牧師が解決「就活面接で何度も落とされる息子、どう声をかければいいですか」
プレジデントオンライン / 2020年9月29日 11時15分
■価値がなければ愛されない?
教会には、クリスチャンやそうでない方も含めて大勢の人が救いを求めてやってきます。悩みの種類はさまざまですが、最近目立つのは、何かやりたいことがあるのに失敗が怖くて踏み出せないという悩みでしょうか。
たとえば、息子さんがもうすぐ大学を卒業するのに、不採用になることを恐れて就活に消極的になっているという親御さんもいました。また、気になる異性がいるのに、フラれたくないからデートに誘うことを躊躇している男性もいました。どちらにも共通しているのは、傷つくことを恐れていること。失敗するくらいなら現状維持のほうがいいと考えて、やりたいことを諦めてしまうのです。
じつは聖書には、失敗を必要以上に怖がる人を勇気づける言葉がたくさんあります。旧約聖書のイザヤ43章4節には、こう書かれています。
「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している」
一般に、愛は価値を根拠にしています。「美しいから愛する」「仕事がよくできるから大事にする」というように、優劣や生産性の高さなどを理由にして愛を注ぐわけです。しかし、神の愛は、価値に依存していません。神はご自身を裏切った民さえ「高価で尊い」と評価して、変わらぬ愛を示します。世間でいう価値が高かろうが低かろうが関係がない。無条件の愛です。
価値を根拠にした愛を「価値発見的」とするなら、神の愛は「価値創造的」です。因果関係は逆で、価値があるから愛されるのではなく、神に愛されるから価値があるのです。
![牧師 水谷 潔氏](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/1/220/img_21a3c2ecaedf6b16375df569a08db554203656.jpg)
失敗を恐れるのは、ミスをすれば自分の価値が落ちてまわりから愛されなくなる、あるいは自分で自分を愛せなくなると考えているからでしょう。しかし、神は失敗者にも成功者と同じく愛を注ぎます。そう心得ておけば、就活で失敗することへの恐怖心が和らぎ、失敗していっとき落ち込んでも、次に気持ちを向けることができます。気になる異性にも自信を持って告白できるようになるのではないでしょうか。
神の愛が無条件であることは、クリスチャンにチャレンジャーが多いことと無関係ではないでしょう。明治時代、日本の社会を変革していったプレーヤーには、キリスト教に影響を受けた人が少なくありませんでした。たとえば初代文部大臣であり、近代的な教育制度を確立させた森有礼はクリスチャンでした。クリスチャンが文部大臣を務めることへの批判や反対を受けても改革を続けたのは、結果がどうなっても神から見捨てられるわけではないと知っていたからに違いありません。
■聖書の登場人物の歴史的“大エラー”
5000円札になった新渡戸稲造や同志社大学をつくった新島襄、『代表的日本人』を書いた内村鑑三など、当時社会の変革に尽力した人々もクリスチャン。彼らの使命は、神様が喜ばれる社会をつくることであり、その使命を胸に歩み続けることが第一。成功か失敗かは小さなことだったのでしょう。
そうは言っても、失敗したら立ち直れないと不安を抱く人もいるでしょう。しかし、その心配は無用です。第2コリント4章8-9節には、「私たちは、四方八方から苦しめられますが、窮することはありません。途方にくれますが、行き詰ることはありません。迫害されますが、見捨てられることはありません。倒されますが、滅びません」とあります。
聖書は、生身の人間であれば失敗がつきものであることを教えます。実際、聖書に登場する人はたいてい何か失敗しています。モーゼは導いた民があまりにわがままなので、怒ってあるところで不信仰なことをしてしまいます。
アブラハムにいたっては、エジプト王に妻を譲り、自分だけ生き残ろうとしたり、約束の子が待てずに女性の奴隷との間に子をもうけたりします。その子イシュマエルがイスラム教徒のもとになり、本妻との間にできた弟イサクがユダヤ教徒のもとになるのですから、アブラハムは歴史的な大エラーをしでかしたといっていい。
しかし聖書は、仮に失敗をしても、神の力によって、窮することも、行き詰まることも、見捨てられることも、滅ぶこともないと約束します。つまり失敗してノックダウンされたからといって、KOで敗退となることはないのです。実際、モーゼやアブラハムも失敗のたびに立ち上がって信仰に生きています。聖書には、完璧な人間になるための正解が書かれているわけではありません。むしろ逆です。人が失敗するのはあたりまえであり、そこで諦めずにチャレンジし続けることの尊さを説いているのです。
■女性は自信を持っている男性に魅かれる
立ち上がるために大切なのは、自分がやろうとしていることに誇りを持てるかどうか。私は30歳のときに学校の教師から、キリスト教の世界に転職をしました。そのまま勤めていたらもらえるはずの退職金3000万円をどぶに捨てたので、まわりから「あいつは人生の選択を間違えた」と言われたこともあります。しかし、私自身は気にならなかった。牧師の仕事が神から与えられた天職だと思ったからです。
信仰心があるかどうかとは別に、このような感覚は誰にとっても大切です。就職や転職を目指すなら、自分の欲求を満たすだけでなく、本当に社会の役に立つ仕事なのかを問うてみましょう。そこに確信が持てれば、1度や2度、不採用になったところで、そう簡単にへこたれなくなるはずです。
好きな女性へのプロポーズも同じです。人生をともに歩んでいい相手なのか、そして自分もまたそれにふさわしい大人なのか。そう問われたときに胸を張ってイエスと答えられるなら、前に進む勇気が持てるでしょう。
そのときに、自分はハンサムではないし給料が低い、しかも若くはないから誇りが持てないという男性はどう考えたらいいか。たしかに多くの女性は安定した生活を求めますが、それ以上に、きちんと心が通じ合えるか、そして責任を持って家庭を守る誠実さがあるかどうかを見ています。そこに自信があるなら、自分を卑下する必要はまったくない。女性は自信を持っている男性に魅かれると言いますから、堂々と告白すればいい。そのほうがうまくいきやすいと思います。
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牧師
日本福音キリスト教会連合 春日井聖書教会協力牧師 1961年生まれ。高校教諭を経て伝道者に。小さないのちを守る会主事を経て2007年同会代表。12年退職し現職。ラジオパーソナリティ、大学非常勤講師なども務める。
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(牧師 水谷 潔 構成=村上 敬 撮影=山口典利 写真=PIXTA)
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