「テレワークだから沖縄に旅行する」はアリかナシか、コンサルタントの結論

プレジデントオンライン / 2020年8月27日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nadezhda1906

■「たった一人の社員の行動」で判断するのはもったいない

「緊急事態宣言の最中、テレワーク中の社員がなんと沖縄旅行に行っていた!」

こんな事実が発覚したら、あなたはどう思いますか? これは、とある大手企業で実際にあった事例です。その企業は「やはりテレワークはダメだ」ということで、全員出社することが基本方針となったそうです。何千人もの社員がまた満員電車をつくる原因になってしまったと思うと残念で仕方ありません。

そもそも、テレワークは何のために始めたのか。仕事の目的は何なのか。テレワークをやってみて、良かった点と改善点が必ずあったはずです。個人レベルから組織、社会レベルでも、思いがけないメリットとデメリットがあったに違いありません。それを客観的に振り返らずに、一人の社員の一見常識がないと思われるような事例で、「やっぱりテレワークはダメだ」と、結論づけるのはもったいないことです。

■サボる人は、出勤してもサボる

内勤でも外出が多い仕事でも、仕事をサボる人はどうやってでもサボります。また、一生懸命働いても成果が出にくい人もいます。テレワークで仕事をすることにより、できる人にはよりスポットライトがあたり、できない人やサボっている人もある程度浮き彫りになったのではないでしょうか。

今までの近くで管理職が見ている環境ならば、何となく平等に評価されているような気もしますし、周囲の人が頑張っているのか頑張っていないのかは、なんとなく見えていました。それが、テレワークになった瞬間、仕事のアウトプットがすべてになりました。今まで仕事ができると思っていた人がそうでもなかったとか、仕事ができないと思っていた人が実は裏方として仕事を支えていた、などと職場の人を見る目が変わったかもしれません。

多くの企業では、緊急事態宣言を受けて、突然テレワークを始めました。組織も働く側も、何が許されて何が悪いのかという基準がなく、正解は手探りだったのではないでしょうか。

そこで、大切なのは「3つのR」を可視化すること。「ルール(Rule)・ルート(Route)・リスク(Risk)」という3つの要素です。

■「沖縄でテレワーク」はOKかNGか

まず、テレワークを新しい働き方として正式に導入するのであれば、基本的に守るべきルールを明確にすべきです。たとえば、先ほどの沖縄の例についても「テレワーク=遠隔で仕事をすること」と理解した社員が沖縄でもオンラインになれるし、仕事もできると思っていたのであれば、テレワークの定義からは外れていないため、自己解釈上はOKなわけです。

一方で、テレワークの「ルール」として以下のような項目が含まれていたとしましょう。

・基本的にテレワークは在宅勤務を基本とする。
・業務命令として、緊急対応の場合には、通勤時間+30分で出勤できること。
・個人的な理由により上記が難しい場合には、事前に勤務場所を上司に報告しておく。
・ネットワーク環境や携帯電話による回線状態が良好であることをテストしておく。
・使用するパソコンやその他の通信機器は、会社支給のセキュリティ対策が万全のものとする。

このように明記されていたとしたら、恐らく、今回の沖縄への旅行はテレワークという範囲で許されるものではないと判断がつくでしょう。また、それを押してでも沖縄に行けばルールに反していることになるため、何らかの罰則が科せられてしかるべきです。

■コアタイムを短縮した代わりに「昼礼」の時間を作った

最初から100点のルールを作るのは無理です。政府ですら、朝令暮改の方針転換があるわけですから、企業や組織であればなおのこと。とりあえず、70点程度のルールをつくり、後から付け加えたり、改定したりしながら完成度を上げていく姿勢が必要です。

ルールの完成度を上げていった企業では、こんな例があります。

今まで、フレックスのコアタイムが10時~16時だった企業が、テレワーク導入時に、コアタイムを13時~15時に変更しました。それにより、時差出勤の自由度が増しました。ところが、チームで揃って会話がしづらい状況になったため、毎日13時半から、朝礼の昼版である「昼礼」を導入することを決めたのです。ランチ後は集中しづらい時間帯なので、集中した作業に充てるよりも仕事の進捗確認や相談タイムに充てたところ、業務の横連携がしやすくなり、コミュニケーションがよくなりました。

■コミュニケーションの「ルート」と仕事プロセスの「ルート」

次の「ルート」には、2つの意味があります。コミュニケーションの道筋としての「ルート」と、仕事のプロセスとしての「ルート」です。

リアルでの仕事の場合には、なんとなく曖昧になっているコミュニケーションのルートですが、テレワークでは、「誰にどんな順番で伝えるのか?」は意外と大切です。職場では、物理的に近い席にいる人から入ってくる話が、知らず知らずのうちに重要な情報源となっていたかもしれません。テレワークでは積極的に取りに行かなければ、その情報は入ってこない可能性があります。

また、仕事のプロセスも改めて見直しおかなければ、職場でリアルに相手が見えなくなることで、抜け漏れが発生する場合もあります。

特に、紙ベースの書類などは、現物があるからこそ作業の流れが見えますが、オンラインになったとたんにプロセスが崩れて、ミスや工程漏れが起きがちです。思い切って業務を改善するチャンスにもなるので、これを機に、仕事上の関係者へのコミュニケーションのルートと仕事のプロセスのルートを整理して可視化しましょう。

■チャットツールを活用して、仕事の重複を解消

「ルート」を見直した職場の例には、このようなものがあります。FAQ(よくある質問)をまとめる業務を複数でやっているチームの半数がテレワーク、半数がオフィスで仕事していました。公開されたFAQだったため、複数の顧客から記載が間違っているという指摘がありました。それぞれ離れた場所にいる電話を受けた人やメールを受信した人が、同時にFAQを修正したところ、同じ件を複数名が対応することになり、混乱が起きました。

そこで、仕事の主担当と副担当を決め、FAQの問い合わせが入った場合のプロセスを決めました。まず、共通のチャットに起きた出来事を記載して、自分が対応することを伝えます。そうすれば、その後、同じ件についての連絡が入ったときにも、まずはチャットを確認して同一案件がなければ自分が担当すればよいということになり、効率的に仕事が進められるようになりました。

■「リスク」は3つに切り分けて考える

最後の「リスク」ですが、一旦、最悪のシナリオを描き、起きる確率と、起きた場合の影響、起きてしまった場合に考えられうる対応策を検討しておくことが大切です。そのうえで、Go/No Goを判断します。そのリスク自体がビジネスを継続できないほどの大きなものかどうか、今回のコロナ禍のような状況下では難しい判断もあったことでしょう。

例としては、緊急事態宣言が発令された頃にビデオ会議システム「Zoom」のセキュリティ問題がニュースになりました。そこでZoomは一切使用禁止となった企業と、利便性を優先して、適切な対策をしながら導入した会社と大きく二分されていました。未だに「Zoomは危ないから使用してはダメ」という企業も多いですが、その判断は論理的かつ合理的でしょうか。

たとえば、社内会議など影響の少ないところから使ってみるとか、プライベートで実験してみるとか、やり方はいくらでもあるはずです。他の選択肢と比較をすることもせず、「Zoomは絶対ダメ!」と言っているその判断の基準を見直す必要があります。

■冷静な対応で、予定通りに新人研修を実施した企業

このように、新しいものは常にリスクと隣り合わせです。そして、リスクを取らねばビジネスは進みません。まずは、リスクを可視化し、きちんと評価することが大切です。

片桐あい『これからのテレワーク 新しい時代の働き方の教科書』(自由国民社)
片桐あい『これからのテレワーク 新しい時代の働き方の教科書』(自由国民社)

リスクを切り分けて対処できた事例には、このようなものがあります。

4月の新人研修は軒並み延期や中止となりました。そんななか、予定通りの日程で実施した企業がありました。全国から集まる予定だった受講者を、それぞれの勤務地のオフィスからZoomでつないだのです。東京近郊は人数が多いため、社員を4、5名の小グループに分け、ソーシャルディスタンスを確保できるように座席を配置しました。

講師はきちんとメッセージを伝えられ、受講者の様子も観察でき、グループ発表もうまくできました。担当者の「実施するんだ」という熱意だけでなく、リスクを切り分けて判断できた好例です。

まだまだ始まったばかりのテレワーク。これから先の働き方は、まだらテレワークだろうが、ワーケーションだろうが、移住ワークだろうが、どんな働き方であっても、それは手段です。仕事の目的を効率的に気持ちよく果たすために、働き手が最適な働き方を選べる企業によい人材が集まり、組織が発展するのではないでしょうか。

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片桐 あい(かたぎり・あい)
人材育成コンサルタント
カスタマーズ・ファースト代表取締役。日本オラクル株式会社(旧サン・マイクロシステムズ株式会社)サポート・サービス部門に23年勤務。M&Aやリストラで仕事上のポジションが危うい外資系IT業界で成果を出し続ける。卓越したコミュニケーション能力・問題解決能力を武器に2013年に独立し、企業研修講師となる。年間約120件登壇し約2万5000名の育成に従事。また、人財育成コンサルティングで延べ3400名のカウンセリングでの育成にも貢献している。

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(人材育成コンサルタント 片桐 あい)

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