コロナ感染大国の米国で"濃厚接触"パーティー発生!…感染者に石を投げる日本人
プレジデントオンライン / 2020年8月12日 11時15分
■コロナが止まらないアメリカ
イリノイ州ビオリアのテレビ局WMBDが、全世界に驚愕のニュースを伝えました。
第10回目となる「White Trash Bash(白人の低所得者層のフリをして騒ぐイベント)」を開催したというのです。500~1000もの人たちがイリノイ川に集まったうえ、恐ろしいことにマスクをつけず、ソーシャルディスタンス(社会的距離)すら取っていなかったと言います。
米国は日本とは比べ物にならない規模で新たな感染者と死者を出し続けています。その渦中でさらなる感染者を出すことが必至のパーティーに参加するというのは、われわれ日本人からすると到底考えられない出来事に思われます。しかし、今回の記事で紹介をするアメリカの事情をひも解いていくと、米国で感染者が止まらない理由への理解が深まるのではないでしょうか。
■感染をお詫びする日本人、自分が悪いと思わないアメリカ人
特効薬やワクチンが存在しない現時点においては、コロナの持つ強い感染力を理解し、感染拡大防止のために「自分が移らない、他人へ移さない」という意識を一人ひとりが持つことが重要です。この意識と対策を言語化したものが「ソーシャルディスタンス」「3密回避」というワードと言えるでしょう。
日本においては、感染者が「自分の意識が甘かった。社会に迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪するケースが少なくありません。感染したことが報道された有名人は、メディアに向かって「申し訳ありませんでした」と深くお詫びをします。これは日本人特有のメンタリティから来るものと感じます。
大阪大学の三浦麻子教授らが今年、3月から4月にかけて行った調査によると、「新型コロナウイルスに感染する人は自業自得だ」と回答したのは、日本11.50%、米国1.00%という結果が出ています。この調査における母集団についていえば、アメリカ人は「コロナに感染したのは自分が悪い」と考える人が日本人の10分の1以下しかいないということが分かります。
■「Go To トラベルキャンペーン」でも旅行に行かない
「感染は自業自得」と日本人が他国に比べて感じる理由として、同氏は「公正世界仮説」の可能性を挙げています。これは「良いことは良い人に起こるし、その逆も然り」という考え方のことで、新型コロナ感染という悪いことが起こったのも、その人が悪いからだとするものです。日本では感染者の自宅に投石行為などが起こっています。このような感染者バッシングには「感染した人=その人が悪い」という意識が寄与していると考えられます。
日本においては「感染すると自分が悪人になってしまう」とメンタリティがあるとするなら、それが感染拡大防止にも一役買っていると推測できるのではないでしょうか。政府が落ち込んだ観光業への景気対策としてかかげた「Go To トラベルキャンペーン」も、日本人としては大手を振って利用しづらい雰囲気があります。「日々、感染者が増加している日本のコロナ禍でのんきに旅行にでかけ、感染したら迷惑をかけてしまう」と不安で旅行にいかない、という人も多いと考えます。実際、リサーチ会社のNEXERが行った調査によると、約7割の人が「Go To トラベルキャンペーンでも旅行に行かない」と答えています。これは日本人の「公正世界仮説」を考えると、納得感があるといえるのではないでしょうか。
アメリカ人には「感染したら迷惑を掛ける」という意識が日本人より薄弱と考えるならば、パーティー参加への抑止力や、マスク装着、ソーシャルディスタンスへの協力意識がないことも理解できる気がします。
■陰謀論を信じるアメリカ人
さらにアメリカ人はコロナにおけるデータとファクト、科学を正しく理解できていないことが、感染拡大につながっている可能性があります。
アメリカの調査会社Pew Researchが8914人の成人の米国人を対象に行った調査によると、23%が「ウイルスは意図的に開発された」と回答し、6%は「誤って開発された」と信じているのです。つまり、回答者の3人に1人が「ウイルスは陰謀によって生まれた」と考えているのです。
また、この陰謀論は「ビルゲイツ氏やイルミナティが影の支配者になって、ワクチン開発で儲けるために作り出した」「人口調整を行うため」と信じる人もおり、「そもそも、コロナウイルス事態が存在しない」と考える人までいるのです。コロナウイルスの驚異を信じない人は当然ながら、うがい・手洗い・ソーシャルディスタンスといった感染拡大防止への意識は皆無といえます。今年7月には米国・テキサス州の30歳の男性がコロナに感染するかどうかを試す「コロナパーティー」に参加、感染して死亡前に「コロナへの認識を誤った」と後悔していたことが明らかになっています。その他にも、InstagramやTik Tokで多数のフォロワー数を抱えるカリフォルニアのインフルエンサー・Larzさんは便器やドアノブをなめる「コロナチャレンジ」で感染、ドアノブをなめる動画を公開したことで多数の模倣者を出したとして非難を受ける事態となっています。
■国のトップもデータとファクトを信じない
米国の最高権力者であるドナルド・トランプ大統領も、データとファクトを信じない姿を見せてしまうことがあります。
FOXニュースとのインタビューで、米国におけるコロナ致死率は「世界的に最も低い」とトランプ大統領は答えています。同ニュースのクリス氏がジョンズ・ホプキンズ大学の分析データを示しながら、「米国の致死率は3.8%と最悪レベルで、これはは世界で7番目に高い値だ。欧州は米国からの渡航を禁止している」と反論するも、「米国の致死率は世界最低レベルだと信じている」と述べました。「たった1日で900人もの米国人が死亡している事実がある」とクリス氏が切り返すと、「フェイクニュースだ」とトランプ大統領は反論したのです。
このやり取りを見るに、トランプ大統領の主張はデータやファクトに基づく発言ではなく、個人的な願望と思えます。国のリーダーが感染症に対する正しい認識を持たなければ、当然に然るべき手を打つことは難しいのではないでしょうか。
■アメリカの対応をヨーロッパや中国が非難する事態
感染拡大が止まらない米国の様子をみて、欧州では信頼失墜、中国は非難する事態へと発展しています。
欧州外交問題評議会(ECFR)の世論調査によると、「デンマーク、ポルトガル、フランス、ドイツ、スペインの回答者の3分の2以上が、米国のコロナ対応における惨憺たる結果に対して米国への印象が悪化した」と答えているのです。特にフランスとドイツで信頼悪化は顕著となっており、フランスの回答者の46%、ドイツの回答者の42%が「非常に悪化した」と答えています。
また、中国は対応に苦慮する米国に対して「アメリカ病だ」と厳しく非難しています。中国共産党の機関紙「環球時報」では「政党は選挙での勝利を優先し、感染拡大防止策を打てていない。米国は秋と冬はさらなる感染拡大に苦しむだろう」と掲載、いまだ有効な策が打てていないと米国を酷評しています。
中国が米国を非難する立場にあるかは別の話として、今回のパーティーのどんちゃん騒ぎを見てしまうと、米国の感染拡大防止への意識の薄弱さを感じてしまうのも、無理からぬことと思えます。
(ビジネスジャーナリスト 黒坂 岳央)
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