「金を買え」が持論の私が、史上最高値の現在も「金を買え」という理由
プレジデントオンライン / 2020年8月13日 9時15分
■金価格は「上がらざるを得ない」
金価格の高騰が止まらない。8月5日の海外市場では、1トロイオンス=2044.34ドルの高値を付け、国内小売価格も1グラム=7608円の史上最高値を付けている。その後、値を下げる日もあるものの、むしろ、これから買って長期で保有したい人にとってありがたいものとなっている。
7月27日に出版した拙著『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)では、「金1トロイオンス=2000ドルの非常識な未来を読み解く」としたが、タイミングを合わせるように金価格が急騰し始め、あたかも金の先行きを予言していたかのような結果になっている。
筆者は以前から、中長期的なトレンドにおいて金価格は上がらざるを得ず、投資対象に必ず組み入れるよう投資家に勧めてきた。残念ながら実行する投資家の絶対数は限られていたわけだが、その考え方が正しかったことが今まさに証明されている。
拙著で詳しく解説しているが、一般の個人は資産の3分の1程度を金で保有するのがベストだというのが私の考えである。筆者が勧めるように投資を行っていた投資家の資産は、今はしっかりと増えているはずである。
■金を買うのは「もう遅い」のか?
金価格が史上最高値を更新し続けていることもあり、筆者のところには最近になってマスコミから取材申し込みが殺到している。
![江守哲『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/9/200/img_39e112131821d52f5981d4f877d0d246405796.jpg)
かねて金投資の重要性をマスコミやセミナー、私が発行するメールマガジンで訴えてきたが、今年に入るまで反応はさほどでもなかった。ところが、価格が高くなるとこのように問い合わせが増えるものである。
その一方で、別の問い合わせも増えている。それは、「今の価格水準で買うべきか」というものである。すでに史上最高値を更新していることから、多くの投資家は「買いそびれた」「今から買うには高すぎる」などと感じているようである。
また、現在のような市場動向になると、「価格高騰に乗り遅れたくない」との一心で飛びついて買いたくなるものである。このように焦って行った判断は、往々にして失敗に終わるケースが少なくない。
そのため、今回の金価格の上昇も、「投資家は買うのは避けるべき」という結論になりそうだが、本当にそうなのだろうか?
■高かろうが安かろうが「買い続ける」べき
はっきりいえば「出遅れた一般人が今から金価格高騰のメリットを享受する方法」があるのか否かということだ。
結論から述べると「価格が高かろうが、安かろうが、買い続ける」べきである。金を保有する意味・意義を考えれば、その理由がわかるだろう。
金を保有すべき理由には、主に次の3つが考えられる。
②低金利時代の長期化
③インフレヘッジ
①リスクヘッジ
多くの一般人は、株式投資を資産形成の中心に据えているだろう。これ自体は正しい。しかし、理解していないことが2つある。
1つは、株式と金は逆相関にあるという点だ。株価が下げたときに、金は上げやすい傾向がある。これは統計で明確に証明されている。したがって、株式投資を行う際には、株価の下落リスクを緩和させるため、同額の金を保有するというのが本来「正しい姿」であると考える。
もう1つは、金投資のパフォーマンスは、過去20年で見ると株式投資よりも高いことだ。これもほとんど知られていない「事実」である。この点から、金投資を資産形成に含めないのは、むしろ大きな問題であるといえる。
②低金利時代の長期化
金には金利がつかないため、金利が高いときには現金に比べて保有コストが高くなる。しかし、今は世界的な低金利時代である。そして日米欧の中央銀行は、現在の低金利政策をこの先数年間は維持すると言明している。
金利を引き上げたり、あるいは現在行っている国債や社債などの資産買い入れ政策をやめたりすれば、金利が上昇し、経済に悪影響が出ることになる。現在のコロナ禍では、そのような政策の失敗は許されない。したがって、当面は低金利状態が続くことになる。これは、金を保有するうえで大きなメリットになる。
③インフレヘッジ
現時点でインフレリスクが顕在化しているわけではない。しかし、欧米などでは、「将来のインフレに備えるべき」との論調が少なからず聞かれる。
インフレになれば、現金の価値は自然と目減りする。現金を保有するよりも、何か物を買ったほうがよいことになる。その場合には、今も昔も第一に選好されるのが「金」である。
日本ですぐにインフレになるとは考えにくいところだが、「将来に備える」という観点を忘れてはならない。そもそも金投資は長期で行うものである。今日明日に収益を上げようと考えないことが重要である。
■価格に惑わされず長期分散投資すべし
これらの点を考えると、「金価格が下げるのを待って買いたい」とか、「将来いくらになるだろう」などといった予測は、ほとんど意味をなさなくなる。「押し目」を待って買いたいと考える投資家は多いだろうが、押し目が来るかどうかは誰にもわからない。
金投資の目的を正しく理解していれば、「資金と時間を分散し、ゆっくりと買い進めていくのがベスト」であることがわかるだろう。
これは、株式投資にもいえることである。なんでもそうだが、いちどきにすべてをつぎ込むのは正しい方法ではない。
投資の達人でもない限り、一般人であれば、やはり資金分散・時間分散が正しい投資方法であろう。そうすれば、結果として購入価格を平均値に寄せることができ、資産価格の上昇が資産増加につながるだろう。
■継続して投資をすれば「よいこと」がある
金価格の歴史を振り返れば、1990年代後半に円建て金価格が1グラム=1000円を割り込んでいたとき、積み立て投資を継続していれば、今ごろ金資産は相応に増えているはずだ。また、リーマン・ショック時や今回のコロナショックなどの危機で金価格が下げた際に積み立て投資を継続していれば、やはり資産は増えていることになる。
![成功したビジネスパーソン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/4/670/img_94762d24876bd281e83995fa7a65d1a1575624.jpg)
継続して投資をしていれば、将来によいことがある典型的な例である。
現在の金市場を取り巻く環境を考慮すれば、金価格がバブルであると断じることはできない。むしろ、今後さらに上昇してもおかしくない材料が多いのが実態である。その理由は、拙著を読んでいただくのが近道である。
■長期的には金価格1万ドルになっても驚きはない
将来の金価格を予測しても仕方がないのだが、数年後、数十年後の金価格を想定すれば、それこそ5000ドルや1万ドルといった想像もできない価格水準になっても私は驚かない。
たとえば、原油相場は1990年代まで長らく10ドル台で取引されていたが、2000年代に入ると急伸し始め、最終的には150ドル近くまで上昇している。新興国が台頭し、世界の石油需要が拡大したことで、一時的ではあるにしろ10年間で15倍に跳ね上がったのである。
また、ナスダック指数も今や1万ポイントを上回っている。2000年のハイテクバブル時には、5132ポイントに達し、まさにバブル化したが、その後はバブル崩壊で暴落し、1108ポイントまで下げた。当時は、「二度と5000ポイントを超えることはない」といわれていたが、いまや20年間で安値から10倍の水準に達している。
一方、金価格もつい15年前までは、500ドル以下の水準での取引が常態化していた。それが今になってようやく4倍になったにすぎない。今後も上昇が続き、5000ドルや、2015年の安値水準から10倍に相当する1万ドルになっても驚いてはいけないだろう。
■一般人こそ今すぐ金投資を開始し、ゆっくり増やすべき理由
繰り返すが、金は値上がり益を積極的に狙う投資対象ではない。あくまで株式投資のリスクヘッジである。とはいえ、現在の市場環境や各国政府・中央銀行の政策が継続されるのであれば、値上がり益も期待できる状況にあることも事実であろう。
今はまさに金にとって最高の投資環境が整っている。だからこそ、高値に慌てて買いつくのではなく、長期的視点で、資金を分けて時間を分散しながら買い続けるのがよいだろう。
私としては「株式・金・現金の3分割法」を唱えているわけであるが、「資産の3割も金で持つのは怖い」と感じる方も多いかもしれない。しかし、最終的にはこれくらいの配分にしたほうが、投資効果を発揮しやすいのである。
いきなり資産の3割を金で保有するのは難しいと感じるのであれば、最初は5%くらいから始めるとよいだろう。そして、10%、15%、20%といった具合に徐々にその割合を増やしていくとよい。そうすれば、徐々に金投資の効果を体感し、金保有のメリットが理解できるようになるはずだ。
世界や日本の富裕層、資産家は、早くから金投資を始めている。彼らには「資産を減らさない」「インフレに備える」などの明確な理由がある。しかし私は、一般人こそ、今すぐにでも金投資を始めるべきと考えている。
■出遅れた一般人が今から金投資を始めるには?
一般人にとって、金投資ほどシンプルで簡単な投資対象はないだろう。何も考えずに、一定額を一定のペースで買い続けるだけでいい。
投資に回せる資金の3分の1を買い続けるだけ。そして、その方法も極めて簡単である。
①上場投資信託(ETF)を買う
実は、株式市場でも金を買うことができる。株式投資をすでに行っている投資家であれば、証券口座を持っているだろう。金は株式と同じように買うことができることを、意外に知らない投資家が多い。金価格に連動する上場投資信託(ETF)を買えば、金の地金を買うのと同じ効果がある。
②現物を買う、純金積み立てを利用する
金現物が良いというのであれば、地金商で実際に金の地金を買えばよいだろう。資金に応じてさまざまな種類がある。ただし、時間分散が可能なほどの小さいロットでは買えない可能性がある。資金的な問題があれば、純金積み立てなどの方法に頼るやり方もあるだろう。
③先物・CFDを利用する
上記以外にも、先物市場やCFDを利用する方法もある。証拠金制度を利用して、少ない資金で多くの資金の投資が可能であり、資金を効率よく使用できるというメリットがある。
このように、金投資にはさまざまな方法があり、他の金融商品や銘柄などを取引するのとまったく同じようにできる。さらに、時間分散しながら投資するだけであり、市場分析や難しい投資判断を行う必要すらない。
ここまで理解できれば、あとは実際に金投資を行うだけである。
5年後、10年後、20年後を見据え、今すぐにでも金投資の準備を始め、実際にスタートするとよい。そうすれば、その分だけ早く、金投資の重要性への理解が進み、さらにその成果も享受できるはずである。
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エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役
慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事に入社し、非鉄金属取引に従事。1996年に英国住友商事(現欧州住友商事)に出向しロンドンに駐在。その後、Metallgesellschaft Ltd.、三井物産フューチャーズを経て、2007年7月にアストマックス入社。同社でファンドマネージャーに就任。アストマックス退社後、2015年4月にエモリキャピタルマネジメントを設立。ヘッジファンドを中心とした資産運用や株式・為替・債券・コモディティ市場の情報提供などを事業として展開。
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(エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役 江守 哲)
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