40代から仕事と働き方をがらりと変えたい人のための、1日15分の新習慣とは
プレジデントオンライン / 2020年8月22日 11時15分
※本稿は尾原和啓『あえて数字からおりる働き方 個人がつながる時代の生存戦略』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■働き方は何歳からでも変えられる
働き方を変えていくのに、果たして年齢は関係あるのでしょうか。結論からいって、僕はまったくないと思っています。後述しますが、僕自身、40代を超えてから働き方を大幅に変えた人間だからです。
しかし、働き方を変えるのは、とても困難なことだと思う方も多いと思います。そこでまず、自分で設定した目標に向かって自分の習慣を変えていく簡単な方法をお話ししたいと思います。
たとえば僕の友人のけんすうさんは、若い人から「やる気が出ません、けんすうさんのモチベーションはなんですか?」と相談されると、「すごく簡単なことでいいので習慣にしましょう」と答えるのだといいます。
人間の行動の半分以上は習慣化されたことをやっているものなので、1度習慣化してしまえば、そもそも「やる気が出る、出ない」で悩む必要がなくなるのです。これは歯を磨くとき、歯を磨くこと自体へのやる気が出る、出ないなどといちいち考えないことと同じです。
たとえどんなに「何からはじめたらいいのかわからない」と悩んでいる人でも、歯を磨くことはできます。それくらい、まずは習慣化しやすいことからはじめてみればいいのだと思います。
■簡単なことから習慣化してみよう
たとえば“漫画を描いてみたい”という人がいたとして、はじめから目標を“月に2本、新作を投稿する”と設定してしまうと、そもそも生活スタイルを大幅に変えなくてはならないので、かなりのモチベーションが必要とされるでしょう。しかし、最初の目標を“1日15分、何も思い浮かばなくてもいいから机に座ってみる”ことにして、習慣化させてみるとどうでしょうか。慣れてきたら、まずは手の形をスケッチしてみたり、ただ思いついたことをメモしてみたり、少しずつ手が動いて、机に座ること自体が習慣になってくるかもしれません。
このように、小さな階段を自分に設定していく上で大事なのは、「どれだけ自分を甘やかせるか」だとけんすうさんは言います。たとえば、彼の友人でもあるひろゆきさんは、領収書を処理しなければいけないときに、「4時間ゲームをやったら1枚処理する」くらいに基準を下げるそうです。
実際にやってみると、2枚目以降の作業は意外にもさくさくと進むのだとか。つまり、最初の1枚に取りかかるまでのハードルが高いだけで、作業をはじめてしまえば苦手なものでも案外脳が騙されて、気楽にできるようになるのです。また、4時間ゲームをして領収書を1枚だけ片づける、となると、だんだんと罪悪感が生まれるので、そこで少しお尻を叩かれた気持ちで取り組んでみる、という作用もあると思います。
■ゴールまでの道のりを細分化し、言語化することがポイント
自分のやりたいゴールを細分化し、その階段を上っていくためには、何が足りなくて何が足りているのかをまず整理する必要があります。漫画の例に話を戻しましょう。たとえば、すでにキャラクターを描くことが大好きで習慣化しているけれど、キャラクターが立っている背景を描けないのであれば、まずは家の中のトイレや台所など、どこでもいいので1日1枚描いてみるのもいいでしょう。
あるいは、漫画は描きたいけれどなんのリソースもないのであれば、「今できる最初の1歩は何か?」「その1歩目はいつ踏み出すのか?」を明確にすることです。その上で、前述したように「まずは1日15分、机に座ってみる」というような最初の1歩を踏んでみるのです。はじめから「やる気が出ない」「まず何をしていいかわからない」のは、そもそも自分の中でハードルを高くしてしまっていたり、今踏み出すべき小さな1歩を大きくしてしまっていることが多いので、まずは必要なことをなるべく細かく言語化してみるといいでしょう。
■やりたいことに年齢は関係ない
しかし、なかには“若い人は小さな階段でいいかもしれないけど、自分は若くないから、やはり大きな階段を設定しないといけない”と、焦ってしまう人もいるかもしれません。本当にそうでしょうか?
たとえば僕は、42歳になった今でこそ本を出版させていただいたり、講演会やテレビに呼んでいただいたり、自分でもオンラインサロンを運営するなど公に出るようになりましたが、40代になるまでは一切、人目につかないように生きてきました。30代のころはフェイスブックのポストさえ友人限定公開に設定していたくらいです。
理由は、裏方仕事が多かったこと、大勢の人の前で話すのが苦手だったこと、自分が世に出なくてもすでにたくさんの才能を持った方々が出ているから、自分はせめてそのサポートができたらいい、自分の出る幕ではないと思っていたからです。
■一歩踏み出せば簡単に世界は変わる
しかし、出会う人たちから講演や本の出版などをすすめられる機会が年々増えたことをきっかけに、自分が公の場で役に立てることがあるならと、まずは表に出る苦手意識を変えていくことから取り組みました。
まずはフェイスブックのポストに、時々公開ポストを加えてみたり。講演も、小規模の会場で、登壇者の対談相手としてなら出させていただいたり。人前でわかりやすく話せるように、アナウンサー教室に通ってみたこともあります。そうやって、少しずつ慣れていくことで、苦手意識を克服していきました。そして結果的に、働き方そのものを大幅に変化させることができました。
つまり、自分を変化させるために小さなステップを踏んでいくのに、年齢は関係ないと思うのです。“もう年だから”と諦めたり焦るくらいなら、まずは小さな1歩を踏み出してみるほうがずっと楽しいんじゃないかなと僕は思います。
■変化のチャンスは相手に“ギブ”をすること
とはいえ、変化することは怖いですよね。だからこそ、自分に意味を感じてくれるパス回しする相手を見つけていくことが大事だと思います。
ギブは2種類あります。1つは、自分の内側にある力で、人にありがたいと思われること。2つ目は、相手の視点に立って、自分の外側にあるモノを自分の思いを載せてギブすることです。
自分の内側にある好きをギブしていく中でライフワークに出会い、ギブした相手とライフワークに夢中になっていくうちに気づけば遠くまで来ていたり、好きな相手の視点に立って、相手が好みそうなものを探しているうちに、自分の壁を乗り越えていけるようになっていたりと、ギブには気づいた時には遠くまで行けている力があると信じています。
何よりあなたからのパスを喜んでくれる相手が見つかれば、失敗すら楽しみに変わってきます。「役に立つ」で成立する付き合いは「役に立たなければ」ツライですが、「意味がある」付き合いには、ミスや失敗も(むしろ失敗のほうが)いい思い出になりますよね。
■たった一人にでも“ギブ”することで未来は変わる
変化の時代は、昨日まで正解だった解決法が通用しなくなる時代です。誰も知らない未来に向かう旅路は教科書に載っている解き方をなぞることではなく、たくさんの失敗の中で正解に辿り着くしかありません。そして、むしろ「役に立つ」ことに価値がなくなる時代では上質なレストランのステーキよりも途中の失敗も含めて楽しめるBBQのほうがずっと「意味」という価値があります。
![尾原和啓『あえて数字からおりる働き方 個人がつながる時代の生存戦略』(SBクリエイティブ)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/d/200/img_3dfeb0e0a224992e5561f9dff13e878b301214.jpg)
あなたに1人でも2人でも失敗を含めて楽しめるパス回しができるギブの相手がいれば、つい不安になってしまうくらい先のわからない未来への旅も、楽しい冒険の旅路に変わりませんか?
むしろ見えない未来こそ、新しいギブの種がたくさん眠るワクワクの宝の山です。さあ、ギブを通じて見えない未来に恋しよう。その先にきっとあなたは誰かにとって意味のある存在になり、それが積み重なっていって、何者かになっていく。
楽しくないですか?
小さなギブと「有り難う」からはじめましょう。
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IT批評家
1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任。著書に『モチベーション革命』『アフターデジタル』(共著)、『ザ・プラットフォーム』『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ"これから"の仕事と転職のルール 』『ITビジネスの原理』などがある。
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(IT批評家 尾原 和啓 写真=iStock.com)
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