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動物も人間も「弱者ほどいい戦略を持っている」という不思議

プレジデントオンライン / 2020年8月25日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/cinoby

「いい大学」を出て、「いい会社」に入れなければ、人生は失敗なのか。職業人生の設計に詳しいワンキャリア取締役の北野唯我氏は「強者よりも弱者の方が“いい戦略”を持っている。自分に合った戦略を選んでキャリアを積むことが大切だ」という——。

■「強者の論理」とは、一体なにか

強者の論理

と呼ばれるものがあります。特にインターネットや、メディアではときたま話題になる話ですが、「強者の論理を振りかざすな」という意見が挙がることがあります。私はこういう話を聞くたびにこう思います。

強者の論理って、いったいなんなんだろう?

と。皆さんも、このなんとなく知っているようで、どこかボヤッとしている言葉の定義を言いなさい、と言われてもとっさに答えづらいのではないでしょうか。難しい問いです。

一般的には、強者の論理とは、「弱肉強食」的な世界観を指されることが多く、その場合は「強いものは弱いものを支配していい。するのが必然だ」ということを意味するでしょう。

あるいは、「生まれや育ちによる『差』を認めない」という観点で使われることもあるかと思います。

これは、たとえば、いい大学を出て、いい会社に入り、高い給与をもらっている人が、外から見て「なんとなく努力することを放棄したように見える人」に対して、「だからお前はダメなんだ」と非難するときなどに使われます。

この場合の強者の論理とは、機会の平等がある(と思われる)世界において、今の自分のポジションは努力不足の結果である。つまり「因果応報」的な意味合いで使われている、というふうに解釈できます。

■「強者の論理」も「弱者の論理」もしばしば炎上する

そして、往々にしてネットで炎上するケースというのは、ビジネスの成功者が述べる成功話や、ひと世代前のスポーツ選手などが述べる持論に対して「強者の論理はもう飽きた。うんざりだ」という、声が起こるケースです。

あるいは、逆のケースもあります。それは「弱者の論理」と呼ばれるものです。

いわゆる社会的に恵まれていない方が自分の悲惨な体験やエピソードを軸に、極端な主張を述べて炎上するケースです。

さて、この強者の論理か、弱者の論理か、というのは一体なにを表しているのでしょうか? 私たちはここからなにを学べるのでしょうか?

■強者の戦略は極めてシンプルだ

私は普段、会社の役員として、事業と組織を見ています。新卒から一貫して、戦略に携わるような仕事をしてきました。その中でいつも思うことがあります。それは「優れた戦略とは、基本的には弱者のためにある」ということです。

いえ、正確に言うならば「戦略には、強者の戦略と呼ばれるものと、弱者の戦略と呼ばれるものがある。そして前者は極めてシンプルである」ということです。どういうことでしょう。

まず、ビジネスの世界にも明らかに「強者」と呼ばれる存在があります。たとえば、業界No.1企業と呼ばれる会社や、時価総額が巨大な企業です。

あるいは、個人単位でみると、絶対的君主として君臨する「創業カリスマ社長」というのもそうでしょう。彼らはすでに強い影響力を持ち、知名度も抜群です。

そして、そんな彼ら、いわゆる、強者という人たちの戦略というのは実は極めてシンプルなことが多いのです。それは「強いやつ同士で手を組む」ということです。たとえばこれは、ソフトバンクとトヨタ自動車が手を組む、というイメージがわかりやすいでしょう。No.1同士が手を組むことでより支配力を高める、ということです。

もちろん、これ以外にもたくさんの戦略がありますが、最もシンプルでかつ強力な戦略とは「常に強いやつ同士で手を組む」ということなのです。

学生時代などを思い出してみると、わかりやすいでしょう。学校のクラスでも、いわゆるスクールヒエラルキーが上の人は、上の人と手を組むことでさらに強くなる、ということがあったのではないでしょうか。これと同じことです。

■いい戦略は「弱者」のために作られたもの

なにが言いたいのか?

それは、私が思うに実は優れた戦略とは常に「弱者」のためにある、ということです。ここで言う弱者とは「現時点でなにも持っていない人や会社」を指します。たとえば、普通の家庭に生まれた人、特に経歴が素晴らしいわけでもない人、特に素晴らしい実績を持っているわけでもない人、などです。

この事実を理解するためには、実は人間界よりもさらに動物界のことを想像すると分かりやすいでしょう。

たとえば、ライオンやチーターと呼ばれる強い動物には特段の強い戦略は必要なくても、シマウマやウサギといった動物には必ず生き残るための強い戦略を有しています。そりゃそうです。

なぜなら一対一で戦っても勝てない動物たちは、食べられないためには知恵を使うしかないからです。言い換えれば、やはり「いい戦略」とは、動物界や人間界問わず、常に強者のためではなく弱者のためにある、ということです。

■「自分に合った戦略」を選ぶのが成功の秘訣

さて、私ごとですが、8月6日に新刊『これからの生き方。』を上梓しました。この本は簡単に言うと、どうやって私たちがこの広いビジネスの世界で生き残っていくか? というキャリア戦略を描いています。既に20万人が読んでくれた『転職の思考法』の対となるような本に仕上がりました。

新刊では分かりやすさを表現するために、漫画の技法を使い、8人のキャラクターがどうやって生きていくか、ということを構造的に描いています。具体的には4パターンのキャリア戦略を紹介しています。

キャリアには4つのパターンがある
画像=筆者作成
キャリアには4つのパターンがある - 画像=筆者作成

ぜひ詳細は本著をご覧いただきたいのですが、一体、なにが言いたいのか。“so what”は二つあります。

北野唯我『これからの生き方。自分はこのままでいいのか? と問い直すときに読む本』(世界文化社)
北野唯我『これからの生き方。自分はこのままでいいのか? と問い直すときに読む本』(世界文化社)

ひとつは、強者の戦略をそのまま弱者が真似しようとしても、ほとんどのケースはうまくいかない、ということ。もう一つは、弱者の戦略は、強者のそれよりも多彩で、自分に合った戦略をきちんと選ぶ必要がある、ということの二つです。動物界は実に偉大です。必ずしも、「個体としては強くない」動物でも生き残るために多くの知恵を使い、戦略を持っています。その戦い方は本当に千差万別です。

そして、私も含めた私たちのほとんどはいわば、スティーブ・ジョブズや孫正義には、なれなかった人です。ジェフ・ベゾスにもなれませんでした(なりたくもない人の方がほとんどでしょうが)。

この夏は、コロナの影響があるからこそ、多くのビジネスパーソンがこれからの戦い方を考えなおすタイミングです。少しでもこの話が皆さんのインスピレーションになれば幸いです。

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北野 唯我(きたの・ゆいが)
ワンキャリア取締役
兵庫県出身、神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。現在取締役として人事領域・戦略領域・広報クリエイティブ領域を統括。またテレビ番組や新聞、ビジネス誌などで「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。著書に『転職の思考法』『オープネス』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)、『分断を生むエジソン』(講談社)がある。

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(ワンキャリア取締役 北野 唯我)

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