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全国民熱狂! 半沢4話の超絶「土下座ワールド」を半沢川直子が面白ノリツッコミ

プレジデントオンライン / 2020年8月14日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■全国民が熱狂した半沢第4話を人気アナリストが斬る!

本記事では、ドラマ「半沢直樹」第4回の放送をドラマライター半沢川直子(正体は金融アナリストの馬渕磨理子氏)がリポートしていく。

※本記事はネタバレを含みますのでご注意ください。

暑い。暑い。夏の暑さの中、日本中が「半沢直樹」に沸いている。

連続ドラマ『半沢直樹』(TBS系、日曜午後9時)は、池井戸潤の小説「半沢直樹」シリーズが原作。2013年に放送された前シリーズは『オレたちバブル入行組』と『オレたち花のバブル組』を映像化。シリーズの最終回視聴率は42.2%をたたき出すお化けドラマと成長した。

今回の7年ぶりとなる続編シリーズは、『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』を実写化。スタート当初から高視聴率をたたき出し、1話は22.0%、2話は22.1%、3話は23.2%と4週連続で20%超の大台をキープしている。

8月9日に放送された第4話(視聴率22.9%)では、IT企業の買収話を巡る、銀行とその子会社の証券会社の攻防が完結した。

なんといっても最大のクライマックスは、主役の半沢(堺雅人)と、前シリーズで屈辱的な土下座姿が話題となった宿敵・大和田(香川照之)が、まさかの共闘関係を結んだシーンだろう。

これは後程触れるとして、金融アナリストとして、親会社・子会社関係なく、自分の仕事にプライドを持って突き進む半沢の姿に胸が熱くなった。ロスジェネ世代だけでなく、日本のサラリーマンすべての魂が熱く震えたはずだ。

■この対立構造、まさに現在のニッポンの姿を表している!

これまでのあらすじはこうだ。半沢の出向先であるセントラル証券に、IT企業・電脳雑技集団(以下、電脳)によるベンチャー企業・スパイラルの大型買収案件が飛び込むも、アドバイザリー契約を電脳側から突然解除。その背後には、セントラル証券の親会社・東京中央銀行の私利私欲にまみれた指図があった。これを知った半沢はスパイラルと契約。東京中央銀行に戦いを挑み、勝利する。しかし、このままではメンツがつぶれる東京中央銀行は、三笠副頭取(古田新太)の後押しによって、スパイラル株を買収するために電脳への500億円もの追加融資を強引に進めようとしていた。

私利私欲にまみれた、電脳と東京中央銀行はズブズブの関係だ。それに対抗するのは日本の将来を担う若きベンチャー企業と、セントラル証券の半沢。この対比はまさに、今の日本を表しているではないか!

窮地に立たされた半沢だが、電脳が粉飾決算を隠蔽(いんぺい)していたことを突き止め、500億円融資をギリギリのところでストップした。東京中央銀行を救った立役者として、半沢は本店への復帰を果たした。

■スパイラルの買収は、ライブドアのニッポン放送買収やん

さて、ここからは少々、金融業界の人間として感じたこと思ったことなどを紹介していきたい。作中では電脳がスパイラルの株を30%取得し、敵対的買収を仕掛けた。これは、2005年に「ライブドア」が「ニッポン放送」の株式を35%保有し大株主となり敵対的買収を仕掛けた実話を基にしているようにも見える。このライブドア事件を懐かしく思い出しながら見ている視聴者も多かったようだ。

また、取引の前に、東京中央銀行の三笠副頭取がスパイラル株を保有する創業メンバーにプレミアムを付けた価格を提示していたが、現実世界では、時間外取引だと市場株価に7%のプレミアムしか付けられなく、投資家側からすると正直そこまでおいしくない。ドラマなので仕方がないが、金融関係者としてはツッコミたい部分だ。

その後、ドラマでは、スパイラルがフォックスと手を組み、その支援表明の発表記者会見に登場した「スティーブ・ジョブズ」と「ビル・ゲイツ」を足して2で割ったような、マイクロデバイス社のジョン・ハワード氏が3億ドルの出資をしてくれると宣言。金融・スタートアップに所属している人間からすれば、ジョブズが日本のベンチャー企業に投資することはとても現実的とは言えず、またそこの詳しい経緯も描かれていないことから、ここも「ドラマっぽさ」を感じた。

■ここも突っ込みたい!「ストップ高」の概念がない半沢ワールド

マイクロデバイスの発表後、スパイラルの株価は急上昇したが、ここもリアルな株式相場では即ストップ高となる。じりじりと大引けにかけて、段階的に株価が上昇していったが、実際の相場では、そのような値動きにはならない。株価は、一日に変動する値幅が一定の範囲内になるように制限値幅が決められていて、このようなニュースが出た場合は、一瞬で一日の値幅に達するだろう。そうすると、その値段で動かなくなり、その日は取引できない状態になる。

現実だったら、「ストップ高、張り付きだ!(株価が動かなくなること)」と叫びたくなる場面だが、じりじり上昇していくドラマの展開に筆者も吸い込まれてしまい、固唾を飲みながら画面を見てしまった。

■したたかなコバンザメ・伊佐山が大和田に向けて「土下座野郎」

今回のシーズンでも新たな名シーンがいくつも誕生している。ご紹介しよう。

メガバンクである東京中央銀行では、日々醜い権力闘争が繰り広げられ「腐った組織」と言える。自分がのし上がるためなら、恩を仇で返すのは日常茶飯事。自分だけになつき、かわいがっていた愛弟子すら、ある日を境に敵になる。

このような内向きで醜い姿を、ドラマ半沢直樹名物の「土下座ワールド」でスピーディーに展開していく。

三笠を倒し、銀行内の権力を手に入れるために、裏で手を組んでいた常務の大和田と、その忠実な愛弟子・伊佐山。しかし、伊佐山は自分だけの出世をもくろみ役員達に近づき、大和田を裏切る。ここで師弟関係が崩壊する。

「いずれ頭取になると信じて仕えてきたのに、むしろ自分を裏切ったのは大和田だ」と、伊佐山は憎しみをあらわにする。

「あんたのした土下座のせいで。くだらん土下座のせいで! 土下座、土下座が全てを潰したんだ」と土下座を連呼して師匠大和田に牙をむく。

「つまらん(大和田)の土下座のせいでどれだけ泥水を飲まされたか」

まさに土下座ワールドの大展開。伊佐山は大和田を追い詰め、仕留めにかかったのだ。悲しいかな、伊佐山は始めから、大和田の仕事ぶりや人間性にほれ込んで、慕っていたわけじゃない。全ては出世のためだった。感謝も恩返しもない。

あげくのはてに「土下座野郎」という屈辱的な言葉を大和田に浴びせ、去っていった。

伊佐山とともに、三笠をハメるつもりが、愛弟子に裏切られた大和田は膝から床に崩れ落ちた。金融アナリストとしても、その姿には、同情すら感じる。

■信じられない! 半沢と大和田が手を組むことになるなんて

伊佐山に裏切られ、傷心で身も心もボロボロになった大和田に、救いの手が差し伸べられる。過去の宿敵・半沢である。半沢が手を組まないかと、交渉を持ちかけた。

「部下に裏切られて退散ですか。だったらあなたこそ負け犬だ! 私は、あなたが見返すカギを握っている。私を利用しませんか」と地下駐車場で大和田をたき付ける。

冷静さを欠いた大和田は、すがる思いだったのだろう。プライドをかなぐり捨てて、飛びついてきた。過去に、土下座をさせられた半沢の手ごわさを、誰よりも知っているのは大和田なのだ。

一方で、常に冷静さを保ち、勝負時に着実に攻め入る、半沢の心理戦は見事なものだ。金融マンに必要とされるスキルである。

そして、500億円の追加融資を決める役員会議を迎える。大和田が「この案件には大きなリスクがはらんでいる」と反対意見を述べた。「詳しい者が説明する」と言い、役員会議に招き入れたのは、半沢だった。大和田と半沢が手を組んだ瞬間である。SNSでは「最強タッグ!」「まさか手を組むなんて」と日本中が驚愕した。

ここからは、詐欺まがいの買収スキームに、半沢が不正を暴く爽快劇が始まる。「倍返しだ!」電脳には50億円もの赤字があったことが、役員たちの前で暴かれた。

■東京中央銀行の稟議書はゴミくずだ! ビリビリに破く半沢

粉飾を行った電脳に、まんまと騙されかけた東京中央銀行。スパイラルを買収しようとしたのも、粉飾を誤魔化すための隠れみのとして利用するつもりだったのだ。

担当の伊佐山は、なぜ電脳の粉飾を見抜けなかったのか。それは権力に固執することで、企業のうわべしか見ておらず、本質を見誤っていたからだ。バンカー失格である!

半沢は伊佐山の書いた稟議書をビリビリに破り、「ゴミクズだ! どう責任を取るおつもりですか? 伊佐山部長」と迫る。

伊佐山に期待を寄せていた三笠副頭取はあっさりと手のひらを返し、伊佐山を切り離す。

「半沢君に今までの非礼を詫びたらどうだ。詫びろ、伊佐山。詫びろと言っているんだ、伊佐山!」と冷たく突き放した。

伊佐山は、土下座をしたのか。いや、彼は土下座すらできなかった。怒りと悔しさが入り混り、苦悶の表情でただガタガタと震えただけである。ただ、冷静に考えると、あの場で無理やり謝罪を迫る三笠副頭取の行動も謎だ。

■黒幕は三笠。メモも揉み消して自己保身に走る

伊佐山とて、優秀なバンカーであり、この事実を事前に知っていれば、500億の融資を止めたはず。なぜ伊佐山は電脳の経営状況に気づけなかったのか。

実は半沢は、「電脳の経営状況に不審な点があり、詳しく調べる必要がある」という趣旨のメモを伊佐山に渡すように動いた。が、伊佐山の手に渡る直前に、三笠がそのメモを揉み消したのだ。

突き止めたぞ! 電脳の裏帳簿の中にある私的流用の使い道は、三笠の為に使ったものだった。三笠の娘の留学費、妻の経営する飲食店の改装費。すべて電脳が、面倒見ていたのだ。その見返りとして、買収の手はずを整える計画だった。

三笠もサラリーマンである。年収3000万円程かと推定されるが、決して、女や飲み代といった自分の私利私欲のためではない。家族の為に、不正を働いていたのだ。自らが働く東京中央銀行に500億ものカネをドブに捨てるを分かっていても、悪事に突き進もうとした三笠。

組織の事など微塵(みじん)も大切に思ってないのだ。金融業界で働く身として、とてつもない物悲しさを感じた。

結果、子会社が親会社を救ったということになる。親会社、子会社関係なく、自分の仕事にプライドを持って突き進んでいる人のみが、本質を見通し、今回のような不正を暴くことができる。胸が熱くなった!

すべてを暴いた後、半沢直樹は演説をする。就職氷河期世代の筆者は、この演説に、涙なしには見られなかった。

銀行の危機を救ったとして、半沢は晴れて東京中央銀行に戻ることになった。半沢は、東京セントラル証券の部下たちやロスジェネ世代に、このような言葉を伝えた。

「大企業にいるからいい仕事ができるわけではない。どんな会社にいても、どんな仕事をしていても、自分の仕事にプライドを持って、日々奮闘し、達成感を得ている人のことを本当の勝ち組というんじゃないかと、俺は思う」
「君たち世代の逆襲を、いや、君たちの倍返しを、私は、ここから期待している」

この言葉に、日本のサラリーマンが、明日から、胸を張って、プライドを持ち、また働いていこうと思える勇気をもらったことだろう。

■次回以降、土下座ワールドはどう展開するか

このあと半沢は、復帰早々、破綻寸前の航空会社の再建を任される。何としても帝国航空を自力再建させるため、帝国航空へと乗り込むが、一筋縄ではないかず、そこには国家権力の壁が立ちはだかっていた。

8月16日(日)から始まる、半沢直樹の新たな闘いも、まだ始まったばかり。金融のプロとしても、目が離せない。今度はどんな倍返しをしてくれるのか、今からワクワクしてしまっている。

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半沢川 直子(はんざわがわ・なおこ)
ドラマライター
国内ドラマ、海外・韓流ドラマと守備範囲は広い。最近は本業が多忙でなかなか時間をつくれない。しかし半沢直樹だけは絶対に生で見る。理想の上司はやっぱり半沢直樹。半沢直子の正体はテクニカルアナリスト馬渕磨理子氏。

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(ドラマライター 半沢川 直子)

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