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「コロナだから今年の受験は大変だ」と思っている親子は合格できない

プレジデントオンライン / 2020年8月18日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

新型コロナウイルスの影響で、今年の受験は例年と違う形になりそうだ。こんなとき、子供にはどんな声をかけるべきなのか。プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんは「不安なのは親も子も同じだ。子供には不安にさせる言葉よりも、成功の予感を感じさせる言葉をかけたほうがいい」という――。

■塾の宿題は、全部やらなくていい

新型コロナウイルスの影響で多くの小学校で、4~5月の休校の穴埋めをするために、夏休みを短縮している。

困ったのは、来春受験を控える6年生の受験生だ。7月中は学校が終わってから、塾で夏期講習を受けるというハードな日々を送ってきたことだろう。小学校がようやく夏休みになったと思ったら、塾の勉強が本格化する。6年生の夏休みは、「中学受験の天王山」と言われるほど、塾では重要な位置付けになっている。授業はこれまで習った内容の総復習で、演習と解説が中心となる。

例年であれば、お盆期間は塾も休みになるが、今年は7月終わりと8月終わりに学校があるため、その分の勉強をお盆期間に充てるところもある。6年生はほとんど休みがない状態だ。連日の塾通いだけでも大変なのに、さらに毎日大量の宿題が課される。真面目な親ほど、それを全部やらせようとするが、小学生のキャパを明らかに超えていることに気づいてほしい。

塾の宿題は取捨選択が必要だ。親からすると、宿題はやるのが当たり前と思うかもしれないが、それは小学校の話。塾の宿題は量が多いだけでなく、難度の幅も広いためムダが多い。すでに理解できているものはやる必要がないし、いくら考えても分からないような難問には手を出さなくてもいい。やるべきものは、あと少し頑張ればできそうな問題だ。それができるようになればいい。そうやって、割り切らなければ、子どもは潰れてしまう。体力を維持するためには、たっぷり睡眠を取ることの方が先決だ。

■いきなり「問題傾向」が変わることはない

ところが、いくらそう伝えても、やらせたがるのが親。特に今年は、新型コロナウイルスの影響で、例年とは違う不安がある。親達が抱える不安は、主に次の2つだ。

【親の不安①】入試が大きく変わるのではないかという不安

近年、中学受験では思考力・記述力・表現力などが重視されつつある。もともと難関校ではこれらの力を求める入試問題を作っているが、最近は中堅校でもその傾向が出始めている。ただし、これらの力を入試問題に反映させるのは並大抵のことではない。大きな流れとしては正しいけれど、今年すぐに変わるということはないだろう。

そもそも私立学校には、各校に教育理念があり、どういう生徒を入れたいかが明確だ。それがコロコロ変わってはいけない。入試には学校のメッセージが込められている。それが、入試問題は学校の顔だと言われる所以である。どんな困難にぶつかっても、自分の力でなんとか進んでいける人に来てほしいと思えば、入試にもそれを反映させ、試行錯誤する力が求められる問題を出す。つまり、新型コロナウイルスの影響で問題傾向や難度が極端に変わることはまずない。対策としては過去の入試問題をしっかり取り組み、その学校の問題傾向を把握することだ。

■「1日3回」入試をする学校が出てきた

ただし、今年に限っては、入試日程の変動は免れないだろう。感染リスクとなる密状態を防ぐために、入試日を分散させたり、入試時間を短くしたりする動きが出てきている。まだ、各校の発表は出ていないが、一足先に都内の人気中堅校である東京農業大学第一高等学校中等部の入試概要が発表された。それによると、1日の入試を3回に分ける分散入試を実施することに加え、試験科目も「4教科もしくは2教科の選択制」から、「2教科の選択制」に変更するという。

入試問題自体が大きく変わることはなくても、入試日が変動するので、いつどこを受験するかという戦略は必要になる。受験校を増やす必要はないが、余裕を持って偏差値幅を広く持っておくことをすすめる。

■成績が下がる不安、上がらない不安

【親の不安②】子どもの成績についての不安

コロナの影響に限らず、いつの年でも子どもの成績を親は不安に感じるものだ。ただ、子どもの成績によって、不安の質は変わってくる。

上位層の親の不安は、「今は順調だけど、少しでも手を抜いたら成績が下がってしまうのではないか」というものだ。「○○くんが7月に学校を休んでいたよ」と聞けば、「○○くんは小学校を休んで、勉強をしていたのね。うちの子は学校を休まなかったので、その分、受験勉強が後れを取っているかもしれない」と、他の子と比べては焦り、たくさんの量の勉強をやらせようとする。しかし、ただでさえ今年の夏はハードなので、量を増やすことは百害あって一利なしだ。

一方、下位層の親は、「このままでは成績が上がらないのでは……」という悩みを抱えている。しかし、現時点で成績が伸び悩んでいる子でも、きちんと問題文を読む練習をすれば、大抵の子は成績が上がる。成績低迷の原因の多くは、「早く解かなければ!」と焦って、問題文をよく読まずに答えを出そうとする「アタフタ勉強」になっていることが考えられる。そうならないためには、やはりやるべきことを取捨選択し、得点力を上げることを意識し、勉強のやり方を変えていくことだ。

つまり、どちらにとっても、勉強量の多さが足を引っ張ることになることを知っておいてほしい。

■「今年は入試が厳しい」は言ってはいけない

1学期は塾で対面授業ができず、オンライン授業になったり、夏休みの夏期講習のスケジュールに大きな変更があったりと、イレギュラー続きの今年の受験生。例年通りではないこの状況に、不安を感じる親もいるだろう。だからといって、「うちの子はついていない」「今年の受験生はかわいそう」と思ったところで、どうにもならない。であれば、コロナ禍を特別視しないことだ。

結局のところ、基礎力がある子は合格するし、基礎力のない子は受からない。それは、コロナ禍に関係ない。むしろ、今年を特別視しすぎて、「他の子はもっと勉強しているわよ!」「今年は特に入試が厳しいから、頑張らないと!」と、子どもを不安にさせる言葉を投げてしまうことを懸念している。不安な気持ちでいるのは、子どもも同じだ。そんなときこそ、「○○すれば、よさそうだね」「あと○○をすれば、合格点に届きそうだね」と、合格できるかもしれないという成功の予感を感じさせる言葉を渡してあげてほしい。そうすれば、子どもも「よし! あと少しだ、頑張るぞ!」と前向きな気持ちになるだろう。

■中学受験の最終ゴールは志望校に合格すること

夏休みが終わり、9月から志望校別日曜特訓が始まる。しかし、ここへ行く価値のある子は、すでに仕上がっているほんの一握りの子だけ。多くの子は、まだ苦手がたくさん残っている。塾では受講はマストと言うが、私は無理に参加しなくてもいいと思っている。御三家をはじめとする冠クラスであればいいが、その他偏差値を輪切りにしただけのクラスは、問題傾向もバラバラで無駄が多い。それならば、自分の苦手に向き合い、それを克服した方がよほど効果は高い。

中学受験の最終ゴールは志望校に合格することだ。6年生の夏以降は、塾のカリキュラムに縛られず、今必要なことを取捨選択して、無駄のない勉強をしよう。コロナ禍を特別視せず、落ち着いてやるべきことしっかりやっていればいい。ここで正しい取捨選択ができるかどうかが、合否の分かれ道になるだろう。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。

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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)

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