在韓米軍撤退で完全孤立の文在寅…「世界に冠たる大韓民国」の野望はどうなる!?
プレジデントオンライン / 2020年8月24日 9時15分
■国内外ともに文在寅を見捨てる
韓国の「ぼっち政策」が止まらない。融和ムードを演出してきたはずの北朝鮮からフラれて、さぞ意気消沈かと思いきや、今度は日本にナナメから「歴史問題」でケンカを吹っ掛ける。文在寅大統領の不敵な笑みと溢れる野望は孤独感など気にはしてはいない。先進7カ国(G7)首脳の仲間入りを目指してウキウキする姿は、コロナ禍で失われかけているポジティブシンキングの「無双型」と思えるほどだ。来年からは初の空母建造を進める意気軒高ぶりで、数々の迷言や珍言を残す文大統領は今や「生きる伝説」と言えるだろう。冷めきった隣国からの無視や過去最低水準の支持率、足元で湧く在韓米軍の撤退・縮小なんて関係ない。なぜなら彼の名は、そう「文在寅」なのだから。
「南北協力こそが、南北が共に核や軍事力の依存から脱却できる最高の安全保障政策なのだ」
8月15日にソウルで開かれた日本からの解放を記念する「光複節」の式典で、文大統領はこのように力説した。北朝鮮の実質ナンバー2である「氷姫」の金与正朝鮮労働党第1副部長から「クズ!」「図々しくて傲慢不遜」などと罵詈雑言を浴びせられても理想を追い求める姿勢は、パワハラの危険性と隣り合わせの中間管理職を発奮させるかもしれない。米国のジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)は文大統領が北朝鮮への軍事オプションについてトランプ大統領と協議していたと暴露しているが、それとの整合性をも忘れさせるだけの力を文大統領は持っているのである。北朝鮮のみならず、「おまいう」と批判する向きはまだまだ「文在寅通」とは言えないだろう。
■元徴用工問題へのメッセージ
その文大統領は日本政府に対しても、あまりにご立派なメッセージを送っている。光複節の演説では、戦後最悪の状態にある日韓関係の壁の1つである元徴用工問題について「いつでも日本政府と向き合う準備ができている」と語りかけた。言うまでもなく、これは1965年の日韓請求権協定で解決済みの話である。日本政府が同協定に基づき仲裁委員会の設置を提案しても拒否してきたにもかかわらず、上から目線で交渉に臨もうとするあたりは、さすがとしか言いようがない。
2018年10月に韓国の大法院(最高裁に相当)から元徴用工への賠償を命じられた新日鐵住金(現・日本製鉄)は8月7日に即時抗告し、資産強制売却(現金化)は来年以降にずれ込む見通しとなったが、文大統領は「司法の判断を尊重し、日本側と協議してきた。今も協議のドアは開いている」と揺さぶりをかける。相手の主張やテーブルには決して乗らず、自らの世界でのみ戦いを挑むのは得意技だ。
■「遺憾砲」ばかりの日本政府は怖くない
75年目の「終戦の日」に安倍晋三政権の閣僚4人が東京・九段北の靖国神社を参拝したことは気に入らないようで、韓国政府は「日本の指導者が歴史を正しく直視し、真の反省を実際の行動で示すべきだ」と批判した。もはやツッコミどころが満載でどこから触れようか迷ってしまうだろう。同じ日には、日本の排他的経済水域(EEZ)内で海洋調査していた海保測量船に対して、韓国海洋警察庁が中止を要求。日本政府は抗議したものの、既成事実化を狙う戦略は天才としか言いようがない。何をされても「遺憾砲」ばかり繰り返し、実際には動かない日本政府なんて怖くないというわけだ。
文大統領は8月14日の映像メッセージで、慰安婦問題について「政府はおばあさんたちが十分というまで解決策を探る」とも語ったが、慰安婦の支援団体では集めた寄付金の私的流用疑惑が浮上。前理事長で与党「共に民主党」の国会議員、尹美香氏が団体の不正会計疑惑などで検察の取り調べを受けたばかりだ。また、慰安婦の支援施設の運営者は寄付金を集めながら慰安婦のためにほとんど使わなかったとの調査結果を官民合同チームが発表している。5年間に集めた約8億円のうち、支援施設に送られたのは3%未満というから「なんなんですか、これ」と驚くほかない。
■空母にF35B搭載、日本海に派遣
さて、独立独歩の道をひたすら邁進する文大統領は、ついに来年から初の空母を建造すると発表した。2021~25年の国防中期計画で明らかにしたもので、3万トン級の軽空母には米国の垂直離着陸ステルス戦闘機F35Bが搭載され、日本海に派遣する予定という。約27兆円を投じて空母や大型潜水艦などを導入するとともに、監視・偵察能力を強化する計画は文大統領の「野望」が満ちているといえるだろう。2022年5月までの任期中には米国からの戦時作戦統制権の返還を目指しており、「世界に冠たる大韓民国」の確立を急いでいるように映る。
トランプ大統領が提唱した先進7カ国(G7)首脳会議の拡大会合への参加にも意欲的で、康京和外相をドイツに派遣して韓国の参加に理解を求めたり、文大統領が自ら豪州のスコット・モリソン首相との電話会談で「グローバルな懸案への対応に貢献できる」と確認したり、その鼻息は荒い。だが、そろそろ「現実」を知るべき時かもしれない。いつまでも自分勝手な言動を繰り返していれば、周囲はどんどん離れていくだけなのである。
■トランプ再選で在韓米軍撤収の可能性増大
その象徴となりそうなのが米国との関係だ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は7月17日、国防総省がホワイトハウスに在韓米軍(約2万8500人)の削減を提案したと報じた。たしかに現行水準の維持が盛り込まれた米国の2021会計年度国防権限法案は可決されたが、大統領が署名を拒否すれば例外となるため、それが保証されているわけではない。ボルトン前米大統領補佐官は7月21日、時事通信のインタビューで「トランプ氏は在韓米軍の削減・撤収や北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を周囲に漏らしており、在日米軍も例外ではない」と強調。トランプ氏が再選すれば「撤収リスクが増大する恐れがある」と指摘している。
2019年4月の訪米時、トランプ大統領がわずか「2分間」しか文大統領に向き合わなかったことを振り返っても、それが「非現実的」と笑うことはできない。11月の大統領選で仮にジョー・バイデン元副大統領が勝利しても「在韓米軍維持」との結論に至るかは不透明だ。
米国は激しく揺さぶりをかける。マイク・ポンぺオ国務長官とマーク・エスパー国防長官は今年1月16日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに連名で「韓国は扶養家族ではない」とのテーマで寄稿し、「韓国側は駐留米軍に関係する費用の3分の1ほどしか負担をしていない」と不満をあらわにした。米国は在韓米軍の駐留経費をめぐる交渉で2019年比の5倍近くを要求し、これに反発する韓国側との不協和音が続いている。
■文在寅、次は中国と連携か
油断できないのは、在韓米軍の撤退・縮小論とリンクさせるようにトランプ大統領が6月15日、「ドイツが(防衛費増額の)金を払うまで多数の兵士を退去させる」と語ったことだ。その言葉のとおり、エスパー国防長官は7月29日、ドイツ駐留米軍(約3万4500人)を約9500人削減して2万4000人規模に縮小すると発表した。トランプ政権の次のターゲットは韓国というわけで、韓国側が負担増を約束しない限り在韓米軍の撤退・縮小もありえる。
文大統領の側近は米国の関与がなくなれば、中国との連携を強める可能性を示唆しているが、国際社会で孤立化しつつある韓国が今後も独立独歩の道を進み続ければ、火遊びでは済まない現実を招くということに気づくべきだろう。今年の光複節の記念式典は「互いの違いを尊重」「多様性を認め合う」というのがテーマだったようだが、文政権のそれは常軌を逸している。新海誠監督による人気映画『君の名は。』の主題歌「前前前世」は「やっと眼を覚ましたかい」から始まるが、文大統領の眼はなおも覚めそうにない。
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政経ジャーナリスト
1987年岩手県生まれ。早稲田大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーランスとして独立。プレジデントオンライン(プレジデント社)、現代ビジネス(講談社)などに寄稿。婚活中。
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(政経ジャーナリスト 麹町 文子)
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