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「新生活を始めた人」と「育休明けの人」がメンタル不調になりやすい理由

プレジデントオンライン / 2020年8月31日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Poike

不安やストレスからメンタル不調を起こしてしまう人たちには、共通点がある。これまで1万人を診察してきた産業医の武神健之氏は「自分への期待値が高すぎる人が多い。そのため、不調に気づいてもそれを打ち消すためにがんばってしまう」という――。

※本稿は、武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■「新生活を始めた人」と「育休明けの人」に共通すること

不安やストレスをこじらせてメンタル不調になってしまう原因の1つに、自分に対する「高すぎる」期待があります。

このパターンがよく見られるのは、新生活を始めた人たちと、育児休暇明けの働くママさんたちです。

1月や4月、新年や新年度が始まると、多くの人は気持ちを新たにし、自分自身に期待をかけます。たとえば、お稽古事や自己研鑽などを始めて、思った通りにうまくいけばいいのですが、うまくいかないケースも当然あります。

そんなとき、すぐにあきらめられる人はいいのですが、「努力が足りないから、もっとがんばらなければいけない」と考え、自分を追い詰めてしまう人もいます。

このようなタイプの人は、周囲からすると何らストレスを感じてないように見えても、自分への期待が高すぎるために、自分自身でストレスを生じさせてしまい、メンタルヘルス不調になってしまうのです。

■ずっと「スイッチオン」の人は、潰れやすい

また、育児休暇明けの働くママさんたちの中には、自分への期待が高すぎて、それが原因で潰れてしまうケースもたくさんみてきました。

ワークライフバランスが叫ばれる中、会社での仕事モード、いわゆる「オン」の状態と、会社を出た後の「オフ」の状態の切り替えを、多くの人はメリハリとして考えています。

このオン状態は、緊張状態と考えることができます。中には、職場以外でも気持ちの上での緊張状態が続いている人がいます。そのような人たちは、場合によっては、本人の自覚がないまま、オン状態が続くことでストレスによって潰れてしまうことが少なくありません。

典型的なオン状態の持続は、育児休暇から復帰したお母さんや、子どもが生まれて帰宅後に「育児参加」する若いお父さんに見られる傾向にあります。

そうした人たちは、常に精神的な緊張が高く、時間に追われているにもかかわらず、それを自覚していないため、メンタル不調の発覚が遅れてしまうのです。

■「逆算時間を生きている」2児のお母さん

その典型例ともいえるのが、以前相談に来られた2児のお母さん。次女を妊娠後、産前休暇も取れず出産直前まで働いていたとのこと。出産後も人手不足のため2カ月目には早くも職場に復帰、さらに復帰して1カ月で同僚が辞め、仕事が増加したというのです。

日常のスケジュールをお聞きすると、平日は保育園のお迎えのために18時に退社。0歳と2歳の子どもたちの相手をしながら、ご飯を作って寝かしつけてから、夜には家で仕事を再開。週末は家事と育児と持ち帰りの残業で、家と会社の境目もないような生活が続いているとのこと。旦那さんは、家事も育児もやってくれているから、恵まれているはずなのですが、なんだか気分が晴れないという相談でした。

この方のように、せわしない「逆算時間」を生きている人は、仕事量が多い場合はもちろん、たとえ周囲に比べ仕事量が多くなくても、メンタル不調になってしまうことがあります。

逆算時間というのは、朝起きたら子どもの登園時間から逆算して、家を出る時間、朝食の時間、子どもを起こす時間を考える。子どもを園に送り、出社すると今度は、退社時間から逆算して日中の業務をせわしなくこなす。友人との優雅なランチタイムなどはなく、退社時間は園のお迎え時間から逆算し、5分でも早く退社するために、いつもデスクランチか昼食抜き。そして、子どもと帰宅すれば、明日子どもを起こす時間から逆算して寝かしつける時間を計算し、さらにそこから逆算して全てのタスクをこなすといった時間の使い方を指しています。

■真面目な人ほど、ストレスを否定して頑張ってしまう

結果として、仕事も育児も「家族のため」とがんばるけれど、「自分のため」がなくなってしまうのです。

仕事の時間は仕事スイッチをオン、仕事が終われば仕事スイッチをオフにできても、すぐに家事育児スイッチがオンになってしまう。スイッチがオフになるのは寝るときか、朝出社するときのみというように、ずっとオンになりっぱなしのまま毎日を過ごせば、疲れが溜まるのも無理はありません。

このように産業医面談では、育休明けの働くお母さんがいらっしゃることはよくあります。

働くお母さんたちは、本当に大変です。真面目な方ほど、「普通のお母さんはできているのに私はできていない、できないのは私が怠け者だから」などと考えてしまい、せわしない時間を過ごしていることをストレスと感じてはいけないと、またがんばってしまう。

それが続くと、やらなければならないことへの責任感、できないことへの残悪感が積もりに積もって、自責の念に囚われてしまい、体調を崩してしまうのです。

■「自分の時間」のために延長保育をする

では、どうすればいいか。

育児と仕事のバランスをとろうにも、そもそも時間がないため、両立させることが困難なのです。また、オン・オフのメリハリをつけましょうとよく言いますが、実際にはオフの時間を捻出するのはとても難しい作業になります。1つアドバイスできるとするなら、大切なのはオフの時間ではなく、自分の時間をオンにすることなのです。

仕事が早めに終わる日にあえて保育園を延長して、30分だけカフェでゆっくりする、あるいはウインドウショッピングやマッサージに行くなど、自分のために時間を使ってみてはいかがでしょうか。きっと、帰宅後は感謝の笑顔で皆に接することができるはずです。週末も夫婦で相談して、半日ずつお互いに自由時間を設けてみるのもいいでしょう。そうやって、自分の時間をオンにする発想で、時間を捻出してみてください。

■「延長保育」にも「家事代行」にも罪悪感はいらない

実際、前述の2児のお母さんにも、「自分のために、預かり保育の延長を使ってみてはどうでしょうか」と提案しました。

武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)
武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)

彼女は普段から、仕事が終わらない時には預かり保育の延長をしていましたが、退社したとたんに保育園に向かってダッシュしていたそうです。帰宅したら帰宅したで、いつもより遅い時間ですから、子どもの就寝時間までが余計に慌ただしく、イライラしてしまうことが多々ありました。

私のアドバイス後、30分だけ喫茶店でぼーっとしたり、雑誌を読んだり、ウインドウショッピングやマッサージなどする時間をとってみたら、いつもよりは心に余裕があり、帰宅後も焦らずイライラせず、ご主人にも子どもにも笑顔で接することができるようになったそうです。

罪悪感に囚われて、延長保育の利用に躊躇する方も少なくありませんが、私の経験でいえば、利用後は「使ってよかった」という声が圧倒的に多い印象です。

延長保育以外にも、家事代行をお願いすることにした方もいました。週に1回だけ、家の掃除や、家族のご飯、週末の食事の作り置きをお願いすることで、ずいぶんと心に余裕が生まれたという声もよく聞きます。少しでも、お母さんの心と身体に余裕ができることは、自分だけでなくご主人、そして子どもたちのためにもなりますから、躊躇せずに活用できるものは活用していただければと思います。

■「自分への期待」を下げる勇気を持とう

言うまでもなく、自分に高い期待をもつことは大切です。しかし、ときには柔軟に考えることが大切になります。

自分や周囲の心や身体における不調の兆しに気づきつつも、それを打ち消すためにがんばってしまうのは、その期待値が「高すぎる」可能性があります。時には、自分へも周囲へも、期待値やゴール設定を下げることで、状況が好転することがあることを忘れないでください。

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武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、BNPパリバ、ムーディーズ、ソシエテジェネラル、アウディジャパン、BMWジャパン、テンプル大学日本校、アプラス、アドビージャパン、Wework Japanといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』などがある。公式サイト

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(医師 武神 健之)

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