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コロナ危機から自分の資産を「守れる人」と「守れない人」の決定的な差

プレジデントオンライン / 2020年8月14日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/D-Keine

コロナ危機から自分の資産を守る方法はあるのか。元モルガン銀行日本代表の藤巻健史氏は「日本円は決して安全な資産ではない。世界各国が大規模な財政出動を実施しており、今後、法定通貨は軒並み価値が下落するだろう。避難通貨は米ドルだけではない」という——。

※本稿は、藤巻健史『コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

■「暗号資産」は第二の避難通貨になり得る

長年にわたって放置されてきた日本の財政危機、そして「異次元の量的緩和」による日銀のメタボ化。日本の状況はいわば、「いつこぼれてもおかしくないほど水のあふれたコップ」のようなものでした。そこにコロナショックが起きたことで、ついに水がこぼれる(=ハイパーインフレ)日がやってきたというのが、私の見解です。

もし、ハイパーインフレになったら、手元の円資産の価値は急落します。コツコツ貯めた貯金の価値が10分の1、下手をすると1000分の1にまでなってしまうかもしれないのです。だからこそ、今すぐに円を別の「避難通貨」(有事の際に、自分の資産を守るために買う通貨)に逃がすべきなのです。

避難通貨として第一に考えるべきは、米ドルだと思います。コロナショックで打撃を受けたとはいえ、やはり世界を見渡したとき、アメリカより信用に足る通貨があるようには思えないからです。

ただし、避難通貨を考えるに当たり、もう一つ検討してもらいたいものがあります。それは、「暗号資産」。ビットコインやイーサリアムといった、いわゆる仮想通貨です。なぜかというと、ドルを含めて、中央銀行が発行する全世界の法定通貨は、すべて下落する可能性が高いからです。

■法定通貨が軒並み下落する時への備えになる

コロナショックによる経済危機を最小限に抑えるために、今、世界中の国々が給付金などの大規模な財政出動を実施し、そのために、赤字国債を発行しています。各国の中央銀行は日銀と同様に国債を買い取っており、その結果、日本ほどではないとはいえ、今やどの通貨もジャブジャブの状態です。

今後、法定通貨は軒並み価値が下落すると思います。すなわちモノの値段が上がるということ、インフレになるということです。

もっとも、為替とは相対的なもので、どちらが「より弱くなるか」の問題です。物々交換の時代に戻らない限り、どれか一つの通貨は残ります。それは、世界の基軸通貨であるドルだと思うのです。法定通貨に関してはドル一強時代の到来だと考えられます。

それゆえに私はドルを買うことを勧めているのですが、それと同時にクローズアップされてくると思われるのが、「暗号資産(仮想通貨)」です。

特にビットコインのように発行上限が決まっている暗号資産は、価値の希薄化が発行過多で起こることがありません。法定通貨が発行過多で価値を落としていくのを、人々は目の当たりに見ているので、魅力を感じるでしょう。

■キプロスの金融危機で避難通貨になったというビットコイン

例えば、ビットコインは、マイニング(採掘)をした人に対して、報酬としてビットコインが新規発行される仕組みですが、おおよそ4年に1回、「半減期」を設けています。

これは報酬として発行されるビットコインが半分になる時期。これによって発行を抑え、価値の希薄化を抑え、通貨の価値を高めています。2020年5月にも半減期がありました。つまり、法定通貨が軒並み価値を希薄化させても、ビットコインは希薄化が起こらないという利点があります。

実際、暗号資産は、すでに避難通貨として活用されたことがあります。2013年に、地中海のタックスヘイブンであるキプロスで金融危機が起こった時、銀行預金に課税する措置が取られたのですが、その時、キプロスの銀行に預金していたキプロス人の資産家やキプロスをタックスヘイブンとしていたロシア人たちはこぞって、預金を暗号資産に替えた、と言われています。

ここ最近、ビットコインやイーサリアムといった暗号資産の価格が軒並み上昇しているのも、法定通貨から避難している人が増えているからかもしれません。実際、ブラジルやアルゼンチン、南アフリカ、レバノンといった新興国では、暗号資産の需要が急増しているそうです。

一部の人が主張するように、暗号資産が法定通貨に取って代わるようなことは当面ないと思いますが、今後、その地位が高まっていくのは間違いないと思われます。

■今のうちに口座だけでも作っておこう

暗号資産は、今はまだ投機目的で使われることが多いですが、決済の簡単さと手数料の低さを考えると、そう遠くない未来に、決済手段としても使われるようになると思います。特に銀行経由での決済が難しい新興国との貿易では主流になるでしょう。私の予想では、海外との取引は、暗号資産とドルの二強になると見ています。

経済危機が起きてから口座を開くのでは遅いので、今のうちに、口座だけでも開設しておきましょう。かつて仮想通貨流出事件により、いくつかの取引所が閉鎖に追い込まれたことを踏まえると、取引所の安全性はチェックすべきでしょう。

暗号資産には、有名な「ビットコイン」「イーサリアム」「リップル」など様々な銘柄があり、日々、増え続けています。ただ、避難通貨という観点から考えれば、あくまで流動性の高いもの(多くの取引が行われているもの)を選ぶべきです。

そして、口座を開いたら、1000円、2000円と少額で良いので投資してみましょう。すると、暗号資産がどのようなものかが体感でき、どれぐらい資産を移すべきか、正しく判断できるようになるはずです。

■コロナショックで高騰「有事の金」は本当に安全なのか

一方、「有事の金」という言葉があるように、危機時には金を買っておくべきだという主張が根強くあります。実際、このコロナ禍によって、金の人気が高まり、価格も高騰しています。

金は貴金属会社などで購入することができ、現物を買うだけでなく、ETF(上場投資信託)や商品先物、純金積立などの形で購入することもできます。

確かに金は、インフレ対応型の商品と言われており、選択肢の一つだと思います。ただ、私自身は金を買ったことがないので、自信を持ってお勧めすることはできない、というのが正直なところです。ただ、一つだけ言っておきたいのは、金をオールマイティと考えないほうがよいということです。

金の国際価格(ドル建ての金の価格)は現在、かなり高騰しています。2000年頃は1トロイオンス(約31g)=約300ドルでしたが、2020年5月現在は1700ドルを超えています。2000年頃と比べれば、6倍近い価格です。

この国際価格は、日本のインフレとは関係なく、世界がインフレかデフレかで決まります。2011年頃にも1800ドルに達したことがあるのですが、その時は多くのトレーダーがバブルだと言っていました。

■有事の金ですら今後は全く読めない

つまり、為替の面では儲かる可能性が高いとはいえ、国際価格の今後の動きがまったく読めないのです。

藤巻健史『コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方』(PHPビジネス新書)
藤巻健史『コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方』(PHPビジネス新書)

金の価格(円価)を決める要因の50%は為替、50%は国際価格なのです。もしドル建てで金を購入後、円ドル相場が1ドル100円から200円になったとしても、国際価格が半分になればチャラになってしまうということです。

また、金は他の金融商品と異なり、利息を生まないことも頭に入れておくべきでしょう。

もちろん、「キラキラ光るものを見るのが好きだから、金の延べ棒を手元に置いておきたい」というなら、それはその人の自由ですが、私は、手元に金があったら、火事と泥棒が怖くて落ち着きません(笑)。鑑賞して楽しむことも考えるなら、私はそのお金で絵画を買います。

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藤巻 健史(ふじまき・たけし)
フジマキ・ジャパン代表取締役
1950年東京生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。80年に行費留学にてMBAを取得(米ノースウエスタン大学大学院・ケロッグスクール)。85年米モルガン銀行入行。当時、東京市場唯一の外銀日本人支店長に就任。2000年に同行退行後。1999年より2012年まで一橋大学経済学部で、02年より09年まで早稲田大学大学院商学研究科で非常勤講師。日本金融学会所属。現在(株)フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。2013年から19年までは参議院議員を務めた。

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(フジマキ・ジャパン代表取締役 藤巻 健史)

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