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40人中39位の劣等生が1年で「英語満点で学年1位」になれた勉強法

プレジデントオンライン / 2020年8月26日 15時15分

英語教材開発者の清水建二氏 - 撮影=原 貴彦

英語を身に付けるために効果的な勉強法は何か。ベストセラー『英単語の語源図鑑』著者の清水建二氏は、小学校で最下位クラスの劣等生だったが、英語を1年勉強して中学1年で学年トップになれたという。イーオンの三宅義和社長が聞いた――。(第3回/全3回)

■「家族5人三畳一間」極貧生活で劣等生だった少年時代

【三宅義和(イーオン社長)】清水先生の英語との出会いは、やはり中学校の授業だったのでしょうか?

【清水建二(KEN’S ENGLISH INSTITUTE代表、英語教材開発者)】私の場合、みんなより1年だけ早かったのです。私は東京の浅草出身で、三人兄姉の末っ子。父親は儲からない漆職人で、浅草の観音様の裏に仕事場を兼ねた借家を借り、家族5人三畳一間で寝起きを共にするような極貧生活をしていました。

【三宅】そうですか。

【清水】当時の私はとにかく勉強が大嫌いでした。家が落ち着いて勉強をするような環境ではなかったということもあるのですが、それを理由にして勉強はまったくやらず、クラス40人中、成績は常に35番から39番くらいだったのです。

【三宅】それでもビリにはならなかった。

【清水】一人、断トツでできない子が同じクラスにいたからです。しかし、6年生になってその子が転校してしまい、「いよいよ俺もビリになるのか」と心配していたとき、担任の先生に呼び出されました。すると、これまで40番だった子は学力不振が原因で、いまでいう特別支援の学校に転校になったというのです。そして神妙な面持ちで「お前もこのままだと、そっちの学校に転校させることになるから頑張れ」と言われたのです。

■「このままでは落第」という背水の陣で出会った英語

イーオン社長の三宅義和氏
撮影=原 貴彦
イーオン社長の三宅義和氏 - 撮影=原 貴彦

【三宅】それはまた強烈な体験ですね。

【清水】半分冗談だったと思うのですが、とにかくお尻に火が付きました。しかし、それまでの勉強の積み重ねがゼロなので、何から始めたらいいのかもわからない。「やっぱり難しいかな」とあきらめかけていたとき、家で3歳年上の姉が英語の本を読んでいたのです。「それ何?」と聞いたら「英語の教科書だよ」と。

実はそのとき初めて、中学校に入ると英語という科目があることを知ったのですが、ぱっとひらめきました。「いまのうちから英語の勉強を始めておけば、中学のスタートラインでみんなに差をつけることができるんじゃないか」と。

【三宅】なるほど!

【清水】そこで生まれて初めて、母親に500円のお小遣いをねだって、近所の本屋さんで「これだったらできるかな」と思える本を選びました。旺文社の『基礎からわかる英会話』という本で、半分くらいはイラストが入っている、本当に誰にでもわかるような本です。380円でした。

【三宅】よく覚えていますね(笑)。当時ですから、本に音源はついていないですよね?

【清水】ないです。英文に振ってあるカタカナのルビが頼りの綱でした。それを買って、中学に入学するまで毎日それをやりました。とはいえ、家では勉強できないので、授業中にやっていたら、小学校を卒業するまでにそのテキストを全部暗記できたのです。

【三宅】それはすごい!

【清水】そこで中学校に入ったとき、「クラスで一番の成績を英語でとろう」と生まれて初めて目標を立てたのです。

■初の英語テストは、まさかの平均点以下

【三宅】では、すぐに一番になれたのでは?

【清水】それが、初めて臨んだ試験で100点どころか平均点にも満たない点数だったのです。平均点が80点くらいなのに、私は70点。

【三宅】それはショックですね。

【清水】本当に涙が出るくらいの衝撃で一生立ち直れないと思いました。しかし、よくよく考えてみたら原因がわかりました。

試験のなかに“This is a pen.”という英文があって、それを訳せという問題が10題あったのです。しかし、悲しいかな、私は「日本語に訳しなさい」という言葉の意味がよくわからなかった(笑)。「これはペンです」と書けばいいのかなと思いましたが、変に英語をかじっていたので「まさかそんな簡単な問題を出すわけがないだろう」と思ってしまったのです。

【三宅】もったいない(笑)。なんと答えたのですか?

【清水】カタカナで「ディスイズアペンヌ」と書きました(笑)。授業中に先生が「いいか、penはペンと読むんじゃないんだ。nの音に注意してペンヌと読みなさい」と言っていたことを覚えていたからです。この和訳問題で30点減点されて、70点だったのです。

【三宅】読解力の問題だったわけですね。

【清水】はい。これをきっかけに「日本語も勉強しなきゃいけないんだ」と思って、とりあえず漢字を中心に英語と同じくらい時間をかけて勉強するようになりました。その結果、次の英語の定期テストで満点を取ることができたのです。たまたま同じ学年でほかに100点を取った子がいなくて、小学校時代に落ちこぼれだった私が学年で一番になるという快挙を成し得ました。

【三宅】そこで自信をつけて、中学、高校と英語熱をどんどん高めていかれたわけですね。

【清水】そうですね。不思議なもので、英語で自信がついたおかげで、他の教科もそれほど勉強しなくても段々できるようになっていきましたね。

【三宅】ちなみに中学時代は、どういったテキストを使われたのですか?

【清水】その380円の本と学校の教科書だけです。当時は英語のテキストの種類が限られていましたし、そもそも買えるような家庭環境ではなかったので。

■若い英語の先生たちへのアドバイス

【三宅】グローバル化の時代にあって、学校の英語教師の役割も重要になってくると思いますが、これから英語の教員を目指そうと思っている若者に対して、何かアドバイスはおありですか?

【清水】実際、私の教え子で英語の教員をしている人は結構いるのです。しかし、基本的に中学や高校に入ると、先生たちは部活動など英語以外の仕事で時間が取られてしまいます。そして英語の勉強が疎かになってしまう。

だから一番強く言いたいのは、「どんな状況に置かれても自分の英語の力を高めていけるような努力をしてほしい」ということですね。

【三宅】先生ご自身はどんなことをされましたか?

【清水】通訳案内士の資格を取りました。

【三宅】当時はかなりの難関試験でしたよね?

【清水】はい。実は2校目に赴任したとき、自分が学生時代に抱いていた教員のイメージとのズレがあまりに大きくなってしまい、一時真剣に退職を考えていた時期があったのです。それで前々からやりたいと思っていた通訳ガイドの仕事に転職しようと思い、1年間、死に物狂いで勉強をやりました。これまでの人生を振り返ってみても、あの1年間が一番勉強しましたね。

【三宅】そうでしたか。でも、結局は教員を続けられましたよね。

【清水】はい。試験に合格して鼻息荒く大手旅行会社の面接に行ったのですが、どこに行っても「いま、高校の先生でいらっしゃるのでしたら、絶対に辞めないほうが良いですよ。うち、そんなに給料を出せませんから」と言われまして(笑)。当時は小さい子供が2人いて、妻も専業主婦だったので、あきらめました。いま思うと、あのとき教員を続けて良かったなと思います。勉強したこともまったく無駄になっていませんから。

■目移りしないで、ひとつの教材をやりきる

【三宅】清水先生がご自身でなされてきた学習法の中で、今の中高生におすすめというものはおありでしょうか?

【清水】学習法というものは、人によりけりだと思いますが、私の経験的にいうと、やはり「ひとつの教材を徹底的にやりきる」というのがいいと思います。

いまの時代、本でもネットでも教材はいくらでもありますから、目移りしてしまう気持ちはわからないでもないのですが、あえてひとつに絞って、「これだけは全部やったぞ」と自信を持っていえるくらいやり尽くす経験をすると、英語に対する自信につながってくるのではないかと思います。

【三宅】私も同感です。リスニングなどはどうやって鍛えたのですか?

【清水】三宅社長もそうだったはずですが、当時はリスニングの勉強をしようと思っても教材が全然ありませんでした。

【三宅】本当に限られていましたね。

【清水】だから私が高校に入ってからは、文化放送のラジオ番組『百万人の英語』をひたすら聴いていました。あと田崎清忠さんが講師をやられていた時代のNHKテレビの英会話も毎回観ていたのですが、その田崎さんが作られていた教材を、お小遣いを貯めて買いました。若い人は知らないと思いますが、ペラペラのレコード、ソノシート版です。

【三宅】懐かしいですね。それを聴きながら、一緒に声に出して読まれたとか?

【清水】そうですね。指示も全部英語でやってくれたので、その指示まで一緒にしゃべるくらい徹底的に聴きこみました。

■文法を覚えるよりも、例文を覚えたほうがいい

【三宅】ほかにはおすすめの勉強法はありますか?

【清水】文法が苦手という人は多いと思いますが、文法についてはあまり難しく考えずに、いろんな例文を丸ごと覚えていったほうがいいと感じています。

【三宅】最近の高校の授業は、コミュニケーション重視・文法軽視と聞いたことがありますが、実際はどうなのでしょう?

【清水】いや、少なくとも私が経験した学校ではどこも文法重視です。

しかし、この文法の授業についていけずに脱落する子が圧倒的に多いのです。たとえばいわゆる5文型を習うとき、「これが主語、これが動詞、これが補語、これが目的語」と出てきますが、そこでつまずく生徒が非常に多い。でも、どれが補語で、どれが目的語で、どの動詞が自動詞か他動詞かといった話は、別に覚える必要はないと思います。

たとえば「discuss(討論する)」という動詞は「discuss the problem(その問題について討論する)」というフレーズで丸ごと覚えておけば、「discuss」が他動詞だということが自然にわかるわけですよね。そのとき、「the problem」は目的語だということを知る必要はまったくない。それにもかかわらず、そのあたりを頑なにこだわる先生が多いのです。

【三宅】たしかに5文型をやりだすと、コミュニケーションの手段としての英語というより、お勉強のための英語になってしまいますからね。

【清水】だから、すべての文法的な要素が入った例文を、100個でも200個でもいいのですが、それを徹底的に覚える。もちろんその際は音読しながら覚える。これを続ければ、自然と文法的な知識も身に付くはずですし、ある程度のパターンを頭に叩き込んでおけば単語を入れ替えることによって表現の幅は簡単に広げられますからね。

■学問に王道なし

【三宅】最後に全国の英語学習者にメッセージをお願いします。

【清水】英語のことわざに“There is no royal road to learning.”(学問に王道なし)とあるように、英語の勉強にも王道はないと思います。

人それぞれ目標や特性が違うわけですから、勉強の仕方が異なって当然です。ですから、とくに若い方は、まずは焦らずに、自分に合った勉強方法はどういうものなのかを試行錯誤を繰り返しながら見つけていただきたいと思います。一見回り道のようにみえて、それが一番確実ではないでしょうか。ただし、先ほども言ったように、ひとつの教材を最後までやり続けた上で合う・合わないを判断してほしいです。

【三宅】そこは重要なポイントですね。

【清水】はい。学校の先生の言うことが絶対だと思う必要もありません。一回やってみて「自分に合わない」と思ったら、別の方法を考えればいいのです。

それが見つかったら、あとは「継続は力なり」という言葉を信じて、頑張ってほしいですね。

【三宅】本日は貴重なお話をありがとうございました。

英語教材開発者の清水建二氏(左)とイーオン社長の三宅義和氏(右)
撮影=原 貴彦
英語教材開発者の清水建二氏(左)とイーオン社長の三宅義和氏(右) - 撮影=原 貴彦

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三宅 義和(みやけ・よしかず)
イーオン社長
1951年、岡山県生まれ。大阪大学法学部卒業。1985年イーオン入社。人事、社員研修、企業研修などに携わる。その後、教育企画部長、総務部長、イーオン・イースト・ジャパン社長を経て、2014年イーオン社長就任。一般社団法人全国外国語教育振興協会元理事、NPO法人小学校英語指導者認定協議会理事。趣味は、読書、英語音読、ピアノ、合氣道。

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清水 建二 (しみず・けんじ)
元高校教師
1955年、東京都浅草生まれ。埼玉県立越谷北高校を卒業後、上智大学文学部英文学科に進む。卒業後、約40年にわたり高等学校で英語教員を務める。基礎から上級まで、わかりやすくユニークな教え方に定評があり、生徒たちからは「シミケン」の愛称で親しまれた。現在はKEN'S ENGLISH INSTITUTE代表として、英語教材の開発に従事。英語学習に関する著書多数。

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(イーオン社長 三宅 義和、元高校教師 清水 建二  構成=郷 和貴 撮影=原 貴彦)

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