橋下徹「安倍さん、政治家の執念は必ず有権者に伝わります」
プレジデントオンライン / 2020年8月12日 11時15分
(略)
■「及第点」の日本国憲法に欠けているのは国民投票を経ていないこと
コロナ対応に追われたまま、安倍晋三首相は任期の残り1年を迎えるのだろうか。
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いや、それでは安倍さんにとって不本意なはずだ。
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僕も日本国憲法の中に不満なところは色々とある。それでも今の日本の国の状況が落第点かと言えばそうではない。これだけ権力に対して自由気ままに意見ができ、もっと言えば、権力者をぼろクソに罵ることができるなんてほんと良い国だ。
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もちろん今の日本の政治行政が100点満点というわけではない。それでも、これだけ権力者をぼろクソに批判できるということ自体で、十分に及第点はあるんじゃないか。
日本という国をそのような国にしているのが、まさに日本国憲法なんだ。
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そのうえで言うと、このような日本国憲法の最大の欠陥は、その成立から現在にかけて、国民が一票を投じて信任したことは一度もないという一点に尽きると思う。
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憲法とは国の背骨に当たるものだ。単純な法律とは違う。ゆえに国会の審議だけでは不十分だ。
だから世界各国においても、憲法を制定する場合には、国会とは別の憲法制定国民会議を開いたり、国民投票に付したりするものだ。
この点、日本国憲法は成立過程において、敗戦直後、突貫工事的に作られたものであることは否定できない事実である。
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こんな超スピード実施を、今のメディアや学者、それに野党が目の当たりにしたなら、「拙速すぎる!!」と猛反対していたに違いない。日本国憲法はそれくらいの超スピードで実施されたのだ。
だからこそ、国民の意思を確認するために国民に一票投じてもらう国民投票が必要だと考える。
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僕は安倍さんと、6月20日の『NewsBAR橋下』(ABEMA)の番組内で、限られた時間ではあったが、以上のような話をした。
安倍さんも「国民投票は必要だ」ということを強く語られ、その思いには並々ならぬものがあったと僕は感じた。
憲法改正の国民投票に足をかけることなく、このまま来年の9月で任期満了となるわけがない。このままの任期満了で、安倍さんは自らの政治家人生に完全燃焼を感じるはずがない。
と、僕は勝手に思っている。
■「ワンイシュー選挙はダメ」なんていうメディアやインテリはアホだ!
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普通に公約を掲げて選挙で勝利しても、公約を前に進めるエネルギーは生まれない。
というのも、「選挙で勝利したからといって、有権者は公約すべてを支持したわけではない」「その公約については知らなかった」「その公約には反対だったがその他の理由で支持しただけだ」などというネガティブな批判が山ほど生じるからだ。
だから、選挙で公約を前に進めるためには、できる限り公約を絞り込み、選挙の争点を絞り込む方がいい。「ワンイシュー」に近づけば近づくほど、選挙によってその公約を前に進めるエネルギーが生まれる。
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この点、メディアやインテリたちは、ワンイシュー選挙はダメだと口をそろえて言う。「幅広く政策を掲げて、じっくり吟味しろ」と。
アホか! そんな選挙をやっていたら何が選挙の争点なのかが分からなくなってしまうだろ!
「自民党の○○という政策は支持するけど、××という政策は支持できない。××という政策は立憲民主党を支持する」と、ある有権者がなった場合に、その有権者は自民党と立憲民主党のどちらに投票すべきなのか。そしてどちらに投票したにせよ、選挙結果を受けて、どの政策が支持されたと言えるのか。
そもそも選挙は「人」を選ぶものだ。「政策」を選ぶものではない。
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そしてそのような選挙の争点が国民的な大論争となったうえで、有権者に選択してもらえれば、「選挙の結果が、有権者の政策選択の結果だ」と堂々と言うことができ、政治を力強く前に進めることができるだろう。
そしてここで大論争となるということは、メディアがガンガン選挙の争点を報じるような環境を作ることだ。
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メディアが選挙の争点をガンガン報じることによって、有権者はその政治課題を真剣に考えるようになる。そして有権者が考えれば考えるほど、その課題について前に進めるエネルギーが注入される。その上で、どちらの政治的な方向性で進むべきか、その政策はYESかNOかの選挙結果が出れば、そこには民意のエネルギーが多大に注入され政治は前に進んでいく。
政治的に膠着してしまった課題であればあるほど、国民的な大争点とした上で選挙に問うのがいい。いくら話し合いで解決しようとしても解決しない問題は、最後は民意のエネルギーを背景とした選挙で動かすしかない。
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■大阪都構想、郵政民営化……執念のエネルギーは有権者に伝わる!
現在、安倍政権の支持率は下落傾向である。内閣支持率の浮き沈みは激しいので、その時その時の支持率に一喜一憂していても仕方がない。
ただ不思議なもので、政治家の執念のエネルギーは有権者に伝わるものである。
僕は2015年5月17日の大阪都構想の是非を問う住民投票において、反対多数の否決となり敗北した。僕は政治家を引退した。
しかし松井一郎現大阪市長や吉村洋文現大阪府知事は、その後大阪都構想の再挑戦に踏み切った。吉村さんには、僕が大阪維新の会代表だった時に、僕直轄の大阪都構想戦略チームのリーダーを務めてもらった。
住民投票が反対多数で否決となった瞬間、吉村さんは目を真っ赤にして泣いていた。その悔しい思いは吉村さんの胸の奥のマグマとなった。
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2019年4月、松井さんと吉村さんは、当時の知事職・市長職を同時に辞任し、そしてお互いに知事職・市長職を入れ替える、ダブル・クロス選挙を仕掛けた。
そのときメディアやインテリたちは「選挙を私物化している!」と猛批判した。大阪中で大騒ぎとなった。
大阪都構想を前に進めるか、終わらせるかの二択の選挙。
結果は、松井さんと吉村さんの圧勝だった。
まさに大阪都構想に再挑戦するという二人の執念が有権者に伝わったのだ。
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安倍さんも、憲法改正に向けての執念をぜひ有権者に示して欲しい。有権者は政治家の熱に動かされる。これをポピュリズムだ、大衆扇動だとインテリたちは批判するであろうが、国民の権利・自由を奪わない限り、政治家は自らの執念のエネルギーで有権者を動かしていくべきだ。
小泉純一郎元首相の郵政民営化にかける執念もそのようなものだった。
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(ここまでリード文を除き約2600字、メールマガジン全文は約1万2900字です)
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.211(8月11日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【憲法改正「成功」へのステップ】安倍さん、政治家の執念は必ず有権者に伝わります!》特集です。
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元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。
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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)
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