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「2倍速のほうが集中できる」オンライン授業に満足する大学生のリアル

プレジデントオンライン / 2020年8月6日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FilippoBacci

都内の大学はいまだにキャンパスでの授業を再開していない。このため授業はすべてオンラインだ。これで大学と言えるのだろうか。プレジデントオンライン編集部でインターンをしている大学4年生は「勉強の密度は確実に濃くなった」という一方、「これで大学生と言えるのか」と戸惑いを隠さない。本人のリポートをお届けしよう——。

■想像していなかった「キャンパスに通わない大学生活」

私は都内の大学に通う大学4年生である。私の人生最後の学生生活は、思い描いていたものと全く異なるものになっている。

私は今年度、まだ一度も大学のキャンパスで授業を受けていない。

街中では制服を着た中・高校生を見かけることが増えてきたが、私の学部は「春学期中はオンライン授業」という方針を発表している。9月から始まる秋学期については、オンラインを基本として一部の授業は学校で行う予定というお知らせが来ていたが、まだ詳しくは知らされていない。

授業が始まった4月当初は「オンラインで授業なんてどうなるのだろう」と半ばワクワクしていたが、今では毎日家からパソコンに向かって授業を受けるのには少しうんざりしている。

一方で、去年までの自分を振り返ると、今のほうが勉強の密度が濃くなっていると感じる。

■オンライン授業で「勉強の密度」が濃くなった3つの理由

その理由は3つある。

ひとつは「通学時間がなくなったこと」。私は今まで自宅から学校まで電車で1時間以上かけて通っていた。通学の電車が混むから1限はなるべく避けたいし、できる限り同じ曜日に授業を集中させて登校日を減らそうとしていた。

大学生は自分で時間割を組む。自由度が高い分毎年頭を悩ませる。1限をなるべく避け、かつ無駄のない時間割を組むことに毎年苦心していた。しかし、今年は家から授業を受けられるため、そんな悩みはなくなった。純粋に履修したい授業を取ることができている。

■カメラで顔を映すように求める先生もいるが…

2つ目は「いちばん集中できる時間に授業を聞けること」。いま私が受けている授業は、いずれもパワーポイントの資料に先生が音声で解説を加えるという形式だ。

配信方法は、生中継の「ライブ」といつでも視聴できる「オンデマンド」の2種類。ライブの授業では、ZoomかWebexというオンライン会議システムが使われている。

私の大学では、コロナ騒動の前からインターネット上から「学内システム」を利用できた。学生はこのシステムにログインすれば、授業に使う資料のダウンロードや先生からの連絡確認ができる。

ライブ授業では、会議システムに入るURLが授業開始までに学内システムで通知される。授業が始まると、パワーポイントの資料が画面に出てきて、先生が解説を加えていくというスタイルだ。

学生は、基本的に音声をミュートにして授業を聞く。ただ、質問があれば声を出して先生に質問することができる。学生に対してカメラで顔を映すように求める先生もいるが、私が履修している中ではそのような授業はひとつしかない。それ以外の授業では、私はカメラをオフにして参加している。

オンデマンドの授業も、学内システムから動画にアクセスできるようになっている。月曜1限の授業であれば、1限の開始時刻である月曜9時までにURLが通知される。こちらも、パワーポイントが画面に映し出され、そこに先生の音声がついているというものだ。

インターネット環境の整わない学生への配慮か、ライブ授業をする先生もほとんどが後日に録画を公開している。普段はオンデマンドだが生徒のプレゼンテーションの回のみライブ授業、というようにフレキシブルに組み合わせている先生もいる。

■眠い時間に無理して授業を受ける必要がない

オンデマンドでは自分の好きな時間に授業を聞ける。自分の予定に合わせて、一番集中できる時間に視聴できるのは、私にとって大きな魅力だ。今までは昼食後の授業は睡魔との戦いだったが、オンデマンドなら眠い時間に無理して授業を受ける必要もない。

4年生の前期は、就職活動で授業を欠席しがちになるという話を先輩から聞いていたが、オンデマンドになったことでそのような心配もほとんどせずに済んだ。

■90分間の授業を45分間で済ませることができる

3つ目は「好きな速さで、何度でも聞けること」。

先生方には申し訳ないが、オンデマンドの授業は1.5~2倍速で視聴して時短している。時間が短い分、集中できると感じる。聞き逃した部分は巻き戻してもう一度聞く。このため授業の理解度は普段より深いようにさえ感じている。

オンデマンドだと授業を聞かなくてもばれないではないか、と思われるかもしれないが、そんなことはない。

毎回の授業を視聴したうえで、小レポートやアンケート、課題などの提出が課せられている。より詳しくいえば、「毎授業ごとに小レポートやアンケート・課題提出を求める先生」と「毎授業ごとには求めないが学期末に課題提出を求める先生」と「そのどちらも求める先生」がいる。結局、きちんと授業を聞かなければならない。

例年であれば、先輩や同期から「この先生は簡単なレポートだけで評価するから普段の授業は聞かなくても大丈夫」「テストは簡単だからテスト前日にレジュメを読めばいいよ」などの情報を手に入れてうまく手を抜くことができた。しかし今年は評価の方法が定まっていない授業が多い。大学に登校してのテストを受けるという形式は禁止されているからだ。

だから仕方なく(?)配信された授業を毎回きちんと見ている。

■「掲示板」では普段の授業ではなかった質疑が盛んに

大学も先生も、工夫をしてくれている。

オンライン授業になってから、先に述べた学内システムに「掲示板」が設けられた。授業ごとに設けられており、授業を履修している学生と先生は自由に閲覧・書き込みができる。学生は、ここに授業に関する疑問点や、「もう少し大きな声で録音してください」といった要望を書き込んでいる。

私が履修しているある授業では、熱心な生徒が先生にいくつもの質問を書き込んでいる。先生も掲示板で返信していて、すでに20件以上のやり取りがある。先生や学生同士での対面のコミュニケーションは難しいが、掲示板で補われているところがある。むしろ普段の授業では生まれなかったやり取りかもしれない。

コロナウイルスの影響で学業がおろそかになってしまうのではないか、という懸念を耳にすることがあるが、オンラインという特性や先生の工夫により、十分に教育を受けられていると感じている。むしろ、私自身は例年よりもきちんと勉強している。

■実習の多い学部は「このままだと卒業論文が書けない」

とはいえ、このままずっとオンライン授業でいいとは思っていない。

まず、先生によってオンラインへの慣れや工夫に差があると感じる。

私の履修している授業はすべて「パワーポイント+音声解説」というスタイルがとられているため、比較的いつもの授業に近い。しかし、私の友人の話では、音声による解説がなく、学内システムに簡素なレジュメが掲載されるだけという授業もあるという。

ある先生は「普段なら学生の様子を見て雑談を挟むが、オンデマンドだとそれが難しい」と話していた。オンデマンドであっても、適度に雑談を挟んでくれる先生もいる。ちょっとした裏話や授業に関連した映画の紹介などを途中にしてくれると、最後まで飽きずに聞くことができる。

一方で、雑談を一切挟まずひたすら難しい内容を話す先生もいる。90分間(倍速であれば45分間)先生の顔も見えない中で専門用語や年号を聞き続けるのはなかなか大変だ。

さらに、全ての授業がオンラインに適しているわけではない。実習の多い学部に通う友人は「このままだと卒業論文が書けない」と言っていた。春学期の途中から一部の学部は制限付きで登校していたようだが、ずっとオンライン授業のままであれば教育の機会が大きく損なわれただろう。

■勉強に集中できるほうが「大学生らしい」のか

個人的には、学生生活最後の年は学校に通いたいと思っている。周りの友人からも、「オンライン授業は楽だけど、やっぱり学校に行って友達と授業を受けたいよね」という声をよく聞く。

この半年間で、オンライン授業には思いがけないメリットがあることに気付かされた。一方で、やはり秋学期からは学校に通いたいというのが本音である。

大学生の本分は勉強であるとするならば、黙々とパソコンに向かって勉強をしている今の状況は「大学生らしい」とも言えるかもしれない。しかし、それが本当の「大学生らしさ」なのだろうか。大学に行けないという異例の状況の中で、大学で学ぶことの意味は何なのだろう、とぼんやりと考えてしまった。

(プレジデントオンライン編集部)

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