「徴用工問題」を解決するには、文在寅大統領に辞めてもらうしかない
プレジデントオンライン / 2020年8月11日 18時15分
■早ければ数カ月以内に「資産の売却命令」が出てしまう
元徴用工の損害賠償請求訴訟で、日本製鉄(旧新日鉄住金)が8月7日、即時抗告書を提出した。即時抗告したのは、韓国の裁判所=大邱地裁浦項支部=の資産差し押さえの命令決定を差し止めるためである。
「元徴用工」とは戦時中の旧朝鮮半島出身労働者のことで、日本製鉄の訴訟は彼らが日本の企業を相手取って起こした訴訟のひとつだ。2018年10月に韓国大法院(最高裁)が判決を確定させ、日本企業側に賠償を命じたことが徴用工問題の発端となった。
今後、韓国裁判所が即時抗告を認めるかどうかを判断するが、いまのところの見通しでは即時抗告は棄却され、差し押さえが完了する。その結果、早ければ数カ月以内に資産の売却命令が出る。
日本製鉄は「徴用工問題は日韓請求権・経済協力協定によって『完全かつ最終的に解決された』ものと理解している」とするコメントを発表している。
韓国の裁判所は今年6月、日本製鉄の資産に対する差し押さえ命令の決定書を同社が受け取ったとみなす「公示送達」の手続きを取った。その結果、8月4日午前0時(日本時間同)に差し押さえの効力が発生していた。
■ぎりぎりになって妥協してくる可能性はないとは言えない
資産の売却命令が出される可能性が濃厚になったからと言ってあわててはならない。沙鴎一歩は昨年11月26日付の記事「失効直前に破棄を取り消す韓国の駄々っ子ぶり」でこう指摘した。
「韓国大統領府は、文在寅(ムンジェイン)大統領も出席して国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、8月に日本に破棄を通行した『日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)』について、失効を回避することを決定し、日本政府に連絡してきた。回避決定は、失効期限(23日午前0時)の6時間前だった。」
GSOMIAの破棄をめぐっては、韓国は土壇場になって折れた。韓国も文大統領も「わがままな駄々っ子」なのである。
徴用工問題でもぎりぎりになって妥協してくる可能性はある。だからこそ、日本政府はあきらめることなく韓国との交渉を続け、その模様をメディアを使って世界に伝え、日本の正当性を国際社会に訴えるべきである。
■菅官房長官「現金化に至れば、日韓関係に深刻な状況を招く」
菅義偉官房長官は8月4日の記者会見で、「日本企業の正当な経済活動の保護の観点から、あらゆる選択肢を視野に入れて毅然と対応していきたい。韓国の司法手続きは明確な国際法違反だ。現金化に至れば、日韓関係に深刻な状況を招く」と述べた。
政府内では、韓国に対する関税引き上げや送金停止が検討されているが、麻生太郎副総理兼財務相もこの日の記者会見で「現金化された場合、しかるべく対応を取らざるを得ない方向になる可能性が出てきている」と話した。
これまでに2つの解決策が示された。
ひとつはこうだ。韓国政府が2019年6月に「日韓両国の企業が自発的な出資で、元徴用工らへの慰謝料相当額を支払う」との和解案を示した。しかし、韓国政府案は「自発的」としつつも日本企業の出資を前提としていた。このため、日本政府は事実上の賠償になるとみて反対した。
2つ目の解決策はこうだ。同年12月に韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長(当時)が「日韓両国の企業・個人の寄付金」を元徴用工らへの慰謝料に充てる法案を国会に提出した。この文議長案は特定の企業に言及せず、「寄付を強要してはならない」との規定も明記されていた。
現実的には被告の日本企業が寄付に応じることを想定しているものの、日本政府は「被告企業が人道的観点から自主的に寄付を決めるなら反対する理由はない」とした。これに対し、韓国政府は「被告企業が参加しないこともあり得るとなれば、大法院(最高裁)判決の履行が無効になりかねない」と主張し、文議長案は支持されなかった。
■文大統領の脳裏には「反日種族主義」が塗り込まれている
文在寅政権は4月15日の総選挙で与党が圧勝し、文大統領は2022年春の次期大統領選の勝利に向けても前進したといわれる。しかし韓国内の情勢はそんなに甘くはない。
沙鴎一歩の手元に『反日種族主義』(2019年11月、文藝春秋発行)という本がある。韓国で同年7月に発売されて以来、ベストセラーとなった書籍の日本語版だ。反日種族主義とは、日本を永遠の敵とみなす敵対感情のことである。
文大統領の脳裏には、この反日種族主義がべったりと塗り固められている。文氏は反日種族主義を利用して自らの政権を維持・強化し、この先に続けようと画策している。日本にとって元凶は文大統領だ。文氏が完全に倒れれば、日韓関係は間違いなく改善する。
それにしてもこの本はなぜ、これほど韓国で大きな注目を集めたのか。
慰安婦問題や徴用工賠償判決で1965年に締結された日韓基本条約と日韓請求権協定を否定する文在寅政権に真っ向から挑み、正しく批判したからだろう。いまの文政権に不満と危機感を抱く韓国の多く人々が支持し、その結果としてベストセラーになったのである。
裏を返せば、文大統領に不信を抱く韓国の人々が多く存在することになる。日本政府は情報収集の能力を上げて文政権に反発する政治的な動きを的確に捉え、それを韓国との外交に生かすことが求められる。外交とはそういうものだ。
■「嘘の可能性の高い主張を検証もしない裁判は有効なのか」
8月5日付の産経新聞の社説は冒頭部分からこう主張する。
「そもそも応じる必要のない要求だ。賠償命令自体が歴史をねじ曲げ、日韓両国間の協定を無視した暴挙であり、容認できない」
この「歴史をねじ曲げている」ことについては、先に挙げた『反日種族主義』の編著者、李栄薫(イ・ヨンフン)氏も同書の中で「大法院の判決文の基本的事実関係を読んだ私の所感は、『これは嘘だ』でした。嘘である可能性が大きい。大法院は原告の主張が事実であるかを検証しませんでした。嘘の可能性の高い主張を検証もしない裁判が果たして有効なのか」と述べている。
産経社説は「現金化により日本企業の資産が不当に奪われるなら、政府は厳格な対韓制裁に直ちに踏み切るべきだ。韓国から撤回と謝罪があるまで緩めてはならない」とも訴える。韓国の文政権を嫌う産経社説らしい書き方だ。
■「司法判断を尊重する」という文大統領自体が異常
産経社説は菅官房長官の記者会見での「毅然と対応していく」と発言を挙げ、「現金化の場合の対韓制裁実施を示唆したもので、韓国は日本政府の決意を軽んじてはならない」と主張する。見出しも「『徴用工』問題 現金化なら直ちに制裁を」だ。産経社説が指摘するように、何らかの制裁は必要だ。制裁措置を取らないと、文政権はさらに日本を軽んじていくからだ。
産経社説はこうも指摘していく。
「賠償を命じた韓国最高裁の判決は信じ難い代物だ。『不法な植民地支配と侵略戦争遂行に直結した反人道的不法行為』などと決めつけている」
「国民徴用令に基づき、昭和19年9月以降働いていた朝鮮半島出身者がいたのは事実だが、韓国側のいうような強制労働ではない。賃金の支払いを伴う合法的な勤労動員にすぎず、内地人も同じように働いていたのである」
「その上、40年の日韓国交正常化に伴う協定で、両国は一切の請求権問題について『完全かつ最終的に解決された』と明記した。協定に伴い日本は無償3億ドル、有償2億ドルを韓国に支払った」
「無償3億ドルには個人の被害補償の解決金が含まれている。個人補償を必要とするなら、支払うのは日本側ではなく韓国側だ」
いずれも産経社説の指摘の通りであり、文在寅大統領が「司法判断を尊重する」との立場をとること自体が、異常なのである。
■どうすれば徴用工問題は解決できるのか
8月7日付の読売新聞の社説は書き出しからこう文在寅政権を批判する。
「韓国人元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)の訴訟問題を巡り、文在寅政権は善後策を講じてこなかった。事態悪化をこれ以上放置し、日韓関係の基盤を壊すことは許されない」
文政権が善後策を講じてこなかったのは明らかだが、日韓関係の基盤を壊すことなく、維持していくにはどうすればいいのか。この命題を頭に入れて読売社説を読み進めてみよう。
読売社説は指摘する。
「今後数カ月で現金化まで進めば、日韓関係は抜き差しならない状態まで悪化しかねない。問題は一企業にとどまらず、1965年の国交正常化以降の日韓の協力関係そのものにかかわる。文政権はどこまで理解しているのか」
「65年の日韓請求権・経済協力協定は請求権問題の『完全かつ最終的な解決』を定めている。韓国の歴代政権も、元徴用工の扱いも対象に含まれるとみなしてきた」
「だが、2018年の最高裁判決は、日本の植民地支配を『不法』とみなす立場から、元徴用工の慰謝料請求権を認めた。文政権は『三権分立』を口実に、2年近くも解決を先送りにしてきた」
それぞれの指摘はもっともだが、なかなか命題に対する答えは出て来ない。読売社説はどうすれば、徴用工問題が解決できると考えているのだろうか。
■韓国の一方的な誤認を国際社会に訴え、文政権に打撃を加えるべきだ
さらに読売社説は指摘する。
「問題の根底には、『元徴用工は強制的に連行され、奴隷のように働かされた』といった韓国側の誤った認識がある。朝鮮半島での労働力動員が法に基づいて行われ、多くの人が自発的に応募したという史実がゆがめられてきた」
韓国のこうした誤った認識は、日本を敵とみなす反日種族主義から生まれてくる。文政権の日本に対する対応も、これに基づいている。反日種族主義自体をなくすことは難しいが、日本が国際社会に韓国の一方的な誤認を訴え、文政権に打撃を加えることは可能だ。
読売社説も「国内の司法判断や政権の思想的立場で、国家間の約束をほごにはできない。それでは、安定した外交関係は成り立つまい」と書いている。
ただし、新聞の社説としてはもう一歩突っ込んでほしかった。具体的な解決策を示してほしかったと思う。
(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)
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