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安倍首相の「佐藤超え」、二階氏の「角栄超え」…最長記録を競い合う永田町の異常さ

プレジデントオンライン / 2020年8月7日 18時15分

自民党の二階俊博幹事長(左)から緊急提言を受け取る安倍晋三首相=2020年7月22日、首相官邸 - 写真=時事通信フォト

■政治家の「記録」優先で政治日程が組み立てられている

永田町で「最長記録」を意識したうごめきが活発化している。8月から9月にかけて安倍晋三首相、二階俊博自民党幹事長、森山裕国対委員長が、それぞれ「最長記録」に達しようとしている。しかも、その記録を意識しながら政治日程が議論されている。

国民がコロナ対応への専念を熱望する中、政治家の「記録」優先で政治日程が組み立てられるとしたら、本末転倒ではないか。

達成されそうな「記録」を確認しておきたい。

安倍晋三首相の通算首相在任は、すでに明治・大正期の桂太郎氏を超えて歴代1位になっており、記録を日々更新している。今度は「連続在任日数」の記録がかかる。8月24日に、第2次安倍政権が発足してからの連続在任日数が2799日となり、大叔父の佐藤栄作を抜く。

二階氏は9月8日に幹事長在任日数が、1498日となり、田中角栄元首相を抜いてトップに立つ。国会運営の調整役として二階氏を支える森山氏は、一足早く9月3日に連続在職日数が1128日となり、中川秀直氏を抜くことになる。

3人が「最長」なとるのは、ひとえに安倍政権が安定的に運営されてきた証左ではある。安倍氏の場合、尊敬する祖父・岸信介元首相の弟でもある佐藤氏を超えるのは悲願でもある。だが、これらの「個人記録」が政治日程の中で重視されすぎていることは問題だ。

今、永田町は、党役員人事と内閣改造の話でもちきりだ。衆院当選5、6回の入閣待望組は、今か今かと「その日」を待っている。

一連の人事は8月末から9月の初旬に行われると言われてきた。安倍氏は「佐藤超え」して初の人事を断行することになる。だが、ここに来て「9月中旬以降説」が出ている。二階氏が「田中超え」を達成してから人事を行うということだ。

■二階氏周辺から「内閣改造と党役員人事は9月8日以降に」の声

二階氏は田中氏を師と仰ぎ、若手議員のころは田中派に籍を置いていた。54歳で首相に就任する前に幹事長としての在任日数を重ねた田中氏と、齢81歳、政治家としては晩年に入って追いつきつつある二階氏を同列に扱うわけにはいかないが、二階氏にとって田中氏と肩をならべ、追い越すことは望外の喜びだ。

「中川超え」がかかる森山氏も同じ。二階氏と森山氏は連日のように国会などで情報交換している。話題は当然人事の話になるが、二階氏は決まって「まだどうなるか定まっていないようだ」と伝えているという。

二階氏に近い幹部は、「9月8日以降の人事にすべきだ」と安倍氏を牽制。一方、安倍氏周辺からも、日程については二階氏側に配慮していいのではないか、というささやきが漏れる。

安倍氏と二階氏は、政治信条もこれまで歩いてきた道も違う。ただ安倍氏は自分にない調整能力を持つ二階氏に一目を置く。二階氏が安倍3選を可能にする党則改正を提唱しなければ、今、安倍氏は首相官邸にいなかったことだろう。8月4日には野党である立憲民主党の辻元清美幹事長代行を自民党本部に招き、観光政策について意見交換した。そういう融通無碍な政治手法は、安倍政権の幅を広げている。

■「角栄超え」を達成したら二階氏は幹事長を辞めるのか

安倍氏は8月6日、訪問先の広島市で内閣改造・党役員人事の日程を尋ねられ「人事については、現在、政府を挙げて、コロナウイルス対策に全力を挙げて取り組んでおります。人事の話はまだ先だというふうに考えている」と語った。婉曲的な表現だが「9月8日以降」の日程とする考えをにじませたものだ。

コロナ対応を優先するのは悪いことではない。しかし、二階氏の「角栄超え」をアシストするために政治日程を組み立てるとしたら、動機は不純だと言わざるを得ない。

そもそも9月8日以降に人事を先送れば、二階氏が喜ぶのか、という根源的な疑問が残る。二階氏は「角栄超え」を目指しているが、それを達成したら幹事長を辞めてもいいと思っているわけではない。できれば、次の人事で続投を果たしたい。

そんな中で人事が8日以降に行われることになったらどうなるか。「角栄超えは達成させるから、幹事長職は後進に道を譲ってほしい」というメッセージとも受け取れる。

■唯一可能な「佐藤超え」を達成した後、秋に急失速か

安倍氏が「ポスト安倍」の候補として岸田文雄党政調会長を念頭に置いていることは広く知られている。そして、その布石として次の人事では岸田氏の幹事長起用を考えている。であれば、「9月8日以降に党役員人事を行って岸田幹事長」というシナリオが浮かび上がる。その場合、二階氏は「副総裁」などのポストに棚上げとなるだろう。

安倍氏の考えが透けてみえるだけに、二階氏も穏やかでない。今後は人事日程の先送りを求めるのではなく、幹事長続投の確約を露骨に求めるのではないか。

二階氏は軸足をどこに置いているのか見極めにくい政治家だ。1500日近くの間、幹事長として安倍氏を支え続けてきたが、その一方で、安倍氏の天敵でもある石破茂氏とも気脈を通じる。そして、最近では菅義偉官房長官にもエールを送っている。もし人事で冷遇すると、瞬時に牙をむかれる危険があることを安倍氏は知っている。

総裁任期があと1年となる安倍氏。自らが手がける最後の人事になるかもしれない今回、二階氏の扱いで判断を間違えると、政権に重大な亀裂が入りかねない。

永田町には「憲法改正を自ら達成するのは絶望的となり、東京五輪の来年開催にも暗雲が漂う中、安倍氏はやる気を失いつつある。来年の任期を待たずに政権を投げ出すのでは」という観測が出回っている。唯一達成可能な「佐藤超え」を達成した後、急失速する可能性をはらむ秋が待っている。

(永田町コンフィデンシャル)

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