ひろゆき「日本人に足りないのは『サボる才能』である」
プレジデントオンライン / 2020年8月21日 15時15分
「ニコニコ動画(RC2)」発表会に出席した(左から)、巨大掲示板「2ちゃんねる」管理人で株式会社ニワンゴ取締役の西村博之氏、小林宏・株式会社ドワンゴ代表取締役社長、杉本誠司・同ニコニコ事業部長=2007年10月10日 - 写真=時事通信フォト
※本稿は、ひろゆき『1%の努力』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■人生をサボれるのも才能
2020年。いま、僕はフランスのパリに住んでいる。
ゲームをして、映画を見て、好きなところに好きなときに行く。得意なことをビジネスにして、それをダラダラと回し、興味のあるビジネスや面白い人がいれば、そこに投資をする。そんな自由な生活を送っている。
世の中には、「サボれない人」もいる。海を泳ぐマグロのように、止まったら死んでしまうようなタイプだ。
こうやって人生をサボれるのも才能なのかもしれない。
アリを観察していると、一見、サボっているように見える「働かないアリ」がいるという。彼らは、働きアリが運んできたエサを食べ、働きアリが掃除した巣で生活し、ぶらぶら散歩している。
「働かないアリ」は、ぶらぶら歩いていると、思いもよらなかったデカいエサに出くわす。巣に戻り、エサがあったことを知らせると、働きアリが運んできてくれる。
さあ、あなたはどちらのアリになりたいだろうか。サボる才能はあるだろうか。
そんな読者に向けて、「働かないアリのすすめ」をお伝えしよう。
■ダラダラすることは大事な要素
「働かないアリ」に必要な素質は2つある。
それは、「ダラダラすることに罪悪感がない」と「自分の興味のあることに没頭できる」ということだ。これは、つまり「余生」の話でもある。
ダラダラすることは、大事な要素だ。
その理由は、社会的な背景にもある。
みんな生きている限り、人も社会も成長していくと思い込んでいる。
人生が右肩上がりになっていくと考える「成長バイアス」が誰しも植えつけられている。
僕より上の世代は成長バイアスから抜けられないだろうから仕方がないとして、25歳以下の人は、その感覚が少なくなっていると感じる。
おそらく、就職して何年かしたら給料がそんなに増えないことに気づくし、先輩の給料を見て先の人生を想像したりするからだろう。
ずっとダラダラした日々が続いていく。
そういう前提で生きていれば、努力が報われなくても生きていける。
ビジネスの話を考えると、アメリカと中国の企業がどう動くかを視野に入れておかないといけなくなってきた。
彼らが大きな産業を壊していく流れには逆らえないので、少しでも生き残れそうな業界や職種を選ぶようになる。
世界中から頭脳が集まってきて高い給料を払うことのできるアメリカ。自分たちの利益のためなら、法律も変えるし、人件費も圧倒的な安さを誇る中国。
この2つの国が攻めてこない部分を探りあてないといけない。
たとえば、日本の「発泡酒」は世界にとってはムダなものだ。
発泡酒は日本独自の酒税の基準に合わせて造られている。麦の比率などで税金が安くなるからだ。
そのルールが生んだ、おいしくないお酒である。
内向きに造られていて、「世界に向けておいしいビールを造る」というルールとは無縁のところにある。
日本市場では発泡酒や第三のビールで成功するメリットは大きい。
海外をまったく知らなくても、日本の文化圏の中で、微妙な差を嗅ぎ取ってマーケティングセンスを発揮して暮らす道だ。この先30~40年は暮らせるだろう。
■「投資で一発狙いたい」のにiDeCoをしない人
さて、働かないアリに必要なもう1つの要素が、「自分の興味のあることに没頭できる」ということだ。
調べることを面倒に思う人がいる。たしかに、インターネット以前は面倒だった。
けれど、パソコンやスマホがある現在では調べるコストは、ほとんどゼロだ。
僕は、「1%の努力」として、調べることは徹底的にやるようにしている。
たとえば、制度のことだ。
あなたは、ふるさと納税をやっているだろうか。
どうせ払う税金なんだから、モノがもらえたほうがいい。その仕組み自体は、やらない理由がない。それなのに、「なんかめんどくさそう」と思って調べないのは、やはりダメな行動パターンだと思うのだ。
僕のところには米10キロほどが届き、けっこう余ってしまった。
というのも、金額的にトクすることがわかってやってみたら、とんでもない量の米が来てしまったのだ。
また、「投資で一発狙いたい」と言っている人に、「iDeCoとNISAは、やってる?」と聞くとやっていないと言われることがある。
それどころか、その制度すら知らなかったりする。
税制的に個人がトクする仕組みを、わざわざ国が用意しているのだから、利用しない手はない。
ほんの少し調べれば、NISAやiDeCoがトクなのは誰にでもわかる。それすらも調べられないのであれば、投資なんてしないほうがいい。
■松阪牛よりおいしい「ルビアガレガ牛」
「調べる労力を惜しんでいないか?」
知らないだけで損をするのは、もったいないことだ。
ちなみに、NISAの枠は毎年120万円まで5回使えるので、貯金のうち600万円はとりあえず全部NISAに突っ込むのがいい。
トクした利益に対して20%くらいを課税されるのが普通だが、それが課税されないおいしい制度だ。
また、僕は、「安くていい肉を手に入れる方法」を調べたことがある。
『ステーキ・レボリューション』という映画が好きなのだが、その映画によると、「ルビアガレガ牛」が世界一おいしいらしい。
日本では松阪牛がおいしくて有名だが、松阪牛は人工飼料を食べさせている。
だから、松阪牛の精子を盗んだ投資銀行の金持ちが、その精子を使って生まれた牛をスペインで牧草を食べさせて育てた。
そして本来は子牛が柔らかくておいしいのだが、味そのものは年を取った牛のほうが旨みがある。静かに十数年を過ごした牛のほうが、脂も広がらずおいしいのだ。
■「知りたいから調べる」を出発点にする
ただ、ルビアガレガ牛を日本で食べられる店は、僕が調べた限りは存在しない。一部の国を除き、日本は生後2年以内の牛の肉しか輸入しちゃいけないルールがある。
それ以外で輸入するときは、日本の検疫所のルールに則った工場で解体した場合に証明書が貼られるのだが、そのスペインで育った牧場の牛は数が少ないので、わざわざ日本の認証を受けて輸入される必要もない。
その肉が、パリにいると通販で買える。100グラムで400円ぐらいだ。世界一おいしい牛肉が、その程度の値段で手に入る。
興味が出たものは、徹底的に調べる。
そして、納得するポイントを探る。
「仕事だから調べる」「しょうがないから調べる」ではなく、「知りたいから調べる」を出発点にするのが大事だ。そうやって過程を楽しめる人になろう。
■肉屋を応援する豚
自分本位で生きる「働かないアリ」になるためには、聞き分けがよすぎるとダメだ。
たいていの日本人は聞き分けがいい。
「肉屋を応援する豚」という言葉が最近のマイブームだ。
いつか自分が殺されてしまう状況の豚が、肉屋の営業を心配してしまい、最後には屠畜(とちく)される話だ。
自分は関係ないと思うかもしれないが、この状況をそこかしこに見かける。
残業代を支払わない企業や、年金資金が足りない日本政府などが肉屋の例だ。
本来は「お金をくれ」と言うべき立場の人が、「まあ、みんな大変だよね」と聞き分けをよくして許してしまっている。
しかし、後になって苦労するのは自分たちだ。
みんな給料を上げてほしいと思っている。でも、言えない。
そんなふうに空気を察していると、やがて自分がやられる。
「聞き分けのいい豚になっていないか?」
それをちょっと考えてみてほしい。
世の中、実力がハッキリと数値化される仕事は、そんなに多くない。
たとえば、あなたがファミレスの店員だとしよう。
働くのがだるいから手を抜いて働きたい。でも、クビにはなりたくない。
その場合の戦略は、他の店員たちと仲良くなって、「この人をクビにしたら私も別のとこに行きます」という派閥を作ることだ。
大して働いていないけど、まったく働いていないわけじゃない。だから、クビにするほどではない。
そんなポジションになるのだ。
■1週間宿代ゼロで暮らす方法
ある有名な外国人タレントは、タクシー代を値切っていると言う。
「タクシー代なんて値切れるの?」と疑いたくなるが、じつは値切れる。
1万5000円くらいの料金の距離では、「1万円しかないんですが、それで行ってくれないか?」と交渉するらしい。
ホテルに泊まるときも、「1週間ほど泊まりたいんだけど、2割引きにしてもらえないか?」と言うそうだ。
外国人ですら、日本でそのような値段交渉をしているのだから、日本人にできないわけがない。これも「1%の努力」の好例だろう。
あるいは、あなたは交渉をしたり、お願いをしたりすることはできるだろうか。
「1日泊めてくれない?」
そう頼める友人が7人いれば、1週間も宿代ゼロで暮らせる。お土産を持っていかないといけないと思っているとすれば、働かないアリにはほど遠い。
![ひろゆき『1%の努力』(ダイヤモンド社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/e/200/img_ceac4765ec7cdd3cdb669260fa5b1763138763.jpg)
僕くらいになると、友達の家に他の友達を呼び、「飲み会をやろう」と言って、食べ物やお酒を持ってきてもらう。宿代だけでなく、飲食代もタダにしてしまう。
「そんなことできない」と言われるかもしれないが、ヒッチハイクと同じで、こんなものは「慣れ」だ。
あるいは、財布もスマホも持たずに街に出て、24時間を過ごせるだろうか。
人間だって動物なのだから、犬や猫や鳥のように、体一つで外に出て生きていけないわけがない。本屋で立ち読みをしたり、公園で植物を見たり、野宿したりして過ごせるはずだ。
そうやって実験的にホームレスをしてみると、精神的に強くなれる。
一度やってみると、案外、何もせずにうまいこと生きられることが実感できるだろう。たくましく、しぶとく生きるコツでもある。
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本名は西村博之。1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、『無敵の思考』『働き方完全無双1』(大和書房)、『論破力』(朝日新書)などがある。
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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき)
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