか、植物園園長は当初、「安倍総理を模した」としていた前言を撤回。「男性を象徴するもの」「少女の父親かもしれない」などと述べたが、時すでに遅し。情報の拡散スピード、拡散範囲、それに対する反応がどういったものかという現状を全く理解していなかったのではないだろうか。

■韓国政府の具体的な対応はいまだなし

報道を受けて菅官房長官は「国際儀礼上、許されない」「報道が事実であるとすれば日韓関係に決定的な影響を与える」と批判。もちろん、設置は私有地であるため日本大使館前や領事館前の慰安婦像のように、ウィーン条約〔第22条・接受国は(中略)公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する〕を理由に日本政府が撤去を迫ることはできない。

一方で、私有地とはいえ、自宅の一角にひっそりと建てたものとは違い、「広く、多くの人に見せるため」に作られたものであることも事実。さすがに韓国政府が「他国の指導者を礼遇する外交慣例を考慮すべき」との立場を示したが、具体的な対応はまだ行われていないようだ。「良識」ある対応を望みたい。

像を制作した彫刻家は「西ドイツの(ブラント)首相がユダヤ人を賛える慰霊塔の前でひざまずき謝罪する姿から作品のインスピレーションを得た」とし、「安倍総理を模したものではない」と述べている。さらには「日本の真の謝罪があったとすれば作品の見方と解釈も変わっただろう。ひざまずいている対象が安倍首相かどうかを離れて重要なことは日本の真の謝罪」とも述べている。

■安倍総理は公式に謝罪しているという事実

だが、この発言には疑問がある。この彫刻家だけの誤解ではなく、日韓双方の世論であまり理解されていないように思うのだが、安倍総理は慰安婦問題に関して「公式に謝罪している」のである。

安倍総理は一般に右派、タカ派と言われるが、当初、日本の保守派が期待した「河野談話」の撤回を行わず、むしろ「見直しは考えていない」旨を閣議決定している。さらには2015年に韓国・朴槿恵政権の間で「日韓合意」を行っている。日韓合意では「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」したことや「今後、国連など国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える」としたこと、そのために日本政府が10億円を拠出したことが注目されてきたが、口頭で示された「合意内容」において、「安倍総理が慰安婦にお詫びした」旨が、岸田外務大臣(当時)から伝えられており、外務省のHPにも掲載されている。

「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」

強制性にこそ触れていないものの、「軍の関与」を認めたうえで「おわびと反省の気持ちを表明」しているのだ。保守派の間では悪名高い河野談話はあくまでも官房長官という立場のものだが、こちらは内閣総理大臣である。

■韓国に謝ったところで、永久に賠償を要求される

しかも日韓合意では「政府が10億円」を拠出しているのであり、民間からの寄付によっていたにもかかわらずこちらも保守派に評判の悪い「アジア女性基金」よりも格段に、「政府による賠償」に近い形だったのである。

さらに言えば安倍総理は第1次政権期の07年にも、慰安婦に対して「心から同情する」「申し訳ない気持ちでいっぱい」と、当時のブッシュ大統領との共同会見で述べ、それを受けたブッシュ大統領も「私は安倍総理の謝罪を受け入れる」とし、「河野談話と安倍総理の数々の演説は非常に率直で、誠意があったと思う」とまで述べている。

強制性を否定する安倍総理の振る舞いや対韓姿勢、あるいは支持者層の言動が、こうした「実は安倍総理は総理として公式に、何度も慰安婦問題に関して謝罪している」事実を打ち消しているのかもしれないが、安倍総理の数度にわたる慰安婦問題への謝罪は事実であることを確認しておきたい。

安倍支持層の間でもこうした「謝罪」への賛否は分かれている。それは「(強制連行を含め)過大に日本の悪事と喧伝されていることをも認めることになる」という点に加え、「韓国にいくら謝罪しても謝罪を強要され続ける」という思いがあるからだ。現に日本の総理大臣、ましてや対韓強硬派と言われがちな安倍総理がこれだけ謝っても「真の謝罪をしていない」として土下座像を作られてしまうとなれば、日本の保守派が言う「韓国に謝ったところで、永久に謝罪(と賠償)を要求されるだけだから無意味だ」との主張を、韓国の一部国民が証明しているようなものだ。

■かつてひざまずいて謝罪した鳩山元総理

さらにいえば、相手は慰安婦ではなく日本からの独立運動家の女性だったとはいえ、監房の前でひざまずいて謝罪した鳩山元総理という存在がいるにもかかわらず、土下座像を制作した彫刻家が「西ドイツの首相」にインスピレーションを得たと発言しているのはどういうわけなのか。元首相がここまでやっても、結局は一時的な話題として消費されたにすぎない、ということではないのか。

もし「土下座像」が鳩山元首相を模したものであれば、ここまでの軋轢(あつれき)を生まずに済んだのではないか、と思わせるような日本側のネットの書き込みも散見されたが、実際にひざまずいて謝罪したにもかかわらず像のモデルにならなかった鳩山元総理の心中はいかばかりか。

さすがに「土下座像」に対しては韓国国内からも反対の声が上がっているという。願わくば、韓国国内でこの像の是非を問い、あくまでも韓国国民の意見を参考にしたうえで撤去するなり非公開とするなりの処置が行われることを第一に期待したいところだ。

仮に日本で、原爆慰霊の像とされる母子や子供の像の前に、特定の個人であれ象徴的なものであれ、アメリカ人男性が土下座するような像が設置されれば、アメリカや原爆投下に対するスタンスがどうであれ、「悪趣味だ」「むしろ慰霊の思いを妨げる」とする意見が大半を占めるのではないだろうか。

■文在寅「土下座像」を建てたら日本の恥と思う

韓国との関係でいえばどうか。竹島を例に考えてみたい。韓国が竹島を不法占拠するため沿岸警備隊を派遣し、日本の海上保安庁巡視船を銃撃、日本の漁民を拿捕(だほ)抑留するなどして死者まで出したという“屈辱の歴史”が今も継続していること、そして韓国に竹島からの撤退と被害者への謝罪を求めるために、日本で竹島や被害者を象徴する像に李承晩(もしくは文在寅現大統領や、「韓国人男性を模した人物」)が土下座する像を建てたらどうなるか。さすがに国内外から猛反発を受けるだろう。たとえそれが私有地に建てられたものであったとしてもだ。

こうした像であれば、今般の「安倍総理土下座像」についてさほど批判していない人たちから、「韓国ヘイトの表れ」「歪んだナショナリズム」「撤去すべき」「国は韓国ヘイトを許すのか」との非難の声が上がるのではないかと思う。確かに、「竹島奪還すべし」と考える筆者でも「隣国宰相の土下座像」など建てられたら「日本の恥」だと思うし、国内から非難の声が上がってしかるべきだと思う。

「土下座像」は日本の恥という以上に、韓国の恥ではないか。韓国政府・韓国国民の「良識」が問われている。

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梶井 彩子(かじい・あやこ)
ライター
1980年生まれ。大学を卒業後、企業勤務を経てライター。言論サイトや雑誌などに寄稿。

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(ライター 梶井 彩子)

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